正義
正義ってなんなの?
あの日、ギルドを制圧したヘスティアファミリアの拘束に動いた私達は『バルバトス』『猟犬』の二つ名を持つミカヅキ一人に敗れ、活動を制限されることになった。
最初は以前から治安維持を行っていたガネーシャファミリアはともかく、孤児主体のヘスティアファミリアと、むしろ治安を悪化させる側のイシュタルファミリアには無理だと思っていた。その無理だと思っていた治安維持をヘスティアファミリアもイシュタルファミリアも問題なくこなしてしまった。
ヘスティアファミリアは孤児主体とは言え、人数も多く、連携が取れており、目立つジャケットを羽織ることで住民側も頼りやすく、幼い子供で対処できなくてもすぐに幹部が駆けつけるので問題にならず、破落戸側は警戒して鳴りを潜めてしまった。
イシュタルファミリアは歓楽街の治安を悪化させる所か以前よりも活気に溢れさせつつも、混沌としていた空気を一定の方向性を持たせることで安定させていた。
結果として以前より、私達が活動していた頃より過ごしやすいと言う声が聞こえ始め、私達の評価は一気に下がった。私達を見るなり、オラリオの住民達は顔を反らして離れていく。
私達は、私は、正しいことを、正義を行っていたはず。なのに、どうして。正義って、なんなの?何が正しいことなの?私達は何を間違えたの?
団員の皆も悩んでいると言うのに、団長の私は何日も一人でオラリオをさ迷っている。落ちているはずもない正義を探して。
だけど、疲れた。ここ数日、まともな食事どころか水すら口にしていない。このまま朽ち果てるのも良いのかもしれない。少なくとも、悩んで苦しむことも、疲れることもないのだから。
気が付けば毛布にくるまれて木箱で作った簡易ベッドみたいな所に寝かされていた。そして私をじっと見つめる女の子と目が合った。
「アキヒロにいちゃーん、お姉ちゃん、起きたよ」
「おぅ、すぐに行くから待ってな」
何が起こっているのか理解できずにそのままでいると目の前に麦粥の入った器が置かれる。
「ほれ、熱いから気を付けろ。お前もだ、アリーゼ・ローヴェル」
声のする方に顔を向けて、ようやく誰が運んでくれたのかを理解する。
「【番犬】」
「アキヒロ・アルトランドだ。ヘスティアファミリアは二つ名で呼ばれるのが嫌いだ。覚えておけ」
「なんで?」
なんで私を助けたのかと聞いたつもりだが、二つ名で呼ばれるのが嫌いな理由を話してくれる。
「ギルドに提出した書類や、ただの噂なんかの表面上の薄っぺらい情報だけで、面白がっているよく知りもしない神々に付けられた名を嬉しがる理由が分からん。俺達には親が付けてくれた名が、家族が呼んでくれる名の方が大事だ」
そう言われてストンと腑に落ちてしまった。確かにその通りだ。どちらが大切なんかなんて比べる前から分かる。
「冷める前に食え。チー、この子が倒れてるのを見つけて、俺がここに運んでいる間もずっと腹の虫が鳴いてたぞ」
タイミングを見計らっていたのかと思うぐらい、ちょうどお腹が鳴ってしまう。恥ずかしく思いながら麦粥を口にする。
どろどろに溶けた微かに匂う麦が古い物だと分からせてくる。だけど、丁寧に処理されているのか不快に思うことはない。十分食べられるし、私達ではこのレベルの料理は作れない。そして、この麦粥をチーと呼ばれた少女は美味しそうに掻き込んでいる。
「チーはこの辺りを縄張りにしている孤児の一人だ。ちょっとした治安維持、ごみ拾いとかを手伝って貰う代わりにこうやって飯を食わせている。これがどんだけすげぇことなのか、知らない奴ばかりになって欲しいものだな」
「えっ?」
「オレがチーぐらいの時、まだヘスティア様に出会っていなかった頃、10日に1度、この麦粥が食えれば幸福だって胸を張って言えた。捨てられたばかりの残飯なら上等、腐りかけの、いや、アレは腐っていたな、まあそんな野菜の切れ端とか、そこら辺に生えている食える草とか虫で餓死しないようにするので精一杯。そんなのがオラリオには2000近く居る」
「2000人も!?」
「そんな生活をしていたオレらから言わせればだ、アストレアファミリアが掲げる正義って奴は、オレ達を救う価値無しって判断したんだろうって思ってたさ。なんせ、やってることは暴れてる奴らをぶん殴るだけなんだからな」
何も言い返せなかった。暴れてる奴らをぶん殴るだけ。もしくはそれに関連することしかやっていない。孤児達がそんなにいるのも、どんな生活をしているかも全然知らなかった。
「ヘスティア様の所にアストレア様が眷属が面倒をかけるかもしれないと先に謝罪に来ていたが、まさか団長が行き倒れになってるとは思ってもみなかったな」
アストレア様にはお見通しだったか。もう面倒をかけてしまったんだ。更に面倒をかけよう。
「ねえ、私達は何を間違ったのかな?」
「知らねえよ」
思ったよりも冷たい返事が来た。
「そもそもだが、さっきの二つ名と同じだ。何も知らねえのに正しいとか間違いが分かるわけねえだろうが。あと、学もねえから難しい答えも出せねえ。そういうのが欲しいならオルガかビスケット、女が良いならリリルカかアトラ、パイ、あとはイシュタルファミリアに話を通してやれるぐらいだ」
冷たい訳じゃなく、真剣に答えてくれていた。
「…正義が、分からなくなったの」
「正義が分からない?ああ、ヘスティア様の説法にそんなのがあったな。なんだよ、そんな基本的なことかよ。ええっと、ヘスティア様曰く、正義ってのは自分が自分であると自信を持って掲げる夢の旗、だったか?」
「自信を持って掲げる夢の旗」
「例えばだ、オレは力を持ってる奴が偉い、弱い奴は文句を言わずにしたがってろって旗を持っていたとする。オレにとっては力が全てだ。そういう奴を見て、アストレアファミリアはどうしていた?」
「それは、止めるように言って、聞き入れないなら…」
「殴って止める。別に非難している訳じゃねえ。それで治安が回復して、噂が流れることで維持も出来てた。上出来だな。その裏でチーみたいなガキがその辺で死んでたってだけで」
「ごめんなさい」
「何に謝ってるんだ。それがこの世界の真理だろうが。弱い奴が、適応できない奴から死んでいく。それだけのことだ。そういうものなんだよ。だから、精一杯力の限り生きていく。戻ってこない昨日じゃねえ、頑張った今日でもねえ、今日よりも良くなってる明日を生きる。それが俺達鉄華団だ」
強い光を目に宿している。今の、いえ、以前の私たちにも無かった。
「オレ個人としてはよ、いずれはどっかで、でけえ土地を手に入れて、畑を作って、ガキ共をそこで働かせて、腹一杯食わせてやる。余った作物で鶏や豚なんかの家畜を育てて、綿花なんかも育てて生活に困らねえようにして、ヘスティア様のように学問を教えれる側になりたいってアーノルドが言ってるからガキ共に勉強させて、色んな未来があるってのを見せてやりたい。オラリオみたいな狭い世界だけじゃなく、もっと広い、世界って奴を見て来て貰いたい。そんでそれを話しに戻ってきて欲しい。故郷って奴を、帰れる場所を作ってやりてえ。ダイダロス通りも今は多少マシにはなったが、もっと胸を張って故郷はあそこだって言えるような場所を。それがオレの掲げる正義の旗だ。それを邪魔する奴は潰す。お前はどうだ?」
「私は…分からない。昔はもっと冒険者が多くて、ガラの悪い冒険者も多くて、怯えていたのを覚えている。そういうのを見たくなくて、だからアストレア様の正義を広げようと」
「うん?おかしくねえか。お前が望んでいるのは正義じゃなくて平和とか平穏とかじゃないのか?」
「えっ?」
「ガラの悪い冒険者に荒らされた日常が嫌だった、そこまでは分かる。そのためにせアストレア様の正義の旗の下で力を得た、そこまでも理解できる。もう正義が無くなったって問題ねえじゃねえか。アストレアファミリアの代わりにオレたちヘスティアファミリアにイシュタルファミリア、ガネーシャファミリアが正式に平穏を保ってるんだからよぉ」
「…私は、間違えていた?」
「間違えていたと思うなら間違えていたんだろう。まあ、今のオラリオならアストレアファミリアの掲げる正義は必要ないだろう。未来はどうか分からねえけど」
未来、か。私たちは今とちょっとだけ前の過去しか見えていなかった。アキヒロ達、ヘスティアファミリアは未来を見ている。自分達の夢に向かって立ち止まらずにいる。
私はいつの間にか自分を見失っていた。自分のことも、進むべき道も、どこに行きたいのかさえも分からなくなっていた。自分の情けなさに涙が溢れる。
「お姉ちゃんどうしたの?どこか痛いの?アキヒロにいちゃん、ヘスティア様の所に連れていこ」
「違うの、これは、そう、恥ずかしいの。何も、何も分かっていなかったことが恥ずかしくて。それを教えて貰えて嬉しくて、でも悲しくて」
自分でも何を言っているか分からなくなってくる。そんな私にアキヒロは頭から毛布をかけてくる。
「溜め込まずに全部吐き出しちまえ。スッキリさせないからぐだぐだ引きずるんだ。思いっきり、声に出してぶちまけろ。ここはダイダロス通りだ、気にする奴なんて周りには居ねえよ」
そう言われて、我慢の限界が訪れる。チーちゃんを抱き締めて、大声で泣き崩れる。
どれぐらい時間が経ったのか分からないほど泣いた後、アキヒロとチーに連れられてダイダロス通りを歩く。途中で残っていた麦粥の鍋を捨てて、側にあった鍋を回収する。
「慈善行為の一つだ。ヘスティア様に拾われてからずっとやってる。こんな麦粥すら買えない奴らに食わせるためにな」
ヘスティアファミリアはそうした活動を結成当初からやっていると説明される。
「偽善だ、無駄だという奴らはごまんといた。その内の一部は今は、その偽善で生きているがな。後ろ、今鍋から離れていっている右腕しか残っていない奴がそうだ。レベルは2だったはずだ」
「良いの?そのままで」
「言っただろう、生きていくのが難しい奴らを一人でも減らしたい。あいつもその一人ってだけだ。それに腹が減っている奴に飯を分けてやる。これを偽善と呼んだら善はなんだよって話だ」
優しさ、じゃない。たぶん、色々な感情の結果、手を出さないと決めただけだ。
そして、そのままヘスティアファミリアのホームである教会にまで連れていかれる。
「ヘスティア様、ただいま戻りました。チーとアストレアファミリアのアリーゼ・ローヴェルも一緒です」
「ヘスティア様、ただいま」
「お帰り、アキヒロ君、チー君。チー君はリリ君が待っているから一緒にお風呂に入ってきなさい。初めましてだね、アリーゼ君。僕は炉の女神ヘスティア。今はこのお馬鹿さんへのお説教が終わったところだよ」
ヘスティア様の前に正座で反省しているアストレア様に驚く。
「改めて、お馬鹿な姪が迷惑をかけたねアリーゼ君」
「アストレア様って、姪!?」
「僕、ゼウスの姉であり妹だからね。まあ、説明が面倒だからそんな物だと思えば良いよ。で、お馬鹿さんはゼウスの娘だから僕の姪にあたるのさ」
「はあ、いえ、それよりも迷惑とは?」
「このお馬鹿さんの正義に振り回されて迷走していると聞いてね。それも仕方ないことなのさ。このお馬鹿さんが何故正義の女神と言われているか知っているかい?」
「…いえ」
そう言えば聞いたことがなかった。自分で正義の女神と名乗っていたのは覚えているけど。
「遥か遠い昔のことだ。楽園と呼べる黄金の時代、季節が彩る白銀の時代、進歩と欲が満ちる銅の時代、そして血塗られた鉄の時代。このお馬鹿さんは銅の終わりから鉄の中頃まで正義を謳い、諦めた女神なのさ。やっていた行動も正義を謳うことだけで、そもそもの正義もあやふやな物だった。はっきり言えば経験不足だ。何故ならばお馬鹿さんが産まれた時期には、神々は地上から離れ始めていたからだ。成長した頃には一番多かった頃の1割ほど。経験が積めなかった者が説得するなど不可能。お腹が空いたと泣き続ける子供のために他人から奪う覚悟を決めた親を言葉だけで翻意させるのは特に、ね」
「神様にも出来ないのですか?」
「いや、やろうと思えば出来るよ。でもね、それをすると家畜以下の存在になってしまう。与えるだけではダメなんだ。自分達の手で掴み取らなければね。いつか、分かる日が来る」
ヘスティア様が悲しそうな目で語る言葉に、昔にあった出来事なのだと理解する。私が理解したことにヘスティア様が笑みで答えて下さる。
「お馬鹿さんの正義に振り回されたお詫びに言葉を贈ろう。正義に、自分の行いに迷ったのなら大切な人たちのことを思い浮かべるんだ。その大切な人たちに、この行いは間違っていないと胸を張って言えるのなら、それはきっと正しいことだ。そして、大切な人たちが笑顔でいるなら、もっと正しいことだ。ここが、心が君を導いてくれる。言っただろう、君たちの思いは認めているって」
ヘスティア様の言葉に涙が零れる。私の正義は、思いは間違っていないのだと、そう言ってくれた。やり方を間違えただけなんだと、今なら理解できる。
泣いている私をヘスティア様が優しく抱き締めて下さる。
「いっぱい泣くと良い。身体中の水分という水分を出しきるつもりで。カラカラになったら、綺麗な水で満たしてあげれば良い。そうしたら、新しい自分になれるさ」
暖かい。冷えきって弱っていた心と身体が暖められていく。まるで春の太陽の日差しのような暖かさが私を包んでくれる。子供の頃にお母さんに抱きしめられたみたいに安心する。ああ、ヘスティア様は本当にお母さんなんだ。アキヒロとチーが信頼するのも分かる。お母さんなんだもん。
「アストレア、アリーゼ君。部屋は用意してあるから今日は泊まっていくと良い。そして明日の朝、一つの正義を見せてあげよう。それから自分を見直すと良い」
今日は十日に一度行われる旅立ちの日だそうだ。朝日も登らない内から多くの人達が教会の前に集まる。何が起こるのかアストレア様と待っていると、教会の扉が開かれ、悪魔達が姿を見せる。あの時よりも数が増えた8人が等間隔に並び、膝を付く。次に鉄華団のジャケットを羽織った子供達が蓋の無い棺を担いで現れて並べていく。そして、最後にヘスティア様が先端にランタンをくくりつけた杖を片手に姿を見せる。
「今日もまた、迷える子供達を見送る日がやってきた。誰しもが何時かは死ぬ。それは避けられない運命で、避けてもいけない。避けてしまえば、もう何処にも行けなくなる。だから精一杯、今を生きなさい。死は終わりではなく、新たな旅立ちなのだから。だけど、彼らのように迷ってしまう子もいる。だから導いて、送ってあげなければならない」
そう言って杖で石畳を突いて音をならす。悪魔達も立ち上がり各々の武器で石畳を突いて音をならす。
「迷える子供達にいずれ再会することになる別れの言葉を」
集まっている人達の前に立っていた人達が棺に寄り添い、最後の言葉をかけていく。その中にチーちゃんが混ざっている。たぶん、母親だと思う女性の亡骸の額に自分の額を合わせて何かを呟いている。そこに涙はない。しばらくすると別れの言葉が終わり、棺から離れる。
「迷える子供達に安らぎを」
ヘスティア様が亡骸の額にキスをしていく。
「迷える子供達に温もりと導きの炎を」
そして、ヘスティア様が杖を大きく振るとランタンから火が飛び出し、亡骸だけを焼いていく。悪魔達が武器を掲げ祈る。集まっている人達も黙祷を捧げる。それほど強い炎ではなかったはずなのに骨すら残らずに亡骸が短時間で燃え尽きる。ヘスティア様の力なのだろう。
「これにて旅立ちの儀式を終える。安心すると良い。旅立った先にも僕の子の鬼灯君がいる。彼なら間違いはないよ。さあ、いつものように朝食を用意してあるから、それを食べて、今を精一杯生きなさい。旅立った者と再会した時に色々話せるようにね」
いつの間にか悪魔達の姿は消えて、アキヒロ達が大きな鍋やパンの入ったケースをって
「『猛者』がどうしてここに!?」
「アリーゼ・ローヴェルか。オレは今、ヘスティアファミリアで世話になっている。この炊き出しのシチューはオレが担当して作ったものだ」
そう言ってシチューを配り始める猛者に頭が追い付かない。
「えっ、なんで、意味が分からない」
「女神ヘスティアに刀工と火工を鍛えることで一段上に上がれると言われてな。最初は刀工と火工だけだったが、今では一通りやっている。そこら辺のやる気の無い店よりは上手いと思っている」
そう言って渡されたシチューは見た目と匂いの時点で美味しいと思わされる程で、実際に口にすればそれが正しいのだと思わされた。
「それで、アストレアファミリアはいつまで活動を休止しているんだ?」
「そ、それは…」
突っ込まれたくない話題に言葉が詰まる。私の正義は間違っていないとヘスティア様に認めて貰えた。でも、何をすれば良いのか分かっていない。
「うん?装備の修理が終わっていないのか」
「いえ、装備は大丈夫。ただ」
「怪我か。ミカヅキ達の武器は中々に強力だからな」
「…怪我も大丈夫」
「ううん?なら何故活動を再開しない。最近、ガネーシャファミリアの担当区域の治安が悪くなっているぞ。菊下楼での仕入れのために態々護衛を付けるぐらいにな。店としては色々困るのだが」
そこまで治安が悪化していることに気付かなかった。よく生きていたと思う。
「…ごめん、だけど、どうしたら良いのか、自分でも分からないの」
「…何を言っているのか分からんのだが。ガネーシャファミリアに話を通して一緒に活動すれば良いだけの話だろうが」
「…えっ?」
「お前達への罰は勝手に行動するな、だろうが。ガネーシャファミリアに協力して向こうの指示に従えば良いだけ。それだけのことだろう」
思い返してみれば確かにそうだ。理解した途端顔が熱くなる。恥ずかしさのあまりにしゃがみこんで顔を隠す。
「本当にどいつもこいつも物事の本質を見抜けない奴ばかりだな。オレもそっち側だったが」
全くもってその通りだと思う。団員の皆も。
「間に合うかな?」
「間に合わせろ。従業員に被害が出ればオレも出るぞ。というか女神ヘスティアを動かすな。あの方はかなりヤバイ」
「ヤバイ?」
「ミカヅキ達のガンダムを正面から殴って破壊する。1対8でだ。ガンダムを持っていないのを含めて、オレも混ざって20人がかりでクリーンヒットすらさせれない」
魔法でも傷一つ付けられないあの鎧を砕く!?
「無論、神の力を使わずにだ。他の神々よりも力を置いてきているらしい。見た目どおりの力と、ほぼ技でやっているらしい。ミカヅキ達の力の一端だ。冒険者の我流ではなく、時間をかけて積み上げてきた技術がステイタス以上の力を発揮する。特に防御面は勉強になる。だが、それ以上に真似できない攻撃面がヤバイ」
「聞かなきゃダメ?」
「知らないと後悔するぞ。レンガよりちょっと小さい石を蹴って砕いた散弾で20人弱の冒険者を殺している。生き残ったのはレベル4間近の奴ただ一人だけだ。そいつも廃人にされた」
「…真似できる?」
「レベル1を一人ぐらいならやれなくもない、運が良ければ二人ぐらいまでなら」
「それを20人…ちょっと急いでくる!」
正義云々の前の話だった。急いで治安を立て直さないと危険が危ない状態だった。アストレア様すら置き去りにしてホームへと走る。いや、その前にガネーシャファミリアに話を通しておかないと。それから皆を集めて、装備と心構えをして…
ヴァリス、幾ら残っていたっけ?えっ、ちょっと待って、ここのところ、ダンジョンほぼ潜ってない。財布の中身を見て愕然とする。じゃが丸くんが買えない程度しか入っていない。と言うか、昨日の麦粥が買える程度だった。
先ほどとはまた別の意味で顔が熱くなる。予定を変更して今日はダンジョンでヴァリスを稼ぐ。全てはそれから。自分を整えてファミリアを整えて、それからオラリオだ。もう自分の正義を見失わない。その上で、周りの正義をもう少し見れる様になる。そのために、ヘスティア様が力を振るわなくて良い環境を作るんだ!