本当に欲しいもの   作:火の車

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”谷戸と雫”

雫「うーん、届かない。なんでだろ?」

谷戸「おやおや、どうなさいましたか?」

雫「あ、谷戸さん。この荷物に手が届かないんだよ。」

谷戸「これですか?私がとりましょう。」

雫「ありがと。」

谷戸「はい。どうぞ。」

雫「うん。」

谷戸「あまり危険なことはしないでくださいね?(亜蘭様が悲しむので。)」

雫「!」

谷戸「?」

雫「じゃあ、何かあった時はまた助けてね。」

谷戸「はい。かしこまりました。」


祭りの日

こころ『__という感じよ!』

亜蘭「はい。存じております。」

 

 俺は部屋にある電話でこころ様と通話していた。

 要件は今日ある夏祭りの協力のお礼らしい。

 

 学生にとって、夏休み最初のイベントだろうし、俺としても協力を惜しむこともない。

 

こころ『今回は協力してくれてありがとう!』

亜蘭「いえ、俺としても皆に楽しんでもらいたいので、協力できてよかったです。」

こころ『これで、皆も笑顔になるわ!そう言えば、亜蘭はお祭りに来ないの?』

亜蘭「俺はまだ未定です。」

こころ『そうなの?亜蘭もくればいいのに。』

亜蘭「まぁ、もしかしたら顔を出すかもしれません。」

こころ『ぜひ、そうしなさい!』

亜蘭「はい。」

こころ『じゃあ、あたしは今日のライブの準備があるから切るわね!』

 

 こころ様がそう言うと、通話が切れた。

 

谷戸「お疲れ様です。」

亜蘭「あぁ。谷戸、皆への伝達は済んでるか?」

谷戸「はい。出店をしたいもの、通常通りの参加をするもののリストです。」

亜蘭「ふむ、雫以外は全員参加か。良い事だ。谷戸は警備員を任せて悪いな。」

谷戸「滅相もない。むしろ、私以外に安心して任せられないでしょう。」

亜蘭「あぁ。助かるよ。」

谷戸「亜蘭様は今年はどうなさいますか?」

亜蘭「一人で祭りに行くのもな、まぁ、顔は出すかもしれないが。」

雫「__入るよ。」

 

 俺たちが話してると、雫が部屋に入ってきた。

 

亜蘭「雫か。ノック位してほしいんだが?」

雫「いいでしょ。見られて困るものなんてないし。」

亜蘭「まぁ、そうだが。」

雫「まぁ、そのことは置いといて。ロゼリアの皆が来たよ。」

谷戸「おや?もう、そんな時間でしたか。」

亜蘭「挨拶に行かないとな。」

雫「うん。行っておいで。」

亜蘭「そう言えば、雫は祭りにはいかないのか?」

雫「んー......気が向いたら行くかも。」

亜蘭「そうか。まぁ、今日の夜は全員、自由だからな。雫も好きなようにしてくれ。」

雫「うん。わかった。」

 

 俺はそう言って、部屋を出てロゼリアのもとに向かった。

__________________

 

 ロゼリアがいる部屋の前に来た。

 まだ練習は始まっていないようだ。

 

 俺は扉を開けた。

 

亜蘭「__おはようございます。皆さん。」

あこ「あ!四宮さん!」

リサ「おはよー!」

紗夜「おはようございます。」

友希那「おはよう。四宮君。」

燐子「おはようございます。」

 

 ロゼリアの皆はテーブルを囲んでいた。

 様子的は何かの話をしていたようだ。

 

亜蘭「おや、雫がお菓子を出したんですね?」

あこ「はい!とっても美味しいです!」

亜蘭「そうか。雫に伝えておくよ。宇田川さん。」

紗夜「すみません。練習をするための場所で......」

亜蘭「いえ、いいですよ。働いてくれてる皆の部屋以外は好きなようにしていいです。」

リサ「でも、本当にここ快適すぎだよねー。」

友希那「えぇ。とても涼しいわ。」

 

 ふむ、今の所ここの改善点はないみたいだ。

 

 基本的な設備しかないが、今はこれでもいい。

 必要になれば追加していこう。

 

亜蘭「そう言えば、何か話してた様子ですが。何のお話をしていたんですか?」

リサ「今日のお祭りの話だよー!」

あこ「今年は何か、いつもよりすごいらしいんです!」

亜蘭「あぁ、今年は花火の数が大幅に増えましたよ。範囲も例年よりかなり広がりましたし、かなり面白そうな屋台もありましたね。」

友希那「詳しいわね?」

燐子「まさか、四宮君も?」

亜蘭「はい。微力ながら協力させていただきました。」

リサ「マジで!?こころの家だけじゃなくて四宮君の家も!?」

亜蘭「ここで働いてる何人かも出店をしていますよ。」

あこ「四宮さんの家の人が屋台?どんな高級なの?」

亜蘭「そんなことはないよ。......やと、出店のリスト頼む。」

谷戸「__はい、こちらに。」

ロゼリア「!?(どこからでてきたんだろう?)」

亜蘭「ありがとう。」

谷戸「いえいえ。では。」

 

 谷戸は部屋から出て行った。

 

 ロゼリアの皆の方を見ると驚いた顔をしていた。

 

亜蘭「はい、これが屋台のリストだよ。」

あこ「ありがとうございます!」

リサ「どれどれー?」

 

 二人はリストに目を通した。

 

 しばらくすると、二人は驚いたようなを出した。

 

リサ「__安い!」

あこ「え!?なんでなんで!?」

紗夜「そんなにですか?__って、えぇ!?」

燐子「これは......大丈夫なんですか?」

友希那「私でもおかしいって分かったわよ?」

亜蘭「そうですか?」

 

 だいたい、材料の提供は家だから問題は全くない。

 

 特に祭りで利益を求めることもないし、この先にも夏休みには色んな事がある。

 そんな学生の助けになればいいな。

 

亜蘭「本当は無料で配っても良かったのですが、商店会長さん始めとした皆さんに反対されてしまって。」

紗夜「それはそうでしょう。」

リサ「うん。」

亜蘭「そうでしょうか?」

あこ「嬉しいとは思いますけどねー。」

燐子「そうだね、あこちゃん......」

亜蘭「まぁ、こころ様がステージをすると言っていたので、今年は色々ありますよ。楽しんでください。」

燐子「四宮君は、来ないんですか......?」

亜蘭「俺は顔は出すかもしれないと言うくらいですよ、燐子さん。」

友希那、紗夜、リサ、あこ「え!?」

亜蘭「?」

燐子「あ......っ///」

 

 4人が驚いた顔をしてる。

 どうしたんだろうか?

 

 タイミング的に名前を呼んだときだな。

 

友希那「い、いつから、名前で呼ぶ仲になったのかしら?」

亜蘭「4日前くらいですね。燐子さんに呼んでほしいと言われて。」

あこ「りんりん、大胆!」

リサ「めっちゃ進展したじゃん!」

紗夜「こんなに、成長して......」

燐子「うぅ......し、四宮君///」

亜蘭「呼ばない方がよかったですか?」

燐子「い、いえ......それは......///」

 

 燐子さんは顔を真っ赤にしてモジモジしてる。

 とても恥ずかしそうだ。

 それを見てただひたすら思う。

 

亜蘭(可愛いな。)

あこ「りんりんは四宮さんの事名前で呼ばないの?」

燐子「え......///」

友希那「確かに四宮君だけ下の名前で呼んでるのは不自然だわ。」

リサ「だよねー。」

紗夜「四宮君は名前で呼んではいけないなどはありますか?」

亜蘭「いえ、特にはないですが。」

あこ「ならさ!りんりんも呼んでみなよー!」

燐子「え、あの、その......///」

友希那「燐子。」

燐子「友希那さん......?」

友希那「呼びなさい。」

燐子「」

 

 なんだろう、この状況は。

 

 だが、燐子さんに呼ばれるのはそれはそれで、いいな。

 うん、ここは黙っていよう。

 

紗夜「行きなさい、白金さん。未来は明るいですよ。」

リサ「頑張れ!燐子☆」

燐子「あ、あう......///」

あこ「りんりん......!」

友希那「さぁ、呼びなさい。」

燐子「えっと......///」

 

 燐子さんはおおきく深呼吸した。

 

 そして、俺の方に目を向けた。

 

燐子「あ、亜蘭君......?///」

亜蘭「はい。燐子さん?」

 

 可愛すぎる。

 

 ただ名前を呼んだだけでここまで可愛い人類はそういないぞ。

 表情筋がかなり緩んでるな。

 

燐子「よ、よんでみただけ、ですよ......?///」

亜蘭「あはは、そうですか。」

 

あこ「すごい幸せそうな顔してる。」

リサ「あの二人って付き合ってないの?」

紗夜「もうさっさとくっ付いてほしいですね。」

友希那「美男美女で絵になりそうだものね。」

 

 色々あったが、落ち着きを取り戻した。

 少し経つと、俺も交えて話が再開された。

 

リサ「__四宮君さ、あたし達とお祭り行かない?」

亜蘭「そうですね、どうしましょうか。」

燐子「来ないんですか......?」

亜蘭「え?」

燐子「私は亜蘭君に、来てほしいです......///」

亜蘭「じゃあ、行きます。」

あこ「はやっ!?」

谷戸「__なんと!」

ロゼリア「!?」

亜蘭「来てたのか。」

谷戸「亜蘭様がお祭りに行かれると聞こえまして!秘蔵のこれを出すときがきました!」

 

 そう言って谷戸は男用の浴衣を出した。

 

 こんなのいつ買ったんだ?

 

谷戸「いやはや、これは一生封印することになると思っていました。」

亜蘭「そ、そうか。」

紗夜「あら、四宮君は浴衣を着るのですね。」

友希那「どうしようかしら。」

谷戸「ご心配なさらずに。皆様の分も今、用意いたしました。」

リサ「え?」

あこ「サイズとかどうやって分かったんですか?」

谷戸「そんなもの、あらゆるサイズを用意すればいいだけの事です。」

亜蘭「全く......」

 

 またこいつは自分の給料を使ったな。

 

 後で領収書を出させないといけないな。

 

リサ「ま、まぁ、四宮君も参加ってことで!」

あこ「楽しみだね!りんりん!」

燐子「うん......!」

 

 そうして、ロゼリアは練習を始め、俺は仕事をしに戻った。

__________________

 

 時間が経ち、祭りの時間になった。

 

 俺は準備をするロゼリアの皆を待ってる。

 

亜蘭(それにしても、なんで俺は眼鏡をかけろと言われたんだろう。)

女性「あのー。」

亜蘭「?」

女性2「お一人ですか?」

 

 しばらく待ってると、女性二人に話しかけられた。

 

 周りにも段々と集まってきてる。

 

亜蘭「人を待っているんです。」

女性「えー!私達と回りましょうよー!」

女性2「そうですよー!」

女性3「私と回ってー!」

女性たち「いや、私とー!」

亜蘭(ふむ、困ったな。)

 

 周りを見わたした。

 

亜蘭(あ、皆が来てる。)

 

 ”ロゼリア”

 

友希那「__絶対にこれよね。」

リサ「分かりやすいねー。」

あこ「あこ達、これの真ん中に行くんですか?」

燐子「ひ、人が多い......」

紗夜「大変そうですね。」

 

亜蘭「みなさーん!」

 

リサ「あ、呼んでるじゃん!」

あこ「おーい!四宮さーん!」

 

 ”亜蘭”

 

亜蘭「すみません、通してもらえませんか?」

女性「え、でも......」

亜蘭「お願いします。」

 

 俺は笑顔でそう言った。

 

女性たち「はい!どうぞ!」

 

 そう言って、ロゼリアの皆の方に行けるように人の道が出来た。

 

 俺はその真ん中を通って行った。

 

亜蘭「__こんばんは、皆さん。」

リサ「これ、なんてモーゼかな?」

亜蘭「?」

友希那「(人の)海を割ったわね。」

あこ「かっこいい!」

亜蘭「皆、良い人でよかったよ。」

燐子(そう言う問題なのかな?)

 

 そうして、俺とロゼリアは祭りをしている方に向かって行った。

__________________

 

紗夜「__そういえば、四宮君?」

亜蘭「はい?」

 

 歩いていると、氷川先輩に話しかけられた。

 

紗夜「なぜ、眼鏡をかけているんですか?」

亜蘭「眼鏡ですか?......分からないです、って谷戸から?」

 

 携帯画面には、

 『亜蘭様の変装用です。』

 と書かれていた。

 

亜蘭「どうやら、このメガネは変装らしいです。」

友希那(意味ないわね。)

リサ(効果ないね。お忍び芸能人にしか見えない。)

紗夜(某丸山さんよりも芸能人オーラがありますね。)

あこ(か、隠しきれないオーラ......!)

燐子(め、眼鏡で浴衣の亜蘭君......レアです、写真撮りたいな///)

亜蘭「皆さん?」

リサ「な、なんでもないよー。」

 

 なんだろう、一瞬、燐子さん以外の思考が一致してたような、してないような?

 

 そんな事を思ってるうちに祭りをしてる場所に着いた。

 

あこ「__ついたー!」

紗夜「すごいですね。」

リサ「流石って言うかなんて言うか。」

亜蘭「燐子さん、大丈夫ですか?」

燐子「大丈夫です、しっかり大丈夫です(?)」

友希那「日本語がおかしいわよ?」

燐子「い、いえ、任せてください。私はやり遂げて見せます(?)」

あこ「りんりんがもう限界だね。」

リサ「早いよ!?」

亜蘭「まぁ、何か食べる物でも買って座りましょうか。燐子さん?何が食べたいですか?」

燐子「か、かき氷......」

亜蘭「じゃあ、買いに行きましょうか。」

友希那「介護?」

リサ「もうさっさと結婚しないかな(投げやり)」

紗夜「無理ですよ。二人とも超絶ピュアっ子ですもの。」

あこ「あはは......」

亜蘭「皆さん、行きましょうか。」

 

 そうして、俺とロゼリアはかき氷を買いに行った。

 

メイド「あ!亜蘭様!」

亜蘭「頑張ってるな。」

メイド2「私達の屋台に来ていただけるなんて、光栄です!」

亜蘭「そうか?まぁ、かき氷を6個頼む。出来るだけ色々な味で。」

メイド「かしこまりました!」

亜蘭「代金だ。」

メイド2「あれ?多くはないでしょうか?」

亜蘭「いつも頑張ってくれてるからな。特別だ。他の皆には秘密だぞ?」

メイド「あ、ありがたき幸せ!」

メイド2「これからも精進いたします!」

亜蘭「あぁ、お願いするよ。」

 

 俺はかき氷を6個購入して、ロゼリアの元に戻った。

__________________

 

 一応、多めに備えておいたベンチが役に立つとは。

 

 そう思いながら俺はロゼリアのまつ所に来た。

 

亜蘭「__お待たせしました。」

リサ「あ、ごめんね、四宮君!」

亜蘭「いえいえ。はい、どうぞ。」

 

 俺は買ってきたかき氷を出した。

 

あこ「わー!美味しそう!」

リサ「フルーツ乗ってる!オシャレー!」

燐子「イ、イチゴの練乳......」

友希那「あ、燐子はそれにするのね。」

紗夜「早く食べてください。って、なんだか落としそうですね。」

亜蘭「はい、燐子さん。食べられますか?」

紗夜「!」

 

 俺はかき氷を持って、燐子さんに近づいた。

 

亜蘭「はい。口を開けてください。」

燐子「え......?///」

亜蘭「どうぞ。」

 

 俺はかき氷をスプーンですくって燐子さんに差し出した。

 

燐子「あ、あーん......///」

 

 燐子さんはかき氷を食べた。

 

燐子「お、美味しい......!」

亜蘭「よかったです。」

燐子「四宮君も食べてみますか......?」

亜蘭「?」

燐子「スプーンを貸してください。」

亜蘭「はい。」

燐子「あーん///」

 

 燐子さんがかき氷をすくって差し出してきた。

 

亜蘭「じゃあ、いただきます。」

 

 俺はかき氷を食べた。

 

リサ「......わーお。」

友希那「あの二人、気付いていないのかしら?」

紗夜「シレっと間接キスしましたね。」

あこ「ピュアって一体?」

友希那「まぁ、それにしても美味しいわね。」

あこ「あ!そうですね!」

リサ「フルーツが合うね!」

紗夜「品質が高いですね。」

 

 かき氷を食べ終えると、次何処に行くかという話になった。

 

亜蘭「花火まではまだ時間がありますね。」

リサ「どうしよっかー。」

あこ「あこ、さっき見つけたNFOの屋台行きたい!」

燐子「私も......」

紗夜「それでは、花火まで分けましょうか。」

友希那「そうね。」

亜蘭「それじゃあ、俺は燐子さんと宇田川さんについて行きます。」

 

 そうして、俺たちはグループに分かれて行動を開始した。

__________________

 

亜蘭「そう言えば、NFOとは何なのでしょうか?」

 

 疑問になったので聞いてみた。

 今まで触れてこなかった言葉だな。

 

燐子「オンラインゲームですよ。」

亜蘭「ゲームですか。」

あこ「はい!りんりんと遊んでるんです!」

 

 俺は二人からゲームの話を聞いた。

 

 ゲームをしたことがないから、聞くだけで面白いな。

 

亜蘭「__俺もやってみようかな。」

あこ「楽しいですよ!あことりんりんも一緒に遊べますし!」

亜蘭「いいな。よし、ゲーム用のパソコンを買おうか。」

あこ「ガチ!?」

燐子(亜蘭君とゲーム......すぐに抜かれそう......)

 

香澄「__わーい!」

有咲「香澄ー!走るなー!」

 

亜蘭「あれ?市ヶ谷?」

有咲「あれ?四宮?」

亜蘭「来てたのか。」

香澄「あ!四宮君だ!」

亜蘭「えっと。」

香澄「戸山香澄です!有咲の友達だよ!」

亜蘭「四宮亜蘭だ。」

あこ「かすみ!」

香澄「あこー!」

 

「__ソイヤ!ソイヤ!!ソイヤ!!!」

 

あこ「あ!お姉ちゃん!」

巴「おー!あこー!」

亜蘭「あれ?宇田川?」

巴「お!亜蘭!」

あこ「え?知り合い?」

 

 宇田川とは祭りの打ち合わせで何回か会った。

 

 って、宇田川?

 

亜蘭「あぁ、姉妹なのか。」

あこ「はい!」

巴「悪いな、妹の面倒見てもらって!」

亜蘭「別にいい。いい子だからな。」

香澄「でも、惜しかったなー!」

亜蘭「?」

香澄「あの子がいれば、よろこ__」

有咲「あー、ストップー。香澄ー。」

 

 市ヶ谷が戸山の口をふさいだ。

 どうしたんだ?

 

有咲「私らは行くんで、じゃあまたー。」

香澄「有咲ー!」

 

 二人はどこかに行った。

 

巴「じゃあ!アタシも一回りしてくるぜ!ソイヤー!!!」

 

 宇田川も走って行った。

 

 というか、騒がしいな。

 いや、祭りだからあれが正解なのか?

 

亜蘭「まぁ、俺たちも行きましょうか。」

燐子「そうですね、亜蘭君。」

あこ「あこ達も楽しも!」

 

 俺たちは屋台に向かって行った。

 

 ”友希那、リサ、紗夜”

 

友希那「あの二人、早く付き合わないかしら。」

紗夜「それは谷戸さんも賀川さんも言っていますよ。」

リサ「てか、あんな好きオーラ全開の燐子がいるのになんで気付かないの?」

紗夜「それは彼のこだわりですよ。」

友希那「こだわり?」

紗夜「はい。白金さんに相応しい男になると、いつも言っています。」

リサ「あー、ぽいね。」

 

紗夜「それで最近は様々なスキルを身に着けているようです。」

リサ「へぇ、それって家事とか?」

紗夜「それもですが、最近は楽器をしたり、色んな国の言葉を話せるようになったり、さらにトレーニングをしたりなど、色々してるらしいです。」

友希那「努力家なのね。」

リサ「元々、かなりの超人なのに、これ以上何になるの?てか、色んな国って何か国?」

紗夜「分からないですが、日本で学べる言語は完璧になったと谷戸さんが。今はマイナーな言葉の勉強中らしいです。」

友希那「......彼は何を目指してるの?」

紗夜「白金さんとどこに行っても恥をかかせることがないように、その可能性を極限まで減らせる人間らしいです。」

リサ「いや、もう十分だよ!」

紗夜「そう言う人なんですよ。」

 

 三人はため息をついた。

__________________

 

 しばらく経つと、皆と合流した。

 

 花火の時間までもうすぐだ。

 俺たちは今、谷戸が言ってた穴場にいる。

 

亜蘭「__ふむ。いい場所だな。」

友希那「こんな場所があったのね。」

リサ「うーん!空気が澄んでる気がするー!」

紗夜(あ、これ絶対、谷戸さんが何かしましたね。)

あこ「花火まだかなー!」

燐子「もうすぐだよ、あこちゃん。」

 

 ドーン!!

 

 少し話してると、花火が始まった。

 

リサ「わぁ!」

あこ「すっごい!」

友希那「綺麗ね。」

紗夜「はい。」

リサ「って、あの二人は?」

友希那「そこよ。」

 

 友希那はある方向を指さした。

__________________

 

 人生で花火を見る事は多々あった。

 でも、俺はそれらが全部どうでもよかった。

 

 見たって、何も感じなかったから。

 

亜蘭「燐子さん。」

燐子「はい......?」

亜蘭「綺麗ですね。」

燐子「はい......」

亜蘭「花火を綺麗と思ったのは今が初めてです。」

燐子「え?」

亜蘭「俺は今まで何も感じられずに生きてきました。自分の事で手いっぱいで他に目を向けられなかった。」

 

 どんなに綺麗な物を見ても、どんなに美しい人物を見ても、俺の心は一切、揺れ動かなかった。

 

 この間まで、俺の目には人間なんて写ってすらなかった。

 優しかったのも、ただ、興味がなかっただけなんだ。

 

亜蘭「でも、今は花火を見て綺麗だと心が揺れ動いてる。」

燐子「亜蘭君......」

亜蘭「俺はとても嬉しいんです。燐子さんがあの時、思い出させてくれたおかげです。」

燐子「そんなことは、ないですよ。」

 

 俺たちが話してる間にも、花火は上がり続けている。

 少し間が空いたり、連続であがったりと。

 

亜蘭「本当に綺麗ですね。」

燐子「そうですね......」

亜蘭「花火じゃなくて。」

燐子「?」

 

 俺は燐子さんの方を向いた。

 

亜蘭「燐子さんが、綺麗だ。」

燐子「!///」

亜蘭「ありがとう、燐子さん。俺に心を与えてくれて。」

燐子「亜蘭、君......///」

 

 その時、一際大きな花火が上がった。

 

亜蘭「__俺は燐子さんが__」

燐子「......?」

 

 そうして、花火が終わった。

__________________

 

 花火が終わると、俺たちは一か所に集まった。

 

リサ「__いやー!すごかったね!」

あこ「バーン!って感じだったね!」

友希那「いい花火だったわ。」

亜蘭「......」

紗夜「どうしたのですか?四宮君。」

亜蘭「いえ、なんでもないですよ。」

燐子「亜蘭君、さっきは何て言ってたんですか?」

亜蘭「......な、なんでもないですよ。」

 

 完全に不覚だ。

 もう少しで、聞かれてしまうところだった。

 

亜蘭(まだ駄目だ。俺ごときじゃ。)

 

こころ「__あらーん!」

 

亜蘭「!?」

リサ「こころ!?」

あこ「なんで空から!?」

 

 こころ様は俺の目の前に着地した。

 

こころ「皆もいるのね!ちょうどいいわ!」

亜蘭「ちょうどいい、ですか?」

こころ「えぇ!」

友希那「どういうこと?弦巻さん。」

こころ「皆で海に行きましょう!」

紗夜「海、ですか?」

リサ「誰が来るのー?」

こころ「参加者はガールズバンド25人と亜蘭よ!」

亜蘭「え?」

こころ「それで、友希那は来るかしら?」

友希那「行くわ。」

あこ「やったー!」

こころ「亜蘭も準備しておきなさい!」

亜蘭「はい。」

 

 どうやら、次は海に行くらしい。

__________________

 

 ”谷戸”

 

谷戸「__おやおや。」

雫「そうやって陰から見るの、不審者みたいだよ。」

谷戸「これは、賀川さん。」

 

 谷戸の後ろにはいくつかの袋を持った雫が立っていた。

 

 どこか呆れたような表情で、谷戸を見ている。

 

雫「ほんとに、飽きないね。」

谷戸「亜蘭様ですから。」

雫「うん。知ってた。」

谷戸「それよりも、賀川さんはなぜここに?」

雫「言ったでしょ?気が向いたら来るって。」

 

 そう言うと雫は袋を谷戸に差し出した。

 

谷戸「これは?」

雫「差し入れ。警備員、お疲れ。」

谷戸「これはこれは。ありがとうございます。」

雫「じゃあ、私は帰るよ。」

谷戸「えぇ。」

 

 雫は谷戸に背を向けて歩いて行った。

 その後、谷戸は袋の中を見た。

 

谷戸「ふむ、良い香りですね。でも、これは。」

 

 屋台で貰える袋に入ってるが、これは雫の手作りだ。

 

谷戸「なぜわざわざ、この袋に入れたのでしょうか?」

 

 疑問に思ったが、谷戸は差し入れを食べ始めた。

 

雫「__ほんと、亜蘭だけじゃなくて、自分にも目を向けなよ。谷戸さん。」

 

 こうして、夏祭りの日は終わって行った。

 

 

 

 

 




”亜蘭と燐子”

燐子「亜蘭君は、あの時、何て言ったんですか......?」

亜蘭「......言えません。」

燐子「どうしても、ですか......?」

亜蘭「どうしても、です。」

燐子「じゃあ、ヒントは......」

亜蘭「......いつか、分かります。」

燐子「?」

亜蘭「それだけです。言えることは。」

燐子「あ、亜蘭君......行っちゃった。」

亜蘭(言えませんよ。まだ。)

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