本当に欲しいもの   作:火の車

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海で......

 長いバス移動が終わり、弦巻家の別荘に来た。

 

 別荘の目の前には弦巻家所有のプライベートビーチを始め、綺麗な森があったりとかなりいい場所だ。

 

亜蘭「__こんな土地も持ってたのか。」

谷戸「はい。ここはつい最近、購入されたと。」

亜蘭「なるほど。道理で来たことがないわけだ。」

雫「そう言えば、亜蘭ってプライベートビーチとか持ってないの?」

亜蘭「俺か?持っていないな、基本的に必要ないしな。欲しいか?」

雫「......いや、いい。」

亜蘭「そうか?」

 

 俺たちがこんな話をしてると、向こうでこころ様の声が聞こえた。

 

こころ「__海に入りましょう!」

はぐみ「やったー!海だー!」

香澄「有咲!行こ行こ!」

有咲「ちょ!待て香澄ー!」

巴「よっしゃ!大物捕まえてやる!」

蘭「いや、何しに来たの?」

あこ「行こ!りんりん!」

燐子「う、うん。」

日菜「るん♪ってきた!」

紗夜「ちゃんと準備運動はしなさい!」

 

 俺の中で予想してたメンバーが騒いでるな。

 

 まぁ、あの辺じゃ見られないものだし、気分が上がるのだろうな。

 

亜蘭「じここからは自由だ。谷戸も雫も楽しんでくれ。」

谷戸「はい。」

雫「分かったよ。」

亜蘭「じゃあ、俺は行くよ。」

雫「どこに行くの?」

亜蘭「散歩だ。」

谷戸「左様ですか。ごゆっくり。」

亜蘭「あぁ。」

 

 俺は別荘の方に歩いて行った。

__________________

 

 別荘の中はまだ新しいのもあって、かなり綺麗だ。

 

 俺は持ってきた荷物を置いて、ソファに腰を落とした。

 

亜蘭「__何か用か?」

?「っ!」

亜蘭「バスから俺の事を見ていたようだが?山吹。」

沙綾「あはは、気付いてたんだ。」

亜蘭「人の視線には慣れててな。」

沙綾「あ、隣座っていい?」

亜蘭「別にいい。空いてるからな。」

沙綾「じゃあ、失礼します。」

 

 そう言うと山吹は俺の隣に座った。

 

亜蘭「それで、なんで俺をつけてたんだ?皆は海に行ったのに。」

沙綾「あー、えっと、それは......」

亜蘭(山吹沙綾。花咲川の2年で俺の同学年か。......まて、この顔、見たことがあるぞ。)

 

 まぁ、同じ学校だし見かけただけと言えばそれまでだが。

 でも、山吹は確か......

 

亜蘭「......俺の思い込みなら申し訳ないが。山吹はいつも俺を囲んでる人の中にいたか?」

沙綾「え!?」

亜蘭「山吹の顔には見覚えがあるんだ。見間違いかもしれないが。」

沙綾「いや、間違いないよ。」

 

 山吹ははっきりそう言った。

 最近は人をよく見るようになった成果が出たな。

 

亜蘭「それで、なんであんなにコソコソしてたんだ?声をかけてくれればいいのに。」

沙綾「い、いや、それは......」

亜蘭「?」

沙綾「は、恥ずかしくて......///」

亜蘭「恥ずかしい?」

沙綾「う、うん。」

 

 そう言えば、偶々かもしれないが山吹が騒いでるのを見たことがないな。

 

沙綾「四宮君は覚えてるかな?一年前、サッカー部の助っ人で試合に出てた時の事。」

亜蘭「サッカー部?......あぁ、欠員が出たと頼まれたときのか?」

沙綾「うん。それで、私、その試合を見ててね。」

亜蘭「ふむ。」

沙綾「それで、あの試合からずっとね......///」

亜蘭「?」

沙綾「四宮君のファンだったの......///」

亜蘭「」

 

 ファンって何なんだろう。

 

 確か、丸山先輩もそんな事言ってたし。

 俺は芸能人でもなんでもないんだが。

 

沙綾「あの時の四宮君がすごくカッコよくてね!一人で何人も抜き去って点を取ってて!」

亜蘭「いや、あれはマークで敵が散ってたからなんだが。」

沙綾「でも、6人抜きしてたよ?後半にはもう、相手チーム全員、四宮君の方に言ってたし。」

亜蘭「そうだったか?」

沙綾「うん!それを見てからずっと、四宮君が忘れられなくて!」

亜蘭「そ、そうか。」

 

 そんなにすごい事をした記憶はないんだがな。

 

 まぁ、スポーツで人の心動かせたのは良い事なんだとは思うんだが。

 

沙綾「それで、合併することになって、四宮君を見つけてね!奇跡だと思った!」

亜蘭「そうか。」

沙綾「それでね、四宮君にお願いがあって。」

亜蘭「......可能な事なら聞こう。」

沙綾「サイン、はないみたいだから、一緒に写真を撮ってもらいたいな!」

亜蘭「まぁ、そのくらいなら。」

沙綾「やった!」

 

 そう言うと山吹は携帯を取り出してカメラを起動した。

 

沙綾「四宮君!よって!」

亜蘭「わかったよ。」

 

 俺は山吹の近くに行った。

 

沙綾「__はい!チーズ!」

 

 パシャ!

 

 シャッター音が鳴った。

 誰かと写真に写ったのは谷戸以外では初めてかもしれない。

 

沙綾「ありがとう!一生の宝物にするよ!」

亜蘭「いや、大げさだな。」

沙綾「いやいや、四宮君とツーショット撮るのは、総理大臣と撮るより難しいって言われてるんだよ!」

亜蘭「いや、流石にそれはない。いや、確かに俺は滅多に写真を撮らないが。」

沙綾「四宮君のファンクラブには四宮君は絶対に盗撮しないって言う暗黙の了解があるんだよ?」

亜蘭「そうなのか、って、ファンクラブってなんだ?」

 

 聞き捨てならない単語が聞こえた。

 ファンクラブなんて初めて聞いたぞ?

 

 いや、思い当たる節はある。

 何かの行事の時のあの統率のとれかた、確かにあれは不自然とは思ったが。

 

沙綾「花咲川学園の生徒の実に九割が加入してる、クラブだよ?行事の時に応援したり、色々してる。」

亜蘭「......そうか。」

沙綾「あ、ちなみに私は会員番号一桁だよ。」

亜蘭「聞きたくなかったな、その情報。」

沙綾「ちなみに彩先輩も一桁。」

亜蘭「......俺は二人とどう接すればいいんだ?」

 

 俺は頭を抱えた。

 

沙綾「まぁ!そんな感じだよ!ごめんね!つけちゃって!」

亜蘭「あぁ......もういいよ。」

沙綾「ありがとね!じゃあ、私も皆と遊んでくる!」

亜蘭「楽しんで来いよ。」

 

 俺がそう言うと山吹は手を振りながら、海の方に向かって行った。

 

 山吹が去った後、俺はため息をついた。

 

亜蘭(なんでだろう。何もしてないのに疲れた。)

 

 正直、このままゆっくりしてたいところだが、そうもいかない。

 

 そう思い、俺は立ち上がった。

 

亜蘭「俺も行くか。」

 

 俺も海の方に向かって行った。

__________________

 

 海まではさほど遠くないからすぐについた。

 

 この綺麗な景色を見ると、疲れも少し飛ぶ気がする。

 

亜蘭(海はいいな。青い空に少しの白い雲にこっちに猛スピード走ってくる人__って、人だと!?)

こころ「__あらーん!」

亜蘭「こころ様!?」

 

 どうする?

 これは流石に__

 

 ドン!!!

 

亜蘭「......こ、こころ様。どうかなさいましたか?」

 

 突然の出来事過ぎて、ぶつかってしまった。

 

 俺は辛うじて平静を保った。

 

こころ「亜蘭が来ないから探してたのよ!」

亜蘭「そうですか。」

こころ「あら?亜蘭は水着を着ていないわね?」

亜蘭「俺は泳ぎは苦手で__」

こころ「嘘はよくないわよ?」

亜蘭「__申し訳ありません。」

こころ「着替えてらっしゃい!皆で遊びましょ!」

亜蘭「......かしこまりました。」

 

 俺は水着に着替えに行った。

__________________

 

 着替えてから俺は再度、海に来た。

 

亜蘭「__水着をプライベートで着るのは初めてだな。」

彩「きゃー!」

亜蘭「!?」

彩「すごいすごい!四宮君の水着だ!!」

千聖「もう、うるさいわよ。」

彩「千聖ちゃんにはあの素晴らしさが分からないの!?」

千聖「あのってどれよ?__って、まぁ......」

 

 なんか、二人にまじまじ見られてる。

 

 もう、この場を去りたい。

 室内で読書でもしたい。

 

友希那「あら、四宮君も来たのね。」

リサ「やっほー!」

亜蘭「ロゼリアは安心感がありますね。」

友希那「どうしたの?」

亜蘭「いえ、なんでもないです。」

 

 流石に人の事をどうのこうの言うのはどうかと思うので何も言わなかった。

 

リサ「それにしても、四宮君は凄い身体だねー。」

亜蘭「?」

リサ「細身だけど、すごい筋肉あるし。」

友希那「確かにそうね。」

リサ「何か日ごろから気をつけてる事とかあるの?」

亜蘭「いえ、生まれてから気にしたことがないですね。」

友希那「何かトレーニングをしたりはするの?」

亜蘭「まぁ、一般的なものを無理のない範囲で。」

リサ「それだけでこうなるって......やっぱり神の子?」

亜蘭「いや、そんなものじゃ__」

彩「リサちゃんも分かるよね!?」

亜蘭、友希那、リサ「!?」

 

 俺たちが話してると、丸山先輩が入ってきた。

 

彩「もう、すごいよね!まるで芸術だよ!いや、芸術超えてるよね!?」

リサ「そ、そうだねー?」

友希那「丸山さんは何をそんなに興奮してるの?」

彩「だってだって!誰も見たことない四宮君の上半身を見てるんだよ!興奮もするよ。」

友希那「逃げなさい、四宮君。今すぐに。」

リサ「彩はあたし達で止めておくよ。」

千聖「私も手伝うわ。」

日菜「え?何かするの?あたしも混ぜてー!」

彩「え?」

友希那「悪く思わないで、丸山さん(うちの燐子のためよ。)」

リサ「彩、大人しくしてね?」

千聖「流石に、お説教が必要ね。」

日菜「さぁ!彩ちゃんを顔以外埋めちゃおっかー!」

彩「え?あの......きゃー!!」

 

 俺が離れると、走ってきた方向から丸山先輩の声が聞こえた。

 

 俺は残りの日数、丸山先輩とどう話せばいいんだろうか。

 

亜蘭(この辺りに来たのはいいが、どこに行こう。)

燐子「あ、亜蘭君?」

亜蘭「燐子さん?」

燐子「亜蘭君も、来たんですね。」

亜蘭「はい。こころ様に言われまして。燐子さんは何をしてるんですか?」

燐子「私は、疲れたので、休憩中です。」

亜蘭「そうですか。隣、良いですか?」

燐子「はい。」

 

 俺は燐子さんの隣に座った。

 

亜蘭「燐子さんは楽しいですか?」

燐子「はい。あまり、こんな風に遊びに行かないので......」

亜蘭「そうですね。」

燐子「亜蘭君は、どうですか......?」

亜蘭「そうですね......まだ、これからという感じです。」

燐子「さっき、丸山さんの声が聞こえたような......」

亜蘭「気のせいです。」

燐子「え?」

亜蘭「気のせいです。多分、波の音か何かですよ。」

燐子「そうでしょうか?」

亜蘭「はい。そうですよ。」

 

 理解した。

 もう気にしないようにしよう。

 見られて減るものでもないし。

 

燐子(亜蘭君、すごくかっこいい。)

亜蘭「燐子さん?」

燐子(肌も白くて、男の子らしい......///)

亜蘭「燐子さん?どうかしましたか?」

燐子「え、あ、ご、ごめんなさい///」

亜蘭「いえ?ボーっとしていた様でしたので。」

 

 燐子さんの様子がおかしいな。

 どうしたんだろうか?

 

 熱中症か?

 いや、そんな様子は無いな。

 

燐子「亜蘭君......?」

亜蘭「はい?」

燐子「触っても、いいですか......?」

亜蘭「え?」

燐子「あ......っ///(な、何言ってるの?私......!?///)

亜蘭「え、えっと、燐子さん?」

燐子「え、あ、あぁ......///」

 

 燐子さんが顔を真っ赤にして、覆ってしまった。

 

 指の隙間から見ても、その赤さが見て取れる。

 

亜蘭「えーっと、燐子さん?」

燐子「はいぃ......?///」

亜蘭「触れるくらいなら、別にいいですよ?(丸山さんみたいな感じじゃないし。)

燐子「ふぇ......?///」

亜蘭「燐子さんの好きなようにしてください。俺は燐子さんなら大丈夫ですよ。」

燐子「え、えっと......///」

 

 燐子さんはモジモジしてる。

 

 うん。正気の沙汰じゃないな今の俺は。

 

燐子「じ、じゃあ、失礼します///」

亜蘭「あ、はい。」

 

 燐子さんは両手で俺の腕を掴んだ。

 

燐子(わっ、固い......)

亜蘭(......何だろう、この状況。)

燐子(胸辺りも......)

亜蘭「り、燐子さん?」

燐子(首辺りも、白くて、細くて///)

亜蘭「あの?」

燐子「亜蘭君......///」

亜蘭「!」

燐子「亜蘭君、亜蘭君......///」

亜蘭「ちょ、燐子さ__」

燐子「亜蘭君///__」

 

 バタッ

 

 燐子さんは俺に抱き着くような形で倒れた。

 

亜蘭「燐子さん!?」

燐子「......よ、容量オーバー、ですぅ......///」

亜蘭「え、ちょ、この状況で!?」

雫「亜蘭?」

亜蘭「あっ。」

雫「......えっと、仲良く、するんだよ?」

 

 雫はそう言い残すと小走りで走って行った。

 

亜蘭「待て!誤解......じゃないかもしれないが、誤解だー!」

燐子(し、幸せだった......///)

 

 こうして、海で過ごす時間は慌ただしく過ぎていった。




 どのキャラでバレンタインの話を見たいですか?
 一応、各バンド一人ずつ書きます。

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