そして少し早いですがバレンタイン回です。
それではどうぞ
バレンタイン前日
イリヤとクロはセラにチョコレートを手伝ってもらっていた。
「セラ〜? このくらいでいいの〜?」
「もうすこし混ぜたほうが良いですね。あと5分は混ぜてみましょうか」
「まだやるの〜? わたしもう疲れたわよ〜」
「もうクロ! お兄ちゃんの為にチョコを作るんでしょ?」
「でも腕が疲れた〜」
イリヤがバターの入ったボウルを混ぜていると、クロはボウルを置き、腕を伸ばしていた。セラもイリヤと一緒に混ぜており、手慣れた様子で進めて行く。
「あ、イリヤさんはそのくらいで良いですよ。そしたら砂糖を入れてください」
「うん。分かったー」
「そしたらまた混ぜましょう」
「うぇっ!?」
再び混ぜると聞いた瞬間、イリヤは変な声を出して泣きながらまた混ぜていく。クロも腕が痛いのも我慢しながら混ぜていく。
そして2人が腕の痛さに耐えながらチョコを作ってると同時刻、イリヤ家の前、エーデルフェルト邸では美遊がチョコレート作りに没頭していた。
「美遊様、それはイリヤ様たちにですか?」
「うん。明日はバレンタインだからイリヤやクロ、それにお世話になってるセラさん達にも渡してあげたいから」
美遊もイリヤたちと同様にバターを混ぜていた。サファイアは美遊の横でそれを見ていた。
「あとは…………士郎さんにも」
美遊がそう呟くと、ルヴィアがキッチンへと入ってきた。そして美遊の姿に気が付き、寄ってきた。
「あら美遊? それはチョコレートですか?」
「ルヴィアさん。明日はバレンタインなのでイリヤたちに……」
「仲が良くて羨ましいですわ。イリヤスフィールも喜ぶでしょう」
「あとセラさんやアイリさんにも渡したいと思っています」
「確かにお世話になっていますから。それにしても流石は美遊ですわ! しっかりしています!」
ルヴィアはそう言うとバターを混ぜてる美遊に抱きついた。
「る、ルヴィアさん!? 危ないです」
「ルヴィア様、美遊様に突然抱きつくのはお控えください」
「なんですのサファイア。姉が妹を褒める為に抱きついて何か問題でも?」
「ですから……はぁ、もういいです」
「サファイア? そのため息はなんですの? サファイア!?」
サファイアはそのままふよふよとリビングの方へ飛んでいくと、ルヴィアもサファイアを追って行った。しかし、ルヴィアへキッチンから出る前に止まり、美遊の方へ振り向いた。
「美遊。頑張ってくださいね」
「……はい!」
それから美遊もイリヤもクロもチョコレート作りに没頭した。イリヤたちはセラに教わりながら、美遊は独自の知識で作っていく。
3人から貰うであろう何処かの兄はそんな事も知る由はなかった。
バレンタイン当日
その日は学校があり、イリヤたちは友達の雀花たちからもチョコを貰っていた。
「って龍子!? これチョコじゃなくチョコの袋に入った普通のアメじゃん! しかも量多い!」
「わはははは! そのアメうめーぞ! 口の中がシュワーってなるぞー!」
「そういう問題じゃないないでしょ……」
「バカなの?」
「み、美遊ちゃん……オブラートに包んであげようよ……」
龍子が持ってきたアメは軽く学年の全員に渡せるくらい持ってきており、それが一つの机の上に乗せられていた。
「というかたっつんはどこでこれを集めたん?」
「確かに。この量は何処で買ったんだ?」
「新都のデパートを買い占めた」
『はぁ!!??』
一瞬、目眩を覚えるようなことをこのバカは当然のように言い、全員が龍子をバカだと再確認した。
「だからデパートにアメが無かったんだね〜。龍子ちゃん、昨日の夜に電話してくるからびっくりしたよ〜。『明日楽しみにしろよー! アメ祭りじゃ〜!!!』って」
「迷惑にも程があるっっ!!」
こんな風に騒ぎながら(主に龍子が)楽しんでいた。
そして帰宅途中。いつもの三人は同時に作ってきたチョコを交換した。
「せーの、はい!」
イリヤはチョコとプレーンのチェッカークッキー。クロはトリュフチョコ。美遊は食べやすい大きさに切ってあるガトーショコラを作ってきた。
「美遊のクオリティ高っ! すごく美味しそう!」
「ていうか小学生がガトーショコラって……」
「それを言ったらクロだって。トリュフチョコなんて普通は作らない」
「美遊なら作りそうだけどね〜」
三人は少しずつ食べながら家に向かう。
そして各自家に一旦戻り、ある人に渡すものを持ってイリヤの部屋に向かった。
「ルビー、お兄ちゃんは?」
『まだ来ませんね〜っと、今来ましたよ〜イリヤさん!』
イリヤはサファイアを通じてある人を尾行してるルビーに連絡を取る。
「姉さん、くれぐれも変な事をしないでくださいね?」
『さ、サファイアちゃんからの信頼と信用の無さにルビーちゃんは泣きそうです。泣いたあまりにうっかり惚れ薬を投与しちゃいそうですよ……』
「ちょっ!? 余計なことはしなくていいからね!? 絶対だよ絶対!」
『おや〜フリですか? フリですよね〜?』
「フリじゃないから〜!!!!」
若干の人選(人)? ミスを悔やみながら作戦を実行する。狙うは帰ってきた瞬間。
各自が持ってきたチョコは先程と同じチョコだ。しかし、今度は綺麗にラッピングされていた。
「さて、あとはお兄ちゃんだけね」
「パパにもママが持っていくって言ってたからあとはお兄ちゃんだけだね!」
「ルビーからの情報だとこの先の角を曲がったらあとは一直線。そろそろ準備しよう」
『おー!』
三人は部屋を出て、玄関に向かう。
すると丁度ドアが開き、目的である兄、士郎が帰ってきた。
「ただいまー」
「お帰りお兄ちゃん。そしてはいこれ」
「ちょっクロ! 抜け駆けはズルイ!」
「クロ、ズルイ」
士郎が受け取る前にイリヤたちが揉めていた。しかし、目的をすぐに思い出して気持ちを切り替える。
「改めてお兄ちゃん。これあげる!」
「わたしからもあげるわ。なんなら〜食べさせてあげよっか!」
「クロ、大人しくして。士郎さん、いつもありがとうございます。これをどうぞ」
三人からチョコを受け取ると、士郎は礼を言う。
「ありがとうな三人とも。どれも美味しそうだ」
「でしょでしょ? セラに教えてもらったんだ〜」
「でも美遊は自力で作ったのよ〜」
「それは凄いな。一人でこのレベルなら十分パティシエとしてもやってけるよ」
「あ、ありがとうございます……」
美遊は急に褒められて少し恥ずかしそうだが、喜んでいるのがよくわかった。士郎は荷物を片付けて夕飯の支度をする。その日は美遊も食べて行った。
やる事を終えた士郎は、貰ったチョコを食べようと袋を開ける。
「このクッキーがイリヤで、トリュフがクロ、ガトーショコラが美遊ちゃんか。どれも上手くできてるじゃないか」
一人で三人ともを褒めてチョコを食べ始める。
どれも美味しく、気持ちが込められているのがよく分かる。
「まいったな、これじゃあお返しが大変だな」
そう言いながらも来月に待つホワイトデーについて考え始める士郎だった。