サッカー部員「__サッカー部に入ってくれ!」
剣道部員「いや!剣道部に!」
バスケ部員「一緒にバスケをしよう!」
バレーボール部員「バレーがいいぞ!」
野球部員「野球部に来てくれ!」
亜蘭「ど、どうしました?」
今日は花咲川に来て二日目、俺は車を降りるなり部活動の勧誘を受けている。ほとんどは運動部だが、後ろの方には文化部も見える。
紗夜「__すみません!通してください!生徒会です!」
亜蘭「氷川先輩?」
俺が対応に困ってると、人ごみをかき分け氷川先輩が俺の前に来た。
紗夜「彼の部活動勧誘は生徒会を通した手続きが必要になっています!」
亜蘭「え?」
俺は自身の耳を疑った。
俺はそんな話は聞いていない、部活勧誘の手続きなんて。
亜蘭「......谷戸。」
谷戸「ここに。」
亜蘭「これはどういう事だ。俺はさっきのような話は聞いていないぞ。」
谷戸「申し訳ありません。これは、私が依頼したのです。」
亜蘭「何?」
谷戸「亜蘭様の学力、運動能力は全国的に見ても有名です。」
亜蘭「何故だ?」
谷戸「亜蘭様が部活動の助っ人を請け負った際、その事を新聞が取り上げまして、このようなことに。」
亜蘭「......あぁ、あのケガで欠員が出て代わりに出たときか。確かに、カメラが多かったな。」
谷戸「そのため、運動部は喉から手が出るほどに亜蘭様が欲しいのです。」
亜蘭「そうか。」
谷戸「こちらに、人ごみを迂回します。」
亜蘭「分かった。」
俺は谷戸と生徒会室に向かった。
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谷戸「__失礼いたします。」
亜蘭「失礼します。」
俺たちは無事、生徒会室に来た。
生徒会室には白金先輩と帝先輩がいた。
鋼「おはよう!」
燐子「おはようございます......」
亜蘭「それで、俺はなぜここに?」
谷戸「本日、亜蘭様には各部活のプレゼンテーションを拝見していただきます。」
亜蘭「何?部活動紹介があるはずだろう。」
谷戸「いえ、あれはあくまで紹介であって、亜蘭様に対しては交渉に近いのです。」
鋼「君はあまりに優れ過ぎてる。君を本気で交渉するなら大金が動くぞ。」
亜蘭「それは流石に過言でしょう。」
谷戸「いえ、事実です。」
亜蘭「何?」
谷戸「今まで、亜蘭様には企業の研究室、芸能界、プロのスポーツ団体など数多くからスカウトの話が来ています。」
亜蘭「......初耳なんだが。」
谷戸「私が全て対応いたしました。時には数十億を提示されたこともありました。」
燐子「そ、そんなことが......」
鋼「......話には聞いてたが、すさまじいな。」
亜蘭「俺もスカウトの件は初耳でしたがね。」
俺たちはしばらく世間話をしていた。
途中、谷戸がお茶を用意したりして生徒会室は中々なごみのある空間と化していた。
亜蘭「__流石、谷戸だな。」
鋼「素晴らしい紅茶だ。」
燐子「とても......美味しいです。」
谷戸「ありがとうございます。」
紗夜「......何を和んでるんですか?」
燐子「あ......氷川さん......」
鋼「やぁ、氷川さん。君もどうだ?美味しいぞ。」
谷戸「どうぞ、氷川様。」
紗夜「あ、ありがとうございます。......美味しい!」
谷戸「お気に召していただいたようで何よりです。」
紗夜「じゃ、なくてですね!四宮君!」
亜蘭「はい?」
紗夜「各部活のプレゼンの用意が出来たのでついて来てください。」
亜蘭「はい、分かりました。」
谷戸「私もお供します。」
鋼「僕も行こうかな!」
燐子「私も......」
俺たちはプレゼンテーションが行われるホールに向かった。
廊下を歩いてるときに色んな生徒(主に女子)に話しかけられたりして。ホールにつくのに15分かかった。
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ホールに来ると、巨大なスクリーンと各部活動の部長、副部長と思われる人たちがいた。
亜蘭「何と言うか、厳かな雰囲気だな。」
鋼「それはそうだろう。何せ君が入る入らないで部活の成績に関わって来るんだからな。」
谷戸「本日は運動部が全て、文化部は茶道部を除き全てです。」
亜蘭「多いな。」
燐子「あの......このリスト......」
紗夜「どうしました......って、これは。」
亜蘭「どうしました。」
紗夜「これを見てください。」
亜蘭「?」
俺は部活動のリストを確認した。
色々な部活の名前がある、が違和感があった。
亜蘭「......谷戸、今日の運動部の出席数は?」
谷戸「全て、でございます。」
亜蘭「それは『女子だけ』の運動部もか?」
谷戸「間違いありません。」
亜蘭「......何故だ。」
俺は絶句した。
男子の多くいる部活はともかくとして、女子専用の部活に男を勧誘するだと?どうなってるんだ。
鋼「ま、まぁ、そういう事もあるさ。」
亜蘭「帝先輩。こっち見て言ってください。」
紗夜「取り合えず、座りましょうか。」
亜蘭「......はい。」
燐子「だ、大丈夫ですか......?」
亜蘭「大丈夫ですよ。白金先輩。」
俺はとりあえず話を聞くため、用意されていた椅子に座った。
色んな人に見られて中々落ち着かないな。
紗夜『__それでは、各部活のプレゼンテーションを開始します。』
鋼『ルールは説明した通りだ。』
燐子『それでは......まず、サッカー部から......お願いします。』
サッカー部「はい!」
白金先輩に呼ばれると、舞台の端からサッカー部員二人が出てきた。
谷戸「あの二人はサッカー部のエースとキャプテンです。かなりの本気度が伺えます。」
亜蘭「なるほど。」
サッカー部員『それでは、始めます。まずサッカー部は__』
それから、部活動における目標、練習内容、俺への待遇、などを話していた。
どこの運動部はおおよその内容は同じで、全国制覇などを掲げている。文化部はこういう活動をしますだけだ。
異彩を放ったのは、野球部の坊主にする必要はありませんと女子専用部活の俺がいるだけで元気が出るの二つだった。
そして、プレゼンは終盤に差し掛かって行った。
紗夜『__これですべて終わりましたね__』
?『ちょーっと待って!』
鋼「な、なんだ!?」
燐子「つ、弦巻さん......?」
鋼「弦巻だと?」
こころ「何か楽しそうなことをしてるわね!私も参加するわ!」
紗夜「弦巻さん、今日は各部活動が彼の勧誘をするためのプレゼンです。」
こころ「彼?」
舞台に上がった女子が俺の方を見た。
俺は猛烈に寒気がした。俺は彼女を知っているんだ。
亜蘭「......谷戸、あれは?」
谷戸「まさかとは思いますが、しかし。」
亜蘭「俺はあの破天荒な性格と顔にかなり見覚えがあるんだが。」
俺は頭を抱えた。
多分、俺がこの世で一番気を遣う人類が目の前にいるんだから。
こころ「__久しぶりね!亜蘭!」
亜蘭「......お久しぶりです、こころ様。」
嘘であってほしい、そう願っても現実は残酷なもので無情にも彼女、弦巻こころは近づいてきた。
こころ「そんなに気を使う必要はないわ!あなたはお父様が認めた人だもの!」
亜蘭「左様ですか。」
谷戸「......まさか、弦巻こころがこの学校にいるとは。でも、そうならなぜ、昨日のうちに動かなかったのでしょうか。」
亜蘭「弦巻家は昨日、イギリスでの会食だ。多分、こころ様も出席してたんだろう。それよりもだ、どうする?」
谷戸「流石に無下には扱えません。上手く対応するべきかと。」
こころ「何の話をしているの?」
亜蘭「いえ、なんでもありません。」
こころ「そう?ならいいわ!」
説明しておこう。
俺と弦巻家の関係は同格、財力だけを見れば弦巻家が上だ。
そんな中、俺は弦巻父に言われるのだ『娘と結婚しないか?』と。
俺はそれをかたくなに拒否してる。なぜかって?彼女自身が理解してないからだ!
こころ「あなたとは久しぶりに会ったわね!どの位かしら?」
谷戸「2年ほどになるかと。」
こころ「そのくらいね!」
亜蘭「それで、本日はどのようなご用で?」
こころ「あら?ないわよ?」
亜蘭、谷戸「え?」
こころ「何か面白そうなことをしてたから、来たのよ!」
彼女はどこまでも純粋だ。
純粋ゆえに読めない、ゆえに絶対に下手なことができない。
こころ「そう言えば、お父様が亜蘭に会いたいと言ってたわ!」
亜蘭「そうですか。それでは、またお伺いします。」
谷戸「......本当に行くのですか?」
亜蘭「......仕方ないだろ。流石に弦巻家ともめるのは骨が折れる、後、悪い人ではないしな。」
こころ「じゃあ!今日の放課後ね!」
亜蘭、谷戸「え?」
こころ「黒服の人!」
黒服の人「ここに。」
彼女が呼ぶと、突然、黒服の人が出てきた。
谷戸にしろどうやってあれをしてるんだ?
こころ「お父様に伝えて!亜蘭が行くって!」
黒服の人「かしこまりました。」
そう言って黒服の人はどこかに行った。
こころ「それじゃあ、放課後、楽しみにしてるわ!」
亜蘭「は、はい。」
そう言って彼女はどこかに走って行った。
彼女が去って行くと、場は異常な静寂に包まれた。
紗夜「お、思わぬトラブルがありましたが、四宮君。」
亜蘭「はい。」
紗夜「部活動、入りますか?」
亜蘭「申し訳ないですけど、お断りします。」
鋼「そうか。まぁ、選ぶのは自由だからな。」
亜蘭「申し訳ない。」
燐子「謝らなくても......いいと思います。」
谷戸「......亜蘭様、本日の放課後は。」
亜蘭「......用意を頼む。いつ呼ばれてもいいようにな。」
谷戸「かしこまりました。」
部活動の勧誘は終わった。
だが、俺は大きな問題が始まろうとしていた。
俺は放課後までの時間、あらゆることが手につかなかった。
こころが珍しい役回りになりそうですね?