本当に欲しいもの   作:火の車

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10話です


体育祭の日

 体育祭の日になった。

 天気はまさに晴天。

 

谷戸「__本日は絶好の体育祭日和ですね。」

亜蘭「あぁ、そうだな。」

谷戸「家臣一同、亜蘭様を誠心誠意応援いたします。頑張ってください。」

亜蘭「......それは嬉しいんだが。」

 

 谷戸は大きいカメラを三台持ってきてる。

 しかも、山に行くときのような荷物も持ってて......体育祭を何だと思っているんだ?

 

亜蘭「何が入っているんだ、そのかばんは。」

谷戸「撮影機器です。」

亜蘭「体育祭だぞ?」

谷戸「亜蘭様の雄姿を逃さずに収めるためには必要なのです。」

亜蘭「......そうか。」

 

 谷戸は昔から俺の行事の時には撮影機器をフル装備してくる。

 まぁ、親バカと言うものだな。

 

亜蘭「それじゃあ、俺はクラスの方に行く。くれぐれも周りに迷惑はかけないようにな。」

谷戸「心得ております。」

 

 俺はそう言い、クラスの方に向かった。

__________________

 

女子「亜蘭君おはよー!」

男子「おはよう!」

亜蘭「あぁ、おはよう。」

 

 クラスに来ると皆が一斉に俺の方に来た。

 皆、各々今日の意気込みを言ってる。

 やる気があっていい事だな。

 

男子「それじゃあ、今日は亜蘭様に勝利を献上するぞー!」

クラスメイト「おー!!!」

亜蘭(......モチベーションに若干問題があるが。)

 

 勝ち負けよりも楽しむことを考えてほしいんだが。これも一つの楽しみ方と捉えることにした。

 

紗夜「__宗教ですか?」

亜蘭「氷川先輩。」

紗夜「相変わらず、何と言いますか。」

 

 氷川先輩は俺のクラスの方を見て。

 

紗夜「......全員、従者か何かでしょうか?」

亜蘭「違いますよ。」

紗夜「まぁ、冗談は置いておいて。」

 

 氷川先輩は話しを仕切りなおした。

 

紗夜「昨日、ライブの感想を読ませていただきました。」

亜蘭「あ、そうですか。」

紗夜「四宮君は几帳面なのですね。わざわざ各パートの感想を分けて書くなんて。」

亜蘭「素晴らしいライブだったので、折角書くならそうしようかと。」

紗夜「そうですか。ありがとうございます。そういえば。」

亜蘭「?」

紗夜「四宮君はキーボードがお好きなのでしょうか?」

亜蘭「なんでですか?」

紗夜「いえ、白金さんへの感想の手紙が2枚あったので。」

亜蘭「!」

 

 どういう事だ。

 2枚?俺は思った通りの事をそのまま書いて行ったはずだ。

 だから偏りなんて......

 

亜蘭(......ダメだ。考えるな。)

紗夜「四宮君?」

亜蘭「いえ、なんでもありません。」

紗夜「?」

亜蘭「少し外します。」

紗夜「四宮君?」

 

 俺は急いでその場を離れた。

 

亜蘭(考えるな。何も考えるな。)

 

 歩くのが段々と早くなる。

 呼吸が荒くなり、汗も流れてくる。

 

亜蘭(駄目だ。落ち着け、落ち着け。)

こころ「__亜蘭!」

亜蘭「こ、こころ様。」

 

 俺が歩いてるとこころ様と会った。

 

こころ「どうしたの?急いでるみたいだけれど?」

亜蘭「......いえ、なんでもありません。」

 

 俺は深く呼吸した。

 少しだけ冷静になれた。

 

こころ「亜蘭あなた、笑顔じゃないわね。」

亜蘭「はい?」

こころ「何か焦ってるような顔をしてるわ。」

亜蘭「っ......!」

こころ「亜蘭は昔から何か目標があるみたいだけれど。それにとらわれ過ぎてるわ。」

亜蘭「......」

こころ「もう少し、広い世界を見るといいわ!」

亜蘭(広い、世界......)

こころ「ともかく、今日は体育祭を楽しみましょう!」

亜蘭「はい。こころ様。」

こころ「じゃあ!あたしは行くわね!」

亜蘭「はい。」

 

 こころ様は軽い足取りで歩いて行った。

 

亜蘭(俺は......)

 

 歯を食いしばった。

 

『それにとらわれ過ぎてるわ。』

 

亜蘭(俺はもう、逃れられない。呪いから。)

燐子「四宮君......」

亜蘭「白金先輩。」

 

 少しその場に立ち尽くしてると白金先輩が来た。

 

燐子「だ、大丈夫ですか......?」

亜蘭「え......?」

燐子「その、苦しそうな顔を......していたので。」

 

 白金先輩は心配そうな顔をしている。

 そんなに顔に出てたか、まだまだ未熟だな。

 

亜蘭「......ははは。大丈夫ですよ?」

燐子「え......?」

亜蘭「多分、遠目だったからそう見えただけですよ。俺はいつも通りです。」

燐子「え、あ、そうですか......」

亜蘭「今日は楽しみましょう、白金先輩。」

燐子「はい......」

亜蘭「では、失礼します。」

 

 そう言って、俺は自分のクラスに戻った。

__________________

 

 少し時間が経って、開会式が始まった。

 白金先輩も挨拶をきっちり済ませて、横で氷川先輩が安心していたのが印象的だった。

 そうして、開会式も終わり、競技が始まった。

 

亜蘭(200メートル走はすぐだな。招集場所に行かないと。)

 

 俺は少し急ぎ足で招集場所に向かった。

 

__招集場所に行くともう、ほとんどの生徒が集まっていた。

 

亜蘭「お待たせしました。」

女子「あ、亜蘭君!大丈夫だよ!」

男子「これ、ゼッケンです!」

亜蘭「あぁ、ありがとう。」

 

 俺は渡されたゼッケンを着て列に並んだ。

 

女子「__それでは、入場です!」

__________________

 

女子「__亜蘭君が来たわよー!」

男子「お前らー!準備だー!」

 

 入場すると、すごく圧力を感じた。

 熱気がすごいな。

 

生徒たち「亜蘭様ー!!!頑張れー!!!」

亜蘭(すごい応援だな。)

 

 俺はその声に手を振ってこたえた。

 

女子2「あ、亜蘭様が手を......」

女子3「幸せ......」

男子2「これは墓までもっていこう......」

 

亜蘭(さて、頑張ろうかな。)

 

 そうして、俺の順番が来た。

 

走者(亜蘭様が同じとは......)

走者2(これはせめて引き立て役にならなくては!)

走者3(どうせ誰も応援しないしな!)

亜蘭「皆、全力で頑張ろう。真剣勝負だ。」

走者「は、はい!」

走者2「頑張らせていただきます!」

走者3「はい!」

 

『それでは、位置について、よーい......ドン!』

 

 一斉にスタートした。

 

司会『速い!速すぎます!四宮君の独走状態です!』

司会2『流石、陸上をしていればメダルを取れると言われる四宮君です!』

 

走者「ですよねー!」

走者2「でもなー!」

走者3「亜蘭様と同じ時に走れるだけで幸せだぞー!」

 

『ゴール!四宮君の圧勝でした!』

 

亜蘭「__ふぅ。」

走者「はぁはぁ......」

走者2「す、すごすぎる......」

走者3「俺、一応、陸上部なんだけど......?」

亜蘭「うん。皆全力で走っててよかったぞ。まだまだ始まったばかり、最後まで楽しもう。」

走者たち「はい!」

 

 俺は自分の席に戻っていった。

__________________

 

 次の競技は一番の謎だった借り人競争だ。 

 いや、ニュアンスは分かる、借り物競争の人バージョンと言う事だろう。

 でも、なんでわざわざ人にしたんだろう?

 

亜蘭(単純に物じゃ不可能なことがある可能性があるからか?確かに学校じゃある物が限られるしな。)

 

 そんな事を考えながら、入場した。

 

__入場すると、相変わらずの声援。

 もしかして、さっきより増えたんじゃ?

 そんな事を考えてるうちに競技が始まった。

 各々、お題が書かれてるであろう紙を受け取り目的の人を探してる。

 

亜蘭(男女のペアが多いな。確かお題を考えたのはほとんど女子生徒だったらしいし、そう言うお題が多いのか?)

 

 そう考察してるうちに、俺の番が来た。

 

『それでは、スタート!』

 

 とりあえず、お題を貰える所に来た。

 

女子「お題でーす!」

亜蘭「あぁ、ありがとう。」

 

 俺はお題の書かれてる紙を開いた。

 

亜蘭「__!」

 

 『好きな人もしくは気になる人(恋愛)』

 そう書かれていた。

 

亜蘭(......まさか、こんなお題を引くなんて。)

 

 ふむ、どうしたものか。

 前の走者を見た感じではお題を公表されることはない。

 なら、誰でもいいから連れて行けばいいんじゃないか、だが、それはポリシーに反する。

 

亜蘭(......仕方ない。)

 

 俺はある人のもとに向かった。

 

亜蘭(__えっと......いた。)

 

 見つけた。

 

亜蘭「白金先輩。」

燐子「え?はい......?」

亜蘭「少し、お時間をいただけないでしょうか。」

燐子「あ、借り人競争ですか......行きましょう。」

亜蘭「ありがとうございます。」

 

 俺は白金先輩を連れてゴールに向かった。

 

『ゴール!四宮君が1位です!』

 

亜蘭「ありがとうございました。白金先輩。」

燐子「はい.....それで、どんなお題だったんですか......?」

亜蘭「それは黙秘します。」

燐子「え......?」

 

 流石にこれを見られるのはまずい。

 

亜蘭「それでは、ここで失礼します。」

燐子「あ......行っちゃった......」

 

 俺は急いでその場を離れた。

__________________

 

 午前の競技が終わり、休憩時間になった。

 

雫「__亜蘭。」

亜蘭「雫か。」

雫「お昼ご飯、持ってきたよ。」

亜蘭「ありがとう。」

 

 俺は雫からお弁当を受け取った。

 

雫「懐かしい。」

亜蘭「?」

雫「私も......少し前は体育祭とか......」

亜蘭(雫は大学一年生あったな。思い出を思い出して__)

雫「あ、何もしてなかった。」

亜蘭「何があった?」

 

 雫の予想外の発言に俺は驚いた。

 

雫「なんか、ずっと料理してたら。」

亜蘭「してたら?」

雫「体育祭とか終わってた。」

亜蘭「......雫らしいな。」

雫「そうでしょ?」

亜蘭「あぁ。」

 

 俺はお弁当を食べながら雫と話してた。

 一応、学校では保護者になるのか?

 

燐子「__あ、四宮君......」

紗夜「こんにちは。」

亜蘭「こんにちは。今からお昼ですか?」

紗夜「はい。ですが食べる場所がなくて。」

亜蘭「よろしければご一緒しますか?俺と雫しかいないので。」

紗夜「いいんですか?」

亜蘭「はい。雫はどうだ?」

雫「私も別にいいよ。」

紗夜「それでは、失礼します。」

燐子「失礼します......」

 

 そう言って二人はシートの上に座った。

 そして、お弁当を食べ始めた。

 

紗夜「__そう言えば、そちらの方は誰なんですか?」

雫「私?」

燐子(と、とってもきれいな人......もしかして彼女さんかも......)

亜蘭「雫は俺の家の専属料理人ですよ。」

雫「そうだよ。亜蘭は私の雇用主。」

紗夜「四宮君のお家の料理人ですか。」

燐子「すごい人......なんでしょうか?」

亜蘭「雫の料理はすごいですよ。」

雫「私は亜蘭に拾われたんだよ。」

亜蘭「いや、あれは引き抜きなんだけどな。」

紗夜「引き抜き?」

雫「うん。一億でね。」

紗夜「一億!?」

亜蘭「?」

燐子「そ、それは......すごいですね。」

雫「しかも、屋敷に住み込みで部屋はホテルのスイートルームより広くて綺麗だよ。」

紗夜「と、とんでもないですね。」

亜蘭「?」

 

 そんな会話をしながら昼食をとった。

 

燐子「__し、四宮君は......午後は何に出るんですか?」

亜蘭「俺は後はチーム対抗リレーですね。」

燐子「あ......」

亜蘭「?」

燐子「私も......出ますよ。」

亜蘭「白金先輩もですか、頑張りましょう。」

 

 意外だな。

 白金先輩はリレーに出るとは思わなかった。

 いや、もしかしたら意外とそう言う人なのか?

 

燐子(余った競技だったけど......四宮君と一緒。ラッキー、ですね。)

 

 そうして、午後の競技が始まった。

__________________

 

 午後の競技が始まった。

 チーム対抗リレーは最初だ。

 俺は集合して、入場した。

 

亜蘭(俺はアンカーか?)

 

 特に順番を決めた覚えはないが自然にアンカーになってた。

 白金先輩は俺の前の走者だ。

 

燐子(き、緊張する。迷惑をかけないようにしないと......)

亜蘭(表情が硬いな。大丈夫だろうか。)

 

 そう思ってるうちに、リレーが始まった。

 

司会『さぁ始まりました、チーム対抗リレー!』

司会2『四宮君のいる青チームは2位!』

司会『おーっと!緑チームが追い上げてきたー!』

 

 リレーは接戦だ。

 順位の変動も激しく、見ごたえがある。

 

司会『さぁ、第5走者!この時点で青チームが一位です!』

司会2『ほかのチームはここで順位を上げないと負けですよー!』

司会『おーっと?青チームが段々詰められています!』

司会2『生徒会長は運動が苦手ですからね。』

 

 確かに、かなり詰められてる。

 

燐子(__も、もうすぐ。抜かされて迷惑をかけたら__)

  「きゃ!」

亜蘭「!」

 

 白金先輩が転んでしまった。

 その間に他のチームに抜かされた。

 

司会『ここで青チームが最下位になってしまったー!』

司会2『これは流石に亜蘭君でも厳しいんじゃ?』

 

燐子(やっちゃった......み、皆さんの迷惑に......やっぱり私は......)

亜蘭「__白金先輩!」

燐子「し、四宮君......?(四宮君にも呆れられたのかな......)」

亜蘭「諦めたらダメです!」

燐子「え?」

亜蘭「俺がどうにかします!」

燐子(四宮君......!)

 

 白金先輩が走ってきた。

 俺はバトンを受け取った。

 

亜蘭「任せておいてください。」

燐子「!」

 

 俺は走り出した。

 

司会『おーっと!四宮君速い!』

司会2『最初の200メートル走より数段速いです!しかもアンカーは2周、追いつけるか!?』

司会『赤チームを抜かしたー!』

司会2『え?もう黄、オレンジチームも抜かしたぁ!?』

 

亜蘭(急げ、急げ。もっと早く。)

燐子「四宮君......」

 

司会『さぁ!1位の緑チームもすぐそこだー!』

司会2『速い速い!まだスピードが上がっています!』

司会『これは、一体どうなっているんだー!』

 

緑走者(え?もう来た__)

 

司会『お、お、追い抜いたー!』

司会2『ご、ごぼう抜きー!すごい!すごすぎます!』

司会『約12mさをひっくり返したー!』

司会2『なお、スピードは上がっています!どこまで行くんだー!』

 

 俺はゴールテープを切った。

 

司会『ゴール!!!』

 

観客『うおぉぉぉぉぉぉお!』

 

司会2『劇的な結末!青チームの勝利です!』

 

亜蘭「__ふぅ。」

 

 よかった。なんとか一位になれた。

 

燐子「し、四宮君......!」

亜蘭「白金先輩。」

 

 白金先輩が駆け寄ってきた。

 

亜蘭「なんとか、なりました。」

燐子「そ、その......ありがとうございました。」

亜蘭「大丈夫ですよ。気に病まないでください。」

 

 俺は笑顔でそう言った。

 

燐子「......その、とっても、かっこよかった......です......///」

亜蘭「?」

燐子「い、いえ......///」

亜蘭「あ、けがなどはないでしょうか?」

燐子「はい......大丈夫です。」

亜蘭「よかった......」

 

 肩の力が抜けた気がした。

 

亜蘭(......白金先輩を守れてよかった。)

 

 ただただ、そう思う。

 本来なら皆の頑張りを受け取って走らないといけないのに、白金先輩だけのために走ってしまった。

 理由なんて明白だ。でも、今の俺じゃ駄目なんだ。

 

亜蘭(認めよう。俺は白金先輩が好きだと。でも。)

 

 俺は拳を握りしめた。

 

亜蘭(今の俺なんかじゃ、胸を張ってそれを告げることは出来ない。)

燐子「四宮君......?」

亜蘭「あ、申し訳ない。考え事をしていました。」

燐子「いえ......本当にありがとうございました。」

亜蘭「はい。」

燐子「......」

 

 白金先輩はじっとこちらを見つめている。

 どうしたんだろうか。

 

燐子「じゃ、じゃあ、私は仕事に戻りますね......!///」

亜蘭「え?はい。」

燐子「そ、それでは......///」

 

 そう言って白金先輩はどこかに走って行った。

 

亜蘭(......この感情は封印しなければならない。だって。)

 

 俺は探してるんだ、ずっと。

 『失った愛』を。

 

 俺は空を見上げた。

 

亜蘭(それを見つけるまで、俺は......)

 

 その時吹いた風はどこか冷たく感じた。

 

 こうして、俺の体育祭は終わった。

 

 




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