色々あったが、文化祭当日になった
準備の方は滞りなく進んでいたし、何も問題はないだろう
そんなことを考えながら、俺は学校に行く準備をしている
谷戸「おはようございます、亜蘭様。」
亜蘭「あぁ、おはよう。」
制服を着終えると、谷戸が部屋に入ってきた
......のだが、様子がおかしい
服装がいつものじゃない、ラフな格好だ
亜蘭「珍しいな、お前が私服なんて。」
谷戸「今日は亜蘭様の文化祭の日ですから。」
亜蘭「来るのか......まぁ、いいんだが。」
こいつは俺の行事ごとには積極的だからな
来ること自体は何も不思議ではない
執事服で来ないのも、悪目立ちしないためだろう
谷戸「後は賀川さんも行くと言っておられました。」
亜蘭「そうなのか。つまり、デートと言うことになるな。」
谷戸「えぇ、そのようです。私としては、亜蘭様を見に行くついでなのですが。」
亜蘭「お前、それ絶対に本人の前で言うなよ?」
これだから、雫に恋敵などと言ういわれのない誤解を受けるんだ
こいつの親バカも勘弁してほしいものだ
俺はそう思い、小さくため息をついた
亜蘭「まぁ、行くぞ。」
谷戸「かしこまりました。」
俺と谷戸は一緒に部屋を出て、雫を呼んだ
そして、いつも通りの車に乗り込んだ
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学校に着くと、生徒はみんな忙しそうにしていた
俺はいつも通りの時間に来たが、今日もみんな、真面目に来ているな
良いことだ
そんなことを考えながら、俺はいつも通りに生徒会室に来た
亜蘭「おはようございます。燐子さん。」
燐子「あっ、亜蘭君......!おはよう......!」
部屋に入ると、生徒会の皆さんがいた
ここまで忙しかっただろうし、休憩中と言ったところだろう
紗夜「あら、賀川さんも。珍しいですね。」
雫「折角の文化祭だからね。」
紗夜「今日はオシャレしてますね。谷戸さんとデートですか?」
雫「うん__」
谷戸「えぇ、そうらしいです。」
雫が答えるのとほぼ同時に、谷戸も答えた
心なしか、雫が嬉しそうにしている気がする
愛しの恋人とデートなんだ、雫と言えど、感情が出るだろう
主人として嬉しいな
谷戸に対し、こんなに好意を向けてくれる者がいると
雫「らしくなってるじゃん......谷戸さん///」
谷戸「まぁ、はい。(こうでも言わないと怒るので。)」
紗夜(谷戸さんの考えが透けて見えるわね。)
さて、あの2人は心配ないだろう
俺は俺で、気になってることを聞かないと
亜蘭「燐子さん、そろそろ教えてほしいのですが。燐子さんのクラスは、どのような出し物をされるのでしょうか?」
燐子「!」
亜蘭「?」
燐子「そ、それは......秘密で......」
亜蘭(どうして、ここまで頑なに隠すんだ?)
この準備期間、何度かこの質問をしたが、全てはぐらかされた
そんなに隠したくなる出し物とは、何なのだろうか?
気になるな
燐子「き、来てからの、お楽しみで......///」
亜蘭「じゃあ、すぐに行きます。」
燐子「す、すぐには来ないで.......!///1時間位経ってからきて......!///」
亜蘭「あ、はい。」
紗夜(これは、面白いことになりそうね。)
取り合えず、燐子さんの言うとおりにしておこう
1時間か......まぁ、少しばかり長いが、のんびり回りつつ、待つとしようか
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“燐子”
文化祭が始まりました
私は午前の担当なので、教室で出し物の準備をしています
の、ですが......
燐子「や、やっぱり無理です......///」
紗夜「全くもう。いつまでそうしているんですか。」
いつまで......そう言われると、いつまでもです
だって、こんな格好で人前......それも、亜蘭君の前になんて......
そんなの、無理です、死んでしまいます......
紗夜「彼はきっと褒めてくれますよ?」
燐子「で、でも......///」
紗夜「少しだけ頑張ってください。せめて、彼が来るまで。」
燐子「も、もう少しだけ......」
紗夜「ほら!行きますよ!」
私がその場で留まっていると、氷川さんに手を引かれた
抵抗なんてできるはずもなく、私はそのまま引っ張られ
お客さんがいる方に連行されました
“亜蘭”
文化祭の開始が宣言され、1時間ほどが経とうとしている
そろそろ約束の時間になり、3年A組の教室に向かっている
確か、この辺り......
亜蘭「......?」
俺は3年A組の教室に来た
そこには『メイド喫茶』と書かれた看板がある
俺は、見間違いでもしているのだろうか
あの燐子さんが、メイド喫茶?
そう思いながら目をこすり、再度確認したが、見間違いじゃなかった
亜蘭(と、取り合えず、入ってみよう。)
俺はそう考え、教室に中に入った
すると__
燐子「お、おかえりなさいませ、ご、ご主人様......!///」
亜蘭「り、燐子さん。」
燐子「あ、亜蘭君......!?///な、なんで......!?///」
亜蘭「1時間経ったので、来たのですが。」
燐子「あ......///」
恐らく、まだそんなに時間が経っていないと思っていたのだろう
まぁ、なんとなく分かった
燐子さんにとっては、時間が何分の一にも圧縮されたように感じているだろう
燐子「そ、そうだよね......///え、えっと、席に......///」
亜蘭「はい。」
俺は燐子さんに案内され、席に着いた
机の上にはメニュー表が置かれている
亜蘭(おぉ、想像以上にメニューが充実してるな。)
燐子「お冷です......///ご、ご注文はお決まりですか......?///」
亜蘭「燐子さんのおすすめはありますか?」
燐子「えっと、無難にオムライスとかかな......?」
亜蘭「じゃあ、それでお願いします。」
燐子「か、かしこまりました。」
最初こそ緊張していたが、仕事に熱心に取り組んでる
コミュニケーションが苦手な燐子さんだ
接客も厳しい上に、あの格好だ
燐子さんにとっては大きな挑戦をしているんだろう
亜蘭(感動的だ。)
自分の苦手なことからも逃げず、チャンレンジする
なんて立派な人なんだ
そんな素晴らしい彼女の恋人として、俺もさらに精進しなくては
そんなことを考えているうちに、数分が経ち__
燐子「__お、お待たせしました、オムライス、です。」
亜蘭「おっ。」
燐子さんがオムライスを持ってきた
それが机に置かれ、燐子さんはケチャップを持った
燐子「えっと、メイドがケチャップで何かを書くってサービスです。何か、書いてほしいことはありますか?」
亜蘭「そうですね。じゃあ、燐子さんが書きたいことを。」
燐子「じゃあ。」
俺がそう言うと、燐子さんはケチャップで何かを書き始めた
一切の迷いもなく書き進めていき
ケチャップの上には『大好き』の文字とハートマークが書かれていた
燐子「わ、私の、気持ちです.......///」
亜蘭(可愛すぎるっ!)
なんて、この人は可愛いんだろうか
場所を選ばなくていいのなら、今すぐ抱きしめたい
それくらいの衝撃だった
燐子「そ、それと......///」
亜蘭「?」
燐子「お、美味しくなーれ......♡」
亜蘭「っ!!」
燐子「い、以上です、ありがとうございました......!///」
そう言うと、燐子さんは小走りで離れていった
俺はその姿を見送り、しばらくフリーズした
な、なんだ、あれは......
亜蘭(誓おう。俺は今の光景を、生涯忘れない。必ず。)
俺はそんなことを思いながら、ゆっくりとオムライスを口に運んだ
不思議なことに、そのオムライスはとてつもなく美味しく感じた
それにしても、燐子さんのメイド服......可愛かったな