本当に欲しいもの   作:火の車

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文化祭

 色々あったが、文化祭当日になった

 

 準備の方は滞りなく進んでいたし、何も問題はないだろう

 

 そんなことを考えながら、俺は学校に行く準備をしている

 

谷戸「おはようございます、亜蘭様。」

亜蘭「あぁ、おはよう。」

 

 制服を着終えると、谷戸が部屋に入ってきた

 

 ......のだが、様子がおかしい

 

 服装がいつものじゃない、ラフな格好だ

 

亜蘭「珍しいな、お前が私服なんて。」

谷戸「今日は亜蘭様の文化祭の日ですから。」

亜蘭「来るのか......まぁ、いいんだが。」

 

 こいつは俺の行事ごとには積極的だからな

 

 来ること自体は何も不思議ではない

 

 執事服で来ないのも、悪目立ちしないためだろう

 

谷戸「後は賀川さんも行くと言っておられました。」

亜蘭「そうなのか。つまり、デートと言うことになるな。」

谷戸「えぇ、そのようです。私としては、亜蘭様を見に行くついでなのですが。」

亜蘭「お前、それ絶対に本人の前で言うなよ?」

 

 これだから、雫に恋敵などと言ういわれのない誤解を受けるんだ

 

 こいつの親バカも勘弁してほしいものだ

 

 俺はそう思い、小さくため息をついた

 

亜蘭「まぁ、行くぞ。」

谷戸「かしこまりました。」

 

 俺と谷戸は一緒に部屋を出て、雫を呼んだ

 

 そして、いつも通りの車に乗り込んだ

__________________

 

 学校に着くと、生徒はみんな忙しそうにしていた

 

 俺はいつも通りの時間に来たが、今日もみんな、真面目に来ているな

 

 良いことだ

 

 そんなことを考えながら、俺はいつも通りに生徒会室に来た

 

亜蘭「おはようございます。燐子さん。」

燐子「あっ、亜蘭君......!おはよう......!」

 

 部屋に入ると、生徒会の皆さんがいた

 

 ここまで忙しかっただろうし、休憩中と言ったところだろう

 

紗夜「あら、賀川さんも。珍しいですね。」

雫「折角の文化祭だからね。」

紗夜「今日はオシャレしてますね。谷戸さんとデートですか?」

雫「うん__」

谷戸「えぇ、そうらしいです。」

 

 雫が答えるのとほぼ同時に、谷戸も答えた

 

 心なしか、雫が嬉しそうにしている気がする

 

 愛しの恋人とデートなんだ、雫と言えど、感情が出るだろう

 

 主人として嬉しいな

 

 谷戸に対し、こんなに好意を向けてくれる者がいると

 

雫「らしくなってるじゃん......谷戸さん///」

谷戸「まぁ、はい。(こうでも言わないと怒るので。)」

紗夜(谷戸さんの考えが透けて見えるわね。)

 

 さて、あの2人は心配ないだろう

 

 俺は俺で、気になってることを聞かないと

 

亜蘭「燐子さん、そろそろ教えてほしいのですが。燐子さんのクラスは、どのような出し物をされるのでしょうか?」

燐子「!」

亜蘭「?」

燐子「そ、それは......秘密で......」

亜蘭(どうして、ここまで頑なに隠すんだ?)

 

 この準備期間、何度かこの質問をしたが、全てはぐらかされた

 

 そんなに隠したくなる出し物とは、何なのだろうか?

 

 気になるな

 

燐子「き、来てからの、お楽しみで......///」

亜蘭「じゃあ、すぐに行きます。」

燐子「す、すぐには来ないで.......!///1時間位経ってからきて......!///」

亜蘭「あ、はい。」

 

紗夜(これは、面白いことになりそうね。)

 

 取り合えず、燐子さんの言うとおりにしておこう

 

 1時間か......まぁ、少しばかり長いが、のんびり回りつつ、待つとしようか

__________________

 

 “燐子”

 

 文化祭が始まりました

 

 私は午前の担当なので、教室で出し物の準備をしています

 

 の、ですが......

 

燐子「や、やっぱり無理です......///」

紗夜「全くもう。いつまでそうしているんですか。」

 

 いつまで......そう言われると、いつまでもです

 

 だって、こんな格好で人前......それも、亜蘭君の前になんて......

 

 そんなの、無理です、死んでしまいます......

 

紗夜「彼はきっと褒めてくれますよ?」

燐子「で、でも......///」

紗夜「少しだけ頑張ってください。せめて、彼が来るまで。」

燐子「も、もう少しだけ......」

紗夜「ほら!行きますよ!」

 

 私がその場で留まっていると、氷川さんに手を引かれた

 

 抵抗なんてできるはずもなく、私はそのまま引っ張られ

 

 お客さんがいる方に連行されました

 

 “亜蘭”

 

 文化祭の開始が宣言され、1時間ほどが経とうとしている

 

 そろそろ約束の時間になり、3年A組の教室に向かっている

 

 確か、この辺り......

 

亜蘭「......?」

 

 俺は3年A組の教室に来た

 

 そこには『メイド喫茶』と書かれた看板がある

 

 俺は、見間違いでもしているのだろうか

 

 あの燐子さんが、メイド喫茶?

 

 そう思いながら目をこすり、再度確認したが、見間違いじゃなかった

 

亜蘭(と、取り合えず、入ってみよう。)

 

 俺はそう考え、教室に中に入った

 

 すると__

 

燐子「お、おかえりなさいませ、ご、ご主人様......!///」

亜蘭「り、燐子さん。」

燐子「あ、亜蘭君......!?///な、なんで......!?///」

亜蘭「1時間経ったので、来たのですが。」

燐子「あ......///」

 

 恐らく、まだそんなに時間が経っていないと思っていたのだろう

 

 まぁ、なんとなく分かった

 

 燐子さんにとっては、時間が何分の一にも圧縮されたように感じているだろう

 

燐子「そ、そうだよね......///え、えっと、席に......///」

亜蘭「はい。」

 

 俺は燐子さんに案内され、席に着いた

 

 机の上にはメニュー表が置かれている

 

亜蘭(おぉ、想像以上にメニューが充実してるな。)

燐子「お冷です......///ご、ご注文はお決まりですか......?///」

亜蘭「燐子さんのおすすめはありますか?」

燐子「えっと、無難にオムライスとかかな......?」

亜蘭「じゃあ、それでお願いします。」

燐子「か、かしこまりました。」

 

 最初こそ緊張していたが、仕事に熱心に取り組んでる

 

 コミュニケーションが苦手な燐子さんだ

 

 接客も厳しい上に、あの格好だ

 

 燐子さんにとっては大きな挑戦をしているんだろう

 

亜蘭(感動的だ。)

 

 自分の苦手なことからも逃げず、チャンレンジする

 

 なんて立派な人なんだ

 

 そんな素晴らしい彼女の恋人として、俺もさらに精進しなくては

 

 そんなことを考えているうちに、数分が経ち__

 

燐子「__お、お待たせしました、オムライス、です。」

亜蘭「おっ。」

 

 燐子さんがオムライスを持ってきた

 

 それが机に置かれ、燐子さんはケチャップを持った

 

燐子「えっと、メイドがケチャップで何かを書くってサービスです。何か、書いてほしいことはありますか?」

亜蘭「そうですね。じゃあ、燐子さんが書きたいことを。」

燐子「じゃあ。」

 

 俺がそう言うと、燐子さんはケチャップで何かを書き始めた

 

 一切の迷いもなく書き進めていき

 

 ケチャップの上には『大好き』の文字とハートマークが書かれていた

 

燐子「わ、私の、気持ちです.......///」

亜蘭(可愛すぎるっ!)

 

 なんて、この人は可愛いんだろうか

 

 場所を選ばなくていいのなら、今すぐ抱きしめたい

 

 それくらいの衝撃だった

 

燐子「そ、それと......///」

亜蘭「?」

燐子「お、美味しくなーれ......♡」

亜蘭「っ!!」

燐子「い、以上です、ありがとうございました......!///」

 

 そう言うと、燐子さんは小走りで離れていった

 

 俺はその姿を見送り、しばらくフリーズした

 

 な、なんだ、あれは......

 

亜蘭(誓おう。俺は今の光景を、生涯忘れない。必ず。)

 

 俺はそんなことを思いながら、ゆっくりとオムライスを口に運んだ

 

 不思議なことに、そのオムライスはとてつもなく美味しく感じた

 

 それにしても、燐子さんのメイド服......可愛かったな

 

 

 

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