植物のトンネルを抜けた先の空間
俺と瑠唯はそこに足を踏み入れた
ここは誰も来なくて静かでいい
話をするのにはもってこいだろう
亜蘭「__そこに座ると良い。」
瑠唯「失礼します。」
俺が谷戸から受け取った紅茶を置きながらそう言うと
瑠唯は行儀よく向かいの椅子に座った
昔に比べ、本当に所作が成長した
もう淑女の雰囲気を身に纏っている
俺はそんな事を考えながら
瑠唯の前に紅茶を置いた
亜蘭「さぁ、話だったな。」
瑠唯「はい。」
亜蘭「なら、話すといい。」
俺がそう言うと
瑠唯は少しだけ間を置き
俺の方に目を向け
ゆっくり口を開いた
瑠唯「お兄様は運命と言う物を信じますか?」
亜蘭「運命?......そうだなぁ。」
俺は少しだけ考えた
幸、不幸を与えるもの
しかもそれは、人間の意思を超えてくる
だとしたら......
亜蘭「俺は信じなければいけない人間かもしれないな。」
瑠唯「と、言いいますと?」
亜蘭「俺の人生と言うのは運命の巡り合わせだ。長年迷走して、燐子さんに出会えたこと、これは運命だと俺は信じているよ。」
俺は静かな声でそう言った
瑠唯はそれに大きな反応は見せず
無表情のまま俺の話を聞いた
そして、次の言葉を口にした
瑠唯「私は今日、初めて運命と言う物を信じました。」
亜蘭「ほう?」
これは驚いた
瑠唯は昔からリアリストと言うか
運命なんて抽象的な物には無関心だった
そんな子が信じるようになるとは
何かあったのだろうか
瑠唯「私は昔、幼いながらにお兄様をお慕いしていました。」
亜蘭「!」
瑠唯「所詮、昔の話です。今は尊敬する人ですよ。」
亜蘭「そうか。ありがとう、瑠唯。」
少しだけ驚いた
俺と瑠唯が一緒に過ごしたのはかなり昔でお互いに子供の時だ
幼心とはいえ
そんな風に思われていたのは驚いた
俺がそんな事を思ってると
瑠唯は続けて話した
瑠唯「お兄様は昔、一緒に行った発表会を覚えていますか?」
亜蘭「あぁ、確か瑠唯はバイオリンを弾いていたな。」
瑠唯「それで間違いないです。」
懐かしい
あの時の瑠唯の演奏は見事だった
将来、偉大なバイオリニストになる
俺もそう思ったものだ
亜蘭「それがどうかしたか?」
瑠唯「私はあの時、生まれて初めてある女の子に嫉妬しました。演奏技術になどではなく......」
亜蘭「?」
瑠唯「......お兄様の視線を攫って行ったことに。」
亜蘭「!(視線を、攫われる......?)」
断片的に記憶がある
確かに、そんな事があった気がする
でも、その部分を上手く思い出せない
何か隔たりがあるように感じる
瑠唯「緊張した面持ちにも関わらず、確かな技術を持ってピアノを楽しそうに演奏する可愛らしい少女。お兄様はそんな子を夢中で見ていました。」
亜蘭「......ピアノ?」
瑠唯「お気づきになられたようですね。」
俺は驚きで目を見開いた
段々とあの日の記憶が蘇ってくる
その時、瑠唯はゆっくり口を開いた
瑠唯「何度も同じ人に......白金さんに見惚れるのですね、お兄様。」
亜蘭「......!」
瑠唯「それは正しく運命と言えるのではないでしょうか?」
驚きで言葉が出ない
一体、どのくらいの確率なんだろう
いや、確率で測れないから運命と呼ぶのだろうか
思考がまとまらないまま考えていると
瑠唯は椅子から立ち上がり笑みを浮かべた
瑠唯「事実は小説より奇なり、良く出来た言葉だと思いませんか?」
亜蘭「......あぁ、身に染みてそう思うよ。」
俺は目元を抑えながらそう言った
不思議な感覚だ
嬉しさと恥ずかしさが混在している
瑠唯「それでは、私は戻ります。お兄様も落ち着いたら戻ってきてください。」
亜蘭「......分かった。」
そう答えると瑠唯は歩いて行き
俺はその場にとどまり
動揺している心を落ち着かせることにした
__________________
少し時間が経ち
俺も建物の中に戻ってきた
まだ少し驚いているがもう大丈夫だ
俺は練習部屋のドアを開けた
亜蘭「__ただいま戻りました。」
燐子「あ、亜蘭君......!」
ドアを開けると
燐子さんがこっちに駆け寄ってきた
嬉しそうに俺の前に立つ姿は
俺を待っていてくれたというのが伝わってきて
何とも愛おしく感じる
亜蘭「お待たせして申し訳ありません。」
燐子「いえ......大丈夫です。」
亜蘭「......」
燐子「......///」
俺は燐子さんをジッと見た
さっきの話を聞いた後にこうすると
蓋をしていた記憶が鮮明に見えてくる
つい視線を奪われた少女の姿が
はっきりと見えてくる
亜蘭「......燐子さんは。」
燐子「......?///」
亜蘭「運命を、信じますか?」
燐子「......っ!///」
俺がそう尋ねると
燐子さんは顔を真っ赤にしうつ向いた
俺は返事を大人しく待っている
しばらくすると、燐子さんは口を開いた
燐子「亜蘭君との出会いは......運命だと嬉しく思います......///」
亜蘭「運命ですよ。」
燐子「え......?///」
亜蘭「俺と燐子さんは出会う運命だった」
燐子「......っ!?///」
透子(え、何か始まったんだけど?)
つくし(四宮さん、めちゃくちゃ口説いてる!?)
七深(こ、これは普通~?)
ましろ(王子様とお姫様みたい......)
俺は燐子さんの手を握った
もし、運命があるとするなら
これ以上なく感謝をしよう
俺と燐子さんを出合わせてくれた事に
亜蘭(俺は2度、燐子さんを......)
燐子(今日の亜蘭君......積極的......///)
それからしばらく
俺と燐子さんは見つめ合った
今日はもうちょっと近くにいたい
この時の俺はそればかりで
節度と言う物を完全に忘れ去った
”別視点”
透子「あの、2人っていつもあの調子なんですか?」
イチャついてる2人の横で
透子は友希那たちにそう尋ねた
それを聞くと、リサが答えを口にした
リサ「いつもあんなだよ~。ああなると周りが見えなくなるからね~。」
透子「マジっすか。」
紗夜「まぁ、私達は慣れましたね。」
あこ「最初はゲロ甘できつかったですけどねー。」
ましろ(確かに......)
つくし(あの2人の空気、甘すぎるよね......)
七深「あまあまだね~」
瑠唯「お兄様が幸せそうだし、問題ないわ。」
瑠唯はそう言いながら笑みを浮かべ
それからしばらく
イチャつく亜蘭と燐子を観察した
終わった後、燐子がまた赤面したのは
想像に容易い話だ