ユキアンのネタ倉庫 ハイスクールD×D   作:ユキアン

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ハイスクールD×D 歩き始めた男 2

アーシアと別れてから、オレは世界を放浪した。フリーのジャーナリストと身分を偽り、紛争地帯や貧困地域でボランティア活動を行っていった。こういう場所には弱者を食い物にする奴らが多いからな。そういうことをしていると世界の裏側がよく見えるのだ。

 

この世界には比喩でもなんでもなく、悪魔や天使が存在する。というか、オカルト全般がごちゃまぜで存在する。中には人間を食い物としか考えていない下衆な存在もだ。そういう奴らから人々を守るために、この身体は便利なのだ。

 

無論、話が分かる相手もいる。そういう相手と情報交換することで互いに便宜を図ることができる。特に紛争地域で出会う天使たちとは人々を安全に逃がせるルートとか、オレが囮を有効に行える時間や場所なんかだな。それとは別に世間話なんかもな。だが、その世間話でおかしな話が聞けた。

 

「アーシアが魔女扱いで教会から追放された?」

 

「知り合いだったのか?彼女は化け物を助けたことから魔女を烙印を押されたのだが」

 

「何時だよ?」

 

オレと別れた次の日、ということはオレを助けたからだと?

 

「おい、その化け物ってのは何なのか分かってるのか」

 

「いや、ただ普通の人間ではないだろうな。悪魔の屍体が付近で見つかっているからな。そんな凶暴な者を癒した以上は」

 

「その凶暴な化け物は目の前にいるオレだよ!!」

 

そういうと付き合いの長い男の天使が驚く。

 

「なんだと!?どういうことだ」

 

「その日、確かにオレはアーシアに命を救ってもらった。そしてそのすぐ後に悪魔どもがアーシアを拉致してオレを殺そうとした。最初はオレも事を大きくしないようにアーシアを連れてトルネードで逃げ回っていたんだがな。あまりにもしつこく、何度も魔力弾で攻撃されたからな。反撃して全滅はさせた。その後、アーシアを教会に送り届けて明らかに戦闘の心得を持つ神父に懺悔室で事情を説明した」

 

「つまり、何処かで情報が悪意を持って捻じ曲げられているのか。上に話を持って行くにも何か証拠になるような物はないのか?」

 

「証拠なら今用意する」

 

トルネードからカートリッジケースを取り出してこちらに来てから開発したカートリッジを右肘に装填する。

 

「クラックアーム!!」

 

電子機器のクラッキング用に開発したクラックアームに、オレ視点からのあの日の出来事を記憶媒体にコピーする。そしてコピーの終わったそれを付き合いの長い天使、パワーに手渡す。

 

「オレの視点からのあの日の出来事だ。オレはアーシアの保護に向かう。何か足取りは分からないのか?」

 

「極東の日本に向かったらしい。詳しい情報は日本に飛んでからだ。私は天界に戻り、この事を伝える。日本の教会、そこそこ大きなカトリック系の教会にいる神父にこれを見せてくれ。私からの情報が回るように調整しておく」

 

パワーからカードを受け取り、それをトルネードに収納する。

 

「分かった。また会おう」

 

「ああ、まただ」

 

トルネードを飛ばして海へと一直線に飛ばす。そのまま海に飛び込んでから変身し、海底を全力で飛ばして日本まで不眠不休で密入国する。そのままパワーの指示通り一番近いそこそこ大きいカトリック系の教会に向かい、パワーから渡されたカードを神父に手渡す。

 

「千石恭弥様ですね。お話は伺っております。ここではなんですから奥へ」

 

「すまない」

 

奥へと通してもらい、パワーからの情報を伝えてもらう。アーシアの直近の足取りは日本の駒王に向かったということで、その街は今は悪魔の領域に当たる。そのため、教会はないのだが、年若い悪魔が治めているために嘗められているらしく、堕天使とはぐれエクソシストが何かを起こそうとしているそうだ。おそらくはアーシアはそれに巻き込まれているのだろう。パワーも熾天使に報告を終え次第、駒王に向かうそうだ。そのため、オレには先行してアーシアの保護を求められている。

 

「了解した。オレはこのまま駒王に向かう。パワーに伝えられるのなら出来る限り穏便には済ませるが場が混乱する前には来てくれと伝えておいて欲しい」

 

「分かりました。貴方に神のご加護があらんことを」

 

教会から全速力で駒王に向かう。駒王に入ると同時に改良型V3ホッパーを打ち上げる。改良型V3ホッパーは魔力探知機能が付いている。それを使い不自然な場所を探す。反応は幾つかあるが、それらのほとんどは悪魔の住居だろう。反応が集まっているのは2箇所、ひとつはこの町の学園、もうひとつは廃教会。年若い悪魔が治めていると言っていたから、学園ではないだろう。ならば廃教会か。事態は一刻を争う可能性がある。廃教会の扉をトルネードで突き破り、中にいた銀髪のはぐれエクソシストを跳ねる。どうやら地下に集まっているらしく、そのまま地下への階段を降りて入り口の扉と同じように突き破ってから止まる。

 

扉を突き破った先は広い空間で、4人の堕天使と大勢のはぐれエクソシスト、そしてアーシアが磔にされていた。

 

「千石さん!?」

 

「助けられた恩を返しに来たぞ、アーシア」

 

「貴方、一体何者かしら?フリードはどうしたの」

 

「オレは千石恭弥。天使パワーの代理としてアーシアを保護しに来た。大人しくアーシアをこちらに渡せ」

 

「天使の中でも武闘派のパワーの代理だと!?」

 

「ちっ、魔女の烙印を押しておいて今更回収しようだなんて。すぐに儀式を終わらせて逃げるわよ!!」

 

「敵対意思有りとみなす。すぐに助けてやるぞ、アーシア。変身!!トォ!!」

 

変身すると同時に跳び上がり、天井を蹴ってはぐれエクソシストが集まっている部分を狙う。

 

「ライダー反転キック!!」

 

直撃した者は誰もいないが、衝撃で周囲のはぐれエクソシストが吹き飛び、戦闘不能に陥る。

 

「なっ!?何が目的なの!?それにその姿は一体!?」

 

「正義。仮面ライダー、プロト・ディケイド!!」

 

襲いかかってくるはぐれエクソシストを殺さないように無効化していく。面倒ではあるが、ここは悪魔の領地だ。処分は悪魔に任せなければならない。パワーの代理を名乗ってしまったから、今のオレは天使陣営でもある。面倒ではあるが、それがルールで礼儀だ。はぐれエクソシストを全員無力化した後は堕天使だ。

 

「覚悟はいいな。我欲のために弱き者を食い物にする奴をオレは許しはしない!!」

 

「ちっ、全力で殺すわよ!!」

 

光の槍を構えて4人の堕天使が突っ込んでくる。オレもそれに対抗してベルトからライドルを引き抜く。

 

「ライドルスティック!!」

 

ライドルで打ち合えることは既に試してある。そして、こいつらは4人いてもパワーに劣る力しかない。連携も拙い。ゆえに無力化も可能となる。

 

「ロングポール!!」

 

まずは離れたところから光の槍をなげようとしていた青い髪の女の堕天使の鳩尾にライドルの先端を向けてロングポールに変化させて叩き込む。

 

「ロープ!!」

 

次に金髪の女の堕天使をライドルロープで拘束して壁に叩きつける。

 

「Xキック!!」

 

ポールを空中で固定させ、それに捕まり大車輪の要領で勢いをつけてコートを着た男の堕天使と黒い髪の女の堕天使をまとめてXキックで吹き飛ばす。全員を無力化したところでアーシアを拘束している鎖を引きちぎって十字架から降ろす。それから変身を解除して薄着のアーシアにオレの着ていたライダージャンパーを着せてやる。

 

「大丈夫か、アーシア」

 

「はい」

 

「とりあえず、君は天使パワーの元で保護されるはずだ。今はパワーが上層部に、熾天使に君の身の潔白の証拠とともに訴えている。オレは先に君を保護するようにパワーに頼まれてきた」

 

「そうなのですか?それより、千石さんはどこでパワー様と?」

 

「アーシアと別れてからは紛争地帯や貧困地域でボランティア活動をしていてな、そこで知り合った。ああいう地域にはそれを食い物にしやがる奴らがいるからな。そういう奴らを共に討伐したり、戦闘に巻き込まれた非戦闘員を逃がしたり、安全地帯の情報を交換したりなんかしててな。今回のアーシアの件も偶々世間話の一環で出てきたんだよ。だから急いで来た。すまないな、オレの所為でこんなことになって」

 

「いえ、そんな。千石さんの所為じゃありません!!」

 

「まあ、全部が全部、オレの責任って訳じゃないが、切っ掛けはオレだろう。だから、元の生活に戻れるまではオレが君を守る」

 

そこまで話したところでこの教会に近づく魔力を持つ者をV3ホッパーが捉える。この地の治める悪魔だろう。とりあえずは交渉と堕天使達を引き渡さないとな。

 

「悪魔がこっちに向かってきている。いざとなればあの時みたいに逃げることになるかもしれない」

 

「……いえ、多分大丈夫だと思います」

 

「知り合いか?」

 

「こんな私でも友達だって言ってくれたんです」

 

「そうか」

 

なるほど。まともな悪魔であることを祈るよ。優しい顔して近づくゲスも多いからな。地下からトルネードを押して地上に戻り、ちょうど教会に飛び込んできた3人の悪魔と対面する。

 

「何者だ!?」

 

金髪の青年の悪魔がどこからともかく剣を生み出して構える。茶髪の青年の悪魔は左腕に赤い籠手を出して、白い髪の少女の悪魔と共に構える。

 

「オレは、天使パワーの代理でアーシアを保護しに来たものだ。まずは領地で勝手に活動したことを謝罪しよう。緊急を要したため、そちらへの通達を後回しにしたのはオレの責任だ」

 

それに対してオレは自分の身分と謝罪を行う。それが想定外だったのか、悪魔の青年達は同様する。

 

「え、えっと、質問いいですか?」

 

茶髪の悪魔が混乱しながらも質問してもいいかと尋ねてくる。

 

「ああ、話せる限り話そう」

 

「アーシアとはどう言った関係で?」

 

「昔、命を救われた。それがアーシアが魔女の烙印を押される原因の一つとなったと聞いて、調べると何やら堕天使に利用されかけているとわかって駆けつけた」

 

「それじゃあ、堕天使達は?」

 

「全員無力化させてある。今は地下で転がっている。ああ、一人も殺していないから。処分はそちらに全て任せる」

 

「ええっと、すみません、今から僕たちの主人を呼ぶから待ってもらえますか?」

 

「もちろん構わない。パワーもしばらくすれば来るはずだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく待ち、この地を治め、魔王サーゼクス・ルシファーの妹であるリアス・グレモリーと魔王セラフォルー・レヴィアタンの妹であるソーナ・シトリーとその眷属達、そして中級とは名ばかりの戦闘経験の塊のパワーと体を弄られていない部分が無い改造人間のオレ、そして生物なら何でも傷を治療できる神器を持つアーシアか。中々にカオスだな。自己紹介を終えてふとそう思う。

 

「まずは緊急とはいえ領内で勝手に行動したことを謝罪する。すまなかった」

 

最初はパワーからの謝罪から始まる。それから天使側から見た今回の事件の見解を伝える。最後に、アーシアをこちらで保護したいが、ちょっと上がゴタゴタしているのでこのまま駒王の地に滞在することを許してほしいと要請する。無論、悪魔の仕事に干渉することは無いと言い切って。

 

「ミカエル様からはアーシアの保護を優先するようにとのお達しだ。そのため、消極的自衛以外でそちらに干渉するつもりは無い」

 

「消極的?」

 

「つまりは襲われたら反撃、逃げたら追撃は無し。そういうことだ」

 

「逆に積極的自衛ってのはこちらから先制攻撃を持って敵、および敵になりうる存在を全て排除して自衛することを指す」

 

オレの補足にリアス・グレモリーが顔をしかめるが、ソーナ・シトリーに肘を突かれて普通に戻す。まだまだ青いな。

 

「住居はどうするの」

 

「この教会には寄宿舎がある。確認したが、はぐれエクソシストがある程度整備したのか暮らす分には問題無い」

 

「貴方ほどの天使がそんな場所でいいの?」

 

「そんなに悪いか?」

 

リアス・グレモリーの言葉にパワーと二人で首をかしげる。

 

「屋根があって壁があって銃弾や砲弾が飛び交ってなくて」

 

「綺麗な水があって食物や薬なんかも手に入りやすくて怪我人が居ない」

 

「狂気に走る者がいない」

 

「希望も何もなくて人形のような目をした者がいない」

 

「「十分以上に快適だな」」

 

二人して笑顔を見せれば全員が少し引く。

 

「日本は良い国だ。平和ボケしているなんて言われるが平和で何が悪い」

 

「弱き者、運が無い者から死んでいく貧困地域や紛争地域に比べればまさに天国のような国だ」

 

オレたちが居たのはそういう場所だ。ある程度は小康状態に持ち込んだからこそあそこから離れられたとも言える。

 

「あの、私なんかのためにこちらに来られてもよろしかったのですか?」

 

そして、こんなことに巻き込まれたというのにアーシアは他人を気遣おうとする。

 

「ああ、私たちがこれ以上介入することは彼らが立ち直る為の害悪となる。不必要に干渉しては自然の流れを壊すことになるからな」

 

「オレたちに出来るのは少しの手助けと外からの干渉を排除するだけだ。時間が空いていたからこそ世間話でアーシアの話題が登ってここまで来た。だから助けに来れた。日頃の行いが良かったのだろう」

 

「それで、我々の滞在を認めていただけるかな?」

 

「そうね、もう一つだけ質問。貴方、千石恭弥さんでしたか。貴方は、あ~、教会の人間では無いわね。なぜ天使であるパワーとそこまで仲が良いのかしら?」

 

「活動地域がかぶっていたからな。紛争地帯や貧困地域でボランティア活動を行っていたんでな。悪魔とか天使の知識は戦場で教えてもらった。弱き者を助けたい。目的が一緒なら細かいことは気にし無い性格なんでな、お互いに」

 

「似た者同士という奴だ。話がわかる奴でもあるし、肩を並べるに値する男だ」

 

「そう。そこまでパワーに信用されるなら構わないわ。領内で勝手に行動していた件だけど、貸し1でいいわ」

 

「堕天しそうなこと、三勢力のバランスを大きく崩すようなこと以外で個人的な物であればそれで構わない」

 

「オレも、そうだな。活動地域での犯罪行為でなければ付き合おう。まあ、それが犯罪行為でも弱き者を救えるなら躊躇わないだろうがな」

 

この返答にはパワーも苦笑いだ。理解はできるが、承知はできないって奴だ。お互いに良い大人だから何も言わないだけだ。そうしてリアス・グレモリーの許可をもらい駒王の地の滞在許可を得ることができた。さてと、とりあえず寝よう。精神的に限界だ。

 

 


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