10代目雲の兄弟 霧雲の守護者になった者   作:白炉丸

32 / 49
霧雲の一幕 〜たぶんイタリア〜

 草木をかき分け走りながら、凜弥はただ、撃ち込まれる赤の炎弾(えんだん)を躱していく。

 

 

 

 

 

 

 

「待てって言ってんだよ!! バーロー!!」

 

 

 F(フレイム)シューズで空を飛びながら、走る凜弥を追うのは2人。どちらも同じ様な黒い衣服に身を包んでいる。

 

 

「ハハン、そんな闇雲に攻撃してもダメですよ ザクロ」

 

 

 GYAOOOO(ギャオオオオオオ)!!

 

 

「 ッ!! 」

 

 

 ザクロの放つ炎弾を避けた凜弥を 複数の小型恐竜が襲う。

凜弥は向かってきた恐竜、ヴェロキラプトルを、その手に持つヌンチャクで流し、払い、弾く。

 

 しかし、さすがは雲の匣兵器なだけあり数が多い。凜弥の四方をヴェロキラプトルが囲み── 一斉に襲いかかる。

 

 凜弥はそれを 空へ飛び退くことで躱した。

 

 

 

「ハッ、桔梗 お前も避けられてんじゃねぇか」

 

「いいえ、想定内ですよ」

 

 

 

 

 

 

「隙ありだよ!!」 

 

 

  ──ザンッ!!

 

 

 

 突如として現れた鱗あるそれが、凜弥の側を駆け抜けた。

同時に、凜弥は自身の半身が軽くなったのを感じた。

 

 地に降りた凜弥が次に感じたのは、突き刺されるような痛みだった。

 

 

「 …っ…… 」

 

 

 痛みの元を見ると、右腕の上腕から先が 中程から消えている。

 

 

 

 

──吹き出る赤が綺麗だと感じた。

 

 

 

「ハハンッ、上出来ですよ デイジー」

 

「僕チンにかかれば こんなのなんてことないよ」

 

「これだけやってやっと腕一本か…だり〜」

 

「ザクロ、ダレてる場合ではありません。彼を殺すことが白蘭様の(めい)なのですから。

 これ以上時間を掛けるわけにはいきません。 それにそろそろ、彼のスタミナも切れてくる頃でしょう」

 

 

 

 彼らが話ている間に、凜弥は右腕と共に飛ばされたリングを回収した。

そして、それとは別に新たにリングを取り出し、左手の指に嵌める。

(ふところ)から匣兵器を取り出した凜弥は、体に押し付けることで匣を支えながらリングに死ぬ気の炎を灯す。

 

 

 

開匣(かいこう)

 

 

 雲カラス(コルヴォ・ディ・ヌーヴォラ)

 

 

 

匣から現れたのは、雲の炎を纏った白い羽毛の烏

 

 

「 増殖し、先に邪魔な匣アニマルを片付けろ 」

 

 

 凜弥の言葉に従うように、雲カラス(コルヴォ・ディ・ヌーヴォラ)は、雲の炎の特性 増殖によって その数を増やしていく。

 増えたカラス達はその狙いを雲ヴェロキラプトルへと向けた。

 

 

 

雲羽の(バッラーレ・ディ)踊り(・ヌーヴォラ・ピウマッジョ)

 

 

 

 何十匹にも増えた雲カラス(コルヴォ・ディ・ヌーヴォラ)が一斉に羽ばたいた。

一つ一つに雲の炎が纏っているその羽を雲ヴェロキラプトルへと撃ち込む。

 

 風に乗るように、踊るように飛ぶ何百もの羽が四方八方に舞う。

そしてその羽らは雲ヴェロキラプトルに刺さるように命中する。

多くの雲ヴェロキラプトルは姿を保てずに消え去り、それ以外の雲ヴェロキラプトルも地に伏した。

 

 

 

 

「 次は……そこだよ 」

 

 

 凜弥は何もいない所に目を向け、雲カラスに攻撃の指示を出す。

 

雲カラスが先程と同じ様に羽を飛ばすと、その場の空間が歪み、そこから般若(ハンニャ)の様なお面を被った者が姿を現した。

 

 

「 どうりで…、感覚がズレている(おかしい)とは思っていたけど 」

 

 右腕の切断面を死ぬ気の炎で焼き 止血した凜弥。その肩にはいつの間にか一匹のハムスターが乗っている。

 

 

 

 霧ハムスター(クリチェート・ネッビア)

 

 

 敵襲を受けてすぐ、凜弥は気づかれぬようにこの匣を開匣(かいこう)し、ポケットの中に霧ハムスター(クリチェート・ネッビア)を隠しながら今まで戦っていた。

 

 この霧ハムスター(クリチェート・ネッビア)は、死ぬ気の炎をその頬袋に蓄える(チャージする)ことができる。

 

 死ぬ気の炎を貯めている頬袋にリングを入れると、事前に蓄えておいた炎をそのリングに移すことができる。

 

 その炎を移したリングを指に嵌めれば、その分のスタミナの消費を抑えることも、その炎分の生命エネルギーを体に戻し、スタミナを回復させることも可能だ。

 

 だが、霧ハムスターに蓄えることのできる死ぬ気の炎は、霧の炎だけであり、それ以外の炎を蓄えることはできない。

 

 しかしスタミナさえ回復してしまえば、その増えた分のスタミナで 雲の炎を灯せばいいだけの為、この雲ハムスターの匣は、サブ匣として重宝している。

 

 

 そしてハムスターはもともと、人間の4倍の音域を聞くことができ、人間には聞こえない超音波を聞き取ることができる。

 

 この匣兵器も他の匣と同じ様に、元の動物の能力が強化されており、なおかつ霧属性の匣の能力として、幻術にも反応できるようになっている。

 

 

匣アニマルが幻術に反応するというのは、クローム髑髏の持つ霧フクロウ(グーフォ・ディ・ネッビア)が例になるだろう。

死ぬ気の炎のをチャージする能力は、笹川了平の匣兵器、晴カンガルーの漢我流(カンガリュウ)も同じ力を持っている。

 

 

 

 

「ほう、トリカブトの幻術を見破るとは…」

 

「豪運な者よ」

 

「片腕取られるようなヤツが豪運なのかよ」

 

「ぼばっ、や、ヤバいよ! トリカブトの幻術を使っても今まで殺せなかったのに、幻術に気づかれちゃったよ!!」

 

「落ち着きなさい、デイジー。

 我々(リアル)6弔花(ちょうか)が4人もいるのですから、全員でかかれば、例え他のパラレルワールドに存在しておらず、白蘭様を持ってしても未知数と言わさしめる あの霧雲の守護者、雲雀凜弥を殺す事もできるでしょう」

 

 

 

 

 

 

「( ……これは、だいぶ分が悪いな )」

 

 

 4人の(リアル)6弔花(ちょうか)に囲まれながら 凜弥は考える。

 

 

 ミルフィオーレファミリー (リアル)6弔花(ちょうか)、本物のマーレリングの所持者(ホルダー)

 

 嵐の守護者 ザクロ

 晴の守護者 デイジー

 霧の守護者 トリカブト

 雲の守護者 桔梗

 

 

 ミルフィオーレファミリーの守護者、それが4人も集まり凜弥を狙っている。

 

 

「( それ程までに 白蘭は僕を警戒しているのか?

 

 先程 桔梗が言っていたように、他のパラレルワールドには僕が存在していないからか?

それだけじゃ、白蘭が僕を警戒する理由にはならないと思うんだけどな… )」

 

 

 凜弥は考える。白蘭が何故これほどまでに自分を狙うのかを。だがその答えがすぐに出ることはない。

 

 

 

「( それにしても…、久しぶりに来たよ、原作力が……。

 僕が彼らを殺れる機会はいくらでもあった。

なのに、何かに阻まれたように攻撃が逸れたり、思うように体が動かなくなったりと…、これは十中八九、原作力が働いてるからだろうな。

 

 ……原作力のせいで、今はまだ、彼らを倒すことができない。

 

 

 

 

 時期を待たなければ。

 

  ここから、離れなければ…   )」

 

 




 相性が悪かったんや。こんな一方的にやられるほど凜弥は弱くないんやで。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。