本当に欲しいもの   作:火の車

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 ”海と言えば”

亜蘭「うむ、俺は水平線かな。」

燐子「景色......です。」

谷戸「海軍ですね。」

雫「新鮮な魚介。」





対面

 夏祭りの翌日、俺は部屋に谷戸と雫を呼んでいた。

 

亜蘭「__今回、お前たちに同伴を頼みたいんだ。」

谷戸「海、ですか?」

亜蘭「あぁ。こころ様から誘われた。」

雫「それはいいんだけど。なんで私?」

亜蘭「雫はロゼリアの皆さんと面識がある。後は年齢的に近いからだな。」

谷戸「......あ、そう言えば賀川さんは大学生でしたね。」

雫「......忘れてたの?」

谷戸「これは失礼。」

亜蘭「まぁ、向こうに行けばほとんど自由時間だ。雫も新しい環境で心労も溜まってるだろうし、旅行とでも思ってくれ。」

雫「泊りなの?」

亜蘭「あぁ、三泊四日だ。行先は弦巻家が所有してるプライベートビーチだ。」

谷戸「了解いたしました。」

雫「準備しておくよ。」

亜蘭「あぁ、頼む。」

 

 そうして、二人は部屋から出て行った。

 

亜蘭(そう言えば、谷戸と雫は随分と親しくなったんだな。良い事だ。)

 

 二人とも何かに心酔してるタイプだし、そうして視野を広げていくのはいいことだな。

 

 俺はそう思いながら旅行の用意を始めた。

__________________

 

 2日が過ぎ、出発の日になった。

 

 俺達はこころ様に指定された場所で迎えを待っていた。

 

燐子「おはようございます、亜蘭君。」

亜蘭「あ、燐子さん。おはようございます。」

燐子「今日は、暑いですね。」

亜蘭「そうですね。水分補給をこまめにしないとですね。」

あこ「__り、りんりん早いよ......」

友希那「......暑いわ。」

リサ「四宮君が見えてから一瞬だったねー。」

紗夜「はい。それまでは一番後ろにいたのに。」

亜蘭「あ、おはようございます。」

友希那「えぇ、おはよう。」

 

 俺はロゼリアの皆と挨拶をした。

 

 今ここにいるのはロゼリアと俺と谷戸、雫だ。

 

亜蘭「確か、あと20人ほどいるんですよね?」

紗夜「えぇ。もう少しで来るはずです。」

香澄「__おーい!みなさーん!」

紗夜「来ましたね。」

 

 氷川先輩が声がした方に目を向けた。

 

香澄「おはようございますっ!」

あこ「おはよー、かすみー。」

亜蘭「確か、戸山香澄だったな。」

香澄「あれ!?四宮君!?なんで!?」

たえ「こころが言ってたよ。四宮君が来るって。」

りみ「初めまして、四宮君?」

亜蘭「話すのは初めてだね。牛込、花園。」

たえ「あれ?私達のこと知ってるの?」

亜蘭「あぁ。何回か学校で見かけたことがあってね。」

紗夜(なんでそれで名前まで知ってるのでしょうか?)

亜蘭「よろしく。二人とも。」

たえ「よろしくー」

りみ「よろしくね」

有咲「__おはよ。」

亜蘭「あ、市ヶ谷じゃないか。」

有咲「よっ、四宮。」

沙綾「__は、はじめましてー。」

亜蘭「あ、山吹沙綾だな。」

沙綾「!」

亜蘭「君のお父さんとは祭りの時に少し話したよ。お父様曰く、かなり美人の娘さんがいるとね。」

沙綾「お、お父さんが?」

亜蘭「あぁ。うん、噂にたがわない、美人さんだな。」

沙綾「......///」

香澄「沙綾、嬉しそうだねー!」

たえ「そりゃそうだよ、だって__」

有咲「あー、ストップー。おたえは黙ろうなー。」

たえ「むぐ?」

沙綾「じ、じゃあ、私達は向こうに行っておくねー。行こ!皆!」

香澄「沙綾ー!」

 

 そうして5人は離れていった。

 

 これで、後15人か。

 たまたま知り合いがいたが、もうこんなことは__

 

巴「お!亜蘭じゃねぇか!」

亜蘭「......あるのか。」

巴「ん?どうした?」

亜蘭「いや、なんでもないよ。」

ひまり「__え!?」

亜蘭、巴「?」

ひまり「だ、誰、このイケメン!?」

巴「知らねぇのか?四宮亜蘭って?」

ひまり「四宮亜蘭って......え?あの?」

亜蘭「どの四宮亜蘭か分からないけど、俺は四宮亜蘭だよ。」

ひまり「え、すごっ!サインください!」

亜蘭「いや、ないんだが。」

蘭「四宮亜蘭って、あの屋敷に住んでる人だよね。」

モカ「大金持ちだねー。」

つぐみ「す、すごい人だ。」

亜蘭「えっと、誰かな?」

蘭「あたし、美竹蘭。」

亜蘭「美竹?......あぁ、華道の美竹さんか。」

蘭「お父さんとは会ったことあるみたいだね。」

亜蘭「あぁ。華道展に行ったときにね。素晴らしい作品だったよ。」

蘭「ありがと。」

モカ「モカちゃんでーす。よろしくー。」

亜蘭「あぁ。よろしく。」

つぐみ「羽沢つぐみです!えっと、サインください!」

亜蘭「いや、ないよ?」

 

 サインを貰うの、流行ってるのか?

 でも、俺は芸能人でもなんでもないしな。

 

彩「__え?四宮君!?」

亜蘭「!」

 

 話してると、ひときわ大きな声で名前を呼ばれた。

 

彩「わ、私!丸山彩です!」

亜蘭「は、はい。」

彩「ファンです!サインください!」

亜蘭「」

千聖「あらあら、彩ちゃんたら......」

亜蘭「え?白鷺千聖?」

麻弥「彩さん、すごく鬼気迫ってますねー。」

日菜「君が亜蘭君だね!」

イヴ「初めまして!」

亜蘭「テレビで見たことある。パステルパレットですよね。」

千聖「あら、知っていたのね?」

亜蘭「家の従業員にファンの人がいまして。」

千聖「あらあら、嬉しいわね。」

彩「あ、あの、サイン......」

亜蘭「いや、あの、俺はサインというものがないのですが?」

千聖「え?ないの?」

亜蘭「俺は芸能人じゃないですから。」

イヴ「はい!アランさんはとってもお強いブシだと聞いています!」

亜蘭「いや、武士でもないです。」

麻弥「ジブンは単純にすごい人というイメージしかないですね?」

日菜「あたしはお姉ちゃんから聞いてるよー!」

亜蘭「姉?」

日菜「うん!紗夜お姉ちゃん!」

亜蘭「氷川先輩からですか。」

日菜「うん!亜蘭君は面白そうだね!」

亜蘭「そうですか?」

千聖「他の皆にも挨拶に行きましょ。」

彩「え?うん。」

日菜「じゃあねー!」

麻弥「また後程。」

イヴ「また後で話しましょう!」

 

 そう言って5人は他の皆に挨拶に行った。

 

亜蘭「まさか、本当に芸能人が来るなんて。いや、こころ様だから不思議はないんだが。」

谷戸「お疲れ様です、亜蘭様。」

雫「よく初対面の人とあんなに話せるね。」

亜蘭「まぁ、なれたからな。」

薫「__儚い......」

亜蘭「?」

 

 後ろから声が聞こえた。

 

 俺は声がした方に目をやった。

 

薫「はじめまして。四宮亜蘭。」

亜蘭「初めまして。瀬田薫。」

薫「おや?私の事を知っているのかい?」

亜蘭「はい。後ろにいる北沢はぐみ、松原花音さん、奥沢美咲も知っていますよ。」

花音「は、はじめまして。」

はぐみ「なんではぐみ達の事知ってるの?」

美咲「あー、こころから聞いたんじゃないかな?」

亜蘭「その通りだ。奥沢、いや、ミッシェルと呼んだ方がいいかな?」

美咲「......奥沢で。」

はぐみ「でも、はぐみ、亜蘭君の事初めて見たかも!」

花音「私も......」

美咲「いつも女子に囲まれてるからねー。」

亜蘭「まぁ、そうかもな。どうだ?俺は想像通りかな?」

はぐみ「うん!すごくかっこいいね!こころんの言う通りだった!」

花音「彩ちゃんに聞いた通りだった。」

美咲「こころの写真通りだった。」

亜蘭「待ってくれ、写真ってなんだ?」

美咲「こころが持ってたちょっと昔の写真。面影があるなって。」

亜蘭「......あぁ、あの時のか。」

こころ「__みんなー!」

亜蘭「こころ様?」

 

 話してると、こころ様の声が聞こえて来た。

 

はぐみ「__あ!こころん!」

こころ「はぐみー!」

 

 こころ様はこちらに飛んできた。

 

 かなり大きいバスなんだがな。

 

こころ「おはよう亜蘭!」

亜蘭「おはようございます。こころ様。」

谷戸「ごきげんよう。こころ様。」

雫「すっごい腰が低いね。二人とも。」

亜蘭「まぁ、会社で言う上司みたいなものだからな。」

こころ「早く行きましょう!」

 

 こころ様がそう言うと、俺達はバスに乗り込んだ。

__________________

 

 バスの中は広い。

 25人が簡単に収まった。

 

亜蘭(ふむ、どこに座るか。谷戸の隣は......ダメか。)

 

 谷戸の隣には雫が座ってる。

 男女で座るとはそれほど仲が良いんだな。

 

亜蘭(うんうん、良い事だな。)

 

谷戸「__なんでそこに座ったのですか?他にも知り合いはいたでしょうに。」

雫「私、一応年上だし。気を使っちゃうでしょ?」

谷戸「なるほど。」

雫「谷戸さんなら気なんて使わないでしょ?」

谷戸「はい。」

 

 さて、どうしたものか。

 

 どこに座ろう。

 

燐子「亜蘭君。」

亜蘭「あ、燐子さん。」

燐子「良ければ、座りませんか......?」

亜蘭「いいんですか?宇田川さんが隣じゃなくても?」

燐子「あこちゃんは、今井さんの隣に座ってます。」

亜蘭「そうなんですか?なら、失礼します。」 

 

 俺は燐子さんの隣に座った。

 

亜蘭「助かりました、燐子さん。」

燐子「いえ、私も亜蘭君が隣で、嬉しいですよ?」

亜蘭「そう言ってもらえると助かります。(それにしても。)

燐子(亜蘭君の隣に座れたのはいいけど......)

亜蘭、燐子(すごく、視線を感じる。)

 

リサ「よしよーし、第一段階クリアー。」

友希那「燐子から誘えてたわね。」

紗夜「はい。良い事です。」

あこ「最近、思うんですけど。」

友希那「どうしたの?」

あこ「最近、りんりんが更に可愛くなった気がするんですよ。」

紗夜「......言われてみれば?」

友希那「そう?」

リサ「恋する乙女は綺麗になるんだよー?」

あこ「そうなんだ!」

 

 しばらくすると、バスが発車した。

 

 だが、俺には一つ、心配なことがある。

 

亜蘭「__燐子さんは乗り物酔いなどは大丈夫ですか?」

燐子「えっと、酔い止めは、飲みました。」

亜蘭「そうですか。」

燐子「亜蘭君は、大丈夫なんですか?」

亜蘭「俺は乗り物酔いをした経験がないですね?」

燐子(亜蘭君って、欠点なんてあるのかな?)

 

 しばらく走ると、こころ様がマイクを持った。

 

こころ『レクリエーションよ!』

巴「おー!」

こころ『まずはあたしが歌うわ!』

はぐみ「いぇーい!」

香澄「頑張れー!こころー!」

こころ『ありがとう!じゃあ、歌うわね!』

 

亜蘭「......何か始まりましたね。」

燐子「私、呼ばれたら、心臓が止まっちゃいそう......」

亜蘭「燐子さんの歌声は気になりますけどね。」

燐子「わ、私より、友希那さんの方が......」

亜蘭「俺は燐子さんに興味がありますね。」

燐子「!///」

 

友希那「__完全にダシにされたわ。(いいけれど)」

 

 俺たちが話してるうちにこころ様が歌い終えた。

 

こころ『じゃあ、次は......香澄!』

香澄「はい!」

こころ『香澄は何をするのかしら?』

香澄「私は歌う......と見せかけて踊ります!」

有咲「いや、なんでだよ!」

香澄「この間、踊った、盆踊り!」

有咲「余計になんでだよ!?」

たえ「あ、私も踊るー。りみりんも行こー。」

りみ「え......?おたえちゃん......?」

 

 戸山が出ると、花園と牛込、それと何故か市ヶ谷が出た。

 

こころ『音源はあるわ!』

有咲「いや、なんでだよ!」

香澄「踊ろー!」

たえ「ほーい。」

りみ「が、がんばりますっ!」

 

 なんでか4人が踊り始めた。

 

 バスで踊るって普通に考えれば危ないな。

 

 そう思ってるうちに終わった。

 いや、うやむやになったと言う方が正しいか?

 

こころ『さぁ!亜蘭!出番よ!』

亜蘭「」

こころ『こっちに来なさい!』

亜蘭「......はい。」

 

 俺はこころ様の方に歩いて行った。

 

こころ『そうね、亜蘭には気になってる人も多い事を聞いてみようかしら!』

亜蘭「気になる事?」

こころ『えぇ!』

亜蘭「それは一体?」

こころ『亜蘭の女の子の好みよ!』

 

燐子「!!!」

彩「!」

?「!」

 

 今、すごく音が鳴った気が?

 

燐子(こ、これは......)

彩(き、気になる!)

?(ど、どんな子なんだろ?)

 

亜蘭「__これ、言わないといけないでしょうか?」

こころ「えぇ!」

亜蘭(仕方ないか。)

こころ「さぁ!」

 

亜蘭「そうですね、長い黒髪のバンドをしてる、綺麗でとてもお優しく、引込思案な性格ですが芯の強い、年上の女性です。」

 

リサ(__いや!バレバレだよ!?)

紗夜(これは流石に気付いて__)

 

燐子「そ、そんな人が......」

 

紗夜(ないんですか!?)

友希那(え?分からないの?)

あこ(てゆうか、四宮さんなんで、そんなに詳しく言うの!?)

 

亜蘭(流石に誤魔化すわけにはいかない。こころ様の命令だし。)

 

日菜「__ねー!それってりん__」

麻弥「あー!ストップストップ!!」

日菜「むー!」

 

花音「そう言えば、四宮君って燐子ちゃんとよく一緒にいるような?」

千聖「そうよね?」

彩「そっかー、残念......」

イヴ「大丈夫です!アヤさん!」

彩「イヴちゃん?」

イヴ「意中の相手がいないとしてもアヤさんになると言う保証はありません!」

彩「ぐふっ!」

 

蘭「......ねぇ、モカ。あれって。」

モカ「うんー、完全にあの人だよねー。」

ひまり「す、すごい事じゃないの?これ。」

巴「え?誰の事なんだ?」

つぐみ「巴ちゃん......」

 

 俺はこころ様に言われて自分の席に戻った。

 

亜蘭「燐子さん?」

燐子「い、いえ。亜蘭君の好みの女性に当てはまる人を考えてて......」

亜蘭(......自分で言うのもだが、あれでばれないとは。)

燐子「亜蘭君?」

亜蘭「いえ、なんでもないですよ。」

 

 俺は燐子さんの隣で残りのバスの時間を過ごした。

 

有咲「__いやー、四宮の奴、結構大胆だなー。」

香澄「え?」

有咲「お前はいいわ。」

たえ「誰の事?長い黒髪......もしかして私?」

有咲「寝言は寝て言え。」

りみ「あの人だよね......ロゼリアの。」

有咲「そうそう、その人、って、沙綾?」

沙綾「え、あ、何?」

有咲「どうした?ボーっとして?」

沙綾「な、なんでもないよ!」

有咲「そうか?」

__________________

 

 ”谷戸と雫”

 

雫「__かなり踏み切ったね、亜蘭。」

谷戸「はい。」

雫「......正直、谷戸さんはどう思ってる?」

谷戸「何のことでしょうか?」

雫「そろそろ、亜蘭は伝える時だと思うよ。」

谷戸「......私もそう思いますよ。」

雫「だよね。......私も何かしようかな。」

谷戸「やけにお二人をくっつけたがりますね?」

雫「プランがあるから。」

谷戸「おや?それはどう言った事で?」

雫「......秘密。」

谷戸「?」

 

 こうして、ガールズバンドと亜蘭、雫、谷戸の3泊4日の旅行が始まった。


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