雫「うーん、届かない。なんでだろ?」
谷戸「おやおや、どうなさいましたか?」
雫「あ、谷戸さん。この荷物に手が届かないんだよ。」
谷戸「これですか?私がとりましょう。」
雫「ありがと。」
谷戸「はい。どうぞ。」
雫「うん。」
谷戸「あまり危険なことはしないでくださいね?(亜蘭様が悲しむので。)」
雫「!」
谷戸「?」
雫「じゃあ、何かあった時はまた助けてね。」
谷戸「はい。かしこまりました。」
こころ『__という感じよ!』
亜蘭「はい。存じております。」
俺は部屋にある電話でこころ様と通話していた。
要件は今日ある夏祭りの協力のお礼らしい。
学生にとって、夏休み最初のイベントだろうし、俺としても協力を惜しむこともない。
こころ『今回は協力してくれてありがとう!』
亜蘭「いえ、俺としても皆に楽しんでもらいたいので、協力できてよかったです。」
こころ『これで、皆も笑顔になるわ!そう言えば、亜蘭はお祭りに来ないの?』
亜蘭「俺はまだ未定です。」
こころ『そうなの?亜蘭もくればいいのに。』
亜蘭「まぁ、もしかしたら顔を出すかもしれません。」
こころ『ぜひ、そうしなさい!』
亜蘭「はい。」
こころ『じゃあ、あたしは今日のライブの準備があるから切るわね!』
こころ様がそう言うと、通話が切れた。
谷戸「お疲れ様です。」
亜蘭「あぁ。谷戸、皆への伝達は済んでるか?」
谷戸「はい。出店をしたいもの、通常通りの参加をするもののリストです。」
亜蘭「ふむ、雫以外は全員参加か。良い事だ。谷戸は警備員を任せて悪いな。」
谷戸「滅相もない。むしろ、私以外に安心して任せられないでしょう。」
亜蘭「あぁ。助かるよ。」
谷戸「亜蘭様は今年はどうなさいますか?」
亜蘭「一人で祭りに行くのもな、まぁ、顔は出すかもしれないが。」
雫「__入るよ。」
俺たちが話してると、雫が部屋に入ってきた。
亜蘭「雫か。ノック位してほしいんだが?」
雫「いいでしょ。見られて困るものなんてないし。」
亜蘭「まぁ、そうだが。」
雫「まぁ、そのことは置いといて。ロゼリアの皆が来たよ。」
谷戸「おや?もう、そんな時間でしたか。」
亜蘭「挨拶に行かないとな。」
雫「うん。行っておいで。」
亜蘭「そう言えば、雫は祭りにはいかないのか?」
雫「んー......気が向いたら行くかも。」
亜蘭「そうか。まぁ、今日の夜は全員、自由だからな。雫も好きなようにしてくれ。」
雫「うん。わかった。」
俺はそう言って、部屋を出てロゼリアのもとに向かった。
__________________
ロゼリアがいる部屋の前に来た。
まだ練習は始まっていないようだ。
俺は扉を開けた。
亜蘭「__おはようございます。皆さん。」
あこ「あ!四宮さん!」
リサ「おはよー!」
紗夜「おはようございます。」
友希那「おはよう。四宮君。」
燐子「おはようございます。」
ロゼリアの皆はテーブルを囲んでいた。
様子的は何かの話をしていたようだ。
亜蘭「おや、雫がお菓子を出したんですね?」
あこ「はい!とっても美味しいです!」
亜蘭「そうか。雫に伝えておくよ。宇田川さん。」
紗夜「すみません。練習をするための場所で......」
亜蘭「いえ、いいですよ。働いてくれてる皆の部屋以外は好きなようにしていいです。」
リサ「でも、本当にここ快適すぎだよねー。」
友希那「えぇ。とても涼しいわ。」
ふむ、今の所ここの改善点はないみたいだ。
基本的な設備しかないが、今はこれでもいい。
必要になれば追加していこう。
亜蘭「そう言えば、何か話してた様子ですが。何のお話をしていたんですか?」
リサ「今日のお祭りの話だよー!」
あこ「今年は何か、いつもよりすごいらしいんです!」
亜蘭「あぁ、今年は花火の数が大幅に増えましたよ。範囲も例年よりかなり広がりましたし、かなり面白そうな屋台もありましたね。」
友希那「詳しいわね?」
燐子「まさか、四宮君も?」
亜蘭「はい。微力ながら協力させていただきました。」
リサ「マジで!?こころの家だけじゃなくて四宮君の家も!?」
亜蘭「ここで働いてる何人かも出店をしていますよ。」
あこ「四宮さんの家の人が屋台?どんな高級なの?」
亜蘭「そんなことはないよ。......やと、出店のリスト頼む。」
谷戸「__はい、こちらに。」
ロゼリア「!?(どこからでてきたんだろう?)」
亜蘭「ありがとう。」
谷戸「いえいえ。では。」
谷戸は部屋から出て行った。
ロゼリアの皆の方を見ると驚いた顔をしていた。
亜蘭「はい、これが屋台のリストだよ。」
あこ「ありがとうございます!」
リサ「どれどれー?」
二人はリストに目を通した。
しばらくすると、二人は驚いたようなを出した。
リサ「__安い!」
あこ「え!?なんでなんで!?」
紗夜「そんなにですか?__って、えぇ!?」
燐子「これは......大丈夫なんですか?」
友希那「私でもおかしいって分かったわよ?」
亜蘭「そうですか?」
だいたい、材料の提供は家だから問題は全くない。
特に祭りで利益を求めることもないし、この先にも夏休みには色んな事がある。
そんな学生の助けになればいいな。
亜蘭「本当は無料で配っても良かったのですが、商店会長さん始めとした皆さんに反対されてしまって。」
紗夜「それはそうでしょう。」
リサ「うん。」
亜蘭「そうでしょうか?」
あこ「嬉しいとは思いますけどねー。」
燐子「そうだね、あこちゃん......」
亜蘭「まぁ、こころ様がステージをすると言っていたので、今年は色々ありますよ。楽しんでください。」
燐子「四宮君は、来ないんですか......?」
亜蘭「俺は顔は出すかもしれないと言うくらいですよ、燐子さん。」
友希那、紗夜、リサ、あこ「え!?」
亜蘭「?」
燐子「あ......っ///」
4人が驚いた顔をしてる。
どうしたんだろうか?
タイミング的に名前を呼んだときだな。
友希那「い、いつから、名前で呼ぶ仲になったのかしら?」
亜蘭「4日前くらいですね。燐子さんに呼んでほしいと言われて。」
あこ「りんりん、大胆!」
リサ「めっちゃ進展したじゃん!」
紗夜「こんなに、成長して......」
燐子「うぅ......し、四宮君///」
亜蘭「呼ばない方がよかったですか?」
燐子「い、いえ......それは......///」
燐子さんは顔を真っ赤にしてモジモジしてる。
とても恥ずかしそうだ。
それを見てただひたすら思う。
亜蘭(可愛いな。)
あこ「りんりんは四宮さんの事名前で呼ばないの?」
燐子「え......///」
友希那「確かに四宮君だけ下の名前で呼んでるのは不自然だわ。」
リサ「だよねー。」
紗夜「四宮君は名前で呼んではいけないなどはありますか?」
亜蘭「いえ、特にはないですが。」
あこ「ならさ!りんりんも呼んでみなよー!」
燐子「え、あの、その......///」
友希那「燐子。」
燐子「友希那さん......?」
友希那「呼びなさい。」
燐子「」
なんだろう、この状況は。
だが、燐子さんに呼ばれるのはそれはそれで、いいな。
うん、ここは黙っていよう。
紗夜「行きなさい、白金さん。未来は明るいですよ。」
リサ「頑張れ!燐子☆」
燐子「あ、あう......///」
あこ「りんりん......!」
友希那「さぁ、呼びなさい。」
燐子「えっと......///」
燐子さんはおおきく深呼吸した。
そして、俺の方に目を向けた。
燐子「あ、亜蘭君......?///」
亜蘭「はい。燐子さん?」
可愛すぎる。
ただ名前を呼んだだけでここまで可愛い人類はそういないぞ。
表情筋がかなり緩んでるな。
燐子「よ、よんでみただけ、ですよ......?///」
亜蘭「あはは、そうですか。」
あこ「すごい幸せそうな顔してる。」
リサ「あの二人って付き合ってないの?」
紗夜「もうさっさとくっ付いてほしいですね。」
友希那「美男美女で絵になりそうだものね。」
色々あったが、落ち着きを取り戻した。
少し経つと、俺も交えて話が再開された。
リサ「__四宮君さ、あたし達とお祭り行かない?」
亜蘭「そうですね、どうしましょうか。」
燐子「来ないんですか......?」
亜蘭「え?」
燐子「私は亜蘭君に、来てほしいです......///」
亜蘭「じゃあ、行きます。」
あこ「はやっ!?」
谷戸「__なんと!」
ロゼリア「!?」
亜蘭「来てたのか。」
谷戸「亜蘭様がお祭りに行かれると聞こえまして!秘蔵のこれを出すときがきました!」
そう言って谷戸は男用の浴衣を出した。
こんなのいつ買ったんだ?
谷戸「いやはや、これは一生封印することになると思っていました。」
亜蘭「そ、そうか。」
紗夜「あら、四宮君は浴衣を着るのですね。」
友希那「どうしようかしら。」
谷戸「ご心配なさらずに。皆様の分も今、用意いたしました。」
リサ「え?」
あこ「サイズとかどうやって分かったんですか?」
谷戸「そんなもの、あらゆるサイズを用意すればいいだけの事です。」
亜蘭「全く......」
またこいつは自分の給料を使ったな。
後で領収書を出させないといけないな。
リサ「ま、まぁ、四宮君も参加ってことで!」
あこ「楽しみだね!りんりん!」
燐子「うん......!」
そうして、ロゼリアは練習を始め、俺は仕事をしに戻った。
__________________
時間が経ち、祭りの時間になった。
俺は準備をするロゼリアの皆を待ってる。
亜蘭(それにしても、なんで俺は眼鏡をかけろと言われたんだろう。)
女性「あのー。」
亜蘭「?」
女性2「お一人ですか?」
しばらく待ってると、女性二人に話しかけられた。
周りにも段々と集まってきてる。
亜蘭「人を待っているんです。」
女性「えー!私達と回りましょうよー!」
女性2「そうですよー!」
女性3「私と回ってー!」
女性たち「いや、私とー!」
亜蘭(ふむ、困ったな。)
周りを見わたした。
亜蘭(あ、皆が来てる。)
”ロゼリア”
友希那「__絶対にこれよね。」
リサ「分かりやすいねー。」
あこ「あこ達、これの真ん中に行くんですか?」
燐子「ひ、人が多い......」
紗夜「大変そうですね。」
亜蘭「みなさーん!」
リサ「あ、呼んでるじゃん!」
あこ「おーい!四宮さーん!」
”亜蘭”
亜蘭「すみません、通してもらえませんか?」
女性「え、でも......」
亜蘭「お願いします。」
俺は笑顔でそう言った。
女性たち「はい!どうぞ!」
そう言って、ロゼリアの皆の方に行けるように人の道が出来た。
俺はその真ん中を通って行った。
亜蘭「__こんばんは、皆さん。」
リサ「これ、なんてモーゼかな?」
亜蘭「?」
友希那「(人の)海を割ったわね。」
あこ「かっこいい!」
亜蘭「皆、良い人でよかったよ。」
燐子(そう言う問題なのかな?)
そうして、俺とロゼリアは祭りをしている方に向かって行った。
__________________
紗夜「__そういえば、四宮君?」
亜蘭「はい?」
歩いていると、氷川先輩に話しかけられた。
紗夜「なぜ、眼鏡をかけているんですか?」
亜蘭「眼鏡ですか?......分からないです、って谷戸から?」
携帯画面には、
『亜蘭様の変装用です。』
と書かれていた。
亜蘭「どうやら、このメガネは変装らしいです。」
友希那(意味ないわね。)
リサ(効果ないね。お忍び芸能人にしか見えない。)
紗夜(某丸山さんよりも芸能人オーラがありますね。)
あこ(か、隠しきれないオーラ......!)
燐子(め、眼鏡で浴衣の亜蘭君......レアです、写真撮りたいな///)
亜蘭「皆さん?」
リサ「な、なんでもないよー。」
なんだろう、一瞬、燐子さん以外の思考が一致してたような、してないような?
そんな事を思ってるうちに祭りをしてる場所に着いた。
あこ「__ついたー!」
紗夜「すごいですね。」
リサ「流石って言うかなんて言うか。」
亜蘭「燐子さん、大丈夫ですか?」
燐子「大丈夫です、しっかり大丈夫です(?)」
友希那「日本語がおかしいわよ?」
燐子「い、いえ、任せてください。私はやり遂げて見せます(?)」
あこ「りんりんがもう限界だね。」
リサ「早いよ!?」
亜蘭「まぁ、何か食べる物でも買って座りましょうか。燐子さん?何が食べたいですか?」
燐子「か、かき氷......」
亜蘭「じゃあ、買いに行きましょうか。」
友希那「介護?」
リサ「もうさっさと結婚しないかな(投げやり)」
紗夜「無理ですよ。二人とも超絶ピュアっ子ですもの。」
あこ「あはは......」
亜蘭「皆さん、行きましょうか。」
そうして、俺とロゼリアはかき氷を買いに行った。
メイド「あ!亜蘭様!」
亜蘭「頑張ってるな。」
メイド2「私達の屋台に来ていただけるなんて、光栄です!」
亜蘭「そうか?まぁ、かき氷を6個頼む。出来るだけ色々な味で。」
メイド「かしこまりました!」
亜蘭「代金だ。」
メイド2「あれ?多くはないでしょうか?」
亜蘭「いつも頑張ってくれてるからな。特別だ。他の皆には秘密だぞ?」
メイド「あ、ありがたき幸せ!」
メイド2「これからも精進いたします!」
亜蘭「あぁ、お願いするよ。」
俺はかき氷を6個購入して、ロゼリアの元に戻った。
__________________
一応、多めに備えておいたベンチが役に立つとは。
そう思いながら俺はロゼリアのまつ所に来た。
亜蘭「__お待たせしました。」
リサ「あ、ごめんね、四宮君!」
亜蘭「いえいえ。はい、どうぞ。」
俺は買ってきたかき氷を出した。
あこ「わー!美味しそう!」
リサ「フルーツ乗ってる!オシャレー!」
燐子「イ、イチゴの練乳......」
友希那「あ、燐子はそれにするのね。」
紗夜「早く食べてください。って、なんだか落としそうですね。」
亜蘭「はい、燐子さん。食べられますか?」
紗夜「!」
俺はかき氷を持って、燐子さんに近づいた。
亜蘭「はい。口を開けてください。」
燐子「え......?///」
亜蘭「どうぞ。」
俺はかき氷をスプーンですくって燐子さんに差し出した。
燐子「あ、あーん......///」
燐子さんはかき氷を食べた。
燐子「お、美味しい......!」
亜蘭「よかったです。」
燐子「四宮君も食べてみますか......?」
亜蘭「?」
燐子「スプーンを貸してください。」
亜蘭「はい。」
燐子「あーん///」
燐子さんがかき氷をすくって差し出してきた。
亜蘭「じゃあ、いただきます。」
俺はかき氷を食べた。
リサ「......わーお。」
友希那「あの二人、気付いていないのかしら?」
紗夜「シレっと間接キスしましたね。」
あこ「ピュアって一体?」
友希那「まぁ、それにしても美味しいわね。」
あこ「あ!そうですね!」
リサ「フルーツが合うね!」
紗夜「品質が高いですね。」
かき氷を食べ終えると、次何処に行くかという話になった。
亜蘭「花火まではまだ時間がありますね。」
リサ「どうしよっかー。」
あこ「あこ、さっき見つけたNFOの屋台行きたい!」
燐子「私も......」
紗夜「それでは、花火まで分けましょうか。」
友希那「そうね。」
亜蘭「それじゃあ、俺は燐子さんと宇田川さんについて行きます。」
そうして、俺たちはグループに分かれて行動を開始した。
__________________
亜蘭「そう言えば、NFOとは何なのでしょうか?」
疑問になったので聞いてみた。
今まで触れてこなかった言葉だな。
燐子「オンラインゲームですよ。」
亜蘭「ゲームですか。」
あこ「はい!りんりんと遊んでるんです!」
俺は二人からゲームの話を聞いた。
ゲームをしたことがないから、聞くだけで面白いな。
亜蘭「__俺もやってみようかな。」
あこ「楽しいですよ!あことりんりんも一緒に遊べますし!」
亜蘭「いいな。よし、ゲーム用のパソコンを買おうか。」
あこ「ガチ!?」
燐子(亜蘭君とゲーム......すぐに抜かれそう......)
香澄「__わーい!」
有咲「香澄ー!走るなー!」
亜蘭「あれ?市ヶ谷?」
有咲「あれ?四宮?」
亜蘭「来てたのか。」
香澄「あ!四宮君だ!」
亜蘭「えっと。」
香澄「戸山香澄です!有咲の友達だよ!」
亜蘭「四宮亜蘭だ。」
あこ「かすみ!」
香澄「あこー!」
「__ソイヤ!ソイヤ!!ソイヤ!!!」
あこ「あ!お姉ちゃん!」
巴「おー!あこー!」
亜蘭「あれ?宇田川?」
巴「お!亜蘭!」
あこ「え?知り合い?」
宇田川とは祭りの打ち合わせで何回か会った。
って、宇田川?
亜蘭「あぁ、姉妹なのか。」
あこ「はい!」
巴「悪いな、妹の面倒見てもらって!」
亜蘭「別にいい。いい子だからな。」
香澄「でも、惜しかったなー!」
亜蘭「?」
香澄「あの子がいれば、よろこ__」
有咲「あー、ストップー。香澄ー。」
市ヶ谷が戸山の口をふさいだ。
どうしたんだ?
有咲「私らは行くんで、じゃあまたー。」
香澄「有咲ー!」
二人はどこかに行った。
巴「じゃあ!アタシも一回りしてくるぜ!ソイヤー!!!」
宇田川も走って行った。
というか、騒がしいな。
いや、祭りだからあれが正解なのか?
亜蘭「まぁ、俺たちも行きましょうか。」
燐子「そうですね、亜蘭君。」
あこ「あこ達も楽しも!」
俺たちは屋台に向かって行った。
”友希那、リサ、紗夜”
友希那「あの二人、早く付き合わないかしら。」
紗夜「それは谷戸さんも賀川さんも言っていますよ。」
リサ「てか、あんな好きオーラ全開の燐子がいるのになんで気付かないの?」
紗夜「それは彼のこだわりですよ。」
友希那「こだわり?」
紗夜「はい。白金さんに相応しい男になると、いつも言っています。」
リサ「あー、ぽいね。」
紗夜「それで最近は様々なスキルを身に着けているようです。」
リサ「へぇ、それって家事とか?」
紗夜「それもですが、最近は楽器をしたり、色んな国の言葉を話せるようになったり、さらにトレーニングをしたりなど、色々してるらしいです。」
友希那「努力家なのね。」
リサ「元々、かなりの超人なのに、これ以上何になるの?てか、色んな国って何か国?」
紗夜「分からないですが、日本で学べる言語は完璧になったと谷戸さんが。今はマイナーな言葉の勉強中らしいです。」
友希那「......彼は何を目指してるの?」
紗夜「白金さんとどこに行っても恥をかかせることがないように、その可能性を極限まで減らせる人間らしいです。」
リサ「いや、もう十分だよ!」
紗夜「そう言う人なんですよ。」
三人はため息をついた。
__________________
しばらく経つと、皆と合流した。
花火の時間までもうすぐだ。
俺たちは今、谷戸が言ってた穴場にいる。
亜蘭「__ふむ。いい場所だな。」
友希那「こんな場所があったのね。」
リサ「うーん!空気が澄んでる気がするー!」
紗夜(あ、これ絶対、谷戸さんが何かしましたね。)
あこ「花火まだかなー!」
燐子「もうすぐだよ、あこちゃん。」
ドーン!!
少し話してると、花火が始まった。
リサ「わぁ!」
あこ「すっごい!」
友希那「綺麗ね。」
紗夜「はい。」
リサ「って、あの二人は?」
友希那「そこよ。」
友希那はある方向を指さした。
__________________
人生で花火を見る事は多々あった。
でも、俺はそれらが全部どうでもよかった。
見たって、何も感じなかったから。
亜蘭「燐子さん。」
燐子「はい......?」
亜蘭「綺麗ですね。」
燐子「はい......」
亜蘭「花火を綺麗と思ったのは今が初めてです。」
燐子「え?」
亜蘭「俺は今まで何も感じられずに生きてきました。自分の事で手いっぱいで他に目を向けられなかった。」
どんなに綺麗な物を見ても、どんなに美しい人物を見ても、俺の心は一切、揺れ動かなかった。
この間まで、俺の目には人間なんて写ってすらなかった。
優しかったのも、ただ、興味がなかっただけなんだ。
亜蘭「でも、今は花火を見て綺麗だと心が揺れ動いてる。」
燐子「亜蘭君......」
亜蘭「俺はとても嬉しいんです。燐子さんがあの時、思い出させてくれたおかげです。」
燐子「そんなことは、ないですよ。」
俺たちが話してる間にも、花火は上がり続けている。
少し間が空いたり、連続であがったりと。
亜蘭「本当に綺麗ですね。」
燐子「そうですね......」
亜蘭「花火じゃなくて。」
燐子「?」
俺は燐子さんの方を向いた。
亜蘭「燐子さんが、綺麗だ。」
燐子「!///」
亜蘭「ありがとう、燐子さん。俺に心を与えてくれて。」
燐子「亜蘭、君......///」
その時、一際大きな花火が上がった。
亜蘭「__俺は燐子さんが__」
燐子「......?」
そうして、花火が終わった。
__________________
花火が終わると、俺たちは一か所に集まった。
リサ「__いやー!すごかったね!」
あこ「バーン!って感じだったね!」
友希那「いい花火だったわ。」
亜蘭「......」
紗夜「どうしたのですか?四宮君。」
亜蘭「いえ、なんでもないですよ。」
燐子「亜蘭君、さっきは何て言ってたんですか?」
亜蘭「......な、なんでもないですよ。」
完全に不覚だ。
もう少しで、聞かれてしまうところだった。
亜蘭(まだ駄目だ。俺ごときじゃ。)
こころ「__あらーん!」
亜蘭「!?」
リサ「こころ!?」
あこ「なんで空から!?」
こころ様は俺の目の前に着地した。
こころ「皆もいるのね!ちょうどいいわ!」
亜蘭「ちょうどいい、ですか?」
こころ「えぇ!」
友希那「どういうこと?弦巻さん。」
こころ「皆で海に行きましょう!」
紗夜「海、ですか?」
リサ「誰が来るのー?」
こころ「参加者はガールズバンド25人と亜蘭よ!」
亜蘭「え?」
こころ「それで、友希那は来るかしら?」
友希那「行くわ。」
あこ「やったー!」
こころ「亜蘭も準備しておきなさい!」
亜蘭「はい。」
どうやら、次は海に行くらしい。
__________________
”谷戸”
谷戸「__おやおや。」
雫「そうやって陰から見るの、不審者みたいだよ。」
谷戸「これは、賀川さん。」
谷戸の後ろにはいくつかの袋を持った雫が立っていた。
どこか呆れたような表情で、谷戸を見ている。
雫「ほんとに、飽きないね。」
谷戸「亜蘭様ですから。」
雫「うん。知ってた。」
谷戸「それよりも、賀川さんはなぜここに?」
雫「言ったでしょ?気が向いたら来るって。」
そう言うと雫は袋を谷戸に差し出した。
谷戸「これは?」
雫「差し入れ。警備員、お疲れ。」
谷戸「これはこれは。ありがとうございます。」
雫「じゃあ、私は帰るよ。」
谷戸「えぇ。」
雫は谷戸に背を向けて歩いて行った。
その後、谷戸は袋の中を見た。
谷戸「ふむ、良い香りですね。でも、これは。」
屋台で貰える袋に入ってるが、これは雫の手作りだ。
谷戸「なぜわざわざ、この袋に入れたのでしょうか?」
疑問に思ったが、谷戸は差し入れを食べ始めた。
雫「__ほんと、亜蘭だけじゃなくて、自分にも目を向けなよ。谷戸さん。」
こうして、夏祭りの日は終わって行った。
”亜蘭と燐子”
燐子「亜蘭君は、あの時、何て言ったんですか......?」
亜蘭「......言えません。」
燐子「どうしても、ですか......?」
亜蘭「どうしても、です。」
燐子「じゃあ、ヒントは......」
亜蘭「......いつか、分かります。」
燐子「?」
亜蘭「それだけです。言えることは。」
燐子「あ、亜蘭君......行っちゃった。」
亜蘭(言えませんよ。まだ。)