もし、西住みほに双子の妹が居たらという物語   作:青空の下のワルツ

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お久しぶりです。
今回で紅白戦は終わりです。


紅白戦の結末――そして練習試合へ

 

「やっぱり、3両でもそう簡単に当たってくれないわね……。みほ姉は各個撃破してくるはずだから、狭いところに誘い込まれないようにしなきゃ」

 

「随分と消極的だな。もっと攻めないと、Ⅳ号は落ちんぞ」

 

 あたしは何度か一斉にⅣ号に対して砲撃の指示を出しているが、みほ姉の勘の良さは超能力の領域で簡単には当てられない。

 それどころか、攻めたくなるような隙をあえて演出して狭い場所に誘い込み各個撃破を狙ってくる周到さまで見せている。

 

 プラウダでの経験が無かったらとっくに撃破されていたかもしれない……。

 

「みほ姉は如何にも攻めたくなるような隙を作ってきますから、そう思うのも無理はありません。でも、それこそが罠なんです」

 

「焦って突出してきたところをズドーンってわけだね〜」

 

「だったら、倒せないじゃないか! 罠とわかってたら、突っ込めないだろ!?」

 

 そう、それもみほ姉の凄いところ。罠だと気付いたところで、こっちは後手に回ってしまう。

 つまり、3対1でもペースはみほ姉に握られているということになる。こちらが攻めあぐねているなら、向こうはゆっくりと自分のペースで攻めれば良いのだ。

 

 このままだと、確実にやられる。だから――。

 

「いいえ。作戦はあります。難易度はとても高いですが、敢えてⅣ号の仕掛ける罠に飛び込み、相討ち狙いで履帯を破壊して動きを封じるのです。動けなくなれば、こちらは2両残りますので確実に落とせます」

 

「まみがⅣ号に出来るだけくっつくような指示を出してるのって、それが狙いなの?」

 

「そうです。かなりタイミングがシビアですから……。小山先輩、集中してください」

 

「わ、わかった。やってみるね……」

 

 相討ち狙いで撃破は出来なくても、履帯にダメージを与えて一時的に動きを封じることが出来れば、残りの2両が確実に仕留めてくれるだろう。

 単純な作戦だがみほ姉を相手にするとなると、これがなかなか難しい。向こうだってこちらの数的な有利は承知しているのだから、その点は十分に警戒しているからだ。

 

 だからあたしは待ちに待った――Ⅳ号がこちらの制空権に僅かにでも踏み入れるその瞬間を――。

 

「今です! 急接近して、履帯を狙って一撃ッ!」

 

「Ⅳ号が急速に後退したよ!」

 

「まさか、ここで後退? そんなことをしたら……、追い込まれるだけなのに……。ポルシェティーガーとルノーも一斉に突撃! Ⅳ号を落とします!」

 

 こちらが踏み込むタイミングでⅣ号はまさかの後退を始めた。それじゃ、狙い撃ちにされるだけなんじゃ……。

 あたしは残りの2両にも突撃の指示を出す。

 

「おいっ! なんだ、あのⅣ号の動きは――」

 

「嘘でしょ!? 後退しながらドリフトして後ろにつかれるなんて考えられない……。麻子は背中に目でも付いてるって言うの?」

 

『白チーム、38t軽戦車、行動不能!』

 

 信じられないような麻子のドライビングテクニックにより、38tは撃破されてしまう。

 いや、反則だってそれは……。みほ姉はどんな指示を出したんだ? それに答える麻子はやっぱり天才にも程がある……。

 

 悔しがる場面かもしれないが、むしろ、ここまで追い詰めた自分を褒めるべきなのか……。

 

『白チーム、ルノーB1bis、行動不能!』

『白チーム、ポルシェティーガー、行動不能!』

 

『よって! 紅チームの勝利! やるわね……』

 

 残りの2両も奮闘してくれたが、Ⅳ号との練度の差は大きくて――瞬く間に白チームは敗北してしまった。

 みほ姉が加わったⅣ号は黒森峰やプラウダにもタイマンで勝てる車両はないかもしれないなぁ。

 奥義書を手に入れたまほ姉なら分からないけど――。

 

 

「みんな、グッジョブベリーナイス! 最初にこれだけ戦えるなんて素晴らしいわ! 全国大会だって目指せるんじゃないかしら!」

 

 蝶野さんも思った以上の練度だと感じたのだろう。とりあえず、全国大会に出場しても恥ずかしくないレベルだとは言ってくれた。

 

「それじゃあ、何か困ったことがあったら、遠慮なく相談してね!」

 

 とりあえず、初回の練習はかなり意義があるものとなった。

 Ⅳ号の強さはもちろんだが、Ⅲ突やポルシェティーガーあたりも現時点で十分に戦力になる。

 1年生だけのM3リーチームを除けば、他の車両も十分に及第点だ。

 

 そう、問題はM3リーの彼女たちなんだけど、どうやって声をかけよう――。

 

 あたしがそんな思案をしていると、M3リーの車長を務めていた澤さんを中心に彼女らはみほ姉のところに駆け寄っていた。

 

 

「先輩! 怖くなって、戦車を放り出したりきてすみませんでした!」

 

「「すみませんでした!」」

 

 彼女らは声を揃えて車両を放棄したことをみほ姉に謝罪した。

 そっか、荒療治だと思ったけど自分から反省して戻ってきたか……。

 

「先輩、格好良かったです!」

「1両だけになってすぐ負けちゃうと思ってた」

「私たちも次は頑張ります!」

「絶対に頑張ります!」

「…………」

 

 どうやら、みほ姉の無双っぷりが彼女たちの心を打ったらしい。

 これなら、今後の彼女らの成長にも期待出来そうだ。

 

 

「大人気じゃん、みほ姉。いやー、ごめんね。怖がらせちゃったりして」

 

「あっ、まみちゃん。ダメだよ〜。あんまり脅かしたら」

 

「うん。やっぱりお姉ちゃんは強いね〜。じゃ、お姉ちゃんが隊長ってことでよろしく〜」

 

 あたしがみほ姉と会話をしていると、そこに角谷先輩がやってきてみほ姉を隊長に指名した。

 これはあたしが先輩に前から進言していたことだ。みほ姉は指揮官としても優れているから、優勝するには隊長をやってもらうしかない。

 

「ええっ! 会長、みほは2年生ですよ!?」

 

「いや、お姉ちゃんが隊長じゃなきゃ勝てないよ。まみ子もそう思ってるっしょ」

 

「そうだね。みほ姉、あたしからもお願い。隊長をやってくれないかな?」

 

「わ、私が隊長? ――うーん。わかりました。その代わり、副隊長はまみちゃんでお願い出来ますか?」

 

 案の定、河嶋先輩は文句を言うけど、みほ姉の隊長就任は優勝するための絶対条件で彼女もそれを知ってか知らずかそれを了承する。

 ちょっと待って、あたしを副隊長に指名するの?

 

「あたし?」

 

「もちろん構わないよ! じゃあ、まみ子が副隊長で」

 

「みほ姉、あたしはそんな役割とかやったこと……」

 

「そんなのみんな一緒だよ。もし、私に何かあっても、まみちゃんが引き継いでくれるなら、安心だし……」

 

「…………わかったよ。みほ姉。あたし、頑張ってみるわ」

 

 あたしは副隊長も未経験だ。理由は単純に実力不足だからである。

 黒森峰の中等部時代はみほ姉がエリカを副隊長に指名したのも彼女の方が優れた選手だからだ。

 でも、今は確かにあたしがこのチームの2番手だ。みほ姉の期待を裏切らないように頑張らなくっちゃ。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「しかし、来週の練習試合。サンダース大附属……。どうにか一軍と試合したいわね。全国大会の強豪クラスとどれくらい戦えるのか知っておきたいし」

 

「やっぱり、二軍か三軍が相手になるのかな?」

 

「新設した戦車道チームだって伝えて試合を申し込んだとき、そんな風なことを言ってたわ。圧倒的な戦力で叩き潰すのはフェアじゃないし、二軍以下にも経験を積ませたいとか何とか」

 

 最初の練習が終わって、Ⅳ号チームの5人とあたしはファミレスで一緒に夕飯を取ることにした。

 そんな中、あたしは今後の戦いの参考にするためにサンダースの一軍と戦いたいと思っていることを口にした。

 

 練習試合のオファーを出したときは廃校問題もなかったから、先方の気遣いで二軍か三軍を出すという言葉はありがたいと思っていた。

 しかし、今は違う。黒森峰、プラウダ、サンダース、聖グロリアーナ……、どの高校と対戦しても勝てるようにならなきゃならない。

 

 だからこそ、あたしたちのチームには必要なのだ。全国の強豪校とのガチバトルという経験が――。

 

「まぁ、向こうも私たちに気を遣っているんだし、仕方ないんじゃないか?」

 

「でしたら、いっそのことカチコミに行きます? 挑戦状を片手に……」

 

「ちょっと、華! 言ってることが物騒だから!」

 

「いや、それはありね。挑戦状を持って直接サンダースに乗り込んで、向こうの隊長に直談判してみようかしら」

 

 華がサンダースに直接出向いて挑戦状を叩きつければ良いという案を口にしたので、あたしはそれを名案だとやる気を出す。

 そっか、サンダースの隊長さんに会って直接交渉すれば何とか熱意を伝えられるかもしれない。

 

「まみりん! 乗らなくて良いから」

 

「潜入ならお任せください! お手伝いします!」

 

「ゆかりんも!」

 

「じゃあ、みほ姉。ちょっと、あたし、優花里とサンダース大附属高校に行ってくるわ」

 

 潜入なら任せろという優花里とあたしはサンダースに行くことに決めた。

 よし、これで何とか一軍と戦えるように取り計らってもらうぞ。

 

「い、行ってくるってどうやって?」

 

「コンビニの定期船に乗り込むのはどうでしょう?」

「あっ、いいわね。それ。じゃあ、そんな感じで」

 

 優花里がコンビニの定期船からサンダース大付属の学園艦に乗り込むという案を出してくれたので、あたしはそれを採用した。

 みほ姉は思いきり不安そうな顔をしていたけど――。

 

 

 そんなこんなで、あたしたちは割とあっさりサンダース大付属の学園艦に潜入することに成功した。

 

「こんな事もあろうかと、各校の制服を取り揃えておいて良かったわ」

 

「はい! これでどこから見てもサンダース大附属高校の生徒です」

 

 あたしと優花里は用意しておいたサンダースの制服を着用している。

 試しに何気なくすれ違った人に手を振ったりしてみたけど、特に怪しまれることなく振り返してくれた。

 

 まぁ、大洗だといきなり手を振ってくる人とか絶対に不審者なんだけど、こっちはそれがスタンダードだ。

 

「サンダースの戦車道チームの隊長を探したいところだけど……」

 

「やはり、戦車があるところから見るのが良いんじゃないでしょうか?」

 

「とかなんとか言って、優花里が戦車見たいだけでしょ?」

 

「バレましたか? しかし、何らかの情報は掴めるはずです」

 

「そりゃそうね。行きましょ」

 

 そして、あたしたちはサンダースの隊長が居そうな場所について相談した結果、先ずは戦車の格納庫を目指すこととなった。

 そこで会えると良いんだけど……。

 

 

「さすがはリッチな高校……、黒森峰よりも設備が充実してるわ」

 

「これだけ戦車を保有していれば、それだけで有利でしょうからね。戦力を温存する必要もありませんし……」

 

「優勝は一筋縄じゃいかないってことか」

 

 サンダース大付属高校は戦車の保有台数が全国で一番というリッチな高校だ。

 シャーマンを始めとするアメリカ産の戦車群がズラッと並ぶ格納庫は壮観だった。

 優花里なんて、目をキラキラさせて恍惚の表情を浮かべている。

 

 

「あっ、隊長! お疲れ様です!」

 

「「お疲れ様です!」」

 

「ハーイ! 整備、お疲れ様! うん、最高の仕事をしてくれているわね!」

 

「サンダース大附属高校、戦車道チームの隊長のケイさんですよ。まみ殿」

 

 運の良いことにサンダース大付属高校の戦車道チームの隊長であるケイさんが、メンテナンスの様子を確認に来た。

 よし、ツイてるぞ。この機は逃せない。

 

「そ、そうね。よし、あたし行ってくる……」

 

「待ってください。私も行きます……」

 

 あたしたちはケイさんの元に向かった。何とか交渉して、いい返事をもらうぞ……。

 

「あの、ちょっとお時間いいでしょうか?」

 

「ん? あら、あなた……、見かけない子ね。新入生かしら?」

 

「いえ、その……、私は大洗女子学園戦車道チーム、副隊長の西住まみと申します。今度の練習試合の件で折り入ってお願いがあって来ました」

 

 ケイさんはニコリと気さくそうな笑顔をみせて、話を聞いてくれそうな雰囲気を見せてくれたので、あたしは自分の身分を明かした。

 アポなしで来てるから、ここで、強制送還になる可能性もあるけど……。

 

「大洗女子学園の副隊長? あっはっはっ! わざわざウチの生徒に紛れて入ってきたの? なかなかクールじゃない。それで、どんな用事?」

 

 意外にもケイさんはサンダースの生徒に扮装して潜入したことを笑って流してくれた。

 あっ、この人絶対にいい人だ――。

 

「次の練習試合なんですけど、サンダースの一軍と戦わせて貰えないでしょうか? 私たちには必要なんです。強いところと戦う経験が!」

 

「ウチの一軍と戦いたい? うーん。でも、大洗って今年から戦車道を復活させたばかりのところでしょ? だから、こちらが最大の戦力を使って戦うっていうのはちょっとフェアじゃない気がするのよね」

 

 ケイさんはあたしの希望に対して、電話口で言われたことと同じことを口にする。

 そりゃそうだ。強豪校のサンダースに新参のあたちたちが対等な条件で戦ったら一瞬で試合が終わる可能性すらある。

 そんな試合をわざわざするメリットなんてサンダースにはないのだ。

 

「そこを何とかお願いします! 全国大会の為にも強豪であるサンダースと本気で戦ってどこまでやれるのか試したいんです!」

 

「ホワイ? なぜなの? そこまでして、あなたが戦いを求める理由を知りたいわ」

 

「それは――優勝するためです」

 

 ケイさんは決してあたしたちを弱小校の生徒だからって嘲るようなことはしなかった。

 真剣にまっすぐにあたしの言葉を受け止めてくれている。

 だから、あたしも真剣に自分たちの目標を彼女に伝える。これがあたしなりの誠意だから……。

 

「優勝? ふざけているみたいには見えないけど、それがどんなにハードなゴールなのか、アンダースタンドしてる?」

 

「もちろんですよ。だって、あんなに強い姉さんが隊長でも無理だったんですから」

 

「姉? 西住……? あーっ、あなた、まほの妹!? そういえば似てるわね〜〜! まほの妹か……、ふーん」

 

 さらに、自分が西住まほの妹だということも彼女に伝えた。姉の名前を使うことは気が引けたけど、背に腹には変えられない。

 やはり、西住まほの名前は強力でケイさんは興味深そうにあたしを見つめていた。

 

「――何だか、ヘビィな事情があるんでしょうね。オッケー! まみ。あなたのホープを叶えてあげる。その代わり、楽しい試合をしましょ!」

 

「た、楽しい試合ですか?」

 

「ザッツライト! だって、これは戦車道だからね。エンジョイすることが何よりも大切でしょう?」

 

 ケイさんが出した条件は2つ。1つはエキサイティングな楽しい試合をすること。

 そして、もう1つは8対8の同数で戦うフラッグ戦というルールにすることだ。

 本当は向こうには10両使ってほしいところだったけど、それは流石にフェアプレー精神に反すると飲み込んでもらえなかった。

 

 でも、十分だ。これで、現時点で全国大会でどれだけ戦えるのか測ることができる。

 

 決戦は今度の日曜日。もちろん、あたしたちは勝つつもりでサンダース大付属高校に挑む――。

 




大洗の最初の練習試合は8対8のフラッグ戦となります。
こんな感じで全国大会とかも原作と対戦高校が変化したり強化されたりします。
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