本当に欲しいもの   作:火の車

34 / 44
月ノ森

 新学期が始まって間もなく

 

 俺がいるのは花咲川じゃない

 

 高級感漂う、一風変わった校舎だ

 

亜蘭「__ここが、月ノ森か。」

谷戸「創立100年にもなる名門校。ここに通うのは亜蘭様ほどではないにしろ、一流と呼ばれる人間たちです。」

亜蘭「あぁ、知ってるさ。ここに通う可能性も俺にはあったからな。」

 

 月ノ森はしつこく勧められてた

 

 けど、校風が合ってなかったからやめた

 

 教師たちは残念そうな顔をしてたけど

 

 まぁ、後の祭りだな

 

谷戸「ともかく、入りましょう。」

亜蘭「そうだな。」

 

 俺と谷戸は校内に入り、

 

 職員室に向かった

__________________

 

「え?あれ、四宮亜蘭様!?」

「う、嘘、なぜ月ノ森に!?」

 

 廊下を歩いてるとそんな声が聞こえて来た

 

 どこに行っても騒がれる運命なのか

 

 と、俺は半ば自分に呆れながら歩いてる

 

 そうしてるうちに、職員室についた

 

亜蘭「__失礼します。花咲川の代表生徒、四宮亜蘭です。」

教師「君が、あの四宮亜蘭?」

 

 職員室に入ると、1人の教師が近づいて来た

 

 若い女性、きっと、若手の教師なんだろう

 

亜蘭「本日から一週間、よろしくお願いします。」

教師「こちらこそ、よろしくお願いします。」

 

 それから俺は軽い挨拶を済ませ、

 

 朝礼の時間まで時間を潰した

__________________

 

 少し時間が経ち、俺は教室に案内された

 

 そして今は教壇に立っている

 

亜蘭「__花咲川学園から来ました、四宮亜蘭です。短い間ですが、よろしくお願いします。」

 

 案内されたのは2年A組

 

 当然だが、花咲川と雰囲気が違う

 

 同じ高校でもここまで変わるのかと

 

 俺は少しだけ驚いた

 

教師「それでは、空いてる席についてください。」

亜蘭「分かりました。」

 

 俺は教師に言われるまま空いてる席に座り

 

 最初の授業の準備を始めた

__________________

 

 月ノ森の授業と言っても苦戦はない

 

 些か水準が高いが、それだけだ

 

 やることはいつもと変わらない

 

女子「__し、四宮様?」

亜蘭「はい?」

 

 休み時間の途中、

 

 1人の女子が話しかけて来た

 

 これも変わらないみたいだ

 

女子「少し耳に入ったお話なのですが。」

亜蘭「?」

女子「四宮様が、伴侶を得たと言うお話を耳に挟みまして......」

亜蘭「!?」

 

 なんで、月ノ森の生徒が知ってる?

 

 いや、決して不思議な話ではない

 

 富裕層の人間はお喋りが多い

 

 情報が漏れる可能性も大いにある

 

亜蘭「......それは事実と言っておこう。」

女子「お相手は一般人とお伺いしています!なぜ、四宮様が!?」

亜蘭「なぜ、と言うと?」

女子「四宮様のような高貴なお方が一般人を伴侶とするなんて、正しい判断とは思えません!」

亜蘭(はぁ......)

 

 ここでもこの話か......

 

 それはもう耳が痛くなるほど聞いたよ

 

 人の品位を勝手に決めないで欲しい

 

女子「私には理解しかねます!」

亜蘭「別に俺は理解を欲してない。出来ないならする必要はない。」

女子「そんな......!」

 

 一体、誰が情報を漏らした

 

 面倒くさいことこの上ない

 

亜蘭「四宮家の当主は俺だ。家の方針は俺が決める。部外者が口出しするのは無粋だと思うが?」

女子「その通りですが......」

亜蘭「なら、これ以上、議論の余地はない。」

 

 俺はそう言って持ってきた本を開き

 

 残りの時間、読書をして過ごした

__________________

 

 時間が経って、放課後となった

 

 休み時間の度に色々言われて、

 

 初日からもう投げ出したくなってきた

 

亜蘭(__全く......)

 

 俺の伴侶がどうのこうのがそんなに大事か

 

 出来る事なら放っておいて欲しい

 

 どうせ、心変わりなんてする気もないし

 

 もう、そう言う宣言を出すか?

 

亜蘭(こころ様と若葉さんに頼めば可能かもしれない。)

?「__ちょっと!やめてください!」

亜蘭「?」

 

 考え事をしながら歩いてると、

 

 何か揉めてる声が聞こえて来た

 

 俺はその声の方に歩いて行った

__________________

 

 ”廊下”

 

男子「まぁ、そう言わずに。」

ましろ「その......」

つくし「やめてください!嫌がってるでしょ!」

 

 つくしは大きな声でそう抗議した

 

 だが、男子は気にする様子はなく、

 

 話を続けた

 

男子「ただ、少し遊ぼうと言ってるだけじゃないか。」

つくし「それを断ってるんです!しかも、下心見え見えだし!」

男子「......ちっ。」

 

 男子は大きく舌打ちをした

 

 そして、ましろとつくしを睨みつけた

 

男子「うるさいな。黙って言うこと聞いてればいいのに。」

ましろ「っ!」

つくし「放して!」

 

 男子はましろの腕を掴み上げた

 

 小柄なだけに力で抵抗できない

 

つくし「やめて!!」

男子「うるさい!黙ってろ!」

つくし「きゃ__」

 

 つくしは止めに入ったが、

 

 男子に突き飛ばされてしまった

 

 かなりの力で押され、体が少し浮き

 

 後ろに体勢が崩れた

 

亜蘭「__おっと、危ない。」

つくし「っ!?」

 

 だが、体は地面に落ちることなく

 

 亜蘭に抱き留められた

 

 ”亜蘭”

 

亜蘭「感心しないな。」

 

 俺は溜息を付きながらそう言った

 

 男子は鼻息荒く、いきり立ってる

 

亜蘭「女性に手を挙げるのは褒められた行為じゃないな。」

男子「お、お前は、四宮亜蘭!?」

つくし「え?」

亜蘭「なんだ、知ってたのか。」

 

 俺はそう言いながら、

 

 突き飛ばされた生徒を放し

 

 男子の方にゆっくり近づいた

 

亜蘭「そっちの生徒も放したらどうだ?かなり嫌がってるようだが。」

男子「な、なんで、お前の言う事なんて聞かないといけない......?」

 

 そう言う男子の目は酷く震えてる

 

 見るからに怯えてるな

 

亜蘭「別に俺の命令で動けと言ってるんじゃない。ただ、やめてあげろと言ってるだけだ。」

男子「ち、調子に乗ってるんじゃないぞ!!」

亜蘭「!」

ましろ「っ!」

つくし「あ、危ない!」

 

 男子は俺の方に手を伸ばして来た

 

 首を絞めようとしてるんだろう

 

 俺は冷静に男子の腕を掴んだ

 

男子「っ!?」

亜蘭「俺は喧嘩をしたいわけじゃない。お互いに傷を残さないためにも、今ここで引く事をおすすめするが。」

男子(ち、力強い......!!)

亜蘭「さぁ、どうする?」

男子「ちっ!」

 

 男子は舌打ちをすると、

 

 俺の手を振り払い、どこかへ歩いて行った

 

 比較的利口な人間でよかった

 

 流石にここで喧嘩するのはマズかったし

 

つくし「あ、ありがとうございました。」

亜蘭「ん?あぁ、気にしなくてもいいよ。2人こそ、大丈夫か?」

ましろ「私は大丈夫です。ありがとうございました。」

つくし「怪我とかはしてないです!」

亜蘭「そうか。よかったよ。」

 

 俺は2人の無事を確認すると、

 

 玄関の方向に体を向けた

 

亜蘭「それじゃあ、俺はここで。」

つくし「あ、待ってください!お礼を__」

瑠唯「__何をしているのかしら。もうアトリエに向かう時間よ。」

ましろ「あ、八潮さん。」

亜蘭「......え、八潮?」

 

 俺は驚いて、振り向き

 

 そこにいる人物を確認した

 

 長身の凛とした雰囲気の女性がいる

 

亜蘭「る、瑠唯?」

瑠唯「そうですが、あなたは?」

亜蘭「覚えてないか?会ったのは8年前だが。」

瑠唯「8年前?__っ!?」

 

 瑠唯は少しの思考の後、

 

 驚いたように目を見開いた

 

 こっちを凝視してる

 

瑠唯「もしかして、亜蘭お兄様なのですか?」

亜蘭「あぁ、そうだよ。久しいな、瑠唯。」

瑠唯「はい、ご無沙汰しています。」

つくし「え?お、お兄様?っていう事は兄妹!?」

ましろ「え!?」

亜蘭「いや、違う。」

 

 俺は否定の言葉を口にした

 

 決して兄妹などではない

 

 若いころの名残みたいなものだ

 

瑠唯「まさか、月ノ森にいらっしゃっていたなんて。ご挨拶に行けず、申し訳ありません。」

亜蘭「気にしなくてもいい。今回の話は急だったからな。」

つくし(や、八潮さんの腰が低い。ど、どういう関係性......?)

ましろ(???)

瑠唯「ともかく、少し静かな場所でお話をしましょう。」

亜蘭「あぁ、いいぞ。」

 

 代表生徒として月ノ森に訪れた1日目

 

 まさかの瑠唯と再開を果たした

 

 あと5日、少しはマシに過ごせそうだ

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。