10代目雲の兄弟 霧雲の守護者になった者   作:白炉丸

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邂逅、虹の大空(後編)

 

「リンさん、リンさん。あれはなに?」

 

「 ……あれは鹿だよ 」

 

「シカ?……シカさん!」

 

「 そうだね。頭に角が生えてるのが雄で、角が無いのが雌だ 」

 

「?」

 

Quello grande è un(大きいのが雄で小さいのが雌だ。) maschio e quello piccolo è una femmina. 」

 

「おっきい子が男の子で、ちいさい子が女の子?」

 

「 そうだよ 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕は今、現大空のアルコバレーノ、アリアの娘である ユニ(小)と共に日本の奈良に来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………何故こうなった。

 

 

 

 いや、理由はわかってる。アリアとの交換条件で、懐中時計の為だったんだ。

 

 

 僕は懐中時計を取り戻す為にアリアと交換条件を交わした。

アリアは僕に懐中時計を渡す。その代わり僕は、アリアの娘であるユニをひと月の間護衛する。という口約束だ。それも護衛の間は日本に滞在するという条件付きで。

 

 

 部下に任せられたらよかったんだけどね。

護衛も出来る程に力があり信用に足る部下といったら随分と限定されてしまう。

 ヴィータは論外。アレはそも護衛には向かない。

ヴェネーノでは不安が残る。ユニが大空の炎の使い手と知ったら解剖でもしそうだ。

ブラッコなら安心して任せられるけど…、彼は今潜入任務中だからな。任務も開始したばかりだし、長期の潜入を予定していたから数ヶ月は動けない。タイミングが悪いな。

 

 

……もし、この状況がアリアの予知の範囲内だとしたら。

 

 

 

 

 

 まあ、いいや。次は京都に行って清水寺にでも行こうかな。このまま北海道まで順々に北上でもしようと思う。

 もろ観光だけど、こうしてその国の文化に触れた方が、その国の言葉も覚えやすいだろうからね。

 

 

 たったひと月だ。

偶にはゆっくり歩くのも、悪くないかもしれないね。

 

 

 

 

 

 

「 もうすぐ日も暮れる。そろそろ行こうか 」

 

「あ!まって、リンさん」

 

 

 赤く色づく空を見上げた凜弥は、暗がりが訪れる前に、とユニに声をかけた。

その声に、凜弥の数歩先にてしゃがみながら鹿の群れを見いてたユニが立ち上がりながら声を上げる。

 

 

「 どうかしたかい、ユニ 」

 

「あのね、あのね…」

 

 

 ピョコピョコと早足で凜弥の眼の前まで来たユニは、モジモジと、どこか恥ずかしがっている様子で両手を合わせた手元を見ている。

 

 

 

 

 

 

( ……トイレ、、ではないよな、少し前に行ったばかりだし )

 

 

 残念な事に凜弥はユニが何を訴えたいのかわからない。

今まで碌に光属性の小さな子供(恭弥、ブラッコ、骸達、炎真達は論外)、それ以前にまともな人間(殆どマフィア関係者だった)と接して来なかった影響かもしれない。

 

 

 

 

 

 

「 はぁ、行くよ 」

 

「あっ…」

 

 

 黙りこくってしまったユニにしびれを切らした凜弥は、踵を返しそのまま歩いて行く。

 その姿にユニは無意識に切ない声をあげる。

 

 

「 ……… 」

 

「……、」

 

 

 凜弥はそのまま歩き続ける。

ユニはその姿を追いかける事もできずに呆然と立ち止まってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

「 ……、はぁ 」

 

 

 数メートル程歩いた凜弥は、何故か自身を追ってこないユニの気配に立ち止まり、ため息をついた。

 一体何がしたいのかと考えながら凜弥が振り向くと、そこには目を潤ませたユニが、真っ白なワンピースにシワを作りながら凜弥を見つめていた。

 

 

「、、、」

 

 

 

 それを見た凜弥は眉を寄せながらユニの元へ早足で戻る。

 

ユニの元へと戻った凜弥は、そのままユニを抱き上げ宿へと足を向ける。

 

 

 

 

 

 

「 言ってくれないと。声に出さないと、何もわからないよ 」

 

「……うん、」

 

 

 

 

「 声さえ上げれば。君を助けてくれる人間なんていくらでもいる。辛くなったときは、いつでも声をあげればいい 」

 

 

 

 

「……、リンさんも」

 

「 うん? 」

 

 

 

「 リンさんも、 ちゃんとおしえてね」

 

「……フ。生意気な人たらしだね、君は」

 

 

 

 

 

 

 

 

( 人の気も知らないで。これだから、、大空は嫌いなんだ )

 

 

 

 

( 壁なんかするりと抜けて奥底にまで踏み込んでくる )

 

 

 

 

( 君達に言われるそれは、不快には思えない )

 

 

 

 

 

( だから、それが逆に……、気持ち悪い )






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