体育祭の日になった。
天気はまさに晴天。
谷戸「__本日は絶好の体育祭日和ですね。」
亜蘭「あぁ、そうだな。」
谷戸「家臣一同、亜蘭様を誠心誠意応援いたします。頑張ってください。」
亜蘭「......それは嬉しいんだが。」
谷戸は大きいカメラを三台持ってきてる。
しかも、山に行くときのような荷物も持ってて......体育祭を何だと思っているんだ?
亜蘭「何が入っているんだ、そのかばんは。」
谷戸「撮影機器です。」
亜蘭「体育祭だぞ?」
谷戸「亜蘭様の雄姿を逃さずに収めるためには必要なのです。」
亜蘭「......そうか。」
谷戸は昔から俺の行事の時には撮影機器をフル装備してくる。
まぁ、親バカと言うものだな。
亜蘭「それじゃあ、俺はクラスの方に行く。くれぐれも周りに迷惑はかけないようにな。」
谷戸「心得ております。」
俺はそう言い、クラスの方に向かった。
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女子「亜蘭君おはよー!」
男子「おはよう!」
亜蘭「あぁ、おはよう。」
クラスに来ると皆が一斉に俺の方に来た。
皆、各々今日の意気込みを言ってる。
やる気があっていい事だな。
男子「それじゃあ、今日は亜蘭様に勝利を献上するぞー!」
クラスメイト「おー!!!」
亜蘭(......モチベーションに若干問題があるが。)
勝ち負けよりも楽しむことを考えてほしいんだが。これも一つの楽しみ方と捉えることにした。
紗夜「__宗教ですか?」
亜蘭「氷川先輩。」
紗夜「相変わらず、何と言いますか。」
氷川先輩は俺のクラスの方を見て。
紗夜「......全員、従者か何かでしょうか?」
亜蘭「違いますよ。」
紗夜「まぁ、冗談は置いておいて。」
氷川先輩は話しを仕切りなおした。
紗夜「昨日、ライブの感想を読ませていただきました。」
亜蘭「あ、そうですか。」
紗夜「四宮君は几帳面なのですね。わざわざ各パートの感想を分けて書くなんて。」
亜蘭「素晴らしいライブだったので、折角書くならそうしようかと。」
紗夜「そうですか。ありがとうございます。そういえば。」
亜蘭「?」
紗夜「四宮君はキーボードがお好きなのでしょうか?」
亜蘭「なんでですか?」
紗夜「いえ、白金さんへの感想の手紙が2枚あったので。」
亜蘭「!」
どういう事だ。
2枚?俺は思った通りの事をそのまま書いて行ったはずだ。
だから偏りなんて......
亜蘭(......ダメだ。考えるな。)
紗夜「四宮君?」
亜蘭「いえ、なんでもありません。」
紗夜「?」
亜蘭「少し外します。」
紗夜「四宮君?」
俺は急いでその場を離れた。
亜蘭(考えるな。何も考えるな。)
歩くのが段々と早くなる。
呼吸が荒くなり、汗も流れてくる。
亜蘭(駄目だ。落ち着け、落ち着け。)
こころ「__亜蘭!」
亜蘭「こ、こころ様。」
俺が歩いてるとこころ様と会った。
こころ「どうしたの?急いでるみたいだけれど?」
亜蘭「......いえ、なんでもありません。」
俺は深く呼吸した。
少しだけ冷静になれた。
こころ「亜蘭あなた、笑顔じゃないわね。」
亜蘭「はい?」
こころ「何か焦ってるような顔をしてるわ。」
亜蘭「っ......!」
こころ「亜蘭は昔から何か目標があるみたいだけれど。それにとらわれ過ぎてるわ。」
亜蘭「......」
こころ「もう少し、広い世界を見るといいわ!」
亜蘭(広い、世界......)
こころ「ともかく、今日は体育祭を楽しみましょう!」
亜蘭「はい。こころ様。」
こころ「じゃあ!あたしは行くわね!」
亜蘭「はい。」
こころ様は軽い足取りで歩いて行った。
亜蘭(俺は......)
歯を食いしばった。
『それにとらわれ過ぎてるわ。』
亜蘭(俺はもう、逃れられない。呪いから。)
燐子「四宮君......」
亜蘭「白金先輩。」
少しその場に立ち尽くしてると白金先輩が来た。
燐子「だ、大丈夫ですか......?」
亜蘭「え......?」
燐子「その、苦しそうな顔を......していたので。」
白金先輩は心配そうな顔をしている。
そんなに顔に出てたか、まだまだ未熟だな。
亜蘭「......ははは。大丈夫ですよ?」
燐子「え......?」
亜蘭「多分、遠目だったからそう見えただけですよ。俺はいつも通りです。」
燐子「え、あ、そうですか......」
亜蘭「今日は楽しみましょう、白金先輩。」
燐子「はい......」
亜蘭「では、失礼します。」
そう言って、俺は自分のクラスに戻った。
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少し時間が経って、開会式が始まった。
白金先輩も挨拶をきっちり済ませて、横で氷川先輩が安心していたのが印象的だった。
そうして、開会式も終わり、競技が始まった。
亜蘭(200メートル走はすぐだな。招集場所に行かないと。)
俺は少し急ぎ足で招集場所に向かった。
__招集場所に行くともう、ほとんどの生徒が集まっていた。
亜蘭「お待たせしました。」
女子「あ、亜蘭君!大丈夫だよ!」
男子「これ、ゼッケンです!」
亜蘭「あぁ、ありがとう。」
俺は渡されたゼッケンを着て列に並んだ。
女子「__それでは、入場です!」
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女子「__亜蘭君が来たわよー!」
男子「お前らー!準備だー!」
入場すると、すごく圧力を感じた。
熱気がすごいな。
生徒たち「亜蘭様ー!!!頑張れー!!!」
亜蘭(すごい応援だな。)
俺はその声に手を振ってこたえた。
女子2「あ、亜蘭様が手を......」
女子3「幸せ......」
男子2「これは墓までもっていこう......」
亜蘭(さて、頑張ろうかな。)
そうして、俺の順番が来た。
走者(亜蘭様が同じとは......)
走者2(これはせめて引き立て役にならなくては!)
走者3(どうせ誰も応援しないしな!)
亜蘭「皆、全力で頑張ろう。真剣勝負だ。」
走者「は、はい!」
走者2「頑張らせていただきます!」
走者3「はい!」
『それでは、位置について、よーい......ドン!』
一斉にスタートした。
司会『速い!速すぎます!四宮君の独走状態です!』
司会2『流石、陸上をしていればメダルを取れると言われる四宮君です!』
走者「ですよねー!」
走者2「でもなー!」
走者3「亜蘭様と同じ時に走れるだけで幸せだぞー!」
『ゴール!四宮君の圧勝でした!』
亜蘭「__ふぅ。」
走者「はぁはぁ......」
走者2「す、すごすぎる......」
走者3「俺、一応、陸上部なんだけど......?」
亜蘭「うん。皆全力で走っててよかったぞ。まだまだ始まったばかり、最後まで楽しもう。」
走者たち「はい!」
俺は自分の席に戻っていった。
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次の競技は一番の謎だった借り人競争だ。
いや、ニュアンスは分かる、借り物競争の人バージョンと言う事だろう。
でも、なんでわざわざ人にしたんだろう?
亜蘭(単純に物じゃ不可能なことがある可能性があるからか?確かに学校じゃある物が限られるしな。)
そんな事を考えながら、入場した。
__入場すると、相変わらずの声援。
もしかして、さっきより増えたんじゃ?
そんな事を考えてるうちに競技が始まった。
各々、お題が書かれてるであろう紙を受け取り目的の人を探してる。
亜蘭(男女のペアが多いな。確かお題を考えたのはほとんど女子生徒だったらしいし、そう言うお題が多いのか?)
そう考察してるうちに、俺の番が来た。
『それでは、スタート!』
とりあえず、お題を貰える所に来た。
女子「お題でーす!」
亜蘭「あぁ、ありがとう。」
俺はお題の書かれてる紙を開いた。
亜蘭「__!」
『好きな人もしくは気になる人(恋愛)』
そう書かれていた。
亜蘭(......まさか、こんなお題を引くなんて。)
ふむ、どうしたものか。
前の走者を見た感じではお題を公表されることはない。
なら、誰でもいいから連れて行けばいいんじゃないか、だが、それはポリシーに反する。
亜蘭(......仕方ない。)
俺はある人のもとに向かった。
亜蘭(__えっと......いた。)
見つけた。
亜蘭「白金先輩。」
燐子「え?はい......?」
亜蘭「少し、お時間をいただけないでしょうか。」
燐子「あ、借り人競争ですか......行きましょう。」
亜蘭「ありがとうございます。」
俺は白金先輩を連れてゴールに向かった。
『ゴール!四宮君が1位です!』
亜蘭「ありがとうございました。白金先輩。」
燐子「はい.....それで、どんなお題だったんですか......?」
亜蘭「それは黙秘します。」
燐子「え......?」
流石にこれを見られるのはまずい。
亜蘭「それでは、ここで失礼します。」
燐子「あ......行っちゃった......」
俺は急いでその場を離れた。
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午前の競技が終わり、休憩時間になった。
雫「__亜蘭。」
亜蘭「雫か。」
雫「お昼ご飯、持ってきたよ。」
亜蘭「ありがとう。」
俺は雫からお弁当を受け取った。
雫「懐かしい。」
亜蘭「?」
雫「私も......少し前は体育祭とか......」
亜蘭(雫は大学一年生あったな。思い出を思い出して__)
雫「あ、何もしてなかった。」
亜蘭「何があった?」
雫の予想外の発言に俺は驚いた。
雫「なんか、ずっと料理してたら。」
亜蘭「してたら?」
雫「体育祭とか終わってた。」
亜蘭「......雫らしいな。」
雫「そうでしょ?」
亜蘭「あぁ。」
俺はお弁当を食べながら雫と話してた。
一応、学校では保護者になるのか?
燐子「__あ、四宮君......」
紗夜「こんにちは。」
亜蘭「こんにちは。今からお昼ですか?」
紗夜「はい。ですが食べる場所がなくて。」
亜蘭「よろしければご一緒しますか?俺と雫しかいないので。」
紗夜「いいんですか?」
亜蘭「はい。雫はどうだ?」
雫「私も別にいいよ。」
紗夜「それでは、失礼します。」
燐子「失礼します......」
そう言って二人はシートの上に座った。
そして、お弁当を食べ始めた。
紗夜「__そう言えば、そちらの方は誰なんですか?」
雫「私?」
燐子(と、とってもきれいな人......もしかして彼女さんかも......)
亜蘭「雫は俺の家の専属料理人ですよ。」
雫「そうだよ。亜蘭は私の雇用主。」
紗夜「四宮君のお家の料理人ですか。」
燐子「すごい人......なんでしょうか?」
亜蘭「雫の料理はすごいですよ。」
雫「私は亜蘭に拾われたんだよ。」
亜蘭「いや、あれは引き抜きなんだけどな。」
紗夜「引き抜き?」
雫「うん。一億でね。」
紗夜「一億!?」
亜蘭「?」
燐子「そ、それは......すごいですね。」
雫「しかも、屋敷に住み込みで部屋はホテルのスイートルームより広くて綺麗だよ。」
紗夜「と、とんでもないですね。」
亜蘭「?」
そんな会話をしながら昼食をとった。
燐子「__し、四宮君は......午後は何に出るんですか?」
亜蘭「俺は後はチーム対抗リレーですね。」
燐子「あ......」
亜蘭「?」
燐子「私も......出ますよ。」
亜蘭「白金先輩もですか、頑張りましょう。」
意外だな。
白金先輩はリレーに出るとは思わなかった。
いや、もしかしたら意外とそう言う人なのか?
燐子(余った競技だったけど......四宮君と一緒。ラッキー、ですね。)
そうして、午後の競技が始まった。
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午後の競技が始まった。
チーム対抗リレーは最初だ。
俺は集合して、入場した。
亜蘭(俺はアンカーか?)
特に順番を決めた覚えはないが自然にアンカーになってた。
白金先輩は俺の前の走者だ。
燐子(き、緊張する。迷惑をかけないようにしないと......)
亜蘭(表情が硬いな。大丈夫だろうか。)
そう思ってるうちに、リレーが始まった。
司会『さぁ始まりました、チーム対抗リレー!』
司会2『四宮君のいる青チームは2位!』
司会『おーっと!緑チームが追い上げてきたー!』
リレーは接戦だ。
順位の変動も激しく、見ごたえがある。
司会『さぁ、第5走者!この時点で青チームが一位です!』
司会2『ほかのチームはここで順位を上げないと負けですよー!』
司会『おーっと?青チームが段々詰められています!』
司会2『生徒会長は運動が苦手ですからね。』
確かに、かなり詰められてる。
燐子(__も、もうすぐ。抜かされて迷惑をかけたら__)
「きゃ!」
亜蘭「!」
白金先輩が転んでしまった。
その間に他のチームに抜かされた。
司会『ここで青チームが最下位になってしまったー!』
司会2『これは流石に亜蘭君でも厳しいんじゃ?』
燐子(やっちゃった......み、皆さんの迷惑に......やっぱり私は......)
亜蘭「__白金先輩!」
燐子「し、四宮君......?(四宮君にも呆れられたのかな......)」
亜蘭「諦めたらダメです!」
燐子「え?」
亜蘭「俺がどうにかします!」
燐子(四宮君......!)
白金先輩が走ってきた。
俺はバトンを受け取った。
亜蘭「任せておいてください。」
燐子「!」
俺は走り出した。
司会『おーっと!四宮君速い!』
司会2『最初の200メートル走より数段速いです!しかもアンカーは2周、追いつけるか!?』
司会『赤チームを抜かしたー!』
司会2『え?もう黄、オレンジチームも抜かしたぁ!?』
亜蘭(急げ、急げ。もっと早く。)
燐子「四宮君......」
司会『さぁ!1位の緑チームもすぐそこだー!』
司会2『速い速い!まだスピードが上がっています!』
司会『これは、一体どうなっているんだー!』
緑走者(え?もう来た__)
司会『お、お、追い抜いたー!』
司会2『ご、ごぼう抜きー!すごい!すごすぎます!』
司会『約12mさをひっくり返したー!』
司会2『なお、スピードは上がっています!どこまで行くんだー!』
俺はゴールテープを切った。
司会『ゴール!!!』
観客『うおぉぉぉぉぉぉお!』
司会2『劇的な結末!青チームの勝利です!』
亜蘭「__ふぅ。」
よかった。なんとか一位になれた。
燐子「し、四宮君......!」
亜蘭「白金先輩。」
白金先輩が駆け寄ってきた。
亜蘭「なんとか、なりました。」
燐子「そ、その......ありがとうございました。」
亜蘭「大丈夫ですよ。気に病まないでください。」
俺は笑顔でそう言った。
燐子「......その、とっても、かっこよかった......です......///」
亜蘭「?」
燐子「い、いえ......///」
亜蘭「あ、けがなどはないでしょうか?」
燐子「はい......大丈夫です。」
亜蘭「よかった......」
肩の力が抜けた気がした。
亜蘭(......白金先輩を守れてよかった。)
ただただ、そう思う。
本来なら皆の頑張りを受け取って走らないといけないのに、白金先輩だけのために走ってしまった。
理由なんて明白だ。でも、今の俺じゃ駄目なんだ。
亜蘭(認めよう。俺は白金先輩が好きだと。でも。)
俺は拳を握りしめた。
亜蘭(今の俺なんかじゃ、胸を張ってそれを告げることは出来ない。)
燐子「四宮君......?」
亜蘭「あ、申し訳ない。考え事をしていました。」
燐子「いえ......本当にありがとうございました。」
亜蘭「はい。」
燐子「......」
白金先輩はじっとこちらを見つめている。
どうしたんだろうか。
燐子「じゃ、じゃあ、私は仕事に戻りますね......!///」
亜蘭「え?はい。」
燐子「そ、それでは......///」
そう言って白金先輩はどこかに走って行った。
亜蘭(......この感情は封印しなければならない。だって。)
俺は探してるんだ、ずっと。
『失った愛』を。
俺は空を見上げた。
亜蘭(それを見つけるまで、俺は......)
その時吹いた風はどこか冷たく感じた。
こうして、俺の体育祭は終わった。
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