音を奏で歌う転生者   作:クレナイハルハ

1 / 2
Fate要素は序盤だけです


プロローグ

目を覚ますと真っ暗だった

 

夜なのだろうか?

 

そう疑問を持ちつつ、周囲を見回す

 

「奏!起きたのか!」

 

「え!?」

 

突如として聞き覚えのある声

 

父さんの声が聞こえた

 

「奏兄さん!」

 

「奏ちゃん!」

 

続いて聞こえたのは妹と母さんの声だった

 

だが、回りは真っ暗、だれもいない

 

聞こえるのは声だけだ

 

「父さん?母さん?皆何処にいるの?」

 

すると、突如として聞こえてきた声がぴたりとやんだ

 

中には、泣くのを我慢しているかのような声が聞こえた

 

「どうして、泣いてるの?」

 

「奏、実はな────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   お前は失明してしまったんだ」

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

……………失…………明

 

「……嘘だ」

 

「奏………」

 

「………嘘だよね?」

 

「……………奏兄さん」

 

嘘だ、そう思ったが、それだと全てに納得がいってしまう

 

そうか、()()()()()()()()()()()()()()んだ

 

理解した、その瞬間、とてつもない感情が押し寄せる

 

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ

 

悲しみ、苦しみ……絶望した

 

目から涙が流れた

 

 

「………嘘だって、言ってよぉ」

 

この日からだ、生きることを諦めたのは

 

心が空っぽになったのは

 

心から絶望したのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あるところに、一人の少年がいた

 

 

その少年は、目が見えなくなった

 

 

突如として発現した病気で失明した

 

 

少年は絶望した

 

それから少し時間がたった

 

だが少年はかわらなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつものように、ベットに寝てボーっとする

 

「あぁ………死にたい」

 

そんなことを呟く

まるで口癖のように僕はそう言葉をこぼしている

点字の勉強にも手を着けず

ただ、ボーッとして1日過ごす

死のうにも、病院だから出来ない

そんなとき、病室のドアをノックする音が聞こえた

 

「どうぞ」

 

「失礼しますよ兄さん」

 

そうしてドアが開くと共に聞こえたのは妹の声だった

 

「さゆ、どうしたの急に?僕なんかに時間を使うのはもったいないよ」

 

「………聴いて欲しいものがあるの」

 

「聴いて欲しいもの?」

 

「うん、少しじっとしててイヤホンつけるから」

 

すると右耳にイヤホンがつけられる

 

「流すね」

 

「うん」

 

次の瞬間、聞こえてきたのは静かな歌だった

 

まるで、失明を悟った時の自分のよう

 

そしてだんだんと曲は強くなっていく

 

まるで、僕を応援しているかのような

 

歌の途中『諦めるな』と言う言葉が聞こえた

 

いつの間にか、自分の中にあった暗い何かがなくなっていた

 

音楽は凄いと思った

 

この人みたいに、僕も歌で誰かを助けたい

 

そう思うようになった

 

「さゆ」

 

「ん?」

 

「ありがとう」

 

「!?……うん、どういたしまして」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あるところに一人の少年がいた

 

彼は、突如として発現した病気で失明した

 

彼は絶望した

 

だが、そんな彼を救ったもの

 

それは『音楽』だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから、僕は沢山の曲を聞き、歌詞を覚えた

 

頑張って点字を覚え、音楽を勉強した

 

だけど僕の体はついてきてはくれなかった

 

聞こえるのは、医療機器がたてる機械的な音

 

そして、家族の泣いているような声が聞こえた

 

手が握られているのがわかる

 

あぁ、もう死ぬのか

 

結局迷惑をかけてばかり

 

僕は誰も救うことは出来なかったのか

 

「みん、な……ごめん…ね」

 

「!?」

 

「兄さん!死なないで!私は……まだ!」

 

さゆの泣きそうな声が聞こえた

 

声を、頼りにさゆの頭を撫でる

 

「さゆ……ありがとね」

 

次の瞬間

 

体から力が抜けるような感覚

 

そしてだんだんと眠くなっていく

 

──────あぁ、せめて誰かを

 

──────────救いたかった

 

 

 

 

 

 

こうして僕、音也 奏(おとや かなで)は死んだ

 

 

 

 

 

 

 




出して欲しい曲は感想へどうぞ
感想、お気に入り登録お待ちしています

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。