初日
周りの人間は俺の事を完璧と言う。
運動も出来て、勉強も出来て、顔もいい、と言うのが俺への評価の大半を占めてるだろう。
谷戸「__おはようございます、亜蘭様。」
亜蘭「......あぁ、おはよう。谷戸。」
普通の住宅街の中ではあまりに異彩を放ちすぎる館、そこの一室で俺、四宮亜蘭は目覚めた。
窓からは朝であることを告げるように陽の光が差しており、横には執事である谷戸要が立っている。
谷戸「本日から学校が始まります、ご用意を。」
亜蘭「あぁ。分かった。」
俺は谷戸にそう告げられると、昨日のうちに用意しておいた制服に着替え、カバンを持ち、ダイニングに向かった。
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ダイニングに来るとそこには、すでに食事が用意されていた。
ダイニングは広く、普通の一軒家の壁を全部ぶち抜いたくらいの広さだ。
まぁ、そこで食事をするのは俺一人なわけだが。
谷戸「__亜蘭様。」
亜蘭「なんだ。」
谷戸「亜蘭様は本日より、今年より合併した花咲川学園に通うことになります。」
亜蘭「分かってる。」
俺が元居た学校は生徒数の減少により存続が不可能になった。
そこで、花咲川女学園、もとい、花咲川学園と合併することになったのだ。
谷戸「合併に先立ちまして、亜蘭様に代表あいさつのお話が来ております。よろしいでしょうか?」
亜蘭「代表あいさつ?生徒会長はどうした?」
谷戸「......その生徒会長が、亜蘭様が相応しいと。」
亜蘭「はぁ、あの生徒会長は。俺はまだ2年だと言うのに。」
谷戸「それで、代表のあいさつはどうされますか?」
亜蘭「仕方ないから受けよう。」
谷戸「かしこまりました。原稿は。」
亜蘭「大丈夫だ。」
谷戸「かしこまりました。」
俺は谷戸と話し終えると、朝食を済ませた。
それから洗面を済ませ、表に出た。
谷戸「__車の用意が出来ております。」
亜蘭「あぁ。」
メイドたち「おはようございます、亜蘭様!」
亜蘭「あぁ、おはよう、皆。」
俺はメイドたちに対応しながら車に乗り込んだ。
うちの車は九割が谷戸の趣味で購入してる。
今回は普通にリムジンだが、他のは割といかついのが多かったりする。」
谷戸「それでは、参りましょう。」
亜蘭「安全運転で頼むぞ。」
谷戸「心得ております。」
そうして、谷戸の運転する車は出発した。
俺は学校に着くまでの時間は本を読んでいた。
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しばらくすると、車が止まった。
俺は窓の外を見た。
谷戸「__花咲川学園に到着いたしました。」
亜蘭「あぁ。」
俺は呼んでいた本を閉じ、カバンを持って車を降りた。
女子「四宮君よー!」
女子2「四宮くーん!」
俺が車を降りると出待ちでもしてたかのように女子が群がってきた。
恐らくこの女子たちは俺が元々いた学校の生徒だろう。
亜蘭「おはよう。」
女子たち「きゃー!///」
亜蘭「皆、ここで騒ぐのはやめておいた方がいい。他の生徒もいるからな。」
女子たち「はい!」
亜蘭「じゃあ、俺は行くよ。」
俺はそう言ってクラス表を見に行った。
花咲川の校舎は木々もあり、良い空気だと思った。
俺はクラス表を確認し、自分の教室に向かった。
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教室に行き、席に着くと、すぐにギャラリーが集まってきた。
元居た学校の生徒なのか花咲川の生徒なのかも分からない。
俺はそんな中、さっきの読書の続きをしていた。
読書の途中、少し窓の外を見てみれば綺麗な桜が見える。
亜蘭(いい季節になった。春はいいな。)
女子「あ、あの四宮君!」
亜蘭「どうした?」
女子「え、えっと、き、今日も良い天気ですね!」
亜蘭「あぁ、そうだね?」
女子「き、今日の気分はいかがですか......?」
亜蘭「そうだね、今良くなったかな?なんて言ったって。」
女子「?」
亜蘭「君のように話しかけてくれる子がいて、とても嬉しかったからね。」
女子「///」
亜蘭「俺と話すときは気楽にしてていいよ。」
これは元居た学校での恒例だった。
毎朝誰かが話しかけてきて気分を聞いてくる、そのたびに俺はこんな感じに対応する。
亜蘭「他の皆も俺の事は気軽に名前で呼んでくれ!遠くから見てないで俺と話をしよう!」
男子「お、おう!」
男子2「なんか、想像とは違うよな!」
男子3「亜蘭は元の学校でもすごくいい奴だったんだぞ!」
男子「まじかよ!」
女子「私も亜蘭君と話すー!」
女子2「私も!」
俺が声をかけると、教室が一気に盛り上がった。
一つの話題がその場にいた全員を繋ぐ、そして交友が深まり、より良い学校生活が送れる。実に素晴らしい光景だ。
放送『__2年A組の四宮亜蘭君、今すぐ職員室に来てください、繰り返します__』
亜蘭「おっと、呼ばれてしまったか。」
女子「えー!」
亜蘭「悪いな。また話そう。」
女子2「うん!行ってらっしゃい!」
男子「いってらっしゃい、亜蘭!」
男子2「亜蘭様ー!」
教室を出るときはそんな声が聞こえてきた。
てか、様って、同級生に使う言葉じゃないな。
俺はそんな事を思いながら職員室に向かった。
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職員室に着くと、そこには俺がいた学校の生徒会長が立っていた。
亜蘭「__お待たせしました。」
鋼「やぁ、おはよう。」
亜蘭「おはようございます。帝先輩。」
この人は帝鋼。
俺がいた学校の生徒会長だ。質実剛健、徹頭徹尾を形にしたようなそんな人だ。
鋼「今回は代表挨拶を引き受けてくれてありがとう。感謝するよ。」
亜蘭「いえ、滅相もない。他ならぬ生徒会長からの頼みですから。」
鋼「そう言ってもらえると助かるよ。」
亜蘭「それで、俺が呼ばれた理由は何でしょうか?」
鋼「あぁ、そうだった。今回の流れの説明をしたくてね。これがプログラムだ。」
亜蘭「どうも......なるほど。」
鋼「君なら大丈夫だと思うが。」
亜蘭「はい。問題ありませんよ。」
鋼「それでは、君は生徒会側にいてくれ。後は僕が合図を出す。」
亜蘭「分かりました。」
俺は渡されたプリントを確認しながら、時間が来るのを待った。
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暫くすると、生徒全員が講堂に集まった。
俺は生徒会と同じ席にいる、生徒会じゃないが。
司会『__それでは、代表挨拶です。四宮亜蘭君、お願いします。』
亜蘭「はい。」
俺は司会に呼ばれると、壇上に上がり話し始めた。
亜蘭『今日、この良き日に新しい学友と出会えた幸福を心より、うれしく思います。__』
俺のあいさつは全く持って普通。
公の場でする挨拶としてはまずまずの回答だろう。
亜蘭『__以上です。』
パチパチパチ!!!
俺が話し終えると大きな握手が響いた。
まるでコンサートの後みたいだなと思った。
鋼「いい挨拶だった。流石、四宮だ。」
亜蘭「ありきたりな内容だと思いますが。」
鋼「そのありきたりな内容であの空気にできるのは正に君の手腕だと思うが?」
亜蘭「まぁ、お褒めにあずかり光栄です。」
?「__お疲れ様でした。四宮さん。」
亜蘭「ありがとうございます。あなたは?」
紗夜「申し遅れました。私は花咲川で生徒会兼風紀委員をしています、氷川紗夜です。」
亜蘭「氷川先輩ですね。知っているとは思いますが、四宮亜蘭です。」
紗夜「はい。先ほどは見事な挨拶でした。」
亜蘭「ありがとうございます。」
?「あ、あの......氷川さん......」
紗夜「白金さん......早く出てきてください。」
燐子「は、はい......」
氷川先輩が呼ぶと、後ろから人が出てきた。
見るからに緊張した様子だ。
燐子「わ、私は......生徒会長をしています......白金燐子......です。」
亜蘭「俺は四宮亜蘭です。よろしくお願いします、白金先輩。」
燐子「よろしく......お願いします。」
亜蘭「えっと、なんかすいません。」
燐子「え......?」
亜蘭「あんな雰囲気では出ずらいのではないかと思いまして。」
燐子「そ、そうですが......大丈夫、です。」
紗夜「白金さん。白金さんの番ですよ。」
燐子「はい......」
氷川先輩に呼ばれると白金先輩は壇上に上がって行った。
白金先輩の挨拶は大方俺の内容と同じだ。
白金先輩は氷川先輩の助けがありつつもほぼ一人であの雰囲気の中、挨拶を終えて見せた。
燐子「__き、緊張......しました......」
紗夜「お疲れ様でした、白金さん。」
燐子「ありがとうございました......氷川さん。」
紗夜「私は何もしていません。白金さんが一人で言いきったんですよ?」
亜蘭「お疲れ様でした。白金先輩、氷川先輩。」
紗夜「四宮さん。」
燐子「し、四宮さん......」
亜蘭「とても素晴らしい挨拶でした。」
燐子「い、いえ......」
鋼「いや、あの雰囲気の中で言いきったんだ誇ってもいい。」
燐子「そ、そうでしょうか......?」
亜蘭「......すいません。」
鋼「まぁ、何はともあれ。僕たちの仕事はこれで終わりだ!」
紗夜「そうですね。改めてよろしくお願いします。」
鋼「あぁ。」
燐子「よろしくお願いします。」
こうして、俺の花咲川での1日目が終わった。
これが、俺の新しい始まりだ。
感想などお願いします
もう一つは明日に投稿します。
四宮亜蘭(しのみやあらん)
同い年、年下にはため口、先輩など目上の人には敬語と弁えた性格をしてる。
大きな館で執事、メイドを抜けば一人暮らし。
谷戸要(やとかなめ)
亜蘭に仕える執事、最も近しい人物。年齢は24歳。
見た目は黒執事のセバスチャン。
見た目の割にいかつい物が好き