ペリカンで目標上空に到着したので外部マイクをオンにして叫ぶ。
「おいこら焔の眷属、特にヴァリマールの封印に関与した長!てめえいい加減にしろよ!どんな保管の仕方をしてやがるんだ!経年劣化に湿気と酸化で霊力のラインが3割しか機能しない上に記憶回路まで錆と黴で侵食されて操縦サポートすら機能しないんだぞ!大地の眷属が封印してたゼクトールは関節部分の油を清掃するだけで良かったのにどういうことだゴラァ!」
それだけならここまでキレることはなかった。問題はそのあとだ。
「それから、孫の教育はどうなってるんだ!エマ・ミルスティンは、現在スパイ容疑で逮捕されてるぞ!このままだと処刑まであり得るからな!」
しばらく待っていると深い森の一角が急に開く。正確には開けていた場所を隠していたのを止めたのが正しいのだろうが。その開けた場所にペリカンを降ろしてスパルタンスーツを着用したまま降りる。
防御力ではライダーシステムよりも上で、精神防御などの対策装置もふんだんに搭載してある。そのおかげでパワーアシストなどは最低限しか施されていない。それでも生き残ることを優先するならこちらを使用する必要がある。
広場の入り口らしき場所にいる集団をスキャンしてみるが、長は混ざっていないようだ。と思ったら慌てて広場に駆け込んでくる少女が見え、それがオズボーン宰相から聞いた特徴の多くと一致していた。
スキャンしてみれば霊力が想定より大分少ない。力を削って何かをしたのだろう。つまり、アレが焔の眷属の長、緋のローゼリアか。
案内を受け、焔の眷属の里、エリン内にある長の邸宅へと足を運ぶ。席と茶を勧められるが茶は遠慮しておく。
「すまないが茶は遠慮させてもらう。それとこのスーツを脱ぐこともない。それがオレから焔の眷属への評価と思ってくれ」
「……うむ、エマはそれだけのことをやらかしたのじゃな?」
「ああ。とりあえず、自己紹介をしよう。はっきり言えば誤解される可能性はかなり高いが、誠意だと思って貰えると助かる。大地の眷属の末裔にして次代の黒のアルベリヒ最有力候補、アーク・ラインフォルトだ」
「なっ、大地の、それにアルベリヒじゃと!?」
「次代の最有力候補だ。今のアルベリヒはオレの親父、フランツ・ラインフォルトだ。奴は精神寄生体で大地の眷属の身体を奪って存在している。腹が立つことにどうこうする手段がない上に、身体を奪う基準から考えて次に乗っ取られるのがオレだ」
「ちっ、250年前の時から気になっていたがそういうからくりじゃったか。それで、アルベリヒに関しては協力出来ると考えてもよいのか?」
「アルベリヒはこちらで処理する準備を進めている。逆に奴にはなにもするな。オレが乗っ取られると世界が滅ぶ」
「冗談じゃよな」
「だったら良かったな。放射性物質って知っているか?拳大の鉱石から帝国が使用する導力の4分の1を産み出せるんだが、副作用で広範囲に毒性をばら蒔いてな、これで爆弾を作れば量と質次第で数十年単位で生態系を崩壊させられる。動植物は奇形が生まれやすくなったり、そもそも寿命が削られたり、まあ、ヤバい物だな。で、こいつの精製方法はオレしか知らない。乗っ取られるとこの知識で世界が滅ぼされる。糞みたいな先祖の業、相手を滅ぼせという願いのままに」
「……じょ、冗談、ではなさそうじゃな」
「念のために自分の身体に爆弾を仕込む程度には本当のことだ。乗っ取られた瞬間、躊躇なく爆破する。それでも情報を奪われない保証は何一つない」
「大地の眷属はそこまでするか」
「焔の眷属が平和ボケしているだけだ。最終計画は2年後に実行に移され、何もなければ十数年で世界を滅ぼす」
「なっ、それは先ほどの放射性物質か?」
「いや、ただ単に自分の領域内に存在する憎悪の芽を発芽させるだけだ。帝国に住む8割以上の人間に植え付けられているそれを発芽させて告げるだけだ。相手を滅ぼせとな。そのための場と空気を用意している」
「何をする気じゃ」
「世界大戦!出来れば頭に第一次って付いて欲しいな。世界は滅びずに済んだって意味で」
どさくさ紛れにクロスベルは滅ぼしたいし、幾らか共和国の土地も奪いたいし、ある程度の金稼ぎもしたいから多少は戦争に協力するけどな。
「そこまで政治に関わっておるのか」
「まあ、ほぼトップ、ぶっちゃけ宰相がこっち側だからな」
「なっ、いや、それなら何故、エマのことなど放って置いた方が良いはず。何が目的じゃ」
「ふふふ、エマ・ミルスティンが所属する特科Ⅶ組のスポンサーがオレだ。不祥事を起こされるとオレも叩かれるからそれを回避するためだ!いい加減にしろよ、あっちこっちに頭を下げて黄金色の菓子をばらまいて誤魔化してる最中なんだからな!」
「あ~、その、すまん」
「本人からは謝罪がないどころか、使い魔を使って脱獄も考えてたから目の前で使い魔を拷問にかけて分からせる必要すらありましたけど。なあ、何を教えて何を判断して一人前にしたんだ?」
「本当に何をやっておるんじゃエマは!?」
「ヴィータさんを知ってる身として、ちょっと差の大きさに涙がボロボロと」
「ヴィータまで知っておるのか」
「一応、蛇の関係者だからな。月1位でお茶する仲。主に愚痴を言い合う感じだけどな」
姉よりできた妹なんて幻想だよな。兄よりできた妹(エリゼ)はいるけど。できない妹(アリサ)もいるけど。
『システムチェック、オールグリーン。リィン、お前の方はどうだ?』
コンソールと騎神とのリンク両方のデータを確認する。
「問題無し。オレ自身にも変化はないよ」
『此方でもモニターはしているが、騎神とお前、どちらかに異常を感じたらすぐに降りろ』
「分かってるよ。ヴァリマール、お前自身はどうだ?」
【過去の起動時とパラメーターが大きく変わっている。今のところは問題はないと思われる】
「パラメーターが変わってるって言ってるけど」
『核の部分は弄れてないが、モーターや装甲は最新の物にアップデートしてるからな。重量なんかも変わっているから一つずつ丁寧に確認していくぞ』
「了解。とりあえず、立たせるよ」
叩き込まれた知識を元にヴァリマールを操って立たせる。
「反応遅っ!?」
アークが作ってる人型導力機械人形よりも動きが鈍い。
『出力が低いからだ。少しずつ左側のメーターが少しずつ上がっていっているはずだ。それが現在のヴァリマールが出せる力の総量だ』
言われたとおりに視線を向ければ14%程しか出力が上がっていない。じわじわと上がっているが、もどかしい。
「これ、一気に上げれないの?」
『残念なことに低出力から高出力に一気に上げるとエンジンが痛む。ウォーミングアップ無しでいきなり全力を出すと後で筋肉を変に痛めるのと一緒だ』
だとしても、この出力の低さはきつすぎる。
「アーク、もうちょっとなんとかならない?これだと戦闘までに舌戦とか必要になるんだけど」
『剣士として言葉でも相手を斬れ』
「言葉が通じない相手もいるじゃないか、幻獣とか」
『その時は呼び出したまま生身でやるしかないな』
結局苦労させられるのか。2分ほど経つとようやく60%を越えて安定を示す緑色のラインを越える。
「もう一度立ち上がるところからやり直すよ」
操縦管を動かしてから動き始める速度はかなり過敏だけど、それが実際に動くまでのラグが少し気になるけど、これは慣れでなんとかできるだろう。構えを取らせて徒手空拳の型を取らせる。型から型への繋ぎの間が気になる。
『型から型がぎこちないな。ヴァリマールの操作アシストが原因じゃないか』
「ヴァリマール、そこの所はどうなんだ」
【うむ、今はモーションのデータが不足している。十分にデータが揃えば問題ない】
『そうなるとやることはひとつだな。時間をかければかけるだけ動きはよくなる』
しばらくは空いてる時間をヴァリマールにつぎ込むか。
「武器の方はどうなってるの?」
『ゼムリアストーンの生成待ち。ヴァリマールの整備というかほぼ新造に使ったからな。ぶっちゃけ核と骨格以外は全部作り直したから。ゼムリアストーンさえあれば量産も可能だ。まあ、操縦補助のAIは1から作る必要があるからまた煉獄を見る羽目になるから当分作るつもりはない。あと、新規に対G装置と空調を取り付けた。生命維持をライザーを不死者にすることで強引にクリアしてやがったからな。武器は刀でいいんだよな』
「今更他の武器は使えないよ。あ、それとは別に捌の型用に腕を強化しておいてほしいんだけど」
『拳の保護具を可変式で取り付けてやる。一瞬の隙ができるが、それは腕前でカバーしろ』
「了解。練習用に普通の鋼鉄製で刀は作れないの?」
『重量が違うからな。練習する意味がないぞ。技の精度はリィン自身の物を基準にヴァリマールがどれだけ再現できるかだからな。そのために強化調整を繰り返すことになる。つまりゼムリアストーンが更に必要になるってことだな』
「凄いお金がかかるんだな。先に言っておく!金額は聞かないからな!」
『心臓に悪いから聞かないほうがいいな。へへっ、オレですらちょっと引いてる額を既に使った。また別の稼ぎ口を作らねえとな。娯楽業界にまた販路を広げないとな』
「兵器産業じゃないのかよ」
『兵器産業は意外と渋い業界なんだよ。国防のためにギリギリまで善意の協力を求められるからな。利益率なんて5%もないんだぞ。元の金額がでかいから儲かってるように見えるだけで。あとは政府の上のほうにコネができるからな。そこからごにょごにょと、な。別の方法で稼ぐんだよ。ぶっちゃけ、娯楽産業の方が金稼ぎは楽なんだ。特にカードゲームなんてお金を刷ってる様な物だからな』
「世知辛いというか、欲を上手いこと利用してるというか判断に苦しむよ」
その金稼ぎで世話をされているから否定だけは絶対しない。今まで壊してきた物の総額なんて絶対に知りたくない。剣聖昇格祝いで貰ったゼムリアストーン製の刀だけでも帝都で家が建つなんて知りたくなかった。アークの前では絶対にお金の話はしない。金銭感覚が本気でおかしいから。フィーに調べてもらったけど、特科Ⅶ組への資金援助の額からして2桁ずれてたからな。
その上でトリスタ周辺の土地を買い上げてザイアの工房に加えてバイクのレース場に幻夢コーポレーションのアミューズメント施設幻夢スタジアムに各種飲食店や商業施設に駐車・駐機・駐船場や道路の敷設、地下にラインフォルトの工房とデカい格納庫を大量の戦術殻を使って2週間で仕上げてしまうぐらいだ。帝都から鉄道ですぐに来れる上に郊外にあるから騒音などの対策も楽で好き放題やっている。
トリスタから客が消えて苦情が出るかと思えばそうでもなく、むしろ客は増えているそうだ。アークが作った娯楽施設群は楽しいが落ち着くのは難しい。楽しんだ後に休憩するのに丁度いい位置と雰囲気がトリスタにはあるそうだ。そして、アークは元からある部分にはノータッチではあるが、娯楽施設群とトリスタの駅前に無料の送迎バスの停車位置を用意することでアクセスを容易にしている。人の流れをコントロールすることでお互いにメリットを生み出している。手慣れていると思えばリベールやレミフェリアにも同じような物を建設したらしい。
クロスベルには作らないのかと聞けば、クロスベル人が嫌いだから出店も建設もしないそうだ。アークが特定個人を嫌いだって言うことは珍しくないが、人種で嫌うっていう時点でクロスベル人と関わりたくなくなった。
「アーク、私に合うライダーシステムは無いのか」
「突然どうしたラウラ。ライダーシステムが欲しくなったのか?」
旧校舎工房でヴァリマールの調整を行っていたところにラウラが現れ、そんなことを言い出す。
「特別実習のことは聞いているか?」
「状況判断をミスって人質にされたことか?まあ、仕方ないことだと思うぞ。リィンが反応できるのはそういう経験が多いからだ」
「そうだとしても、ただ足を引っ張ることしか出来ずに、なにも出来ない無力感に浸りたくない!」
「幸せなことじゃないか。無力感に浸っても生きていられるだけで。それとは別に真面目な話、子爵はラウラにはまだ道場剣道のままでいて欲しいと考えてる。実戦で、命のやり取りはして欲しくないと。こればっかりは子爵の言うことが正しいし、逆にライダーシステムがあれば危機から逃れられたかもしれない。だから、用意するのは構わないけど、それは子爵の許可が降りたらの話だ。テスターってことでレポートの提出を求めるけど、その分金銭面での負担は与えないし、むしろ給料は出す。其処ら辺も説得材料には使っていいよ」
「……えっと、反対しないのか?」
「何が?」
「いや、ライダーシステムって軍にも正式採用されているような物だし、オーダーで仕上げるとか、ただの学生である私にテスターを任せようだなんて」
「ああ、別に気にする必要ない。テスターは複数いるし、軍に納めてるのとは互換性の無い別システムを用意するだけだから。諸々の理由で量産を見送った物があるからな。大抵、知り合いにバラまいてデータだけ貰ってる形が多い。レンにもとんでもないライダーシステムを預けてるしな。聞いて驚け、40本以上のボトルから2種類をミックスしてその状況に合わせたアーマーを精製するライダーシステムだ」
「使いこなせるものなのか?」
「レンは結構普通に使いこなすぞ。オレもまあ、やれないことはない。戦闘センスはそこまででもないから使いこなすとまではいえないけど」
「まさか私にも?」
「まっさかー、基本フォームだけに決まってるだろ」
「不器用だと言いたいのか!」
「いや、アルゼイド流に変な癖を着けたら問題だろう?ライダーシステム前提な流派ならともかく」
「それは、そうだな、うん」
「更に言えばライダーシステムは状況に合わせて装備を瞬時に入れ換えることが出来るのが大きな強みだ。これは武人との相性が頗る悪い。普通は武器の一つを極める形だからな。無論、それに合わせたものを開発すれば良いんだが、そんな余裕はオレにはない!リィンの分ぐらいは作ってやりたいが、あいつも自分の剣の道を探している途中だからなぁ」
「何?だが、リィンは剣聖なのだろう?」
「おう、だが師であるユン老師や兄弟子たちはその上、剣仙の領域を期待している。それに合わせて防具類は既存の物を最高級品にして対応しているんだよ。新設備によってゼムリアストーンを繊維状にすることが出来たからこれで布を織って作る予定だ。お値段は聞かない方が精神的に良いぞ」
「リィンを借金漬けにしてどうするつもりだ?」
「えっ、別に何もしないけど。というか、これは必要経費なんだよ。リィンと一緒に居て何回死にかけたと思ってる!あいつも強化してないと二人揃って煉獄行なんだぞ!」
「すまない。そうだったな、アイゼンガルドの主の件があったな」
理解してくれたようで何よりだ。親友のピンチは金の力で何とかするしかないのだ。傾国レベルで貢いでるからな。稼げるから別に良いんだけどよ。
「あれ?アークが何で此処にいるの」
特別課外実習で訪れた宝石店に何故かアークがいた。
「うん?ああ、特別課外実習か。オレはこの店の店主に宝石の研磨を依頼していてな、それの受け取りに来たんだよ。ここの店主はヨルグマイスターも認める腕の持ち主でマイスターも依頼する隠れた名店という奴だ」
「へぇ~、あのヨルグ老が認めるって本当にすごい人なんだね」
「研磨にかけてはマイスターが自分よりも上と認めてるからな」
「それは凄い!でも、何でアークが宝石を?」
「マイスターから人形作りを叩き込まれて最終試験の作品に使うんだよ。あの人も歳だし、弟子は皆逃げ出してるからな。あの技術が失われるのは勿体無いだろう?」
「ローゼンベルク人形の技術が失われるのは確かに勿体無いね」
「最終試験に合格すれば2代目ローゼンを名乗らせて貰える。肩書きがまた増えるな」
「もう合格した気になってるんだ」
「合格するまで受ければ合格できるんだよ。あと、技量は余裕で足りてるんだよ。デザインセンスを寄せるのに手こずったが今回は自信作だ」
アークが自信作と言うのなら本当に自信作なんだろう。だけど、ローゼン人形ってことは……ちょっと退く。
「何を想像したかは分かるが退くな」
「仮にオレがその作業をやってたら?」
「出来の悪さを指摘して我慢できなくなって手を出すな。あと、知らないようだから言っておくが、オレは服飾店も経営してるしデザインもやってるからな。元々はレンのためにやってたことだから」
「あー、そんなことまでやってたの?」
「機械系のスキル以外は基本レンのために取得したからな。おっと、これ以上は邪魔になるな。それじゃあな」
アークを見送って皆の方を見るとユーシスが何かを考え込んでいた。
「どうかしたの、ユーシス」
「リィン、おまえ達の言うヨルグとは、ヨルグ・ローゼンベルクのことなのか?」
「そうだよ。ヨルグ老とはレン通じて少しね。レンっていうのは、たまにアークと一緒にいる菫色の髪の女の子なんだけど、ヨルグ老は彼女を養子に取っていてね。養子にしたものの、面倒の見方が分からず、子供の頃から交遊関係が馬鹿みたいに広いアークに預けたりしててね。で、実の妹があれだから、アークがその分猫可愛がりしてるんだ。それでもヨルグ老にレンの保護者としての自覚を持たせるために色々とやってるよ。その一環で、ユミルに旅行に訪れてくるからその時にね。人形も1つ、世話になっているシュバルツァー家にと言われて頂いている」
「ローゼン人形か。それも話からすれば最新ロットか、市場に出れば荒れるな」
ユーシスの言う通りで、絶対に市場に出すなとアークに念押しされている。
「なんだ、そのローゼン人形と言うのは?」
レーグニッツが疑問に思って尋ねてくる。まあ、知らなくても仕方ないか。
「ヨルグ・ローゼンベルクが作った人形だ。そちらの業界のトップで、世界中にコレクターが存在している。掌サイズの小さな物でも数万、着せかえ人形サイズなら一番安い物でも300万は下らない」
「3、300万!?」
「安くてだ。高い方だと天井知らずだ。5年前に帝都のオークションに出品された物が680万位だったはずだ」
「ちなみにアーク曰く、存在を宣伝してオークションに出せば1000万前後はするって鑑定してくれたね。売るつもりはないけど」
「たかが人形一つに!?」
「あー、たかが人形一つって言い方はやめた方がいいぞ、レーグニッツ。それを言い出すと宝石だってたかが綺麗な石ころ一つってことになる。場合によっては一生の敵を生むことにもなる。帝国で生きるならそこは弁えていた方がいい。貴族を馬鹿にすると怖いぞ」
一応忠告はしてやるが、実際に恐ろしさを受けないと分からないだろうなと思っていたら案の定だった。
特別課外実習から僅か1ヶ月でレーグニッツ帝都知事に対するヘイト活動に加え、あらゆる政務が滞り始め支持率の低下どころか支持層である平民から解任請求までも起きたのだ。
オズボーン宰相の執り成しと商業界の後援により立て直したようだけど、今後は両者の顔色を伺いながらの政治を行わなければならず、今までの政治は出来なくなった。マキアス・レーグニッツはオズボーン宰相はやはり平民の味方だと喜んでいるが、真実に気付くのは何時になるやら。裏で高笑いをあげている油断も隙もない2代目ローゼンの顔が目に浮かぶ。立ち去った振りをしてあの会話を聞いていたんだろう。貴族と渡り合う、手玉にとって転がす、どっちでもやれるだろうけど、レーグニッツ帝都知事が必要になってくるのか?
気にしても仕方ないか。脅しても絶対に口を割らないだろうしな。必要なことやどうでもいいことは教えてくれるが、逆に知ってはいけない、知らない方がいいものは絶対に教えてくれない。
「ねえアーク、おじいさんとやっているパテル=マテルの改修ってどうなっているの?」
「ほぼ終わってるぞ。内容は、関節部をより人間に近い形に変更して装甲をゼムリアストーンに変更して薄くすることで防御力はそのままに運動性を向上させた。更にはヴァリマールの運用データからモーションを一新することで近接戦能力の向上。ジェネレータを新型の突撃機動星型にすることで短期決戦仕様に変更。これにより稼働時間は12時間にまで落ちるが6時間ならどれだけ暴れても導力不足にはならない上に出力は2.7倍になる。ダブルバスターキャノンをオミットし使い捨てのバスターランチャーを手元に召喚する機能を搭載。バスターキャノンの代わりにバスターウィングを装着して飛行機能を強化。両腕部にウェポンラックを増設し、状況に合わせてマシンガン、グレネードランチャー、火炎放射器、電磁ネット、射突式ブレードを装着できる。そして目玉になるのが自爆装置の改良だ!」
「なんて物を付けてるのよ!」
レンに自慢気に紹介した結果、ビルドドライバーを脳天に叩き込まれた。
「ぐぅおおおお!待て、話をちゃんと聞け。自爆装置は元から付いてる。今回の改修はそれを躊躇無く使えるようにするための物だ」
「具体的には?」
「オレとマイスターでも迂闊に手を出せない部分、それが演算機の記憶領域。人間で言えば脳の、思い出とかが記憶される領域、これがパテル=マテルという個性を産み出している。逆に言えばこの部分さえ無事ならば幾らでも再生可能だと思ってくれて良い。今回の改修でこの演算機が搭載されている頭部に射出・飛行機能を追加した」
イメージ映像をモニターに映し出して説明する。
「頭部さえ回収できれば別の身体に取り付けることも、なんなら新型の演算機に乗せ代えて全く別の存在にだって出来る」
イメージ映像の方ではデフォルメされたオレがパテル=マテルから演算機を取り出して小型の演算機にデータを移して、アンドロイドボディに搭載して、大量の仕事を押し付けて遊び始める。
「パテル=マテルに何をさせているのよ!」
渡したばかりのハザードトリガーを脳天に叩き込まれた。
「いや、押し付けたわけではないぞ。暇だから仕事をくれっていうから単純計算の仕事を振って給料もちゃんと出してるから。給料を払っても使えないって問題も導力ネットワーク上でのカタログ販売を始めたからそれを利用して貰っている。自室も与えたけど意外とセンスが良いぞ」
シルバニアファミリーの家具類を等身大サイズにしたようなパテル=マテルの部屋での刺繍会の映像をみせる。ローゼン人形には刺繍は必須なのだ。
「いつの間にそんなに仲良くなってるのよ」
「交遊関係が馬鹿みたいに広いオレからすると、会話が出来るならこれぐらいは1週間もかからないな。ただし実妹は除く。家族で一人だけ才能がないとどうしても歪むなぁ。本当にどうするかなぁ」
「ああ、あのお姉さん、中途半端に子供で
、甘やかされてるから無理でしょうね。自分がどれだけ恵まれているのか分かっていないから」
そうなんだよなぁ。アリサみたいに気楽に生きられるって本当に幸せなことなんだけどなぁ。本人が気付くつもりが無いのが問題だ。まあ、嫌われていようが家族だから幾らでも面倒は見るし、お節介もするつもりだ。兄とはそういう存在なのだ。
「ところでアーク、帝都のシルバニアショップのレンタルジオラマスペースに変なのが増えていたのだけれど」
「ああ、職業シリーズ、漁師、猟師、土木建築に続く第4弾マフィアとそれを流用した新シリーズ抗争編VS覇狼鬼帝率いる燦酈雄組だな。特攻隊長の捕無捕無符凛の腹マイトには迂闊に手を出せずに屋敷の門を制圧されたファミリーが苦戦しているシーンだな」
「奥まった位置に置いてるとはいえ、小さい子が泣いてたわよ」
「いやぁ、娘や姉妹に構成員にされてしまった男達にこういう遊び方もあるって紹介しただけなんだがな」
「構成員って言い方を辞めなさい」
「ちなみに店員に問い合わせると職業シリーズと同じ様にマフィアセットも購入できる。流石に燦酈雄組は販売してないがな」
「遊び過ぎよ。サンリオ組はわざわざ手作りで作ったんでしょ」
「鬼帝さんはどんな仕事でも引き受けるからな」
「さっきから発音が変な感じがするわね。何か隠してるでしょ?」
正直に話せばラビットタンクスパークリングを脳天に叩き込まれた。