理珠と文乃の教育係を引き受けた後日、今日から学校の為、今までより少し早く出なければならないので少し憂鬱になっていた紅晴翔。
晴翔「さて、出ますか。テキスト作ってて寝不足だし、できることなら始業式寝たい。・・・あれ?」
苺香「紅さん!」
晴翔「桜ノ宮か。家この近くか?」
偶然苺香と出会った。
苺香「はい。紅さん、寝不足ですか?」
晴翔「あぁ、あいつらのテキスト作っててな。」
苺香「教育係って大変ですね。」
晴翔「まぁ、慣らせばどうともないんだろうけど。」
???「晴翔ー!」
晴翔「ん?・・・げふっ!」
苺香「く、紅さーん!」
二人の後ろから少女の声がした途端、晴翔は首にラリアットをされ、苺香は悲鳴を上げる。
???「ノート貸してー。」
プルプルと怒りをあらわにしている晴翔に対しテンション高めに話しかける少女。
晴翔「・・・ゴルァ!出会い頭ラリアットやめろっつってんだろ!武元うるか!」
彼女の名前は武元うるか。スポーツ面では天才的な運動力を有している晴翔と同い年の少女。結構フレンドリーで、男女問わず友人が多い。しかし、勉強面は著しくひどい。
うるか「いやぁゴメンゴメン。あたし今日部活の自主練あってさぁ。てなわけで、今日の提出の宿題ヤバいんすわぁ。晴翔ならとっくに終わらせちゃってるよね?」
晴翔「うぐっ。」
うるか「はよ見して、写させて。てかよこせ。」
晴翔「同中とはいえ無遠慮ここに極まれり。お前なぁ、たまには自分でやってみろよ。」
うるか「わぁーん!頼むよ見せてくれよー!勉強嫌いなんだよー!」
晴翔「身もフタもねぇなぁおい・・・」
苺香「おなちゅう?」
どうやら苺香には意味が理解できなかったようだ。
奏多「同じ中学の略称。こいつと武元は同じ中学なんだよ。ついでに、俺もな。」
そこにちょうど晴翔を迎えに来た奏多と会う。
晴翔「あ、おはよう奏多。」
奏多「おう、にしてもどういう状況だこれ?」
晴翔「いつものだよ。」
奏多「それはわかるけど、こっちは?」
晴翔「最近、スティーレで働き出した子。同い年だよ。」
奏多「ほーん。」
苺香「さ、桜ノ宮苺香です。」
奏多「花坂奏多だ。まぁよろしく。」
二人が自己紹介をしあっている中、晴翔はうるかにノートを渡していた。
うるか「イェーイ!さっすが晴翔!心の友ぅ!」
晴翔「見るのはいいけど丸写しすんなよ?」
うるか「うんっ!ソッコーカンペキに写して返すからねっ!さんきう晴翔!」
晴翔「お前ホントにわかってんだろーな!?」
うるかは全力で走りながら学校へ行った。この二人のやりとりを見て奏多は少し呆れていた。
奏多「(武元は相変わらずだな。)」
始業式が終わり、晴翔は学園長に定期報告をしに行った。
晴翔「今回の、定期報告は以上です。緒方も古橋も、着実に成績を伸ばし始めてるところでして。」
学園長「なるほど。報告ありがとう。」
あながちウソではない。確かに少しずつだが点数が上がっている。
学園長「時に紅君。」
晴翔「はい。」
学園長「君は現在バトスピで5連覇しているチャンピオン。そして、最近3Dバトルシステムが導入されているそうじゃないか。」
晴翔「あーそういえばそんなこと言ってましたね。」
学園長「そこでだ、この学園のグラウンドにも、そのシステムを使用しているマシンを導入しようと思うのだが・・・」
晴翔「俺は構いませんけど、他の生徒はどうなんですか?」
学園長「そこに関しては既に投票をしていたのだが、導入して欲しいという意見が多かったね。」
意外にも、この学校でバトスピをしている生徒が多いことに少し驚いた晴翔だった。因みに晴翔が5連覇をしている事を知っており、それがきっかけで始めた人が多いことは晴翔は気づいていない。
晴翔「ならいいと思いますけど。」
しかしこれは言い換えれば学校でバトスピを堂々とできるということである。そこには晴翔も少しは興味をもった。
学園長「それともう一つ、武元うるか君とは、中学校時代からの友人らしいね。」
晴翔「はい。そうですけど、それが何か?」
学園長「圧倒的・天才的な運動神経有するスポーツ特待生にして、あまねく大会の自由形で優勝をかっさらう水泳部期待の星であり、学園の至宝通称【白銀の漆黒人形姫】」
学園長「しかし、学業の方はからっきし。」
そう。彼女は体育以外の科目がからっきしで他の教師も少し参っていたようだ。
学園長「本人は推薦を希望しているが、いやはやそれもどうなることか。」
晴翔は顔を青ざめる。これは嫌な予感しかしないと。
学園長「時に紅君。教育係、もう一人頼みたい子がいるんだけど・・・」
晴翔「絶対にI⭐︎Y⭐︎Aです。」
場所が変わって学校のプール。少しいつもよりやつれていた晴翔がいた。
晴翔「(って言いたかったけど、結局受けちまった。まぁ、こいつの勉強のできなさは流石に目に余るものがあるしなぁ。)」
プールの1レーンでうるかが練習をしていた。25mをとてつもないスピードで泳いでいた。
晴翔「(中学時代からすごかったけど、前よりも速くなってんなぁ。さすが未来のオリンピック候補。)」
泳ぎ終わるとゴーグルを外し、晴翔がいるのに気づいた。
うるか「あれーっ晴翔じゃん!何々覗きに来たわけ?もー、エロいなぁー!」
晴翔「ちげぇわ!ポーズ取んなくていいんだよ!ちょっと話があってな。」
プールから上がって来たうるかに晴翔は事情を話した。
うるか「晴翔があたしの教育係?」
晴翔「お前スポーツ推薦で音羽大学受けるんだってな。」
うるか「えー、何で知ってんの?スポーツ推薦なら勉強しなくていいもんね!」
晴翔「あそこ今年から文武両道推奨とやらで、大会の成績プラス、英語も試験内容に入ったのは知ってるか?」
それを聞いた瞬間、うるかは顔を青ざめフリーズした。すると突然ガクガクと震え始めた。
うるか「じゃあやめる。」
晴翔「テキトーかいオメーの人生。生憎こっちはすでに(強制的に)OKしちまったからなぁ。お前には是が非でも勉強してもらう!」
うるか「えーーーん!!勉強やだーー!!」
プールサイドを走ってはいけないのだが、そんなのはお構いなしで追いかけっこが始まった。
晴翔「待てやコラァ。」
しかし、流石の晴翔も体育の天才には勝てないようで。
晴翔「ちょっ、待て、ホントに・・・あっ」
バテ始めた晴翔は足を滑らせプールに落ちた。
うるか「ギャーー!晴翔ーー!」
すぐにうるかが助けにいったので、事が大きくはならなかった。
晴翔「悪い・・・」
うるか「もう、プールサイド走るからだよー。あたしも人のこと言えないけど。」
晴翔「それはそれとして武元。」
うるか「?」
きょとんとするうるかだったが、左手首を晴翔は掴んでいた。不幸中の幸いか、捕まえたのだ。
晴翔「捕まえたぞ。」
うるか「ウギャー!ヒキョーモノー!」
そこに文乃と理珠が訪れる。
文乃「あっ、いたいた。紅君ここだって学園長が・・・」
そこで見たのは、自分達の教育係が水泳部の女子を押し倒している状況だった。
晴翔「ククク。もう放さんぞ。」
うるか「やだー!はなせー!」
晴翔「バカめ抵抗しても無駄だ!これからたっぷり身をもって教育を・・・」
文乃「紅君!ダメェーーー!!」
止める為か文乃は消化器で晴翔の頭をどついた。
晴翔「げばぶっ!いってぇ!古橋てめぇ何しやがんだ!」
文乃「こここ、コッチのセリフだよー!」
理珠「最低・・・」
完全にドン引きした理珠。ゴミを見るような目つきだった。
晴翔「おわっ、汚物を見る目!?お前らなんか誤解してんだろ!」
理珠「別に。なんにせよ、私には1ピコメートルも関係ありませんから。」
うるか「あれ?うちの天才二人組じゃん!晴翔と知り合いなん?」
文乃「あ、えーっと。」
理珠「実は・・・」
二人はうるかに経緯を話した。
うるか「なるほど。天才にも苦手なもんがあるんだねー。いがーい。」
文乃「えへへ。紅君が一生懸命教育係をしてくれて、助かってます。」
うるか「ふーん・・・」
少し考える様子をしたうるかは、突然二人の肩を取り、自分に寄せる。
うるか「じゃあ仲間じゃん!あたしも今日から晴翔に、教育係、してもらうことになったから!」
文乃「わーっ!一緒だね!」
先程まで泳いでいた為、少ししぶきが出てくる。
理珠「あの、しぶきが・・・というか近いです。」
晴翔「はぁぁ!?武元お前なんで急にやる気に!?さっきまでの全力渋りはなんだったの!?」
うるか「まーまーいいじゃん。カタイ事は!」
女子三人組が盛り上がっている中、晴翔は不思議そうに見ていた。
晴翔「(なんなんだよもう・・・なんで古橋と緒方が来た途端に。意味がわかんねぇ。まぁ、どっちにしろ結果オーライってことでいっか。バイトも今日は休みだし、勉強はオフにするか・・・もう新しい構築済みデッキ発売してるだろうし、買ってから帰って寝よ)」
学校の帰り道、うるかは晴翔にかりていた1冊のノートを見て、中学時代を思い出す。
うるか『ねーねー紅!ノート写させてよー。』
晴翔『またか?武元。しゃーねぇな・・・丸写しはすんなよ。』
うるか『やったー。』
中学生の時からたまに晴翔にノートを貸りては丸写しをしていたうるか。その時はまだ便利な人くらいにしか思ってなかった。
うるか『へへ〜紅っていつもなんだかんだノート見せてくれるし、便利な奴!写し終わったら後は返すだけってね〜』
階段を上がり、晴翔にノートを返そうとしたところ、晴翔と奏多が話しているところに出くわした。
奏多『なぁ晴翔。お前いつも武元にノート写させてるけど、なんでだ?晴翔にメリット全然ないだろ?』
晴翔『いやー、流石に誰彼構わず見せるってわけじゃないよ?』
奏多『じゃあなんで?』
少し頬をかいて恥ずかしそうにしていた晴翔だったが、口を開くと。
晴翔『強いて言うなら・・・ただのお節介。』
奏多『はぁ?』
晴翔『だって武元、遊びも勉強も色んなもの犠牲にして、必死で水泳頑張ってるし。それを知ってる身としてはさ、ほったらかしはマズいかなぁって。』
本人なりに彼女がやりたい事を頑張っていることを知っている為、どうにも放っておけないという気持ちがあった。この頃にはもう、お人好しの性格があったようだ。
奏多『なるほどいつものやつか。お前ホントに詐欺に引っかかんなよ?』
晴翔『何度も言ってるけど引っかからないって!・・・多分。』
奏多『そこは言い切れや・・・』
その会話を偶然聞いたうるかは顔を真っ赤にしていた。
うるか「(晴翔が誰にでも一生懸命なのは知ってる。だったらせめて・・・!)一番!あたしに一生懸命にさせてやるんだから!」
因みに、晴翔にノートを貸りようと話しかける今朝は、自然に自然にと言い聞かせていたらしい。
結論、武元うるかは結構な乙女である。
次回はいよいよ3Dバトルに入るまでを書こうと思います。それでは、また!