6月の雨
あの出来事から5日ほど経ち、6月に入った。
あれからまるで世界が変わったように輝いて見える。
亜蘭「__おはよう、谷戸。」
谷戸「おはようございます。亜蘭様。」
亜蘭「あぁ。」
谷戸「亜蘭様が朝早くに出てくるのは珍しいですね。」
亜蘭「まぁ、そう言う気分だったんだ。それじゃ、俺は庭を散歩してくる。」
谷戸「はい。」
俺は庭の方に歩いて行った。
谷戸(亜蘭様、こんなに明るくなられて......)
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亜蘭「__いい天気だな。」
庭に出ると、太陽の光に照らされた。
暖かい太陽が気持ちい。
亜蘭「ん?」
庭を眺めながら歩いてると二つの花が目に入った。
亜蘭「青いバラ?それにこれは......」
確か、冬椿、だったか。
でも、こんな花あったか?
メイド「亜蘭様?どうかなさりましたか?」
亜蘭「この花はどうした?今まではなかったよな?」
メイド「あぁ、それは谷戸さんが取り寄せて植えたものです。」
亜蘭「谷戸が?こんな趣味があったか?」
谷戸の趣味はどちらかと言うと迷彩柄とかベンツとかそう言うのが好きなはずだ。
花を植えて喜ぶような趣味じゃないはずだ......
亜蘭「......まぁ、いいか。花が増えるのは良い事だ。」
メイド「ふふ、そうですね。」
亜蘭「それにしても、青いバラなんてよく仕入れたな。確か品種改良だったはずだが。」
いい色だ。
確か、青いバラと言えば白金先輩が所属してるバンドのロゼリアのマークであったはず。
でも、バラだけだとローズだし、何かもう一つ花を組み合わせたのか?
亜蘭「ふむ......」
少し考えてみた。
分からないな。
亜蘭「まぁ、考えても分からないな。」
俺は立ち上がった。
亜蘭「俺は戻るよ。」
メイド「はい。かしこまりました。」
俺は屋敷に戻った。
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屋敷に戻ると俺はダイニングに向かった。
亜蘭「__なんだ、これは。」
テーブルには何かのパーティーかと思うほどの料理だった。
誰かの誕生日か?
雫「......亜蘭が明るくなった記念。」
亜蘭「なんだそれは。」
雫「あと、彼女出来た記念。」
亜蘭「いや、まだいない。」
雫「......まだ、ね。」
亜蘭「からかうのはやめろ。」
俺は頭を抱えた。
雫「困ったことがあったら相談していいからね。」
亜蘭「......なんでそんなに楽しそうなんだ。」
雫「......年頃の女の子だから?」
亜蘭「なぜ疑問形なんだ......事実そうだろう。」
雫「まぁ、お祝いの料理。どうぞ。」
亜蘭「あぁ、いただくよ。」
その後、俺は大量の料理を食べた。
どう考えても朝に食べる量ではなかったが、まぁ、美味しかったからいいだろう。
朝食を食べ終えると、俺はいつも通り登校した。
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学校に着くと、俺はいつも通り人に囲まれた。
亜蘭「おはよう、皆。」
生徒たち「おはようございます!!」
もう慣れたもので上手く人をよけながら校舎に向かう。
その時、ある人が目に映った。
亜蘭「白金先輩!」
燐子「あ、四宮君......」
亜蘭「おはようございます、白金先輩。」
燐子「おはようございます......」
亜蘭「お早いですね。」
燐子「今日は......生徒会のお仕事があって......」
亜蘭「そうなのですか。」
いつもならここで終わり。
だが、今日は、いや、今日からは違うぞ。
雫が言っていた、アピールをするうちに自身も磨かれると。
亜蘭「僭越ながら俺もお手伝いしてもいいでしょうか。」
燐子「え......いいんですか......?」
亜蘭「はい。この前のお礼もあるので、白金先輩の役に立たせてください。」
燐子「そういう事なら......」
亜蘭「では、行きましょうか。」
燐子「はい。」
俺は白金先輩と生徒会室に向かった。
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燐子「__おはようございます......」
亜蘭「おはようございます。」
紗夜「おはようございます。って、四宮君も。」
有咲「おはようございまーす。」
生徒会室に入ると、氷川先輩と市ヶ谷さんがいた。
生徒会の仕事をしているようだ。
紗夜(白金さんと来るなんて、関心ね。)
有咲「なんで四宮君がいるんですか?」
亜蘭「僭越ながら生徒会の仕事を手伝わせてもらおうと思って。」
紗夜「ありがたいですね。何せこの時期の仕事は意外と多いので。」
亜蘭「それで、どれをすればいいでしょうか?」
燐子「えっと......まずは......」
俺は白金先輩に説明を受けて仕事を始めた。
亜蘭(よし、気合を入れろ。ここで役に立て。)
集中、今までにないくらい集中しろ。
機械になれ、機械を超えろ。
紗夜「......な、何か、鬼気迫るものがありますね。」
有咲「て、てか、手つきがおかしいぞ......?」
燐子「か、かっこいい......///」
紗夜、有咲「え!?」
亜蘭(速く、もっと......)
どんなに集中したのか、気付けば書類が片付いていた。
亜蘭「えっと、後は......あ、白金先輩。」
燐子「はい?」
亜蘭「生徒会長の確認が必要な書類です。」
燐子「はい......って、どこを確認すれば......」
亜蘭「ここですよ。」
燐子「えっと......」
亜蘭「えっと、失礼しますね。」
燐子「!///」
俺は白金先輩に近づいて、書類の場所を指さした。
亜蘭「ここの......って、どうかしましたか?」
燐子「え、あ!ご、ごめんなさい......///」
亜蘭「えっと、書類の確認は。」
燐子「はい。こちらでしておきますね......」
亜蘭「はい。お願いします。」
有咲「紗夜先輩、あの二人って......」
紗夜「付き合っていませんよ。まだ。」
有咲「まだ、ですか。」
亜蘭(これで少しくらい役に立てただろう。うん、この調子で頑張ろう。)
紗夜(微妙に方向性を間違えてるような、間違えていないような?)
有咲(なんか、かっこいいやつと思ってたけど段々可愛く見えてきた。)
燐子(四宮君......すごいし、かっこいい......///)
俺の朝の時間はこうして過ぎていった。
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いつも通り、授業を終えて下校の時間になった。
俺は教室を出て、下駄箱に向かった。
亜蘭「__ん?」
外を見てみると、雨が降っていた。
梅雨も近いしいつ降ってきても不思議じゃない。
亜蘭(今日は谷戸は昼から用事があるとか言ってたな。じゃあ、今日の帰りは徒歩か。)
まぁ、一応折り畳み傘を持ってるし、問題はないな。
亜蘭(ん?)
燐子「......はぁ。」
外に出ようとすると白金先輩が立っていた。
俺は声をかけてみる事にした。
燐子(雨が降るなんて......傘もないし、練習に遅れちゃう......)
亜蘭「どうしました?」
燐子「あ、四宮君......」
亜蘭「何かお困りの様子ですが、どうしましたか?」
燐子「えっと......この後、練習なんですが......傘を忘れてしまって......」
亜蘭「なるほど。」
確かに今日の朝はいい天気だったし、傘がなくても不思議じゃない。
周りにもちらほら傘がない生徒もいる。
前までなら誰かをひいきすることもないし、そもそも車で登下校してた。
亜蘭「それなら、この傘を使いますか?」
燐子「え......?いいんですか?」
亜蘭「俺はどうせ車が来ます。白金先輩が濡れるほうが大問題です。」
燐子「そ、そんな事は......ないと思いますが......」
亜蘭「是非お使いください。練習があるのでしょう?」
燐子「は、はい......では......」
そう言って、白金先輩は遠慮気味に傘を受け取った。
亜蘭「それでは、練習、頑張ってくださいね。白金先輩。」
燐子「はい......。あ、四宮君......」
亜蘭「はい?」
燐子「また、ライブをするので......四宮君は来たい、ですか......?」
亜蘭「ライブですか?ぜひ行きたいです。」
表には出さないが、内心ではかなり食い気味になった。
燐子「それなら、またチケットを......渡しますね......」
亜蘭「ありがとうございます。」
燐子「そ、それでは、練習に行ってきますね。さようなら......四宮君......!」
亜蘭「はい、さようなら。」
白金先輩は傘をさして学校を出て行った。
亜蘭「さて、俺も帰るか。本気で走って7分くらいだろう。」
俺は降りしき雨の中を走り出した。
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”燐子”
燐子「__お、おまたせしました......」
ライブハウスに着きました。
少し時間には遅れてしまいましたが、なんとか最小ですみました。
友希那「遅かったわね、どうしたの?」
燐子「雨が降ってきてしまって......」
リサ「えー!?雨降ってんのー!?」
紗夜「これは帰りは大変ですね。」
あこ「そうですねー......」
友希那「でも、なんで燐子は濡れていないの?」
燐子「えっと、四宮君に......傘を借りて。」
リサ「あのイケメン君に?」
燐子「はい......車が来るからと......」
紗夜「......?」
あこ「どうしました紗夜さん?」
紗夜「いえ、おかしな点がありまして。」
氷川さんが口を開きました。
おかしい点......?
紗夜「なぜ、車が来るのに傘を持っていたんでしょうか?」
燐子「あ......っ」
冷静に考えればそうでした。
いつも車で登下校していたので無条件にそうだろうと思ってしまいました......
リサ「あはは、ほんとにイケメン君だったかー。」
友希那「?」
あこ「かーっこいい!」
紗夜「明日、お礼を言いに行きましょう。」
燐子「はい......」
明日、絶対に謝ります。
ごめんなさい、四宮君。
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