苺香「か、勝ちました!」
バトルが終了し、勝利したことで苺香は喜びを見せたが、夏帆がすぐに近づく。
夏帆「あ、えっと、苺香ちゃん・・・一応、キャラ演じないと・・・」
苺香「え?」
「あ、ありがとうございました。」
苺香「はい!ありがとうございました。二度とお帰りにならないでくださいね!」
しれっと帰って来んなと発言できる苺香を見て、スタッフ全員は素質あるなと考えたのだった。
晴翔「・・・マジでドSの才能あるよ?お前。」
苺香「?」
なんだとわからない顔をしている苺香。本当に天然でやっているようだ。
晴翔「・・・と、そうだった。お前ら、テキストどうだ?」
自然と苺香のバトルを観戦していた文乃と理珠。晴翔の問いに一瞬フリーズし、プルプルと震え始めた。そしてテキストを見ると・・・全く解かれておらず、白紙だった。
二人『・・・全然分かりません!』
晴翔「え・・・えぇ〜・・・」
さすがの晴翔もこれには戸惑っていた。
理珠「これは問題が間違えています!【登場人物の心情を捉えろ】なんて、化学では解明されていない脳の全構造を解けと言っているようなものです!」
膨れっ面になりながら、少しズレた言い訳をする理珠。
晴翔「(な、何と理的な言い訳)・・・ん?」
文乃「イヤァァァ!見ないでぇ!数式見ると頭真っ白になっちゃうダメダメな私を見ないでぇ!・・・どうせ私は、虫けらにも満たない下賤の輩・・・」
文乃はというと、とてもネガティブになりながら縮こまっていた。
晴翔「(コッチはネガティブになりすぎ・・・)」
一つため息を吐いた晴翔は、どれだけ楽観視していたかを本当に後悔した。だが、それ以上に気になっていることがある。
晴翔「・・・なぁ。一つ聞いていいか?」
二人『?』
晴翔「言っちゃ悪いけど、このままじゃ自分の目指す将来にはいけない。はっきりいうと、今までの先生の言う通り進路を変えるのが正解だと思う。それでも進路を変えないって事は、明確なやりたい事があるって事でいいんだな?」
キッパリと現実を告げ、その上で二人に尋ねる。それに対し、二人は黙り込む。
二人『・・・』
文乃「うん。」
理珠「そうです」
肯定の返事に、晴翔は少しほっとした。
晴翔「・・・そっか。なのに先生には全然理解してもらえない。それどころか自分のやりたい事を他人が決めた才能で潰そうとしている。」
理珠「バカにしてるんですか!?」
晴翔「・・・そういうの、悔しいよな。」
理珠「え?」
晴翔「言われっぱなしじゃ、いられないよな?」
文乃「どういう事?」
晴翔「簡単だよ。証明すればいいんだ。自分達は才能なんかに頼らない。自分の決めた道を行くんだって。」
文乃「え?」
晴翔「いやぁ、お恥ずかしいことに、俺も昔は全っ然何をやってもダメダメでさぁ。いくら頑張っても全然上手くできないし・・・だからまぁ、お前らのできない悔しさっつーの?それはよくわかる。」
できない事を必死で頑張っても全く結果に出なかった経験がある晴翔。だからこそ、二人の考えを肯定した。
晴翔「いくら天才だって讃えられても、自分のやりたい事ができないんじゃ、それげ幸せだなんていえないからな。だから・・・」
次の瞬間、晴翔はとんでもない発言を繰り出す。
晴翔「お前らの事・・・幸せにして見せるから、俺を信じて付き合ってくれ!」
理珠は完全に軽蔑し、文乃は顔を赤くし口をパクパク言わせている。
晴翔「あれ?」
麻冬「晴翔・・・あなた完全に言葉間違えてるわよ。」
頭を抱えていた麻冬。そう、間違えたのだ。晴翔は「自分がやりたい事をやろう。その為なら協力する」という意味でいったつもりだったのだが、これは完全に告白と取られてもおかしくない。
文乃「えぇっ!?二人同時に愛の告白!?」
理珠「最低です。そこまで節操のない人だとは思いませんでした!」
二人の言葉でようやく晴翔はやらかした事に気づいた。
晴翔「はぁ!?違う違う!進路希望を変えずにこれから一緒に頑張ろうぜって意味で!ひとまずここで基礎をある程度勉強を・・・!」
文乃「な、なんだ・・・」
理珠「そういう事でしたか。」
文乃「あの、でも・・・」
二人『あ、ありがとう。』
少し顔を赤くしながらお礼を言う二人。晴翔はそれを見て少し顔を赤くした。晴翔はその後休憩をもらい、その時間で二人に勉強を教えていた。
晴翔「(とりあえずは二人にある程度基礎問題をやらせてる内に、課題の見直しとかやっとくか。VIP推薦抜きにしても、人に勉強教えて点数が下がりましたとか、目も当てられないから・・・)!?」
うとうとしていた文乃は晴翔の肩にもたれかかった。
晴翔「うわぁぁ!古橋!?」
文乃「あぁっ!ごめんね紅君。数式見てるとどうしても眠くなって・・・」
晴翔「お、おう。(すっげぇいい匂いしたすっげぇいい匂いした!・・・落ち着け紅晴翔。この程度で心惑わされてどうする)」
ここまで女性と急接近したことがない晴翔は少し戸惑っていた。
理珠「紅さん。」
晴翔「はい!?」
理珠「すいません。この設問の意味がわからないのですが。」
晴翔「ん?ど、どこだ緒方。」
理珠「ですからこの問2の・・・」
テキストをもちながら晴翔と距離を詰める理珠だが、近づき過ぎると当然、当たるものがあったりするわけで。
晴翔「だぁー!それは傍線部と同じ意味の文章を、次の選択肢から選べって意味だと思います!(絶対今当たった絶対今当たった!)」
晴翔はすぐに距離をとった。
文乃「あれ?紅君なんだか顔色悪いけど、大丈夫?」
晴翔「え?そ、そうか?」
文乃「熱でもあるんじゃない?」
心配そうな表情で顔を近づける文乃。
晴翔「(近い近い近い)」
対して晴翔は少し後ずさる。
理珠「確かに少しおかしいような・・・」
同じく理珠も不思議そうに顔を近づける。
晴翔「(だから近いっての!)」
二人が顔を近づける為、晴翔は机に突っ伏せた。
晴翔「(こいつらの教育係・・・想像以上に精神的ハードル高ぇ・・・)」
教育係を受けた事を色んな意味で後悔した晴翔だった。
晴翔のバイトの時間が終了し、更衣室から出てきたときには理珠の姿がなかった。
晴翔「あれ?緒方は?」
文乃「あ、りっちゃん。今日はお店の手伝いの日なんだよ。」
晴翔「お店?バイトでもしてんのか?」
文乃「ううん。りっちゃんのお家って、うどん屋さんなの。」
晴翔「そういうこと。(よくよく考えてみたら、俺こいつらが一部において天才だってこと意外全然知らねぇな。)」
帰っている中、文乃は2点のテスト用紙を見て、申し訳なさそうな顔をしていた。
文乃「こんなに付き合ってもらったのに、虫けら以下で本当にごめんね。」
晴翔「いや、まぁ、初めからできちまうより、伸び代がたっぷりあっていいよ。うん。」
苦い表情で、苦し紛れを言う晴翔。
文乃「そうだよね!紅君っていい事言う!」
晴翔「立ち直り早いね、君。」
文乃「よーし!頑張るぞー!」
晴翔「はいはい。」
文乃がついてこないのが気になった晴翔が振り向くと、文乃は空を見上げていた。
晴翔「どうかしたのか?」
文乃「あ、ごめんね!なんでもないの!」
晴翔「そうか?」
再び歩き出す晴翔だが、振り向くとまた文乃は空を見上げていた。そこから晴翔は一つの答えを見出す。
晴翔「星、好きなんだな。」
文乃「えへへ、実は・・・うん。好きなんだ、星。小さい頃からずっと。星が綺麗な夜だとついつい、死んじゃったお母さんの星、探しちゃうんだよね。」
それを聞き、少し晴翔は驚く。
文乃「ごめんね、何アホな事言ってんだって感じだよね。でも、それが夢のきっかけっていうか、その・・・私は星に関わって生きたい。その為には、理系の試験を通らなきゃなんだけど、私はどんな苦手な事だって克服して、天文学を本格的に学ぶんだ。」
生き生きと語る文乃。晴翔は少し安堵した顔を見せた。
晴翔「そっか・・・見つかるといいな。お母さんの星。」
文乃「く、紅君・・・わぁぁ!やっぱり変だよね!忘れて忘れて!高校生にもなってそんな子供みたいなこと・・・」
晴翔「別にいいと思うけどな。どんなきっかけだろうと、やりたい事があるのは普通にいい事だと思うぞ。」
文乃「あ、ありがとう・・・でもホントに本気でそういうの信じてるわけじゃないからね!」
晴翔「わかったわかった。じゃあ残り約2年間頑張らないとな。乗り掛かった船だし、俺も出来る限り協力する。」
それを聞き、文乃は晴翔に近づき、晴翔を見上げた。
文乃「今の、言質とったからね!」
その行動に晴翔は顔を赤くした。
晴翔「(・・・と言っても、まずはあの数式見るとってヤツをなんとかしないとな。そこを改善しない限りは進展はしないし。あと緒方は、情景と心情を読み解くのが苦手だからまずはそこからある程度・・・)って緒方!?」
理珠「紅さん。」
夜の公園で一人座っていた理珠を見つけた晴翔。流石に気になり声をかけた。
晴翔「何やってんだお前、こんな時間に公園で。」
理珠「出前帰りの息抜きですが?」
よくよく見ると椅子の隣におかもちを置いていたことで察した。
晴翔「出前帰り?(そういや、うどん屋っつってたな。)息抜きってバトスピ じゃんか。」
理珠「はい。ある程度形が整ったので、試していた所です。・・・1人回しで。」
晴翔「(悲しすぎんだろ!)」
理珠「実は私、バトスピやカードゲームのようなアナログゲームが好きなのですが、あまり周りで嗜む人がいませんので。」
晴翔「なるほど。ちょうど俺、デッキ持ってきてるし、相手しようか?」
理珠「紅さん。私に勝つおつもりですか?」
晴翔「(おおっ!何という自身に溢れた発言。こいつは厳しい戦いになりそうだ・・・)」
と、思っていたのだが・・・
晴翔「さ、サジットヴルムノヴァでアタック・・・」
理珠「ライフで・・・受けます。」
意外にも、晴翔は完封したのである。
晴翔「(え?20戦やったけど・・・俺全勝しちゃった。しかもほぼ同じ勝ち方で・・・)ええと、緒方。お前ってもしかして・・・すこぶる弱い?」
理珠「うぅ〜!はい、とても。ですので先程私に勝つおつもりですか?と。」
晴翔「アレそっちの意味だったの?」
どうやら、意味合いが違ったらしい。
理珠「どうやら私は、確率や計算だけでは導き出せないもの・・・対戦ゲームなど、人の感情が関与するものが苦手なようで、人とゲームで対戦するとどうしても勝てません。」
晴翔「(あぁ・・・どおりで。)」
理珠「人の感情をもっと理解できれば、こんな私でもゲームで勝てるようになるのではと。」
理珠「その為に文系の試験を乗り越え、心理学を学びたいのです。」
晴翔「・・・ふふっ」
理珠「何故笑っているのでしょう?」
晴翔「いや、安心してな。そんなに本気なら、こっちも教えがいがあるし。」
理珠「紅さん・・・」
晴翔「ただなぁ、こんな時間に一人で公園に居座るとかはやめとけよ?こういう息抜きだったら、俺がいつでも付き合うからさ。中学生の従妹がいる身としてはほっとけないし。」
今回の居座りは流石に見過ごすわけにはいかず、少し注意する感じで話す。
理珠「いつでも?」
晴翔「いや、いつでもは流石に言葉の綾っていうか・・・」
理珠「いいえ。たまにしてくれるだけで、嬉しいです。よろしくお願いします。」
晴翔「お、おう。よろしくお願いします。」
先程の態度とは打って変わって、しおらしくなっていた理珠に、晴翔は戸惑った。そんなこんなで、ようやく自宅に着く。
晴翔「ただいま・・・って、誰もいるわけがないっての。」
???「いるわよ?」
両親は海外仕事の為、滅多に帰ってこない。だが、家から人の声を聞いた晴翔はリビングに向かうと、白衣を椅子にかけて当たり前のようにご飯を食べている少女がいた。
晴翔「・・・いや、なんでいんの?『セキ』」
紗和子「いいじゃない。別に今更でしょ?」
彼女の名前は、関城紗和子。晴翔と同い年で、一ノ瀬学園に通っている秀才だ。二人は小学生の頃に知り合い、彼女の家が晴翔の家の向かいだった為、彼女に晴翔の両親が合鍵を渡し、今は自由に出入りできるからかよく晴翔の家に遊びに来ている。
因みにこの二人は『セキ』『ハル』と呼び合うほど、晴翔とは奏多と同じくらいの古い友人だ。
紗和子「それにしても今日遅かったじゃない、ハル。バイト?」
晴翔「バイトもあったけど、なんか面倒な頼みごとされちゃってさぁ。」
あくまで教育係の事は言わない。
紗和子「そ。ご飯あるから置いとくわ。もう両親帰ってくると思うから帰るわね。」
晴翔「なんかしれっと晩ご飯作ってるし。」
紗和子「ついでよ。どうせ私も食べるんだし、ハルの家だもの。二人分くらい余裕だし。」
晴翔「セキ・・・」
感慨深くなった・・・のではなく、スティーレで考えが違えたのか、これはツンデレではと考えた晴翔。
晴翔「お前スティーレでバイトしてみない?第二のツンデレキャラで店長に勧めるぞ?」
紗和子「ケンカ売ってんのあんた。そもそも科学部入ってるのに、バイトなんてできないわよ。」
晴翔「あー、そうだったな。」
紗和子「じゃあホントに帰るわね。」
晴翔「ん。」
紗和子が帰ると晴翔は今日の事を思い出す。
ディーノ『晴翔君は誰にでも優しいデスね。』
優しい・・・それを聞いた晴翔は瞬間暗くなったが、すぐに戻った。晴翔はどうやら自分はそのつもりがないらしい。
晴翔「店長・・・それ全然違いますよ。俺はただ、やるべきことをやっているだけ。」
先程のフレンドリーな感じは消えて、暗い雰囲気が出てくる。
晴翔「変わらないとって・・・考えてるんだけどなぁ。難しいや。」
誰もいないリビングで、晴翔は一人呟いた。
今回は少し長めにしました。後ほど現在出てきているぼく勉sideの紹介もあげます。それでは、また!