もし、西住みほに双子の妹が居たらという物語   作:青空の下のワルツ

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リハビリがてら投稿してみます。
雑な描写を何とか丁寧にしたいと思って、その辺の練習もかねて書いております。


二人の天才を持った妹

「だからさ、あたしは面倒な家庭に生まれたってわけ。ねぇ、聞いてんの〜? 質問してきたの沙織だよ?」

 

 休日のとある日、あたしこと“西住まみ”は同じクラスの友人たちとランチをしていた。

 友人の1人である武部沙織――茶髪でゆるふわ系の女の子が私の熊本の実家について質問してきたので、戦車道の家系だということを手短に話した。

 母が近々家元を襲名することや、2人の姉が居るってことを。

 

「え? あ〜聞いてる、聞いてるって。私、彼氏の話は一言一句聞き逃さない主義だから」

 

「彼氏が居たことありましたっけ?」

 

 沙織の彼氏って言葉に反応するのは、同じくクラスメイトの五十鈴華――黒髪で清楚な感じの長身の女の子。

 彼女は華道の家元の家系だということを前に聞いた。そのせいなのか物腰がとても柔らかで、それでいて芯の通った人である。

 

「あはは、そんなことあったら、新聞部に掛け合って一面記事にしてあげるわよ。“ついに武部沙織に悲願の彼氏が!”ってね」

 

 あたしは華のセリフに続けて冗談を言った。まぁ、本当に沙織に彼氏が出来たら黙ってるなんてことしないだろう。

 きっと、毎日のように惚気話を聞かされるはずだ。

 

「あっ! ひどーい。まみりん、生徒会の権力の無駄遣いだよ。それは」

 

 沙織は新聞部に権力を振りかざすことが生徒会の横暴だと訴える。

 私は大洗女子学園の生徒会の一員だ。書紀会計として、毎日先輩たちにこき使われている。

 

「しかし、戦車道の家元のご家庭でお生まれになられましたのに、なさらなくてもよろしかったのですか? 戦車道を……」

 

 華は自らの経験からなのだろうか、私が戦車道をしていない事に疑問を持ったみたいだ。

 

「ん? ああ、あたしには姉さんが2人いるから……。それで、この2人が超優秀なの。特に双子の姉のみほは凄いのよ〜。もう、天才って感じで。あたしには才能がなかったから……。中学最後の大会で辞めても文句言われなかったわ」

 

 私には2人の姉がいる。1つ年上の“まほ姉”と、双子の姉である“みほ姉”……。

 まほ姉は誰もが認める一流の戦車乗り。同世代には敵無し。西住流を背負って立つのは彼女だ。

 自分は西住流そのものだと自負しており、常に研磨を怠らず、ストイックにその道を進んでいる。

 

 みほ姉は私と瓜二つの双子の姉。あまりに見分け難いからあたしが中学時代に金髪にしたくらいだ。

 彼女は自己評価は低いけど、あたしから言わせるとまほ姉以上の天才。何というか、一緒にずっとやってきたから分かるけど、感覚の鋭敏さと発想力が半端じゃない。

 西住流とは合わないのが残念だけど、そのうち誰も彼女を無視出来なくなるって思っている。

 

「立派なお姉様がいらっしゃるのですね」

 

「そうそう。不良品の娘は外に出して無かったことにした方がいい。なんちって……」

 

 華の言葉に私はそう返す。もちろん、私も中学時代までは努力した。

 姉二人に追いつこうと頑張った。

 

 でも、ダメなんだ。あたしの才能は凡庸もいい所だった。みほ姉やまほ姉に遠く及ばない実力……。母も私にはまったく期待していないみたいで、戦車道を止めると言っても「そう……」と一言だけ言っておしまいだった。

 

「す、すみません。決してそのようなことを――」

 

 すると、華は自分が嫌味を言ったとあたしが感じたのではないかと思ったのか、慌ててそれを否定しようとした。

 

「ちょっと、まみ。捻くれ過ぎ……。あんまりそういうこと言うとモテないよ」

 

「あー、ごめんごめん。華がそんな風に思っているなんて思ってないわよ」

 

 沙織にも自虐し過ぎだと叱られて、あたしは華に謝罪する。

 彼女がそんなことを言わない人だってことくらいわかってる。

 

「はい。まみさんもご立派ですよ。生徒会の仕事もキチンとこなしておりますし」

 

「そうそう。なんせ、()()()()たちの下で働いてるんだもん」

 

 華も沙織もあたしが生徒会で仕事していることに触れてニコリと笑った。

 生徒会かぁ、最初は大変なところに入っちゃった、と思ったなぁ。

 

()()()()ねぇ。確かにクセが強いけど優しい人たちよ。ああ見えてね」

 

 あたしは一応先輩の擁護をする。行動力があり過ぎて強引なところがあるけど、学園のことを一番に考えているし、まだ数ヶ月の付き合いだけどそれなりに尊敬している。

 

「えー、嘘〜! いっつも横暴なことばかり言ってるじゃん!」

 

「あっ! そろそろ寮に帰るわ。さっき言ったでしょ、すぐ帰るって。ちょっとテレビ見なきゃいけないの」

 

 沙織が意外そうな顔をしたとき、テーブルに置いていた携帯の時間がちょうど目に入り、あたしは帰宅すると二人に告げた。

 今日はどうしても見なくてはならないテレビがあるのだ。

 

「この時間のテレビ……、ですか?」

 

「なになに? 恋愛ドラマはやってないはずだけど」

 

 すると、二人は不思議そうな表情であたしがみたいテレビの番組が何か質問してくる。

 多分、二人とも興味ないと思うけどな……。

 

「戦車道の――全国大会の決勝戦よ。さっき言ってた姉さんたちが出るんだ〜」

 

 そう、今日は“第62回戦車道全国高校生大会”の決勝戦――。

 あたしの二人の姉にとっての大一番だ。

 

「やっぱり、お姉ちゃんのことは気になるんだね」

 

「まあね〜。姉さんたちのことは大好きだし。試合を見るのも楽しいのよ。感想とかもメールしたりしてるわ」

 

 断っておくが、あたしは決して姉のことも戦車道のことも嫌いになったわけではない。

 ただ、西住の名を背負って凡庸な才能を晒すことが嫌になっただけなのである。

 

 不器用なあたしは姉二人が何も教わらなくても出来たことすら出来なくて――いつの間にかとんでもない差が生まれており――そして、戦車に乗ることが息苦しくなっていたのだ。

 

「そうですか。それならわたくしも、ご一緒させてもらってもよろしいですか? 戦車道ってとてもアクティブで面白そうです」

 

「確かに女としてそういう乙女の嗜みを知っておいて損はないかも。まみりん、私も一緒に観てもいい?」

 

 意外なことに華と沙織は戦車道の試合をテレビで観戦することに興味を示してきた。

 そんな二人の言葉があたしは単純に嬉しい。自分の趣味に付き合ってくれる友人なんて最高じゃないか。

 

「構わないわよ。あ、でも先に約束してた友達もいるけど良いかしら?」

 

 しかし、私には一緒に見る約束をしている先約が居たので、その人も一緒にと、ことわりを入れた。

 

「もちろんです」

「まみりんの友達なら大丈夫だよ〜」

 

 この二人はそんなことを気にするタイプでは無かったので、笑いながら構わないと言ってくれた。

 ということで、私は戦車道の試合を見る約束をした友人との待ち合わせ場所に沙織と華を連れて行った。

 

 

 

「ハロー、優花里〜! 待った〜?」

 

「あっ! まみ殿〜。私も今来たところです。あれ? 後ろのお二人は?」

 

 くせ毛が特徴的な女の子――秋山優花里は別のクラスだが、雑誌を買いに立ち寄った戦車ショップで知り合い仲良くなった。

 あたしが西住の家の生まれだと知るとテンションが凄かったのを覚えている。

 しかし、決して無神経な子ではなく、あたしが西住の名前で呼ばれることを嫌だと言うと、“まみ”と呼んでくれるようになった。

 

 戦車道のことを話せる人もなかなか同じ学校には居ないので彼女は貴重な友人だ。

 戦車道だけでなく戦車の知識が豊富で、あたしでも時々置いてきぼりになることがある。

 

「ああ、あたしのクラスの友達よ。背が高い子が五十鈴華、丸っこいのが武部沙織〜」

 

「ちょっと、まみりん! 丸っこいは酷いよ〜!」

 

 あたしが二人を優花里に紹介すると沙織は肩を揺らしながら抗議してきた。

 いいじゃん。丸くて可愛いんだから。

 

「普通科1年C組の秋山優花里です! ふつつか者ですが、よろしくお願いします!」

 

「よろしくお願いします」

「よろしく!」

 

 優花里の方はビシッと敬礼しながら自己紹介して、二人もそれに対して返事をする。

 華はいい子だし、沙織はそれに加えてコミュニケーション能力が抜群だから直ぐに打ち解けてくれた。

 優花里はあたしと出会うまであまり友達が居ないようなことを言ってたから、この二人とも友人になれれば良いなー。

 

「じゃあ、あたしの家に行こっか? でも、その前にお菓子でも買ってく?」

 

「いいですね〜。素敵な提案です」

 

 あたしが菓子を買っていこうと口にすると華は両手を叩いて嬉しそうな顔をした。

 この子は見かけによらずによく食べる。本当にびっくりするくらいよく食べるのに、スタイルは良いから驚きだ。

 大洗女子学園の七不思議にあたしは密かに認定しているくらいである。

 

「華は相変わらずだなぁ。じゃあ、コンビニに寄っていこう!」

 

 あたしたちはコンビニで買い出しをしてから、あたしの寮に向かう。

 そして、買ったお菓子を広げて観戦の準備をした。

 

 

「戦車道の試合って初めて見る〜。ねぇ、まみりんのお姉ちゃんって、どっちのチームなの?」

 

 プラウダ高校と黒森峰女学園が試合の準備をしている映像が流れていたので、沙織はどちらがあたしの姉がいる学校なのか質問してきた。

 

「ああ、姉さんのチームは――」

 

「黒森峰女学園! 現在、戦車道の全国大会9連覇中の学校なんですよ!」

 

 あたしが質問の答えを返そうとする前に優花里が先に答えを言ってしまう。

 楽しそうに話すなぁ……。

 

「9連覇……、ってことは、今日勝てば10連覇ってことですよね?」

 

「そうなの。しかもまほ姉……、あっ上の姉さんは隊長をやってるからさ〜。これは、見逃せないってわけ」

 

 華が今回の大会が黒森峰にとって大きな意味がある大会だということを察したので、あたしはまほ姉が隊長をやっていることを彼女に伝えた。

 

「へぇ、上のお姉ちゃんって2年生なんでしょ? よくわからないけど、こういうのって、3年生がキャプテンとかになりそうじゃん」

 

「まぁ、そこは実力順かな。みほ姉も1年で副隊長だし」

 

 まほ姉は決して身内を贔屓したりしない。だからみほ姉の実力を完全に認めた上で彼女を副隊長にしている。

 

 その証拠に中等部のときもまほ姉が隊長をやってたけど、調子が悪いとあたしなんか普通にレギュラーから外されてた。

 そのあと死にものぐるいで努力して直ぐに復帰は出来たが……。

 

「黒森峰の西住姉妹って有名なんですよ〜! あっ……!」

 

 優花里はまほ姉とみほ姉が高校戦車道の世界で有名になりつつあることを語り、あたしの顔を見て少し気まずそうな顔をする。

 

「優花里、あたしのことは気にしなくていいわよ。中学までは三姉妹って一括りにされてたこともあったけど、あたしだけ明らかにダメダメだったもん」

 

 中等部時代は三人揃っていたし、そのうち二人は双子だったから、物珍しさで取材されたこともあった。

 ただ、天才二人とちょっと上手いくらいのプレイヤーなあたしの間にある格差は大きく、それがあたしにはとても辛かった。

 

「そんなことありませんよ。まみ殿だって――」

 

「おっ! そろそろ始まるじゃん! そんなことより、姉さんたちを応援してあげて!」

 

 優花里は何か言いたそうな顔をしていたけど、あたしは試合が始まると大きな声で告げる。

 さて、黒森峰が全国大会を10連覇するところを見させてもらおうっと。

 

「うん! ルールとかよく分からないけど応援するよ!」

 

「ええ、まみさんのお姉様たちの晴れ舞台ですから、わたくしも精一杯、応援させていただきます」

 

 沙織も華もルールは大雑把にしか説明していないから分からない部分も多いけど、本気で応援してくれるみたいだ。

 そして、黒森峰女学園とプラウダ高校の決勝戦が始まった――。

 

 

「へぇ、あの旗が付いてる戦車を動けなくさせたチームが勝つんだ〜」

 

「そゆこと。だから、自分のところのフラッグ車が撃破されるまではどんな状況でも逆転のチャンスがあるわ」

 

「うんうん。恋も戦車も最後までどう転ぶか分からないってことだね!」

 

 フラッグ戦について少しだけ理解した沙織が腕を組みながら納得したような声を出す。

 うーん。本当に理解できたのかな?

 

「やはりアクティブですね。まぁ! 凄い! あの戦車がまた当てました!」

 

「あちらの車両はプラウダ高校の車両です。黒森峰の敵側ですよ。五十鈴殿……」

 

 プラウダ高校のIS-2が黒森峰の車両を続けて撃破した様子を見て華は興奮していたので、優花里はあたしに気を遣ってなのか、コソッと華に高校名を伝えた。

 

「あははっ、別にあたしは気にしないわよ。確かに、優秀な砲手じゃない。プラウダのIS−2の砲手は……。この大会で一番かもしれないわ」

 

 あたしはプラウダの砲手の実力に惹きつけられる華の気持ちも十分に理解できた。

 それだけ、“美しい”とすら思える射撃精度だったからだ。

 

「今年のプラウダ高校は去年以上に強いですよね。何て言うか。戦術のバリエーションが豊富になっています」

 

 優花里は戦車道ファンとしてプラウダ高校の実力が上がっていると指摘する。

 戦車道をやったことないと言っていたけど、それが信じられないくらいよく見てる……。本当に感心するわ……。

 

「それはあたしも気になっていたの。戦略や戦術に長けた人材が居るんでしょうね。プラウダには――」

 

 黒森峰とプラウダは去年も決勝で戦っているので、プラウダ高校もまた強豪校の一角だ。

 しかし、今年のプラウダは去年までと違う……。さらに上のレベルに上がっている……。

 

「ええ〜〜っ! それなら、まみのお姉ちゃんたちヤバイんじゃ……!」

 

「大丈夫だよ。沙織……。あたしには想像が出来ない。まほ姉とみほ姉が同じチームで負けるところなんてね……」

 

 沙織はプラウダ高校が強いという話を聞いて黒森峰女学園が負けるかもしれないと心配していたが、あたしはまったくそんな心配をしていなかった。

 

「まみさんって、本当にお姉様のことが大好きなんですね〜」

 

「いや〜、分かっちゃう!? 姉バカなんだ、あたしってさー。まぁ、そういう身内びいきを抜きにしてもあの二人は強いから。見てなって」

 

 あたしは二人の姉が大好きだ。戦車道の才能があって格好いいといつも憧れていた。

 二人が同じチームで負けるなんてことはあり得ない。

 だから、あたしの興味は“どうやって二人がプラウダ高校に勝つのか?”――それだけだった。

 だから、まさかあんな試合結果になるなんて思いもしなかったんだ――。

 




とりあえず、こんな感じでスタートしましたが如何でしたでしょうか?
一言でも良いので感想なんか頂けると狂気乱舞します!
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