10代目雲の兄弟 霧雲の守護者になった者   作:白炉丸

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番外編 旅の中で
邂逅、跳ね馬 (前編)


 旅立ちから数ヶ月後。僕は今 イタリアに来ていた。

 

 

 綺麗な海と山に挟まれている港町。

 この街は前世で リーノと初めて出会った場所になる。

 予想通り、彼はキャバッローネファミリー初代ボスで、右腕のロミローアという女と共にボンゴレ本部に来ていたところを目にしたことがある。

 そしてボンゴレファミリーが初めて同盟を結んだファミリーでもある。

 

 ジョットとリーノは以外でもなんでもなく仲が良かった。

 右腕は右腕どうしでよく飲み交わしていたのを覚えてる。

 跳ね馬ディーノの究極のボス体質は遺伝なんだと知った。リーノの場合 ドジを自覚してたけど。

 

 

 

 

 

 

 

( ふうん…。ここ、まだ残ってたんだ )

 

 僕は 前世でリーノよって連れてこられた孤児院に来ていた。

 建物はところどころ補修されているものの、キレイな状態で当時の姿のまま残っていた。

 敷地内には数名の子供がおり、未だ孤児院としての役割を果たしているようだ。

 

 

( そういえば前世()に、手元であり余ってたお金をここに置いていったことがあったな )

 

 ブラッコに渡す予定で多めに換金したけど ブラッコがほとんど貰ってくれなくて邪魔だったんだよね。

 そのときは近くの隠し場所に空きがなかったから、知らないやつに渡るくらいならと、少なからず縁があったこの場所に投げることにしたんだったな。

 

 

 

 

 そう 凜弥が孤児院の前で考えていた時、

 

 

「こんなところで何してるんだ?」

 

 と、横から声をかけられた。

 顔だけで振り向くと、そこには数人の黒服を引き連れた 同い年くらいの金髪の男が凜弥を見ていた。

 

( ワオ、跳ね馬じゃないか。何故ここに。

 いや、ここは彼らのシマだ。彼らがどこに居ようとなんらおかしくはないか… )

 

 そう、そこに居たのは キャバッローネファミリー10代目ボス 跳ね馬ディーノだった。

 無表情のままの凜弥が気づかれないようにしながら チラッと彼の左腕に目をやると、腕にはすでに キャバッローネの刺青(タトゥー)が刻まれているのが見えた。

 

「ここらじゃ見かけない顔だな、どこから来た?」

 

 そう言ったディーノの口調はやや硬い。

 ディーノとその部下であろう男達はどこか険悪な様子で 凜弥を睨みつけている。

 

 

 凜弥は ディーノが何の理由もなく、今のように相手を威圧するような人物ではないと知っているので その行動を訝しく思う。

 

 

「 君は… 」

 

 凜弥がそう声を(はっ)しようとしたとき、

 

 

「──キャアァァァ!!」

 

 悲鳴のような声が孤児院の中から聞こえた。

 その声にディーノのその部下は、バッと、そらを振り向いた。

 

 

「 っ !! 」

 

「あ、待て!

 お前らは子供達を避難させろ!」

 

 

 凜弥はその悲鳴を耳にした途端、どうしようもない胸騒ぎを覚え 孤児院内へと駆け出した。

 それを見たディーノは部下達に命令を下すと、部下の言葉も無視し、すぐさま凜弥のあとを追い始めた。 

 

 

 

 

 

 

 

 孤児院内に入った二人が目にしたものは、茶色のシャツを着た黒髪の男が 孤児院の子供だと思われる男の子の首を掴み持ち上げているところだった。

 

 

「ウゼェーんだよ!どっか行け!!」

 

 男の周りを薄灰色の鳥が、時々男を(つつ)き、ガアガアと啼きながら飛び回っている。  

 見方によっては、鳥が男の子を守ろうとしているようにも見える。

 

 そんな自身の周りを飛んでいる鳥に対して、男は声を荒げながら持っているナイフを振り回していた。 

 だが、そのナイフが鳥に当たる気配は一向に無い。その鳥は男の死角を利用して、上手い具合に攻撃し、躱しを繰り返していた。

 

 しかしながら、男が鳥を斬ろうと動けば 捕らわれている男の子も振り回されるわけで、、男の子は眉をひそめ、歯を食いしばりながら 絞まる首に耐えていた。

 だがその目は、片方だけながらも閉じることなく薄く開き、自身を振り回している男の顔を ジッと睨みつけている。

 

 

 

「やめろ!!」

 

 ディーノが男に向かってそう叫んだ。

 

 

「チッ、このクソ(どり)がぁ!!」

 

 だか男がこちらを気にする様子はない。

 男は鳥を目で追い こちらに背を向けてはいるが、叫べば簡単に声が届く距離に立っている。なのにディーノの声は 男には聞こえていない。

 

 

「クソッ、こうなったら…」

 

 ディーノは腰に下げていた鞭を手に取り 男に向かって走り出した。

 

 

 だが…、

 

「うわ!」

 

 ディーノは盛大に、大きな音をたてながら顔面からすっ転んだ。

 

 

「ぐっ…。イッテェ~。 

 

 

 なにすんだよ!!」

 

 ディーノは片手で顔を押さえながら起き上がり、後ろに立っている凜弥に向かって声を荒げた。

 

 ディーノが走り出した瞬間に 凜弥がディーノの足に足をかけ、彼を盛大に転ばせたのだ。

 

 

「 君こそ、いったいどこを見てるんだい? 」

 

 凜弥は無表情でディーノを見ている。

 

「なっ、お前が足出して転ばせたんだろ!」

 

「 ……、ふうん、これが新たなキャバッローネのボスか……、拍子抜けするよ 」

 

 凜弥がディーノを見る目は冷たい。

 そんな視線を向けられたディーノはたじろぐ。

 

「なにをっ」

 

 ディーノは発しようとしていた言葉を止めた。

 いや、止めるしかなかった。

 それほどまでに、自身を見る凜弥の瞳が冷たかった。まるで お前に発言権はないとでも言うかのように。

 

 十代半ばのディーノは、ほんの1、2年前にボスの座についたばかりの ぺーぺーのぺー*1

 精神経過年齢が100を超え、その殆どをマフィアの守護者として そこにあった凜弥の気迫に、ディーノはまだ耐えられなかった。

 いつもそばにいて自分を叱咤する家庭教師のリボーンが今日に限って不在だったのもある。

 

 

 

「 そこ、見てみなよ 」

 

 凜弥がディーノを見ていたのはほんの数秒で、ディーノから視線を外した凜弥は、自分達が入って来た扉の向かって左側を顎で示した。ディーノからは置いてある机が邪魔で丁度見えない位置だ。

 

 捕らわれている男の子が気になりながらも、ディーノはその場から移動して示された場所を見る。

 

 

「!! 大丈夫か!」

 

 そこには、壁ぎわで修道服の女性が 血溜まりの中で倒れていた。

 その顔には生気がなく青白い。

 しかしまだ生きていた。

 駆け寄ったディーノは女性の腹にある刺し傷を脱いだ服で抑えつける。

 

 

(た、確かこれで良いんだったよな?大丈夫だよな?

 は、早く、早く誰か呼ばねぇと。早く!)

*1
未熟者




 
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