凜弥は逃れるように、あの場から足早に立ち去った。
その途中、ブラッコからジッリョネロファミリーを支援するという旨を聞いた。この時代の人間ではない僕にとってはあまり関係のない話だけれど、彼女の
ブラッコは世界中に知り合いがいるから、彼がやると言ったんだ、悪いようにはならないだろう。
しばらく歩いた僕は並盛山の山頂付近にたどり着いた。
始めは並盛神社の方へ行こうと考えていたけど、この時代でのあの場所は風紀財団の地下アジトへの入口になっていた事を思い出し、急遽行き先を変更した。
誰にも見つからないのなら、場所なんてどこでも良かったから。
「待たせたな、ソルドーネ」
空に掲げた右手に嵌まる陽の光に輝く懐かしい型のボンゴレリングを凜弥が眺めていると、その背後から声がかかった。
腕を降ろし振り向くと、橙色の炎が宙で燃えている。
凜弥がその炎を視認した途端、炎は勢いよく燃え盛り次第に人の形をとる。炎の代わりに現れたのは、ボンゴレファミリー初代ボスのジョットだった。
「 まったくだよ。君が会うなんて言わなければ、僕がこんな所に来る必要なんてなかったのにね 」
凜弥は不機嫌そうに鼻を鳴らしジョットから顔を背ける。そんな凜弥を見たジョットは、昔と変わらないソルドーネに苦笑いをした。
「そう言うな。ここに来たのはオレだけじゃないんだからな」
ジョットはたしなめるようにそう言った。その言葉に凜弥が眉をひそめ訝しげにジョットを見ると、突然彼の左右に新たに炎が出現し、またもや聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「まったくだ。てめえが何も言わずに消えるから今こうなってるんだろうが」
「生憎だけれどこれには僕も同意見だよ、ルド。君はいつも、黙ってどこかに消えていく」
その炎は赤と紫色をしており、先程の橙色の炎と同じ様に燃え盛る。赤色の炎からは初代嵐の守護者
「
二人の登場に凜弥は少なからず驚いた。けれど同時に、ジョットがいるなら過保護の
数歩前に踏み出したジョットは目の前の凜弥に問いかける。視線を合わせ、真実を教えてくれと凜弥に訴えかけてきた。
「ある時からお前の行方が一切わからなくなった。オレも嫌な予感を感じお前から預けられた伝鳥を通して何度も手紙を送ったが、お前への手紙だけはすべて手元に戻ってきた。
数年が経った後、突然お前からの手紙が届いた。そしてその手紙には霧雲のリングが同封されていた…。手紙の内容もボンゴレの守護者を降りると、それだけしか書かれておらず、その理由もお前の居場所も不明のままだった…」
「なあ、ソルドーネ…教えてくれ。あの時お前に何があったんだ」
凜弥は軽く息を吐き、観念したように話し始める。旅の途中に自身の身体が病に冒されてしまった事を。
「 …僕はその時、自身が病に侵されていると知ったんだ。腕が良く、信用できる医者に見せた結果、それが未知の病原体だとわかった 」
「病気…だと」
「 なに、驚く事じゃないさ。僕は世界中を旅していたんだ、どこで何をもらってもおかしくはない 」
「…その病気に治療法はあったのかい?」
「 治療法? フッ、いや?そんなものは存在しなかったよ。いや、それを見つけるよりも先に僕が死んでしまっただけか…。
判ったのは、その病気は他者に感染するものだってことだ。僕は早い段階で人里から離れた場所へと移動していたから、早めの判断が功を成したのか、僕以外の発病者は僕を診察していた医者の一人だけで済んでいた 」
僕の病の進行は、僕を診察していた医者の彼女と比べるまでもなく早かった。
僕の体は次第に動かなくなり、視覚嗅覚味覚までもが着実にその機能を鈍らせていく。
段々と食事も受け付けられない様になり一日の殆どを寝て過ごす。血を吐き出すようになり、身体も徐々に醜く変わっていった。
全身が痛む様になると寝る事もできず、だが痛みに耐えていると一日が終わる。そんな日々を僕は、陽光が入る事のない地下で過ごしていた。
病に臥せっている中、ジョットが僕宛に手紙を送っていたことは今初めて知った。発病が判明し人里から離れてすぐに地下へ潜ったために手紙を運ぶ伝鳥が僕の下まで来れなかったのだろう。
ジョット達からの質問攻めに凜弥は答えられる範囲で一つずつ答えていく。彼ら3人からの問い、それは日が傾き始めるまで続いたのだった。
未来編はこれで終わり!終わりったら終わり!