正一の説明が一段落し、計画の第二段階、その鍵となるイタリアの主力戦の結果を待つ。
秘密裏に潜入していたことで正一に愚痴られている凜弥の側に 10年前の沢田綱吉──恭弥とクロームも微妙に──が近づいて来た。
「凜弥さん! あの、その腕と目は……」
「 沢田綱吉か、、この傷を君が気にする必要はないよ 」
「でも、」
心配そうに気を落とす10年前の沢田綱吉に、凜弥は答えられない。原作力で縛られた結果などと、キャラクターに言えるはずないのだ。
そも、ヴィータが目覚めれば、目は兎も角、時間は掛かるだろうが腕は直るのだ。幻肢痛もなく、もともと両利き(訓練した)の為不便もない。寧ろ関係が薄い凜弥にでさえ、この程度の傷で自分が痛い思いをしているような顔をされては、この先マフィアのボスなどやっていく事はできないだろう。
そんな事を数秒考え、答えあぐねていると、正一が沢田綱吉に声を掛けた。
「大丈夫だよ、綱吉君。凜弥さんの言うとおり、君が気にすることはないさ。その人は 自分のその状況を愉しんでる節があるから。ですよね、凜弥さん」
「え゛、たのしんでるって……」
正一のその言葉が聞こえた数人の目が凜弥のことを捉える。その視線のどれもが信じられないものを見るような目をしているのを感じ、凜弥は正一を睨む。
「 正一、君、10代の子供の前でなんてことを言うんだい。その言い方だと、僕が、傷付くことが好きな変態みたいに聞こえるだろう」
「そうは言ってないですよ。ですけど凜弥さんって、探究者気質があるじゃないですか、知らないモノを知る事が好きでしょう?」
「 ……まぁ、そうだね。この身体になってから、片目だと世界がどう見えるのか、片腕だと何に届かず何に届くのか、失ったものを補う動き方とか、そんな事が新たにわかったから今後に活かせるな、とは思ったけど 」
「つまり、嘆いてはいないってことですね」
「 そうなるね。………君、ブラッコに似てきてないかい? 」
「そうですか?」
ニコニコと、入江は凜弥に笑いかける。
( 似てる、…その遠慮なくズバズバ言ってくる所とか )
「と、言うことで綱吉君。本当にこの人のことは気にしなくていいからね」
「あ、はい」
( 引いてるよ… )
『凜弥、ちょっといいか?』
「 晴のアルコバレーノか、何だい? 」
ストレスのせいか、いい性格になってしまった正一に 心の中で苦笑いしている凜弥に、
『霧雲の守護者は行方不明だと聞いた。おまえ、今までどこにいたんだ?』
「! そうですよ、
リボーンの言葉に反応するように、野太い声で哲矢も聞いてくる。
どこに居たか、という事であれば、知り合いの所で少しばかり世話になっていたけど、それはここ数ヶ月の間だけで1年も経ってはいないから……それ以前は、、、
「 何処、と聞かれてもね。僕は この数年も世界中を旅していたよ。……
僕は未だ、世界中の旅を続けている。そして旅をしながら得た情報を使い、情報屋を兼任したりもしている。
霧雲の守護者の使命は【時折現れファミリーの力となる、姿の見えぬ層雲】
つまり僕は、ボンゴレファミリーの守護者だとしても、やる事さえやっていれば どこで何をしていようが構わないという立場にある。
守護者の使命というのは、初代守護者達が行った事を元に周囲が勝手に言い出したことであるからして。
元初代霧雲の守護者である僕の行動から今の霧雲の使命が云われているのであれば、僕がどう行動しようとも、それがボンゴレ霧雲の守護者のあるべき姿であり、そも、前世の時から、僕は一つの場所に縛られるつもりはないと宣言している。今更 僕の行動をどうこう言われる筋合いはない。
「ブラッコからの連絡ですか…?数年間、一度も来ていませんが」
ブラッコの寿命が縮む事が決定した瞬間である。
****
***
**
*
『たった今、ジャンニーニから イタリアの主力戦の情報が入ったぞ。
リボーンの報告に皆が湧き上がる。敵は撤退を始め、ヴァリアーは勝利を得たそうだ。
( ……ヴァリアーか、あの子は元気にやっているかな。最近は
( それより、今は…… )
『いいや、ただの小休止だよ。
イタリアの主力戦も、日本のメローネ基地も、すんごい楽しかった』
突如出現した
真っ白な姿で笑みを浮かべた この世界の元凶。
「…こ…こいつが…」
「白蘭サン!!」
『ボンゴレの誇る最強部隊の本気が見れちゃったりして、
メローネ基地で僕を欺こうとする正チャンも面白かったし、まさか霧雲の守護者の君にそこまで入り込まれていたとわね。びっくりしたよ。
正チャンが立てた計画はよくできていたし。正直、ボンゴレと手を組むなんえ思ってもみなかったけど、正チャンがいつか敵になるのは想定の範囲内だったからね。
だって、昔からずーっと、正チャン 僕のすることなすこといつも否定的な目で見てたもん』
「!!………あなたは……、間違ってる!」
( 僕の潜入は 気づかれていなかったようだね。
白蘭と、ではないけど、彼の真の部下達とは数ヶ月前に遭遇していたから……それなら、彼らとの接触も 気づかれていないだろう )
白蘭の合図により、偽物のマーレリングの翼が砕け落ちた。
そして白蘭の背後に、真のマーレリング
『彼らの強さは 君がよく知ってるんじゃないかな。ねぇ、凜弥クン♪』
「なっ!どういうこと!!」
『彼らを差し向けられて生きのびたのは 君が初めてだよ』
「 …………… 」
『ハハッ、だんまんりか。いいよ、君が居ても居なくても、結果は変わらないからね』
「……凜弥さんが腕を失ってしまうほどの相手」
( 正一…、君の心が折れてしまっては、この計画の全てが無駄になる。おそらく、僕の負傷以外はどれも、君の計算内なんだろうね )
「 正一、この傷の事は 気にしなくていいと言ったはずだよ。僕は、君が思っている以上に、君のことを買っているんだ。
誰よりも君が、この先に希望があると知っている。君は、 君のやるべきことをやればいい 」
「凜弥さん……っ白蘭サン!! 力比べって、一体何を企んでるんですか!!」
『(あーあ、希望だなんて、あるわけないのにね)
昔、正チャンとよくやった“チョイス”って遊び覚えてるかい? あれを現実にやるつもりだよ♪』
「!」
『細かいことは10日後に発表するから楽しみにしててね♪ それまで一切手は出さないからのんびり休むといい』
『むちゃいうな。あんな怪物見せられて、のんびりできるわけねーだろ?』
『お、君はアルコバレーノ リボーン!
んー もっと話したいなー 、でも君達はもう逃げないとね。君達のいるメローネ基地はもうすぐ消えるからさ』
「!? 消える?」
『正しくは基地に仕込まれた、超炎リング転送システムによって移動するんだけどね』
「!それって、リングの炎を使ったテレポーテーションシステム…? 完成…してたのか?」
「まだこの規模の物体じゃなきゃムリなんだけどね。すさまじいエネルギーと時間がかかるから、一生に一度見られるかどうかだよ。
じゃあ、楽しみだね、10日後♪」
白蘭のホログラムが消え、辺りが白く光に包まれていく。
「な!? 一体どうなるんだ!?」
「テレポーテーションだ、この基地はどこかへ飛ばされる!」
「な…なんだって!?」
「どうすればいいの!?」
(そろそろか…)
「大丈夫だ!!何かにつかまれ!!」
ボソッ「任せたよ、正一」
次話は少し過去の話です。