ユキアンのネタ倉庫   作:ユキアン

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オッタルってすごく書きやすいと思うのは私だけでしょうか?


ダンジョンのオルフェンズを幸せにするのは間違っていない 4

 

「女神ヘスティア、俺に力を、ガンダムを作ってくれ!」

 

「喧しい!赤ん坊達が泣き出したでしょうが!」

 

朝早くに孤児院の前で大声を出して赤ん坊を泣かせた下手人を蹴り上げ、上下が逆さまになったところで飛び上がり、両手で相手の両腿を掴み、肩口で頭をロックして着地して、その衝撃で首折り、股割き、背骨折り同時に行う。

 

「五所蹂躙絡み!」

「がああああああ!?」

 

倒れ込む下手人を捨て置いて赤ん坊をあやすために教会の中に戻る。いつも通りの時間にリリ君が市場で買ってきたヤギのミルクを持ってくる。赤ん坊のために母乳を出そうと思えば出せるけど、人の理を外れることになるからヤギのミルクを与えている。牛乳だとお腹を壊して脱水で死ぬからね。

 

「あの、庭に倒れているのはどうしたのですか?」

 

「朝早くに相手の迷惑も考えずに怒鳴り込んでこの子達を泣かせた馬鹿の末路だよ」

 

「はあ、それじゃあ後で捨てておきますね」

 

「ポケットに礼儀知らずと書いたメモも入れておいて。その後の行動で評価を決める。切羽詰まっていたみたいだから一度は許そう。罰は与えたからね」

 

「はーい、皆にも通達しておきますね」

 

「頼むよ。おっと、おしめだね。今日も元気で良いことだよ」

 

それから2日後の10時頃に教会の扉がノックされ、馬鹿を招き入れる。

 

「先日は失礼しました。こちらはお詫びの品です」

 

そう言って差し出された袋の中には清潔な布が入れられている。肌触りも良質でオムツとして使っても問題ないだろう。ふむ、誰かに相談してきたな。

 

「謝罪を受け入れよう。改めて自己紹介をしよう。僕は炉の女神ヘスティアだ」

 

「フレイヤファミリア団長オッタルです」

 

「ああ、覚えがあるよ。それで、ガンダムが欲しいと言っていたけど、製造方法は鍛冶系ファミリアに共有している。わざわざ僕の所に来る必要はないはずだけど」

 

「…少し長くなるのですがよろしいですか?」

 

「まずは簡潔に」

 

「フレイヤ様の一番側に居たいのです。そのために、ガンダムが、力が欲しいのです」

 

「ああ、なるほど。シノ君から話は聞いていたけど、そう言うことか」

 

簡単にだが話は聞いている。フレイヤに誘われて、やって、改宗を勧められて、蹴ったらなんか執着されたって。まあ、それはそうだろう。ようやく、僕以外に自分を見てくれる相手を見つけたのだから。

 

だからこそ、フレイヤは気付かなくてはいけない。自分が相手にどう見られているのかを。そして、オッタル君は...うん、合格だね。

 

「色々と僕の事情もある。引き受けても良いよ。だけど、条件がある」

 

「俺にできることならば」

 

「1年だ。1年で君を高みに導いてあげる。ただし、その間はフレイヤに会わせない。それが条件だよ」

 

「なっ、何故そのような条件を!?」

 

「理由はいくつかある。1つ、高品質なガンダムを作るには魔法や薬の影響を出来るだけ取り除く必要がある。フレイヤは力を振り撒いてるから、それを抜く必要がある。2つ、ステイタスに依存しない力を身に付けて貰うため。僕の子供達は眷属になる前から技術を身に付けさせている。これを行っておくと同じステイタスでも差が出る。これを身に付けるには時間がかかる。3つ、フレイヤの隣に立っていても問題ない教養を身に付けて貰うため。はっきり言って冒険者じゃなくて野蛮人の方が似合っているぐらいに文化的要素が不足している。シノ君でも趣味としてオラリオの外への遠征時の様子を旅行記として纏めて出版してるからね。他の子も、文化的な趣味や仕事をしている。最低でも礼儀作法と文化的な趣味の1つは身に付けて貰うよ!」

 

「…1つ目と2つ目は理解できる。だが、フレイヤ様の隣に立つための資格を何故女神ヘスティアが決めるのですか」

 

「フレイヤ、僕の可愛い娘の一人だもの」

 

「1年間、何卒よろしくお願いいたします」

 

と言うわけでフレイヤにちょっとお説教をしてからオッタル君を預かることにした。舞い上がるのは分かるけど、自分の子供達に目を向けないのは悪いことだよ。

 

そして、オッタル君への特訓を行うためにとある場所に連れていく。

 

「菊下楼?」

 

「僕が運営している食事処だよ。オッタル君、君にはここで刀工と火工を徹底的に叩き込むよ」

 

「料理を、ですか?」

 

「その一部行程、包丁を使う部分と火を使う部分だ。百聞は一見に如かず、席に座っていると良いよ。君が目指すべき領域を作ってくるから」

 

椅子に座らせて厨房に入り、青椒肉絲を何時もより丁寧に作り上げる。屑が大量に出るから普段は丁寧に作らないのだけど、分かりやすさ優先だ。屑は賄い行きだね。

 

「お待ちどうさま。特製青椒肉絲だよ」

 

オッタル君は少し悩み、青椒肉絲をしばし眺めて観察してから口にする。

 

「旨い。だが」

 

「良いから食べ進めて」

 

言われた通りに食べ進め、半分ほど食べたところでようやく気付く。

 

「馬鹿な、気のせい、ではないのか」

 

「行儀は気にしなくても良い。分かりやすいようにすると良いよ」

 

濡れタオルと小皿を用意して上げれば、手掴みで青椒肉絲を食材ごとに小皿に分けて、食材を積み上げる。

 

「全く同一の形、焼き加減まで完璧に同じ」

 

「これができるようになれば君は一歩も二歩も先に進める」

 

雑な観察眼と雑な剣技を矯正するのは困難だ。まともな手段では無理と言っても良い。だから全く別の方向から矯正する。器用さと観察眼をこれで鍛え上げる。

 

「この1年間、ダンジョンに潜る暇なんかないよ。さあ、基礎の皮剥きから始めるよ!」

 

皮剥きから転けるとは思わなかったよ。刃物の扱いがなっちゃいない。1年でなんとかなるか不安になってきたよ。

 

 

 

 

 

女神ヘスティアの元で修行が始まり2ヶ月が経つ。最初の1週間が地獄だった。俺よりも若い、いや、幼いと言える子供にできることができなかったのだ。俺の練習によって出来上がった残骸は、その子供達の手によって賄いとして菊下楼で働く者達に振る舞われる。出来るだけ原型を残さないような調理が行われているが、自分が作った残骸と思われる部分があることが分かると気分が落ち込む。

 

一度だけ料理長であるパイという少女に残骸ばかりなことを謝罪し金を払おうとしたのだが、腐っているわけでも、お腹を壊すようなこともないから。ヘスティア母さんに拾われる前はもっと大変だったから。私達も通った道だから大丈夫だと言われてしまった。

 

そう言われて自分のことが恥ずかしくなった。恐らくだが、女神ヘスティアに捨てられるかもしれない恐怖から必死に練習をしたはずだ。

 

捨てられないと確信した今でも必死だろう。量は減っただろうが、その分、質が上がっている。2ヶ月の間に1度だけ見た、女神ヘスティアに捧げる特別な一品にかける熱を、俺は生涯忘れることはない。

 

俺にもアレだけの熱があったはずなのに、今ではそれがない。ヘルンのことを狂神者と馬鹿にしていたが、馬鹿は俺だった。俺も昔はそうだったはずなのに、世間体だ、なんだと控える内に熱まで失ってしまっていた。

 

料理長のパイも狂神者だ。他の者達もだ。だが、彼女達を馬鹿だとは思えない。ヘルンは、表現の仕方が下手なだけだったのだと気付かされた。

 

この熱量を取り戻した時、俺は新しい一歩を踏み出せるのだと理解した。

 

その日から、俺も量ではなく質での訓練に切り替えた。今までのように一日中ではなく、量を決め、それに対して全神経を集中させる。それでようやく、ある程度使える部分が出来た程度だ。それを続ける内に使える部分が増えていき、2ヶ月でようやく自分で決めた量の全てが使えるようになった。

 

次は完璧を目指すべきだが、足手纏いな状況を解消する必要もある。量を増やしていくべきだろうが、火工も鍛える必要がある。

 

ふむ、まずは一度棚上げするか。俺のようなタイプの男は悩んだ場合、身体を動かせと女神ヘスティアに言われた。脳筋と呼ばれるような奴も身体を動かせば勝手に脳が考えてくれると。実際、身体を動かした後に答えが浮かび上がることが多い。今回も同じだろう。

 

ヘスティアファミリアの訓練場、とは言ってもオラリオの外壁の外側の一角に縄張りをしただけのスペースに向かえばちょうどアルトランド兄弟達が対人制圧訓練を行っていた。

 

オラリオの治安維持の一角を担うヘスティアファミリアは武器を使わずに治安維持を行う。住民に不安を与えないように、そして素手でも十分に強いと見せつけることで安心を与えるために。

 

そのために派手な魅せ技を多用する。俺が最初に女神ヘスティアに食らったような技を各自が一つは持っている。決まればレベル1の差を埋めれるような技ばかりだと思ったのだが、それは誤りで、俺の受け方、技の外し方が悪いだけだった。

 

アキヒロに教えられたように動くだけでダメージを軽減でき、脱出することもできるようになった。それからは徹底的に受け身の練習を仕込まれた。受け身を覚えることで何をされるのが嫌なのかを身体に覚え込ませる。

 

「むっ、オッタルか。ちょうど良いところに。ヘスティア様より攻撃技の基礎である4つの技を教えるようにと言われている」

 

「基礎の技と言うと、最初にやっているアレか?」

 

「そうだ。投げ、ローリング・クレイドル、パイルドライバー、ロメロスペシャル。ヘスティア様がプロレスと呼ぶ格闘技の基礎の技だ」

 

「基礎は大事だな。それにしてもパイルドライバーも基礎なのか?かなり強力だと思うのだが」

 

「下手な奴が仕掛けると食らった方が死ぬ。あれで難しい技だ」

 

「むっ、そちら側の問題だったか。ではまずは木人相手か」

 

「そうなる。慣れたら俺かマサヒロが相手をする。受ける方も熟練者なら悪い部分の指摘も容易だ」

 

うむ、一理ある。やはりヘスティアファミリアの連中は話が早く、学がないように見せているが、小賢しい知恵がないだけで、『勇者』よりも余程真実に目が向いている。

 

ヘスティアファミリアは真っ直ぐな連中だ。付き合っていて気持ちが良い。レベルも二つ名も関係無く、一人の個人として俺を見てくれる。久しく忘れていたことに新鮮味を感じ、気付かされた。フレイヤ様が『フラウロス』を、シノを気に入っている理由、それは俺が今感じている気持ちなのだと。

 

「へぇ、意外と早かったね、オッタル君」

 

今まで姿が見えなかったのに初めからそこにいたように女神ヘスティアが姿を見せる。

 

「女神ヘスティア、フレイヤ様は、昔からそうなのか」

 

「そうだよ。全知全能と言える神ですらフレイヤの魅了に毒され、孤独を感じていた。だから僕が真実の愛を与えていた。そして、こちらに降りてくることで魅了の力を押さえれば、僕以外の人が見つかるかもしれないと期待していた。だけど、駄目だったと降りてきてすぐに泣き付かれた。苦しいけど、子供達を置いて天界に帰るなんて無責任なことはできないってね」

 

「…そうでしたか」

 

「だから、魅了が効かなかったシノ君に執着している。まあ、あの子にとって初めて対等に付き合える存在だ。意識しすぎても不思議じゃない。だが、数が増えればその限りでもない。大分、魅了が抜けたその頭と心に問いなさい。君の望みは何なのかを」

 

それだけを告げると女神ヘスティアは現れた時と同じように居なくなる。

 

「俺の望みか」

 

その答えを出すためにアキヒロに向かい合う。身体を動かし、頭を動かすために。

 

 

 

 

 

 




次回はアリーゼがメインになるかな?
オラリオで正義を見つけるのって、ほぼ不可能な気もしますけど…
というか、アストレア様がね、そもそも実績の無い女神なので...
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