士郎と美遊をイチャイチャさせるはずだったのに……
まあ、楽しんでください!
お礼
夏休み。
その日は美遊がイリヤの家にお邪魔していた。
「それで美遊?今日はどうしたの?」
ベットの上に座りながらイリヤが聞いてくる。その横の椅子ではクロも美遊の方を見ている。
「今日って何も決めてなかったわよね?何かするの?」
「うん。実は……」
美遊から聞いたのは、ルヴィアに何かしらお礼をしたいとの事だった。理由として、家に泊めて貰ってる身として毎日メイドとして奉仕しているが、それもオーギュストがいるから美遊の仕事は少ないらしい。なので近いうちにルヴィアにお礼として何かをあげたいらしい。
「へ〜、じゃあ、もう何を渡すかとか決めてるの?」
「ううん。それはまだ。でも出来れば料理を作ってあげたい」
美遊は料理が出来る。しかもそれは士郎やセラに負けず劣らずの実力だ。
「いいじゃない。なら何作るかも決めてるの?」
「そこはまだ。だからイリヤとクロに聞いてみた」
「それならお兄ちゃんに聞いたら?きっといい料理を教えてくれるわよ?」
「そうだね〜、お兄ちゃんならルヴィアさんが何を食べるかとか知ってそう……」
二人が士郎の所に行こうと立ち上がる。しかし、美遊の顔は少し暗めだった。
「?どうしたの?美遊」
「その……いいの?」
おずおずとこちらを見てくる美遊。
「うん!お兄ちゃんはきっと承諾してくれるよ!」
そんな美遊にイリヤは満面の笑顔で美遊を引っ張っていく。
階段を降りると、台所には士郎が冷蔵庫の中を見て唸っていた。時折回り出したりして、傍から見るとヤバい奴にも見えたりした。
「ナニしてるのよ……お兄ちゃん」
「ん?ああ、クロたちか。お昼は何にしようかと思ってな。今日も暑いからな〜、たまにはそうめんや冷やし中華とかがいいかもな」
などと独り言を言い始めた。完全にイリヤたちのことは頭からすっぽ抜けたらしい。
「も〜!お兄ちゃん!」
「うわぁ!?な、なんだよイリヤ」
「なんだよじゃないよー!話を聞いてよ〜」
「話?」
士郎は独り言をやめて、話を聞くことにした。
「それで?話ってなんだ?」
「えっとね、美遊がルヴィアさんに日頃のお礼も兼ねて何か作ってあげたいんだって〜」
「そこでお兄ちゃんの出番ってわけ」
話を聞くと士郎は何かを考え始めた。
「あの……迷惑、でしたか?」
「ん?ああ、そうじゃなくて」
「?」
「ほら、ルヴィアって確かフィンランド出身だろ?そこでお礼の料理とかが何か考えてたんだ」
すると士郎はあるものを取り出した。
『世界の料理本』
それは国語辞典ほどの分厚さに教科書ほどの大きさだった。
「「「…………」」」
三人ともがなんとも言えない顔になった。
「お、お兄ちゃん?その本は一体……」
「これは世界のあらゆる料理が載ってる本だぞ。これならフィンランドの料理も載ってた」
士郎はそう言って猛スピードで調べ始めた。
「ね、ねえ、イリヤ?うちにあんな本あったっけ?」
「私は見たことない……というかどこにそんな本が売ってたの!?」
「落ち着いてイリヤ。きっと新都のデパートだと思う。けどあんな大きな本は見たことない……」
三人が驚いてる間にも士郎は調べる。
そして少し経ったらーー
士郎が悲しんでいた。
「お、お兄ちゃん!?なにごと!?」
「す、すまない……イリヤ……この本は、無力……だ」ガクッ
「お兄ちゃん!?お兄ちゃぁああん!!」
などと芝居を始めていた。
「ナニ?この茶番……」
「イリヤ……」
しばらくの間士郎が悲しんでいる間に、イリヤたちでなんの料理にするか考えていた。
「やっぱりお礼としてならお菓子でしょ!お菓子なら嫌いなものとか無さそうだし!」
「お菓子もいいけど相手の好きな食べ物の方がいいんじゃない?」
「でもルヴィアさんの好きな食べ物……ゼブンの水羊羹?」
「「それはダメ」」
美遊が前に買いに行かされたゼブンの水羊羹。大層それを気に入ってる為、今でもちょくちょく食べてるらしい。
「ん〜決まらないね〜」
「まあ、決定権は美遊にあるし、美遊が作りたいのをしっかり作ればいいかもね」
「……」
美遊もしばらく考え始めた。
そこに死にかけの士郎がアドバイスを言う。
「ま、まあ、悩まなくていいぞ……ルヴィアならきっとなんでも喜ぶからな」
「そう、ですね……」
「よしっ、なら善は急げだな」
士郎が元気を取り戻し、立ち上がる。
「さ、美遊ちゃん」
「?」
美遊は出された手を握り、台所に付いていく。すると、士郎は何か食材を出していく。
「美遊ちゃんは確か料理出来たよね」
「はい」
「ならその中から一番得意で、相手のことを一番考えて作れる料理を作ってみてくれ」
言われるままに美遊はある料理を作った。
それをついでに昼食にして、士郎に評価してもらった。
「うん、これならルヴィアも喜んでくれるよ。あとはここでこれを入れれば……」
美遊も士郎の助言を聞き、頭に入れていく。
「美遊ったら随分と嬉しそうね〜」
「だね〜。あんな顔の美遊、滅多に見ないもんね」
美遊の作った昼食をつつきながら、イリヤとクロは二人の会話を傍から見ていた。美遊の顔はいつもより若干赤らめており、嬉しそうだ。
「むむむ……それにしても美遊のこれ、ホントに美味しい〜!」
「イリヤ……貴方それ食べ過ぎよ?」
「おいしーからいいの!」
二人も二人で仲良く食べ過ぎて、セラに後でじっくり怒られるのだった。
その日の夜。
美遊はオーギュストに頼み、その日の夕食は作らせてもらった。
「あら?今日の夕食は美遊が作るのですか?」
「はい。なんでもルヴィア様にお礼がしたいとの事でしたので」
「お礼?お礼されるような事した記憶は……」
ルヴィアが思い出そうと頑張っていると、美遊がやってきた。
「ルヴィアさん。今、持ってきますね」
「え、ええ……」
美遊はメイド服を翻して、料理を取りに行く。ルヴィアも何かは分からないが、今は美遊の懇意に甘えるとしようと、席に着いた。
「お待たせしました。今日はルヴィアさんにお礼をしようと、私が一番得意な料理を作りました」
そこに出されたのは、日本でも珍しくない、極々一般料理の『肉じゃが』が机に出された。
「これを……美遊が?」
「はい。お口に合えばーー」
美遊がそう言っている間に、ルヴィアは肉じゃがを食べていた。
「ど、どう……ですか?」
「美遊」
「は、はい」
ちょいちょいと美遊はルヴィアの横に向かう。すると、ルヴィアが美遊を抱きしめた。
「美遊、今日はありがとうございます。オーギュストからお礼と聞きましたが、それを抜きにしても、私は美遊にこうして美味しいご飯を作ってくれたことが嬉しいですわ」
「………」
抱きしめられ、頭を撫でられる美遊。ルヴィアは姉のように美遊を抱きしめた。
「それに、美遊は私にとって妹も同然。そんな美遊がこうしてくれただけで、お礼として十分ですわ」
「………はい」
ルヴィアの腕の中で、美遊は嬉しそうに笑った。
その後も夕食は続き、いろいろ話した。肉じゃがの事で士郎に教わったと聞いたルヴィアは、その翌日にも衛宮邸に乗り込もうとしたが、美遊に止められたり、楽しいひと時を過ごした。
「美遊ー!」
「あっ、イリヤ、クロ。おはよう」
「おはよう美遊。それで?昨日はどうだったのよ」
次の日には美遊たちはいつも通りだった。
「うん。大成功だった。ルヴィアさんも喜んでくれた」
「よかったね〜美遊」
「喜ぶのはいいけど、朝からアレは驚いたわ」
「あはは……」
今朝、美遊がイリヤの部屋に行くより早く、ルヴィアが士郎の部屋に入ろうとしたところをクロとイリヤが目撃。即刻退去願われていた。
「あの後のお兄ちゃんが見ものだったのは良かったわよね〜」
「も〜クロったら。お兄ちゃんだってアレは驚くよ〜」
今日も三人で笑って登校する。
このような平和な時の三人の笑顔は輝いていた。
「士郎さんに少し甘える美遊さん。いや〜珍しいものが見れましたね〜。この映像は永久保存です!」
そんな三人を空から見守る星。もといルビー。ルビーは美遊が料理相談するところからずっとビデオを回し、笑っていた。
「いや〜、士郎さんも罪な男ですね〜。犯罪でも起こしそうなくらいには」
「姉さん」
浮かれているルビーの背後から声が聞こえた。後ろにはサファイアが何やら険しそうな顔でルビーを見ていた。
「姉さん、あまり皆さんをからかわないようーー」
「無理ですね!」
「…………」
「あら!サファイアちゃんったら沈黙なんて!そんな妹を持った記憶はありませんよー!」
などと一人で芝居を始めるルビーに対して、サファイアは落ち着いて何か呟いた。すると、サファイアの形が変わり、何やら怪しげな機械も出てきた。
「姉さん。直らない機械はどうする?」
「え?そりゃあ、直しますね〜叩いたり!落としたりで」
「分かってるならこれから何が起きるかも分かりますよね?」
「ま、まさかサファイアちゃん!そ、そのシークレットデバイスは!ぎゃぁあああ!!!」
その日の朝、冬木市の上空で、大量の雷が一箇所に落とされたそうでした。