谷戸「亜蘭様の好きなものはガラス細工です。なので、亜蘭さんのお誕生日の日には屋敷の中がガラス細工で埋め尽くされます。」
雫「亜蘭はカステラが好きだよ。この間作った時、すごい笑顔になってたし。可愛いね。」
紗夜「個人的な意見なのですが、好きな人の前では若干ポンコツ化しますね。え?私も人のこと言えないって、失礼ですね!」
六月ももう終盤、俺はいつも通り学校に向かっていた。
亜蘭(そう言えば、今日はあの令嬢が転校してくる日だった。)
正直、俺には関係ない。
特に俺から挨拶に行くほどでもないし。
でも、気がかりなのは......
亜蘭(弦巻様から届いた書類。あれはなんで送られてきたんだ?)
谷戸「亜蘭様、間もなく到着いたします。」
亜蘭「分かった。」
考えても仕方ない。
向こうが動いてから考えよう。
俺がそう思ううちに学校に着いた。
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女子たち「__おはよー!亜蘭君ー!」
亜蘭「あぁ、おはよう。」
もう、人に囲まれるのにも慣れたもので、簡単に通り抜けられる。
校舎の近くに行くと、白金先輩と氷川先輩が立っていた。
でも、なにやら難しい顔をしてる。
亜蘭「__おはようございます。」
燐子「あ......四宮君。」
紗夜「おはようございます。」
亜蘭「どうなさいましたか?難しい顔をされていましたが。」
紗夜「少し、いえ、かなり困った事がありまして、四宮君を待っていたんです。」
亜蘭「俺を?」
燐子「今日から転校生が来るのですが......」
亜蘭「そのことは聞いています。弦巻様から書類が届いています。確か、企業の令嬢が一人だと。」
紗夜、燐子「え?」
亜蘭「?」
二人は驚いた顔をしてる。
どうしたんだろうか?
紗夜「今日来る転校生は企業の令嬢ともう一人いますよ?」
亜蘭「!?」
驚いた。
弦巻様の書類にミスがあったのか?
いや、そんな事は今までなかった。。
つまり、弦巻家を潜り抜けたと言う事か?
燐子「それで......その二人が、四宮君と弦巻さんを呼んでくれと。」
亜蘭「こころ様もですか?」
紗夜「はい。」
亜蘭(正気か?弦巻家の人物を呼びつけるなんて。)
俺から見れば正気の沙汰じゃない。
下手をすれば会社がつぶれるぞ。
亜蘭「......まぁ、ともかく俺も行きましょう。こころ様も向かっているでしょうし。」
紗夜「はい。弦巻さんは先ほど向かいました。」
亜蘭「それでは、急ぎましょう。待たせてしまうのは申し訳ないですから。」
燐子「はい。」
そうして、俺たちは生徒会室に向かった。
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紗夜「__お待たせしました。」
こころ「紗夜!燐子!亜蘭!」
生徒会室に入ると、こころ様がいつもと変わらない笑顔でこちらに手を振っていた。
そして、その奥には、例の二人がいた。
令嬢は情報通り、もう一人は男だった。
亜蘭「おはようございます。こころ様。本日も大変お美しく。」
こころ「あら!ありがとう!」
?「いいご身分ね、四宮亜蘭。」
亜蘭「?」
?「ポッと出から弦巻家に次ぐナンバー2になったのは気分が良いか?」
亜蘭「えーっと、どなたですか?」
もちろん、令嬢の方は知ってる。
だが、男の方は未知数だ。
?「あら?知らないのかしら?西園寺南と言えば分かるかしら?」
?「西園寺海斗だ。」
亜蘭(同じ苗字。容姿にも共通した部分多数、兄妹か。)
だが、そうだとしたらおかしい。
書類には令嬢と書かれていた、だが、普通なら長男が継ぐはず。
どういう事だ?
亜蘭「それで、今日は何の用でしょうか?こころ様まで呼びつけて。」
海斗「そう急かすなよ。四宮亜蘭。」
こころ「でも、何の用なのか気になるわね?」
南「そうね。じゃあ、本題に入りましょう。」
西園寺南は一息置いて、こう言い出した。
南「私達と結婚しなさい。」
亜蘭、こころ「?」
紗夜、燐子「!?」
海斗「俺が弦巻こころ、南が四宮亜蘭だ。」
紗夜「ちょ、そういうことですか!?」
燐子「け、結婚......?(し、四宮君が......?)」
よく意味が分からないな。
唐突過ぎるし、態度的にそんな甘い物じゃないな。
南「もちろん、戸籍は両方入ってもらうし、財産も私達に譲渡よ。」
海斗「どうだ、四宮亜蘭?」
どうだって言われても、正当性のかけらもないし、俺が同意するメリットもないし。
なにより、俺には心に決めた人がいる。
受け入れる要素がないな。
亜蘭「丁重にお断りします。俺は政略結婚などはしない方針なので。そもそも、そんな条件が通るとでも?」
南「私の婿になれるのよ?光栄じゃない。」
亜蘭「お断りします。」
海斗「南が気に入らないと?」
亜蘭「そうですね。条件も気に入りません。」
南「......頭きた。」
そう言って西園寺南は携帯を出した。
南「四宮家の屋敷を爆破しなさい。」
紗夜、燐子「え!?」
亜蘭「......」
燐子「し、四宮君、止めなくてもいいんですか!?」
紗夜「冗談じゃ済みませんよ!?」
南「さぁ、見せてやるは!自分の家の残骸を!」
そう言って携帯画面を見せて来た。
そこには俺の屋敷とカウントダウンが写ってる。
3,2,1と時間が刻まれた。
南「さぁ!後悔なさ......い?」
既定の時間を過ぎても、画面に映っているのは見慣れた屋敷だ。
亜蘭「おやおや、何も起こりませんね?」
海斗「お、おい、どういう事だ?」
亜蘭「うちの従者は有能ですので。特に執事は。」
”その頃の谷戸”
谷戸「__なるほどなるほど。」
谷戸は爆弾らしきものを手の持って頷いている。
谷戸「今まで亜蘭様を恨んできた資産家は数多くいましたし。このパターンは124回目ですね。」
谷戸はノートに書きこんだ。
谷戸「それにしても、バカですねぇ。亜蘭様に喧嘩を売るだなんて。」
”花咲川”
亜蘭「さて、遊びは終わりましたか?」
南「......」
亜蘭「ちなみに、先ほどまでの会話は全て残っていますよ。」
南「はぁ!?」
亜蘭「今日、令嬢が転校してくると言う事で。」
俺はネクタイからピンを外した。
亜蘭「有能な執事が盗聴器をつけていました。」
海斗「まさか!」
亜蘭「その通り。これがあったからあなた達の爆弾を解除出来た、という事ですよ。」
燐子「そ、そういう事だったんですか......」
紗夜「心臓に悪いですね......」
亜蘭「すみませんでした。少し向こうの遊びに乗ってみようかと。」
俺は笑顔でそう言った。
二人はかなり疲れた顔をしてる。
亜蘭「もう一度行っておきましょうか。」
俺は西園寺兄妹の方を見た。
亜蘭「お断りします。いいですよね?」
南「......分かったわよ。」
紗夜(最近、四宮君はSなのではないかと思いますね。)
燐子(よかった......)
海斗「__だが。」
亜蘭「?」
海斗「弦巻こころ、お前は逆らえるかな?」
こころ「あら?私もお断りするわよ?」
海斗「これを見てもそう言えるか?」
そう言って携帯画面を見せて来た。
そこには、おおよそ信じられないものが写っていた。
こころ「お父様!?」
亜蘭「なぜ!弦巻様には付き人がいるはず、それを抜きにしても弦巻家の人間をとらえるなんて不可能だ。」
南「ちょーっと、薬を盛れば楽勝だったわよ。」
こころ「お父様を返して!」
まずい。
谷戸はもう盗聴器を切ってる、動かせない。
海斗「別に俺らはあんなおっさん、どうとしてもいいんだぜ?」
こころ「!」
亜蘭「いい加減にしろ!あなた達の行動は正気の沙汰じゃない!」
南「別に弦巻家を手に入れれば、私達の家は大きくなる。」
亜蘭「他の企業はどうなる!働いてる一般社員だっているんだぞ!」
海斗「そんなの俺たちに関係あるか?別にいいじゃねぇか。」
南「そうよ。どうせ、あんたの家は影響を受けないんでしょう?」
亜蘭「そう言う問題じゃない!あなた達の行動は全世界を狂わせるぞ!」
紗夜「なんですって!?」
向こうの手に弦巻様がいる今、俺が直接手を出すのは難しい。
気に触れれば、弦巻様がどうなるか分からない。
爆弾を用意する家、何をするかは分からない。
何よりこの規模の計画、家全体で画策してる、下手をすればこの近辺の地域も危ない。
亜蘭(どうする?今からどうにかして谷戸に連絡するか?いや、俺がこの場でこの二人をとらえて交渉に追い込むか?それとも......)
こころ「いいわよ、亜蘭。」
亜蘭「こころ様?__!!」
こころ「あたしがこの人たちに従えばお父様は助かるもの。」
亜蘭「!」
この顔、いつもの笑顔じゃない。
これは、まるで......
こころ「あたしはあなた達の言う事を聞くわ。」
海斗「まぁ、そうするだろうな。」
南「だーい好きなお父様が死んじゃったら困るもんねー!」
そう言いながら二人は立ち上がった。
海斗「じゃあ、行くぞ。こころ。」
こころ「......えぇ。」
南「それでは、ごきげんよう。仲良くしましょうね?」
亜蘭「......」
三人は生徒会室を出て行った。
亜蘭(そうか、この理解不可能な転校はこれが目的。いや、こんなのは問題じゃない。)
問題は弦巻様が向こうに握られてる事だ。
これで迂闊に手を出せなくなった。
幽閉されてる場所も不明な今、どう手を打つ?
時間も限られてる。
こころ様と西園寺海斗の婚姻が成立してしまったら、日本経済にも海外の経済にも大打撃になる。
失業者だって生まれる。
亜蘭「......すみません。学校を早退します。」
紗夜「四宮君?」
燐子「だ、大丈夫、ですか......?」
亜蘭「大丈夫、とは言えませんね。大変なことになってしまいました。」
俺は谷戸に電話をかけた。
亜蘭「谷戸、今すぐ弦巻様を探してくれ。」
谷戸『弦巻様をですか?』
亜蘭「西園寺家に弦巻様の身柄を握られた。」
谷戸『なんですって!?』
亜蘭「事情は後で話す。迅速に少数で頼む。俺も出る。」
谷戸「かしこまりました。急いでお迎えに上がります。」
亜蘭「あぁ。」
電話を切った。
俺は一旦、深呼吸をして落ち着いた。
亜蘭「......それでは、失礼します。」
燐子「あ、あの......四宮君?」
亜蘭「はい?」
燐子「私も行っては、ダメでしょうか?」
亜蘭「!?」
紗夜「白金さん、流石に危険ですよ!」
燐子「あの話を聞いて、放っておけません......力になりたいです。」
亜蘭「......白金先輩が思うようにしてください。」
紗夜「四宮君!?」
亜蘭「大丈夫です。俺が絶対に守りますし、危険な目にはあわせません。」
俺はドアノブに手をかけた。
亜蘭「それでは、行きましょう。」
燐子「は、はい......!」
紗夜「待ってください!私も行きます!」
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車に向かう途中、俺はある事を考えていた。
亜蘭(引っかかるのは、あのこころ様の表情。)
あれはまるで
亜蘭(こころ様をあのままにしては駄目だ。絶対に。だって、あの表情は。)
初めて、こころ様に出会ったときの表情そのものだから。
特に投稿するのは決めてないので、明日は他のを投稿します。