本当に欲しいもの   作:火の車

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宣言

 あれから時間が経ち、日も落ちて来た。

 

 別荘に戻り少しすると、夕食にするとこころ様から連絡がきた。

 

 それを受け俺は指示された場所に向かった。

 

亜蘭「__それにしても、バーベキューをしたいとは。」

巴「お!亜蘭じゃねぇか!」

亜蘭「宇田川にアフターグロウだったかな。」

ひまり「四宮君も今から向こう行くの?」

亜蘭「あぁ。」

モカ「じゃー、モカちゃん達と一緒に行こー。」

亜蘭「いいのか?俺が入っても?」

つぐみ「全然いいよ!私達もお話してみたいし!ね!蘭ちゃん?」

蘭「別に、あたしはどっちでも。」

モカ「蘭ー?あら君は蘭の仲間なんだよー?」

亜蘭、蘭「仲間?」

モカ「そうだよー。」

亜蘭「なんのことだ?」

蘭「特に共通点は見つかんないけど。」

モカ「いやいや、すごい共通点があるのだよー。」

蘭「なにそれ?」

モカ「それはー、名前の漢字が同じなんだよー。」

蘭「は?」

亜蘭「なるほど。」

 

 確かに同じクラスで名前に同じ漢字があれば仲間意識も出るかもしれんな。

 

蘭「いや、しょーもな。」

モカ「えー?そうかなー?」

蘭「そうでしょ。」

巴「なー。早く飯行こうぜー。腹減ってよー。」

ひまり「そうだねー。」

ひまり「早く行こっかー。」

亜蘭「そうだな。」

 

 俺たちは他愛のない話をしながら海辺に向かって行った。

__________________

 

 海辺に来ると、もうほとんどのメンバーが来ていた。

 

谷戸「__亜蘭様。」

亜蘭「谷戸か__って、なんだその恰好は。」

 

 振り向くと、谷戸はハワイで着るようなシャツを着ていた。

 

 俺は言いたい、ここは国内だと。

 

谷戸「海と言えばこれだと思いまして。」

亜蘭「なんでお前は服のセンスだけがそんなに絶望的なんだ。」

谷戸「そうでしょうか?」

亜蘭「そうだな。お前の外見のアドバンテージを全て溶鉱炉に投げ捨ててる。」

谷戸「それでは、そんなに問題ないですね。」

亜蘭「いや、なんでだ。」

谷戸「私に外見のアドバンテージなどありませんから。」

亜蘭「お前は自分の姿を鏡で見てから、話題の俳優と顔を比べてみろ。」

谷戸「はい?」

雫「あっ、亜蘭に......谷戸さん?」

 

 俺たちが話してると雫が来た。

 

雫「相変わらず、谷戸さんは服装が残念だね。」

谷戸「賀川さんもそう言いますか。」

亜蘭「当り前だ。」

雫「うん。折角、顔良いのに、それをゴミ箱にダンクシュートしてるみたいだよ。」

亜蘭(......ん?待てよ。)

 

 何で雫が谷戸の服装の残念さを知ってる?

 

 谷戸は他の従業員とは会わない事で有名なんだが。

 

亜蘭(まぁ、偶然会ったと言う可能性もあるし。いいだろう。)

谷戸「亜蘭様?」

亜蘭「俺は心配だよ、谷戸。」

谷戸「?」

亜蘭「いつかは、お前にも家庭を持って幸せになってほしいと思っているんだが。」

雫「!」

谷戸「私は生涯、亜蘭様にお仕えする気なんですが。」

亜蘭「それはそれでいい。だがな、それだけでは得られないものあると言う事だ。」

谷戸「そう言うものなのでしょうか?」

亜蘭「あぁ。俺も自分の立場を甘んじて受け入れるだけでは得られないものがあると分かったからな。」

谷戸「なるほど......」

 

 谷戸は考えるようなそぶりをしてる。

 

 まぁ、谷戸には偉そうに言ったが、俺も人の事が言えないな。

 

谷戸「ですが、私は女性どころか他人とあまり話しませんから。一体、何年後になる事やら。」

雫「意外といるんじゃない?」

亜蘭、谷戸「うん?」

雫「その服のセンスとか谷戸さんの変な部分も受け入れてくれる人。案外、いるんじゃないの?顔はいいし。」

亜蘭(うん?)

 

 雫の雰囲気が違う?

 

 料理以外で饒舌なのも珍しいな。

 

亜蘭(待てよ。これはあくまで俺の想像なんだが、雫は......)

雫「亜蘭?」

亜蘭「じゃあ、俺は少し他に行くよ。」

谷戸「それでは、私も__」

亜蘭「一人でいい。谷戸は谷戸で楽しめ。」

 

 俺はそう言って歩いて行った。

 

谷戸「おやおや。」

雫「ねぇ、私と行こうよ。谷戸さん?」

谷戸「え?私はもう部屋に戻ろうかと__」

雫「亜蘭に言いつけるよ?」

谷戸「......お肉が食べたくなってまいりました。」

雫「そう?じゃあ、焼いてあげるよ。行こ。」

谷戸「はい。」

__________________

 

友希那「__あら、四宮君じゃない。」

亜蘭「湊先輩?って、それは?」

 

 湊先輩は手に大量の野菜(ピーマン)の置かれたお皿を持っていた。

 

亜蘭「えっと、食べないんですか?」

友希那「......無理よ。嫌いだもの。」

亜蘭「あっ。」

友希那「お願い、食べて......」

 

 湊先輩は若干涙目でそう言った。

 なんだろう、年上のこんな姿を出来れば見たくなかった。

 

リサ「友希那~。」

友希那「ひっ!」

亜蘭「!」

リサ「友希那はピーマンを食べられたのかな~?」

友希那「そ、それは......」

リサ「あれ?まだみたいだね?」

友希那「い、今から食べようと思って......」

リサ「へぇ~、それは友希那が?それとも四宮君が?」

友希那「」

リサ「仕方ないなー。あたしが食べさせてあげるよ!」

友希那「え、えっと、リサ?」

リサ「おいで~、友希那~」

友希那「し、四宮君、助け__」

リサ「あ!四宮君!燐子がまだ部屋で休んでるからさ、お肉とかもって行ってあげてよ!」

亜蘭「はい?」

リサ「じゃあね~!」

友希那「助けて__」

 

 湊先輩は今井先輩に引っ張られていった。

 

亜蘭「さて、さっきの悲しい光景は忘れよう。」

 

 俺は今井先輩に言われた通り、いくつか食べ物を貰って燐子さんのもとに向かった。

__________________

 

 燐子さんの部屋の前に来た。

 

 流石に急に入るわけにもいかないので、俺はノックをした。

 

燐子『は、はい。誰ですか?』

亜蘭「俺です。」

燐子『あ、亜蘭君......!?///』

亜蘭「夕食を持ってきました。食べられますか?」

燐子『は、はい。ありがとう、ございます。』

亜蘭「それでは、入りますね。」

燐子『はい。』

 

 俺はドアを開け、燐子さんの部屋に入った。

 

亜蘭「失礼します。」

燐子「こんばんは......///」

亜蘭「こんばんは。はい、夕食です。」

燐子「ありがとう、ございます。」

 

 俺は燐子さんに持ってきた夕食を渡した。

 

亜蘭「それでは、俺は戻りますね。」

燐子「あ、待ってください......」

亜蘭「?」

燐子「お話し、したいです。」

亜蘭「いいですよ。」

燐子「じゃあ、座ってください。」

亜蘭「はい。」

 

 俺は燐子さんの隣に座った。

 

亜蘭「それで、何のお話をしましょうか?」

燐子「えっと、今日の海での事は......ごめんなさい......」

亜蘭「いえ、お気になさらないでください。」

燐子「あの時は、どうかしていました......///」

亜蘭「あ、あはは......」

 

 確かにあの時の燐子さんは様子が違った。

 

 あれはなんだったんだろう。

 

燐子「そもそも、あんなことをお願いするのが、おかしいですよね///」

亜蘭「ま、まぁ、世間的に見れば。」

燐子「そう、ですよね......」

亜蘭「で、でも、俺は燐子さんの近くにいられて嬉しかったですよ?」

燐子「え......?///」

亜蘭「まぁ、だから、そういう事なので。あまり気にしないでください。」

 

 あの時は燐子さんが文字通りで密着していて、すごく嬉しかった。

 

 燐子さんを感じられたような、そんな気がした。

 

燐子「......」

亜蘭「燐子さん?」

燐子「亜蘭君は、優しいです。」

亜蘭「いや、普通だと思いますが。」

燐子「いえ、亜蘭君はいつも、私に気を使ってくれて......」

亜蘭「そ、そんなことはないと思いますが?」

燐子「だから、だから、その......///」

亜蘭「?」

 

 燐子さんは顔を赤くしてこちらを見てる。

 まて、空気がおかしい。

 まるで、さっきの......

 

燐子「亜蘭君も、私に、触れてください......///」

亜蘭「」

燐子「私だけ触って、不公平ですし、亜蘭君も......///」

亜蘭「いやいやいや!それは駄目です!」

燐子「で、でも......///」

亜蘭「嫁入り前の女性がそういう事を言うものじゃないです。男が触れるのとは意味が違うのですから。」

燐子「でも......」

 

 燐子さんは落ち込んだ様子だ。

 

燐子「あ、亜蘭君は......///」

亜蘭「?」

燐子「私に、興味が......ないですか......?///」

亜蘭(......何という事だ。)

 

 まずい。

 非常にまずい。

 

 これは回答によっては大変なことになるぞ。

 

亜蘭「......じゃあ、少しだけ。」

燐子「!」

 

 俺は燐子さんの首元に手をやった。

 

燐子「ん......っ///」

亜蘭(は、反応が......)

燐子「あ、亜蘭君......///」

 

 俺は少し移動させて、頬に手を移した。

 

亜蘭(柔らかい。)

燐子「///」

亜蘭「可愛いですね、燐子さん。」

燐子「え///」

亜蘭(......まずい。)

 

 俺は燐子さんから手を離した。

 

燐子「亜蘭君......?」

亜蘭「......すみません。俺は部屋に戻ります。」

燐子「え......?」

亜蘭「明日もありますし、燐子さんもゆっくり休んでくださいね。」

燐子「亜蘭君__行っちゃった......」

 

 俺は急いで、燐子さんの部屋から出た。

__________________

 

亜蘭「......」

 

 俺は浜辺に来た。

 

 海面には月が写っていて、とても綺麗だ。

 

亜蘭「......落ち着け。落ち着くんだ、俺。」

雫「__亜蘭?」

亜蘭「雫か。」

 

 俺が海を眺めてると、雫が来た。

 

亜蘭「こんな時間に散歩か?」

雫「うん。」

亜蘭「そうか。」

 

 俺は再度、海を眺めた。

 

雫「この月、明日は満月だね。」

亜蘭「あぁ、そうだな。」

雫「......ねぇ、亜蘭。」

亜蘭「なんだ。」

雫「珍しく、落ち着きがないね。」

亜蘭「......そうかもな。」

 

 俺は少し息を吐いた。

 

雫「亜蘭は燐子に思いを伝えないの?」

亜蘭「......それはできない。」

雫「うん。そう言うと思った。どうせ、まだ相応しくないって言うんでしょ?」

亜蘭「......あぁ。」

雫「でも、亜蘭。最近、歯止めが利かなくなってきてるよね?」

亜蘭「っ!!」

雫「バスの事も今日の昼の事もさ、今までの亜蘭なら上手く避けてるよね。」

亜蘭「......」

 

 そうかもしれない。

 

 雫の言う通りだ。

 最近の俺は歯止めが聞いてない。

 感情の制御が出来ていないんだ。

 

雫「本当は燐子と一歩先の関係になりたくてたまらないんじゃないの?」

亜蘭「......否定はしない。」

雫「なら、もう思いを告げればいいよ。」

亜蘭「だが。」

雫「亜蘭は相応しくないって言うけどさ。そう言うのって一緒にいるうちに段々、相応しくなっていくんじゃないのかな。」

亜蘭「っ......」

雫「亜蘭の努力は知ってるよ。だからこそ、もう十分だって思うんだよ。」

亜蘭「......そうか。」

 

 雫の言うことは最も、なのかもしれない。

 

 一緒にいるうちに相応しくなる、か。

 

雫「亜蘭、明日、燐子に告白して。」

亜蘭「......!」

雫「......私も、谷戸さんに告白する。」

 

 雫は静かな声でそう言った。

 

亜蘭「やけに、俺の背中を押してくるな。」

雫「そうりゃそうだよ。谷戸さんに告白するのにあたって、一番の恋敵は亜蘭だから。」

亜蘭「......俺にそう言う趣味はないんだが。」

雫「でも、谷戸さんは亜蘭しか目に写ってないよ?」

亜蘭「......否定は出来ん。」

雫「だから、早く燐子に告白してね。」

亜蘭「......あぁ。」

雫「じゃあ、私は戻るよ。」

 

 そう言って、雫は建物に戻って行った。

 

 俺は一人残された。

 

亜蘭「......早いか遅いか、か。」

 

 雫の言葉を信じる事にしよう。

 

亜蘭「俺、四宮亜蘭は燐子さんに告白しよう。」

 

 誰にも聞かれる事もない宣言を、海に向かって呟いた。

 

 

 

 




バレンタインは

ポピパ:有咲
アフターグロウ:モカ
パスパレ:イヴ
ロゼリア:紗夜
ハロハピ:こころ にします。

 モカとこころ以外は同じシリーズで書きます。

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