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舞台設定は教室。時間設定は12月23日、終業式の放課後。舞台中ほどに机の列、下手が黒板のつもり/*変更化?*/。
ざわざわしている教室。/*最新の流行Xmasソング*/が流れている。/*照明は上手前方のみを照らしておく。*/アカリは席に座ってだるそうにスマホを弄っている。
ざわつき、FO。アカリ、突然立ち上がって舞台前方へ。
アカリ 12月23日、終業式の日。教室のあちこちから「あーやっと学校が終わったぜ、今日から冬休みだ!」とか、「冬休みは全部部活に捧げるの。大会が近くてね」だとか、色んな話題が聞こえてきます。けど、その中で一際目立つのが・・・聞こえましたか。/*アーティスト名*/の/*曲名*/! そう、なんていったってクリスマス! クラス中が「えーっ、○○さん彼氏いたの!?」「俺、クリスマス予定あるんで」、そんな青春の恋愛話が溢れかえる! ・・・っていうのに、あのクズ男は二股しやがったし、だったらクリスマスはサエコとディズニーでも行こうかなって思ったらサエコはサエコで「彼氏いるからー」って! あーもう最悪!
二人 どうして彼氏がいないんだー!
舞台下手の照明、CI。二人は顔を見合わせる。
ユミ ・・・えっ? あっ。
ユミ、机に駆け、帰り支度をする。
アカリ ・・・二組の人?
アカリ、上手よりハケる。そのまますぐに下手より登場。//ここで教室が変わる
アカリ ねえ。
ユミ、一旦帰り支度の手を止めるが、すぐに再開する。
アカリ ちょっとあんた。さっき
ユミ 人違いだと思いますよ。
アカリ ・・・いや、人違いなわけ
ユミ で、ではさようなら!
ユミ、鞄を背負おうとする。机上から本が落ちる。
ユミ あ。
アカリ へへーん、ゲット! えっと・・・「クリスマス・キャロル」? なんか難しそうな本だね。はい。
ユミ あ、ありがとうございます。
アカリ ねえ、あんた名前なんていうの?
ユミ ・・・倉木由実です。
アカリ そ、あたしは三組の橋本明里。アカリでいいよ。よろしく。
ユミ よ、よろしくお願いします。
アカリ、椅子に座る。ユミ、そのまま帰ろうかと一瞬悩むが同じく椅子に座る。
アカリ さっきの本、外国の小説? 面白いの?
ユミ はい。チャールズ・ディケンズのクリスマス・キャロルっていう小説です。スクルージって守銭奴な商人が過去・現在・未来の精霊と出会って改心する、って話なんです。
アカリ ふーん。あたし本とか全然読まないからな。ドラマくらい。ねえ、ドラマとか見ないの?
ユミ いえ、あまり。テレビはあまり見ません。しいていうならニュースくらいですね。
アカリ そう。あたしはね、最近だと「君の瞳に恋してる」とか見てるよ。中原くんがかっこいいのよ。わかるでしょ? 中原くん。
ユミ えっと・・・ミュージシャンの方、でしたっけ?
アカリ そそ、ライブロックのボーカル。なんだけどかっこよすぎて、ドラマからオファーがかかって俳優デビューしたの。演技も上手くてさあ。もう最高だよね。
ユミ そうなんですか。芸能界には疎くて、あまりわかりませんが。
アカリ えーもったいない。音楽とか聴かないの?
ユミ 聴きますよ。最近はマライア・キャリーの「All I Want For Christmas Is You」とか。クリスマスなので。
うっすらFI、FO。
アカリ おーるあい・・・洋楽?
ユミ はい。
アカリ そっか、洋楽は聴かないな。
話題が途切れる。ユミが席を立とうとしたところで、思い出したかのように呼び止める。
アカリ そうだ、さっきユミ、「どうして彼氏がいないんだー」って叫んでたじゃん。彼氏いないの?
ユミ だから、人違いじゃ。
アカリ そんなわけないじゃん。目も合ったんだしさ。
ユミ アカリさんも叫んでたじゃないですか。
アカリ そうだよ、あたしも一緒。クリスマスなのに今彼氏いなくてさー。私たち同類じゃん?
ユミ そ、そうかもしれませんね。
アカリ いやー、本当は二週間前まで彼氏いたんだけどさ。ユウトのやつ、あ、大学生なんだけど。あいつ「俺にはお前しかいない。愛してるぞ、アカリ」とかなんとか言ってさ。
アカリが自分の世界に入っているのを察し、ユミはそっと逃げ出そうとする。
アカリ そりゃあもうかっこよかったんだけど、なんと浮気してやがったのよ。「もうお前のことしか見ないから、許してくれ」とか言ってくるもんだから「ふざけんのもいい加減にしろよ!」ってその場で別れてやったのよ。そしたら「お前みたいなつまんねーやつなんか願い下げだ」とか・・・聞いてる?
ユミ、ふざけんのも、で足を止める。
ユミ、振り返って無言で頷く。アカリは満足げに、
アカリ もうそのときの情けなさったら・・・
ミヤタ 何事なの!?
上手から大急ぎでミヤタ登場。
アカリ ゲッ、ミヤタ!
ミヤタ あら橋本さん。教師を呼び捨てにするとはいい度胸じゃないの。
アカリ いやいや、どうしたのミヤタ先生。
ミヤタ どうしたって、さっきあなたの怒声が・・・あら?
ミヤタ、アカリとユミを交互に見つめる。
ミヤタ なんだ、別に喧嘩してるわけじゃないのね。なら良かった。
アカリ あー、それはあたしが彼氏をフった話をしてただけで・・・そだ、先生って彼氏とかいるの?
ミヤタ 教師のプライベートは秘密ですよ。
アカリ なーんだ、いないんじゃん。
ミヤタ そんなことより! 橋本さんと倉木とは珍しい組み合わせね。どうしたのいったい。
アカリ んーなんというか、さっきたまたま知り合って?
ミヤタ そう。広い交友関係はいいことよ。それじゃあ、早いうちに帰るのよ。
ミヤタ、上手から廊下へ出る。
アカリ ふぅ、いきなりびっくりしたじゃん。
ユミ そうですね。まさかいきなり先生が駆け込んでくるなんて。
アカリ 本当それな。にしても、彼氏がいないクリスマスかあ。なんか、せっかくの冬が台無しって気分? ね、思わない?
ミヤタ、「彼氏」という言葉に反応して扉越しに盗み聞きしようとする。アカリの言葉に頷く。
ユミ 台無し、ですか。それはまた、どうしてですか?
アカリ え、思わないんだ。あたしさ、クリスマスに彼氏がいないなんての五年ぶりくらいでさ、こんな青春真っ盛りの時期に予定のないクリスマスがあるなんてぶっちゃけ思ってなかったからさー。
ミヤタ、アカリの言葉に驚いたり悲しんだりを繰り返す。
アカリ だから、なんかその。心が空っぽっての? 虚しいとか、寂しいとか、悔しいとか、そんな感じ。青春できない、ってだけで憂鬱になってこんな冬、冬じゃない! って思うの。
ユミ 空っぽですか。私の冬は一人で過ごすか、家族と過ごすが常でしたから、その気持ちはしっくり来ませんが・・・。さっき叫んだのも周囲の話題に押し潰されそうでセンチメンタルになっただけですし!
しばらくの間。
アカリ ふーん。ねえ、さっきから思ってたけどさ、ユミ、あんたなんていうか陰キャ・・・というより、根暗だよね。なんかこう、もっとモテたいーだとか、好きな人がーとかないの?
ユミ なんでもいいじゃないですか。私にとってはそれがちょうどいいんです。
アカリ そ。まあいいんじゃない? あたしはもっと人と関わった方が絶対人生楽しいと思うけどな。あたしそろそろ帰るわ。これ以上ここにいても貴重な冬休みを無駄にしちゃうだけだし。
ユミ ・・・そうですね。それがいいと思います。さようなら、アカリさん。
アカリ ん。じゃあね。
アカリ、鞄を持って教室を出ようとする。ミヤタ、アカリが出る直前に扉を開ける。
ミヤタ ちょっと待った!
アカリ ゲッ、ミヤタ! なに、盗み聞き?
ミヤタ だから先生を呼び捨ては・・・まあいいや。これで全て納得がいったわ。
ユミ 納得?
ミヤタ さっき聞こえてきた「どうして彼氏がいないんだー!」って叫びのことよ。あれ、あなたたちだったのね。
ユミとアカリ、とっさに目を逸らす。
ミヤタ そして、さっきまでの話を聞いてその理由も何となくわかりました。
アカリ やっぱり盗み聞きしてたんじゃん。
ミヤタ 否定はしてないでしょ。
ミヤタは舞台下手(黒板の前)に立つ。二人はつられて着席する。
ミヤタ 特別講義を始めます。さて、話を聞くに橋本さんは最近彼氏と別れた。倉木さんは特に彼氏はいない。ってところ? それぞれ二人とも別の思いを抱いているけど、共通している点がある。それはこのクリスマスに一人だってこと。ここまではOK?
アカリ んー、まあ。
ユミ ・・・はい。
ミヤタ (満足そうに頷いて)なんであなたたちがぼっちなのか、それは一件別の理由があるように見えてどっちも似ていることなのよ。
ユミ 似ている、というと?
ミヤタ 二人とも、他人への興味が薄いのよ。
ユミ 他人への・・・
アカリ 興味? でも先生、あたし別に人と関わってないわけじゃなくない?
ミヤタ そうね、橋本さんは人と関わってないわけじゃないわ。でも興味は薄いのよ。
アカリ ・・・どういうこと?
ミヤタ 橋本さんはね、人とは関わってるんだけどそれが一方的なのよ。他人の話す機会を奪ってまで一方的に自分の事を語ってる、なんて言われないかしら?
アカリ 一方的に・・・ユウト、あたしのことつまんねーやつって・・・。
アカリ、スマホを取り出してこれまでの人とのやり取りをさかのぼる。
ミヤタ 倉木さんはもっとわかりやすいかな。他人と関わったり仲良くなろうとするのが苦手でしょ?
ユミ そう・・・ですね。
ミヤタ もちろん無理に、とは言わないわ。けれど、人と関わることは大切よ。同性と上手く関われないようじゃ異性なんて夢のまた夢だもの。
ユミ 人と関わる・・・ですか。でも私、そんな仲良くなれる相手なんて・・・。
ミヤタ あら、いるじゃない。
メッセージの履歴からその現実を受け止めたアカリはうなだれる。ミヤタはその肩を叩いた。
ミヤタ 橋本さんなら仲良くしてくれるわよ。
しばしの沈黙、見つめあう。
ユミ ・・・えっと、その、アカリさん。よければこれからも仲良くしてくださいませんか?
アカリ うん、もちろん!
ユミ それで、よければ私に色々教えてください。流行の曲とか、テレビ番組とか・・・わからないままじゃ嫌なので。
アカリ わかった! じゃああたしも教えるから、ユミもさ、好きなものとか、もっともっと教えて!
ユミ もちろんです!
ミヤタ よし、じゃあもうとっとと帰った帰った。もう日も沈んでる。
アカリ うわっ、もう真っ暗じゃん! じゃあね、ミヤタ先生。行こ、ユミ!
ユミ はい! さようなら、先生。
二人、鞄を持って上手からハケ。
ミヤタ ・・・一件落着、か。さーて、じゃあ私も仕事の続きに戻りますか。
ミヤタ、下手の入り口まで移動し、扉を引く。
ミヤタ 私も来年は楽しいクリスマスにしようっと。
ミヤタ、部屋の電気を消す。照明CO。引き戸を閉めるSE。 終