本当に欲しいもの   作:火の車

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2章2話です。


熱が出た......?

亜蘭「__ごほっ」

 

 完全に不覚だ。

 まさか熱が出るなんて。

 

谷戸「本日は学校は休みましょう。連絡を入れておきます。」

亜蘭「......あぁ。」

 

 そう言って谷戸は部屋を出て行った。

 

亜蘭(風邪なんて引いたのはいつぶりだ?確か最後は小学6年生だったか。)

 

 あの時は確か、3日くらい寝込んでたか。

 それに比べれば今回は全然問題ないな。

 

亜蘭(まぁ、今日はゆっくり......寝るとしよう......)

 

 俺はゆっくり目を閉じた。

__________________

 

 ”燐子”

 

 今日は四宮君に傘を返そうと思って、いつもよりも早く学校に来ました。

 すぐに人に囲まれちゃうのですぐに返しに行かないと。

 あと、謝らないと......

 

燐子(まだ、でしょうか?いつもならこのくらいの時間に......)

 

 それから10分ほど待ちましたが四宮君は来ませんでした。

 

燐子(どうしたんでしょう......?)

紗夜「白金さん?」

燐子「氷川さん......?」

紗夜「もうすぐホームルームですよ?教室に行きましょう?」

燐子「はい......」

 

 私は氷川さんと教室に行きました。

__________________

 

紗夜「__そう言えば、先ほどは何をしていたのですか?」

 

 教室に行くと、氷川さんがそう聞いてきました。

 

燐子「四宮君に......傘を返そうと思って......」

紗夜「なるほど。それで、返せたのですか?」

燐子「いえ......」

 

 四宮君、どうしたのでしょうか......

 

紗夜「四宮君が学校に来ていないなんて、何かの用事でしょうか?」

燐子(四宮君......)

 

 少し話してると、こんな声が聞こえてきました。

 

女子「__今日、亜蘭君学校休みらしいよー。」

女子2「え!?マジ!?」

女子「うん。なんか熱らしいよ。」

女子2「ショック~!」

 

燐子「え......?」

 

 私は血の気が引いた気がしました。

 

燐子「そ、そんな......四宮君......」

紗夜「し、白金さん?」

燐子「私、私のせいで......」

紗夜「な、泣かないでくださいよ。」

燐子「ひ、氷川さん......私はどうすれば......」

紗夜「ともかく、放課後にお見舞いに行きましょう。」

燐子「はい......」

 

 それから、私は放課後まで何も手に着きませんでした。

 今日の記憶は何も残っていませんでした。

__________________

 

 放課後になりました。

 私はすぐに準備をして席を立ちました。

 

燐子「__ひ、氷川さん......行ってきます......!」

紗夜「白金さん!?ちょっと待ってください!」

 

 私は教室を出ました。

 体育祭の時よりも早く走れてる気がします。

 

紗夜「__白金さん!」

燐子「は、はい......?」

紗夜「そんなに急ぐと危ないですよ。」

燐子「で、でも......早く行かないと......」

紗夜「......心配なのはわかりますが、事故にでもあったら大変です。」

燐子「はい......」

紗夜「落ち着いて行きましょう。急がば回れですよ。」

燐子「はい......」

 

 私は氷川さんと四宮君のお家に行くことになりました。

 道中、お見舞いの品を買っていきました。

__________________

 

 四宮君のお家に着きました。

 相変わらず大きくて緊張しますが、今回は別の意味の緊張にも襲われます。

 

燐子(す、好きな人の家にまた......///)

紗夜「白金さん?」

燐子「い、いえ、なんでもないです。(駄目です。今日はお見舞い出来て、しかも、熱が出たのは私のせいなのにこんな気持ちじゃ。)」

紗夜「では、入りましょうか。」

谷戸「__おや、白金様に氷川様。」

紗夜「谷戸さん?」

谷戸「お二人はどうなさいましたか?」

紗夜「今日は四宮君のお見舞いに。」

谷戸「なるほど。それはありがとうございます。」

燐子「あ、あの、四宮君は......」

谷戸「睡眠中だと思います。どうぞ、お入りください。」

紗夜「はい。」

燐子「はい......」

 

 私達はお家に入りました。

 

紗夜(谷戸さんはいつもこの格好で仕事してるのかしら。)

 

 谷戸さんは迷彩柄のエプロンをつけて買い物袋を持っていました。

__________________

 

谷戸「__ここが亜蘭様のお部屋になります。」

燐子「こ、ここが......」

紗夜「......取り合えず、白金さんだけ入ったらどうでしょう?」

燐子「え......?」

谷戸「それはいいお考えです。ささ、どうぞ、白金様。」

燐子「え、え......?」

 

 そう言われ私は半ば強引に四宮君のお部屋に入りました。

 

紗夜「......全く、世話が焼けますね。」

谷戸「氷川様はお気づきのようですね。」

紗夜「まぁ、焚きつけたのは私のようなものなので。」

谷戸「おやおや。見かけによらず悪い人ですね。」

紗夜「あなたも見かけによらずなところはありますよ。」

谷戸「ははは。」

雫「何してるの?」

谷戸「これは、賀川さん。どうされましたか?」

雫「亜蘭に飲み物持ってきたんだけど。いらないみたいだね。」

谷戸「えぇ。」

紗夜「こんにちは、賀川さん。」

雫「久しぶり、紗夜。」

谷戸「折角、このメンバーがそろった事ですし、あのお二人についてお話いたしませんか?」

雫「あ、良いねそれ。」

紗夜「私も構いません。」

谷戸「それでは、お茶を用意しましょうか。」

 

 三人は歩いて行った。

__________________

 

 四宮君のお部屋に入りました。

 とても綺麗で広いです。

 そして、ベッドの上には......

 

燐子「し、四宮君......///」

 

 どうやら眠ってるみたいです。

 私は近づいてみました。

 

燐子(か、可愛い......!///)

 

 いつものかっこいいのに、眠っていると可愛くて、女の子みたい。

 

燐子(ちょ、ちょっとだけ、撫でたりしてみたり......)

 

 私は少し迷いましたが、撫でてみる事にしました。

 

燐子(ご、ごめんなさい、四宮君......)

亜蘭「__ちょっと......待って......」

燐子「ご、ごめんなさい......」

亜蘭「早く......立って......」

燐子「ね、寝言......?」

 

 焦りましたが、どうやら寝言みたいです。

 

燐子(ど、どんな夢を見てるんでしょう......?)

亜蘭「燐子......」

燐子「!?///」

 

 待って、待ってください。

 四宮君が寝言で私の名前を......

 

燐子(な、何の夢を見てるんですか///)

__________________

 

 ”亜蘭の夢”

 

亜蘭「__ただいま。」

 

 俺は屋敷の扉を開いた。

 いつも通りなら執事やメイドが__

 

燐子「おかえりなさい......亜蘭君......」

亜蘭「!?」

 

 屋敷に入ると白金先輩がいる。

 しかも白いエプロンを着て、三つ指をついてる。

 しかも、名前を呼んだ?

 

亜蘭「な、何をしてるのでしょうか?」

燐子「えっと......これが正しい所作だと......」

亜蘭「そういう事はしなくてもいいですから、早く立ってください、白金先輩。」

燐子「むぅ......」

亜蘭「?」

 

 俺が白金先輩と呼ぶと少しむくれた表情をした。

 

燐子「また、呼び方が戻ってます......」

亜蘭「え......?」

燐子「約束しました......結婚したから、燐子って呼ぶって......」

亜蘭「へ?結婚......?」

 

 頭が追い付かないぞ。

 結婚?俺はまだ高校生だったはずだ。

 

燐子「亜蘭君......?」

亜蘭「は、はい。」

燐子「話し方も戻ってます。」

亜蘭「!?」

燐子「敬語は......もういらないです。」

 

 まてまて、本当にどうした。

 夢か夢なのか?

 夢なら話を合わせた方がいいのか?

 

亜蘭「......すまない、少し寝ぼけてたみたいだ。燐子。」

燐子「......許しません。」

亜蘭「じゃあ、どうしたら許してくれる?」

燐子「名前を......」

亜蘭「ん?」

燐子「もっと、名前を呼んでください......亜蘭君......///」

亜蘭「......燐子。」

 

 そう、これは夢だ。

 現実でこんなことになるはずがない。

 

燐子「もっと......///」

亜蘭「燐子。」

燐子「~!///」

 

 夢の中で夢と認識する日が来るとは、世の中分からないものだな。

 

燐子「もう、いいですよ///」

亜蘭「あ、あぁ。」

燐子「それじゃあ......行きます......!」

亜蘭「?」

 

 白金先輩が何か意気込んでる。

 何なんだ?

 

燐子「えっと......お風呂にしますか?」

亜蘭「?」

燐子「ご飯にしますか......?///」

亜蘭「えっと......?」

燐子「それとも......///」

亜蘭(それ以外があるのか?__!?)

 

 俺が考えてると、白金先輩が頭に手を回してきた。

 

燐子「私に、しますか......?///」

亜蘭「え、ちょっと待っ......」

 

 段々白金先輩の顔が近づいて来て__

__________________

 

 ”現実”

 

亜蘭「__っは!」

 

 現実に戻ってきた。

 何だったんだ今の夢は?

 

亜蘭「す、すごい夢だったな__」

燐子「あ、し、四宮君......おはようございます......」

亜蘭(......また夢か?)

 

 俺の部屋に白金先輩がいる。

 また夢か、そう思い、俺は自分の頬をつねった。

 

亜蘭「__っ!」

燐子「四宮君......!?」

亜蘭「ゆ、夢じゃないだと?」

 

 じゃあ、なんで白金先輩が部屋にいる?

 

亜蘭「こんにちは。」

燐子「はい......こんにちは。」

亜蘭「それで、なんでここにいらっしゃるんでしょうか?」

燐子「えっと、四宮君が......熱で休んでると聞いて......」

亜蘭「わざわざ、見舞いに。申し訳ない。」

燐子「い、いえ......そもそも、私のせいですから......」

亜蘭「え?」

 

 白金先輩から驚きの発言が出た。

 なんで、白金先輩のせいなんだ?

 

燐子「私が......四宮君に傘を借りて......でも、本当は車が来ていなかったんですよね......?」

亜蘭「......あっ。」

 

 それが熱の原因だということを頭から除外してた。

 

亜蘭「いえ、別にあれが原因ではないと思いますが。」

燐子「で、でも......そのせいで雨に濡れて......」

亜蘭「そうですか?普通に俺の不摂生ですよ?」

燐子「でも......」

 

 白金先輩は少し泣きそうな顔をしてる。

 

亜蘭「別に大丈夫ですよ。もう、熱も下がりましたし。」

 

 俺はそう言って立ち上がった。

 今日初めて立ったから、少しふらついたが。

 

亜蘭「ふぅ。」

燐子「ま、まだ動いたら......!」

亜蘭「大丈夫ですよ。」

 

 俺は羽織を着た。

 

亜蘭「白金先輩、少し庭に行きませんか?動きたくて。」

燐子「え?あ、はい......」

 

 俺と白金先輩は庭に出る事にした。

__________________

 

亜蘭「__うん。いい天気ですね。」

燐子「はい。」

 

 庭に出ると、赤い夕陽が綺麗に見えた。

 雲もなくて、いい天気だ。

 

亜蘭「それにしても、今日はわざわざ見舞いに来てくださってありがとうございました。」

燐子「い、いえ......」

亜蘭「とても嬉しいです。お陰で熱もどこかにいきました。」

燐子「そ、それなら......よかったです......」

 

 少し庭を歩いて、花がたくさんある場所に来た。

 いろんな種類の花があって、色とりどりだ。

 

燐子「わっ、綺麗......」

亜蘭「ここは、屋敷で働いてくれてる皆が好きな花を植えてるところです。」

燐子「すごい......」

 

 白金先輩は風景を凝視してる。

 とても可愛らしい。

 

亜蘭「花......?」

燐子「?」

亜蘭「あ、思い出した。」

 

 そう言えば、聞きそこなってた事を思い出した。

 

亜蘭「白金先輩に聞きたいことがあったんです。」

燐子「聞きたいこと、ですか......?」

亜蘭「はい。ロゼリアの名前の由来の事なのですが。青いバラと言う事は分かるのですが、響き的に少し違うので何かと組み合わせた造語などではないのかと思っていまして。」

燐子「えっと、ロゼリアは......青いバラ、RoseとComellia、つまり椿を合わせた造語なんです。」

亜蘭「椿?」

燐子「?」

亜蘭「(まさか。)白金先輩、ついて来てください。」

燐子「はい......?」

 

 俺はある場所に移動した。

 

亜蘭「__ここです。」

燐子「これは......青いバラと......椿?」

亜蘭「はい。」

燐子「すごい......青いバラって改良だったはずじゃ......」

 

 白金先輩は花の前でしゃがんだ。

 花に少し手を添える白金先輩は本当に綺麗で、可愛らしい。

 

亜蘭「青いバラの花言葉は夢かなうでしたね。」

燐子「はい......とても素敵です......」

亜蘭「青薔薇がモチーフと言う事は何か夢があるんですか?」

燐子「はい。FUTURE WORLD FESに出る......と言うのが目標です。」

亜蘭「なるほど。」

 

 バンドの一番規模が大きいイベントだったか。

 すごい目標だ。

 

亜蘭「いい目標ですね。」

燐子「はい......!」

亜蘭(ロゼリアなら叶うのもそんなに遠くないかもな。)

 

 俺はそう思う。

 ロゼリアの演奏のレベルは高い、他と聞き比べると分かる。

 

亜蘭「ふっ。」

燐子「四宮君......?」

亜蘭「そろそろ戻りましょうか。」

燐子「はい......」

 

 俺たちは屋敷の中に戻った。

__________________

 

 屋敷の中に戻ってきた。

 

亜蘭「さて、どこに行きましょうか。」

燐子「とりあえず......氷川さんに合流しないと......」

谷戸「__亜蘭様。」

亜蘭「谷戸か。」

谷戸「体調は回復なされたご様子で。」

亜蘭「あぁ、もう治ったよ。」

谷戸「すぐに夕食の用意が終わります。白金様もよろしければ。」

燐子「え......?いいんですか......?」

亜蘭「大丈夫ですよ。氷川先輩も来てるようですし。」

 

 俺は歩きだした。

 

亜蘭「あ。」

 

 俺はある事を思い出した。

 

亜蘭「谷戸、頼みがあるんだが。」

谷戸「はい?」

亜蘭「___を頼む。」

谷戸「はい、かしこまりました。」

 

 谷戸はどこかに消えていった。

__________________

 

 あれから、皆で夕食を食べた。

 二人が雫の料理を食べて驚いていた、まぁ、当然か。

 色々話をしたり、とても楽しい時間を過ごせた。

 そして、二人が帰る時間になった。

 

紗夜「それでは、今日はありがとうございました。夕食までいただいて。」

燐子「ありがとうございました。」

亜蘭「いえ。」

谷戸「亜蘭様、ご用意が出来ました。」

亜蘭「ちょうどよかった。」

燐子、紗夜「?」

 

 俺は谷戸からあるものを受け取った。

 

亜蘭「受け取っていただければ。」

燐子「え......?///」

 

 俺は白金先輩に青いバラの花束を差し出した。

 

亜蘭「これは白金先輩に相応しいです。」

燐子「え、あ、ありがとうございます///」

亜蘭「夢がかなうように応援しています。」

 

 青いバラは9本。

 これが一番いい。

 

紗夜(青いバラ9本の意味は夢がかなうように応援する、と。)

谷戸(あなたを想っています、でしたか。)

亜蘭「あぁ、後ですね。これは氷川先輩にも聞いていただきたいのですが。」

紗夜「はい?」

亜蘭「ロゼリアの夢を叶えるお手伝いをしたいのです。」

紗夜「?」

燐子「えっと......?」

亜蘭「まぁ、また皆さんを呼んで話しましょう。」

紗夜「はい......?」

亜蘭「それじゃあ、谷戸。」

谷戸「はい。」

亜蘭「二人を車でお送りしろ。俺は今日でたまった仕事を消化する。」

谷戸「はい、かしこまりました。」

亜蘭「それでは、また。」

 

 こうして、二人は車に乗って帰って行った。

 ロゼリアの皆さんからはいい返事がもらえるだろうか。

 俺はそう思いながら屋敷に入って行った。

 




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