本当に欲しいもの   作:火の車

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11話です


呪いの子

 体育祭も終わり、今日は休日。

 特に今日は予定もなく、落ち着いた休日なんだが......

 

亜蘭「__久しぶりだな。」

 

 俺はとある荒れ果てたアパートに来ていた。

 目に見える金属はさび付いてて、階段も所々抜けてる。

 

亜蘭「......谷戸、覚えているか。」

谷戸「はい。」

亜蘭「ここに、手がかりがあるかもしれない。」

 

 俺はある部屋の前に止まった。

 鍵はかけられてなくひどく不用心だ。

 まぁ、取るものなんて何も残ってはいないが。

 

亜蘭「入るぞ。」

谷戸「はい。」

 

 俺たちは部屋に入った。

 

 部屋は畳も破れてて、窓ガラスも割れてる。

 とても人が住んでたとは思えない。

 

亜蘭(ここはどうだ。何か......ん?)

 

 引き出しの中に一枚の写真。

 立ててられるようにケースに入れられてる。

 

亜蘭(これは__っ!)

 

 ガシャン!

 

 俺はその写真を投げ捨てた。

 

亜蘭(......ダメだったか。)

谷戸「亜蘭様?」

亜蘭「......谷戸、帰るぞ。ここは駄目だった。」

谷戸「はい。かしこまりました。」

 

 俺は部屋を出た。

 

谷戸(......ひどい物です。)

 

 亜蘭が投げ捨てた写真には3人の家族が写ってる。

 だが、その写真の子供の顔には大きなバツ印が書かれている。

 

谷戸(一体、誰が呼んだのか。呪いの子と......)

亜蘭「__谷戸、何をしている。」

谷戸「申し訳ありません。今すぐに。」

__________________

 

燐子「__四宮君......?」

紗夜「え?」

亜蘭「白金先輩と氷川先輩?」

 

 アパートから出ると二人がいた。

 氷川先輩はギターケースを背負っている。

 おそらく、バンドの練習の帰りだろう。

 

亜蘭「奇遇ですね。こんなところでお会いするなんて。」

紗夜「えぇ。でも、四宮君は何をしていたのですか?そこの建物から出て来たようですが?」

亜蘭「少し用がありまして。」

紗夜「こんなアパートにですか?」

亜蘭「まぁ、色々ありまして。」

燐子「色々......ですか?」

亜蘭「はい、色々です。」

 

 流石に人に話すことではない。

 上手く誤魔化さないと。

 

谷戸「__亜蘭様、お車の用意が__おや?」

 

 話していると車の用意を終えた谷戸がこちらに来た。

 

谷戸「これはこれは、白金様に氷川様。」

紗夜「こんにちは。」

燐子「こんにちは......」

亜蘭「車の用意が出来たのか。それじゃあ__」

 

 俺が車に向かおうとすると谷戸が口を開いた。

 

谷戸「__お二人はこの後、ご予定はおありでしょうか?」

亜蘭「!?」

紗夜「予定ですか?特にはありません。」

燐子「私も......」

谷戸「それでは、この後、亜蘭様の屋敷にお越しいただけないでしょうか?」

紗夜、燐子「え?」

亜蘭「谷戸?」

谷戸「本日、亜蘭様は予定がありませんので時間を持て余しているのです。」

亜蘭「まぁ、確かにそうだが。」

谷戸「ですので、亜蘭様のご友人に来ていただければ嬉しいのですが。」

紗夜「私は問題ないですが。」

燐子「私も......大丈夫です......」

亜蘭(まぁ、別にいいか。)

谷戸「それでは、参りましょう。」

 

 俺たちは車に乗り込んだ。

__________________

 

 ”車内”

 

紗夜「__すごい車ですね。」

亜蘭「そうですか?」

紗夜「おおよそ庶民には縁遠いですよ。」

燐子「き、緊張します......」

亜蘭「そんなに緊張しなくてもいいと思いますが。」

 

 確かに乗用車とは違う部分も多々あるが、そんなにかな?

 

紗夜(この機会に白金さんと四宮君を。)

燐子(す、少しくらい話せれば......)

亜蘭(......大丈夫。感情のコントロールは出来てる。)

 

 そうして、屋敷に向かって行った。

__________________

 

メイド、執事「__いらっしゃいませ、お客様!」

 

 屋敷に着き、車を降りるといつも通り迎えが来た。

 

亜蘭「あぁ、ただいま。」

紗夜「め、メイドに執事?」

亜蘭「?」

燐子「ま、漫画みたいです......」

谷戸「それでは、客室にご案内いたします。」

 

 俺たちは屋敷の中に入った。

__________________

 

紗夜(広いですね。)

燐子(お、お腹痛くなりそう......)

 

 客室はある人物を招くのを前提としてる。

 弦巻様だ。

 過去に2度、ここに来る機会があったが、それはもう肝を冷やした。

 

谷戸「お飲み物です。」

紗夜「ありがとうございます。」

燐子「あ、ありがとうございます......」

亜蘭「それで、ここで何をするんだ。」

谷戸「そうですね。聞く話では談笑でしょうか。」

亜蘭「ふむ。」

 

 よく考えれば花咲川と合併してから、この二人とはかかわりが深い気がする。

 そんな二人なら多少は大丈夫か。

 

紗夜「四宮君はここにどのくらい住んでいるのですか?」

亜蘭「そうですね......9歳くらいからでしょうか?」

燐子「そんなときから......?」

谷戸「はい。」

亜蘭「なんだかんだ、ここに住んで長いな。」

 

 もう、8年も経つのか。

 

亜蘭「最初は俺と谷戸だけだったのに、こんなに人が増えたんだな。」

谷戸「はい。感慨深いですね。」

紗夜「そう言えば、ここに来るまでメイドさんや執事さんには会いましたがお父様やお母様はいらっしゃらないんですか?」

燐子「そう言えば......」

亜蘭「......」

紗夜「あの、ご両親などは__」

亜蘭「すみません。少し外します。」

 

 俺は部屋を出た。

 

紗夜「四宮君!?」

谷戸「......やはり、気になりますか。」

燐子「え......?」

紗夜「と、ともかく私は四宮君を追いかけます。」

 

 紗夜は部屋から出て行った。

 

燐子「ひ、氷川さん......!」

谷戸「白金様。」

燐子「は、はい......?」

谷戸「氷川様は亜蘭様を追っていただいて構いませんが。白金様には私から話させていただきたいのです。

燐子「話ですか......?」

谷戸「白金様は今、亜蘭様に最も......」

燐子「?」

谷戸「......いえ。では、お話いたしましょう。亜蘭様の過去を。」

燐子「!」

__________________

 

紗夜「__四宮君。」

亜蘭「氷川先輩。よくここが分かりましたね。」

 

 俺はベランダにいる。

 真ん中には机といすが置かれてて落ち着くのにはもってこいだ。

 

紗夜「あなたはなんで、両親の話を嫌がるのですか?」

亜蘭「......お話しする事でもないですよ。」

紗夜「そうかもしれないですね。でも、何でも持っているあなたには見えない事も見えるかもしれないです。」

亜蘭「何でも持ってる......」

紗夜「?」

亜蘭「俺は何を持っているんですか?」

紗夜「それこそ、学力も運動能力も富も人望も何もかも持っているでしょう。」

亜蘭「それは違いますよ。」

紗夜「え?」

 

 俺は自分の手を見た。

 確かに、俺はなんでもしてきた。

 運動も勉強もなんでも。

 それで結果を出してきた自覚もある。でも。

 

亜蘭「これは全て呪いで、本当に欲しいものは何も持っていないんです。」

紗夜「え......?」

亜蘭「ですが、お話ししましょう。座ってください。」

紗夜「はい。失礼します。」

 

 氷川先輩は俺の前にある椅子に座った。

 

亜蘭「それでは、お話ししましょう。俺、呪いの子の過去を。」

紗夜「呪いの子......?」

 

 俺は静かに語り始めた。

 




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