本当に欲しいもの   作:火の車

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初恋

 朝、俺は庭にある椅子とテーブルが置いている場所にいる。

 ここは噴水と花が見えて、とても穏やかな空間だ。

 

亜蘭「......」

 

 俺は弦巻邸の一件から一晩、ずっとここにいる。

 まるで、時間が止まったような感覚だ。

 こころ様の涙と心臓が握りつぶされそうな感覚が憑いて離れない。

 

 今まで、俺に告白をしてきた人は少なくない。

 俺は今までそれをすべて断ってきて、その中で涙を流す人もいた。

 でも、それを見ても俺は何も感じなかった。

 

亜蘭(なぜだ、なぜ、こころ様だけ......?)

 

 わからない。

 

 一体、こころ様は他と何が違うんだ。

 

亜蘭(駄目だ、頭が回ってない。......一旦、眠ろうかな。)

 

 俺は目を閉じた。

 

 疲れていたのか、俺は意識をすぐに手放した。

__________________

 

 ”谷戸”

 

谷戸「__ふむ。」

 

 私は今、門周辺の掃除をしています。

 亜蘭様は今日は休めと言っていましたが、特にやることもないので仕事をしています。

 

谷戸(亜蘭様はあの場所にいますね。つまり、何か悩んでいると言う事。予想は付きます、弦巻こころ関連でしょう。)

 

 おおよそ、思いを告げられ、それを断って心を痛めた弦巻こころを見て、亜蘭様も心を痛めたのでしょう。

 

 そして、亜蘭様はその原因が分からずにいる、と。

 

谷戸(亜蘭様は覚えていないようですが、亜蘭様は__)

友希那「あら、谷戸さん?」

谷戸「はい?」

紗夜「こんにちは、谷戸さん。」

リサ「こんにちは!」

あこ「こんにちはー!」

燐子「こんにちは......」

谷戸「おやおや?」

 

 声がした方に目をやると、ロゼリアの皆様がいました。

 

 練習でしょうか?

 そう思い、私は門を開けました。

 

谷戸「いらっしゃいませ、皆様。」

紗夜「今日もお邪魔します。」

谷戸「いえいえ、亜蘭様の意向ですので。」

燐子「あ、あの......?」

谷戸「はい?」

燐子「四宮君は......今日は......」

 

 白金様がそう聞いてきました。

 

谷戸(困りましたね。)

 

 あの場所には亜蘭様以外は最低限の清掃以外の理由で立ち入るのが禁止だと言う暗黙の了解があるのです。

 

 それに加えて、今の亜蘭様に白金様を会わせるのは......

 

谷戸(あっ、いいかもしれません。)

燐子「あの......」

谷戸「亜蘭様は今、とある事情でお心を痛めているのです。」

燐子「!」

リサ「どうしたんですか?」

友希那「彼はそんなに深刻な状態なの?」

あこ「大丈夫なんですか?」

燐子「あ、もしかして......」

紗夜(あれでしょうか。)

 

 どうやら、白金様と氷川様は気づいたようですね。

 

紗夜「谷戸さん、四宮君はまさか。」

谷戸「はい。ご想像の通りです。」

紗夜「やはり、弦巻さんと......」

谷戸「はい。」

燐子「じゃ、じゃあ、四宮君はどこに......?」

谷戸「亜蘭様は今、庭にいらっしゃいます。ただ、少しばかり特別な場所にはなりますが。」

友希那「特別?そんな場所が?」

谷戸「はい。そこはほぼ、亜蘭様以外が立ちいる事はありません。ですが......」

燐子「......?」

 

 私は白金さんの方を見ると、白金さんは不思議そうな顔をしました。

 

谷戸「白金様にその場所に行ってもらいたいのです。」

燐子「え?いいん、ですか?」

谷戸「白金様なら大丈夫ですよ。」

燐子「そういうことなら......」

谷戸「そうですか。......というわけで、少しだけ白金様をお借りいたします。」

紗夜「はい。」

友希那「好きにしてくれていいわ。」

リサ「がんばれ!燐子!」

あこ「当たって砕けろだよ!りんりん!」

燐子「え?今から何しに行くの......?」

 

 そうして、私は白金様を引き連れてあの場所に向かいました。

__________________

 

 ”燐子”

 

 私は谷戸さんについて行きました。

 

 四宮君のお家はとても広くて、私もお庭の全部は見たことがありませんでした。

 

谷戸「__ここです。」

燐子「ここは......?」

 

 少し歩いて着いたのは、植物でできたトンネルのようなものがありました。

 

 なんだか、とても神秘的な雰囲気です。

 

谷戸「この先に亜蘭様がおられます。どうぞ、お進みください。」

燐子「はい。」

 

 私はトンネルの中に入って行きました。

 

燐子「__綺麗......」

 

 トンネルの中は綺麗な緑の間から太陽の光が入ってきて、空気感が他の場所と全く違います。

 

 本当に世界が違うみたいです。

 私はトンネルの中を進んでいきました。

 

燐子「あ......出口だ。」

 

 私はトンネルを抜けました。

__________________

 

 ”亜蘭”

 

 夢を見た。

 

 俺は弦巻家から招待を受け、弦巻邸に行った。

 要件は娘、こころ様の友人になるかどうかだった。

 俺は使用人に案内され、ある部屋の前に来た。

 俺は扉を開いた。そこにいたのは......

 

こころ『あなたは誰......?』

亜蘭『!』

 

 大きな瞳を涙で濡らした、金髪の美しい少女だった。

 俺は幼いながらに、その美しい容姿に見入ってしまった。

 

 それから、俺とこころ様は色々な事をした。

 そして......

 

こころ『ありがとう、亜蘭!』

 

 夕焼けに照らされた彼女の笑顔は当時は何よりも美しく感じて。

 

亜蘭(そうか、俺は昔__)

__________________

 

亜蘭「__ん。」

 

 俺は椅子に座った状態のまま目を覚ました。

 

 耳には噴水の水が流れる音が聞こえてくる。

 

亜蘭(......思い出した。そうか、だから俺は。)

燐子「__四宮君......?」

亜蘭「白金先輩?なぜ、ここに?」

 

 横から声が聞こえたと思えば、白金先輩がいた。

 

 心配そうな顔でこちらを見つめている。

 

燐子「谷戸さんが、四宮君が落ち込んでいると聞いて。」

亜蘭「そうですか、谷戸が。」

燐子「それで、大丈夫ですか?多分、ですけど、弦巻さんに......」

亜蘭「もう、大丈夫ですよ。」

燐子「無理はしてないですか......?」

亜蘭「はい。」

 

 俺は笑顔を向けながらそう言った。

 

亜蘭「白金先輩。少し、話しませんか?」

燐子「?」

亜蘭「どうぞ、お座りください。」

燐子「ありがとうございます。」

 

 白金先輩は隣の椅子に座った。

 

燐子「それで、お話って......?」

亜蘭「白金先輩は初めて人を好きになったのはいつですか?」

燐子「え......っ?///」

亜蘭「?」

燐子(し、四宮君がそんな事を聞いてくるなんて、ど、どういう事なんですか?///)

 

 白金先輩が喋らなくなった。

 顔も赤いし、急にこんなことを聞くのは失礼だっただろうか。

 

燐子「え、えっと......私は、最近にかもです......///」

亜蘭「俺は昔に一瞬だけでした。」

燐子「え......?」

亜蘭「相手はこころ様でした。」

燐子「!」

 

 そうだ、俺はこころ様に初めて出会ったとき、彼女の事が好きだった。

 

亜蘭「思い出したのは、ついさっきです。なんで、忘れていたのでしょうか。」

燐子「じゃ、じゃあ、四宮君は今でも、弦巻さんを......?」

亜蘭「いえ、今は違いますよ。」

燐子(今は......?)

 

 俺は椅子から立ち上がった。

 

亜蘭「戻りましょう。ロゼリアの皆さんも来ているでしょうし。」

燐子「え、あの......」

亜蘭「?」

 

 白金先輩が何か言いたそうにしてる。

 どうしたんだろうか?

 

亜蘭「どうしましたか?」

燐子「四宮君は今、好きな人がいるのですか......?」

亜蘭「......」

燐子(ど、どうなんでしょうか......?)

 

 こんなことを聞かれるとは。

 

 流石にここで白金先輩と答えるのはずるい気がする。

 ここは上手く濁そう。

 

亜蘭「いますよ。」

燐子「っ......!そ、それは誰でしょうか......?」

亜蘭「とても、素敵な人ですよ。それじゃあ、戻りましょうか。」

燐子「は、はい......」

 

 俺たちは屋敷に戻って行った

 

燐子(四宮君に好きな人、しかも、素敵な人なんて......胸が、苦しい......)

 

亜蘭(もしかしたら、勘づかれたかもしれないな。)




”こころ”

若葉「ねぇ、こころ?」

こころ「どうしたの?」

若葉「なんだか、いつもより表情が明るい気がして、どうしたのかなって。」

こころ「うーん、気分がすっきりしたからかしら?」

若葉「?」

こころ「亜蘭に思いを伝えたわ!」

若葉「そうですか。」

こころ「断られてしまったけれど、あたしは何も後悔してないわ!」

若葉「そう。(よかたわね、こころも亜蘭さんも。)」

こころ「あたしは世界を笑顔にするわ!」

若葉「頑張りなさい!」

こころ「えぇ!」

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