まどマギ外伝RTA_全員生存ルート   作:計量器

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第八回

 魔女に命じた一寸後、鈴音ちゃんの絶叫とともに巨大な炎壁が立ち登る。

 その業火は周囲の全てを飲み込んで、私の眼前を覆い尽くした。

 恐らくこれで、鈴音ちゃんもその友達も、けしかけた魔女ごと綺麗さっぱり燃え尽きるだろう。

 そしてその後に残るのは、「一人ぼっちの絵本の魔女」だけ。

 実にあっけない幕切れだ。

 鈴音ちゃんが魔法少女のお友達なんて作っちゃうのがいけないんだよ? 

 そんな事されたら私、その子達の目の前で鈴音ちゃんをぶっ壊すしかなくなるじゃん。

 しかも結局その子達、最後まで偽物の鈴音ちゃんを信じて死ぬなんて。

 もし鈴音ちゃんが独りのままなら、もしあの子達が鈴音ちゃんを信じなかったら、あの子達だけは生き延びられたかも知れないのにね。

 

 そんな想いを抱きながら、お気に入りの絵画を愛でるように、私は炎壁に手を伸ばす。

 ああ、なんて綺麗なんだろう。

 いつまでもこの椿の炎を、眺めていたい気さえするかも。

 でもこの生命の灯ももうじき消える。

 消えるからこそ美しいの。

 椿に別れを告げられて、茉莉も誰も居なくなって、復讐も完遂した後は、もう私にやる事なんて何も無い。

 ただ一つ、魔女になった鈴音ちゃんを見届ける事以外には。

 今の私に残っているのは、そんな最初で最後の願いだけ。

 その成就の瞬間を今か今かと、子供のように待っていた時。

 

「どこを見ているの?」

 

 その声は耳元で響いた。

 

「遅い」

 

 突然の声に振り向いても、路地の闇から吹く風の他には何もない。

 タチの悪い幻聴か、と前を向き直した頃には既に、炎壁はすっかり消えていて。

 そしてそこに立っていたのは……

 

 魔女なんかではない、鈴音ちゃんだった。

 

「はぁ……? 何っ? 何なの!?」

 

 思わず間抜けな声を上げながら、残った左手を鈴音ちゃんに向ける。

 ……いや、向けたつもりだったのに。

 

「やはりその手が、『暗示』の力の源なのね。振(・)り(・)返(・)る(・)時(・)に(・)も(・)素(・)手(・)の(・)ま(・)ま(・)突(・)き(・)出(・)そ(・)う(・)と(・)し(・)て(・)い(・)た(・)ものね」

 

 鈴音ちゃんはそう淡々と、肘(・)か(・)ら(・)先(・)の(・)無(・)い(・)私(・)の(・)手(・)を見ながら告げる。

 痛みを感じる暇も無かった。

 斬られた瞬間も分からなかった。

 けれど確かに私の視界の端っこには、斬り飛ばされた手が転がっていた。

 

「その状態でも魔法が使えるかは知らないけれど……不審な動きを見せるようなら、次はジェムを弾き飛ばすわ」

 

 砕けない程度に加減してね、と続ける鈴音ちゃん。

 そこまで聞いて私はようやく、起きている事態を飲み込んだ。

 鈴音ちゃんは魔女になってない。

 けしかけた魔女は跡形も無く、茉莉もお友達もピンピンしてる。

 そして今の鈴音ちゃんの、異常な速度。

 

「鈴音ちゃん……自(・)分(・)の(・)魔(・)法(・)を使ったんだ? 椿との思い出を捨ててさぁ……!」

 

 私にはあり得ない発想だった。

 鈴音ちゃんの『継承』の魔法を使えば、倒した魔女の能力が一(・)種(・)類(・)だ(・)け(・)手に入る。

 佳奈美ちゃんの『加速』があれば、私の『暗示』を喰らう前、予備動作を見切って避ける、なんて芸当も可能だろう。

 でもそんなのは可能性だ。

 本当に上手く行くかなんて、試してみなければ分からない。

 そんな分の悪いギャンブルに椿の魔法を賭けるなんて……はっきり言って、正気じゃない。

 

「いいえ……私は椿の想いも、佳奈美たちの想いも、全て引きずって生きていく……!」

 

 そんな訳の分からない戯言を喚く鈴音ちゃん。

 椿の魔法を捨てたって事に変わりは無いのに、何言ってるのか意味不明だよ。

 いずれにせよもう私には、鈴音ちゃんを魔女にする手立てはない。

 正真正銘……これで、終わりだ。

 

「……殺すんだ? 私も、椿みたいに?」

 

「いいえ、決して」

 

「嘘ばっかり、もう飽きちゃった。あーあ、本当に私……どこで、間違えたんだろね?」

 

「あははっ、そりゃ最初からでしょ! だって最(・)初(・)か(・)ら(・)何(・)も(・)な(・)い(・)より、得(・)て(・)か(・)ら(・)失(・)う(・)方が辛いもん!」

 

 

 

 場違いな程の明るい声が、路地の壁に反響する。

 突然に割り込んだその声は、当然鈴音ちゃんのものではない。

 茉莉でもない、そのお友達も違う。

 もちろん、私の訳もない。

 

 一瞬に場の空気が凍りつく。

 まだ見ぬ脅威が、正体不明の何者かが、私たちを眺めている? 

 いや違う、ま(・)だ(・)見(・)ぬ(・)脅(・)威(・)じゃない。

 他の皆にとってはそうでも、私にとってはそうじゃない。

 あの時聞いた、彼女の声だ。

 直接耳にした訳じゃない、それでもすぐに判別できる。

 この暑苦しい程に明るいのに、背筋が冷えるような不気味な声は───! 

 

「じゃ、おやすみなさい」

 

 

 

 そして思考は、巨大な氷河に閉ざされた。

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 存在しないチャートが溢れ出すRTA 、はーじまーるよー! 

 今回はチーム茜ヶ咲をラスボスごと全滅させたところから。

 

 全滅から始まる全員生存RTAって何だよ(哲学)

 

 前回は華々莉を追い払い安心したのも束の間、佳奈美ちゃんを拉致られて走者ブチ切れENDと相成っておりました。

 復活させた姉妹やよばんちゃんと共に、カチ割られてまろびでた脳ミソの始末等をしつつ、必死にリカバリ案を練る走者。

 脳内のジョースター卿に助けを求めてはみたものの、「逆に考えるんだ」というお決まりのフレーズが木霊するばかりでちっとも役に立ちません。

 しゃーなし現場で考えるべ、のスタンスで魔女モドキレーダーを辿り、決戦場に向かった所……

 

 

 

「『魔女の口づけ』ってあるよねぇ」

 

 ……ん? 

 

「弱りきった魔法少女が食らったらどうなるか、見てみたいって思わない?」

 

 ……あっ、これかぁ! (ひらめき)

 

 

 

 瞬間 走者の脳内に溢れ出した 存(・)在(・)し(・)な(・)い(・)チャート

 

 どうやらこの事態は "想定通り"のようだな

 

 

 

 といった具合に啓示を受けまして、それに従った結果が先程の全☆滅ENDだったのです。

 全滅してたらタイトル詐欺じゃん、とのご意見あるかも分かりませんが、どうかご安心を。

 コチラ勿論計算の内、生存の為の全滅です。

 どういうこっちゃ、な視聴者兄貴達の為に、早速状況整理を踏まえた解説へと参りましょう。

 

 まず今回の目標はただ一つ、「鈴音と華々莉を無力化する事」。

 どちらも強敵ではありますが、弱体化している事もあり、現状戦力の走者達ならまあなんとかなるレベルの2人でした。

 そう、上(・)記(・)の(・)2(・)人(・)だ(・)け(・)なら、ですが。

 問題は今回の残りの面子、特に茉莉ちゃんと千里ちゃん、そして魔女モドキの佳奈美ちゃんです。

 

 まず茉莉ちゃんはご存知の通り、仲間を殺した通り魔とか、いきなり出てきた自称姉とも仲良くできちゃう異じょ……博愛の化身。

 2人のどちらを先に仕留めようとも敵対不可避で、以前言及しましたように『探知』魔法の相性が走者と最悪です。

 また茉莉ちゃんが敵対すれば、同時に高確率で千里ちゃんと亜里沙ネキも牙を剥きます。

 要マークの千里ちゃんは『解除』の魔法が非常に厄介。

 当然隣に火力特化の亜里沙ネキも加わるので、合計戦力はかなりのモノです。

 

 仮に彼女達だけならば、姉妹とよばんちゃんに制圧してもらってからスる、というのもアリかも知れませんが……佳奈美ちゃん……。

 魔女モドキ化のせいでスって止める事もできんやんけ……(絶望)

 故に彼女はホモ以外に何とかしてもらうしかありませんが、戦力が未知数な以上、正直誰をあてがうのも不安です。

 この子の相手を任せた間にホモが死なないとも限りませんし。

 

 という訳で先に本丸以外を片付けたいのは山々ですが、当然そんな真似はできません。

 弱体化してるとは言え茉莉ちゃん仕留められてブチ切れて連携し始めた鈴音&華々莉(主人公とラスボス)とか(勝てる訳)ないです。

 つまり……

 

 

 

 敵 が 多 す ぎ る

 

 

 

 あーあ、どっかに上記戦力の過半数を一手に「直ちに生命に影響は無い」程度に無力化してくれる都合の良いヤツとかおらんかなー!? 

 

 

 

 おったわ……(やりたい放題のラスボスを見ながら)

 

 

 

 正に「勝手にスコーンが割れた」状態。

 走者が何をした訳でもないのに随分と都合の良い盤面になりましたが……

 実は、コレも計算の内なのですよ。

 決してたまたま上手くいったとかソンナコトハナイノデスヨ。

 

 まず前提として、華々莉はあくまで鈴音ちゃんの絶望を希望しているので、可能な限り直接は殺しません。

 『暗示』をはじめ、数々の回りくどい手法を用いた精神攻撃を試みます。

 また絶望までの経緯にもこだわりがあり、「孤独感」を味わわせる方向を好みます。

 今回の場合、鈴音ちゃんがチーム茜ヶ咲とそれなりに仲良くしていたようなので、彼女達に鈴音ちゃんを見捨てさせたかったのでしょう。

 その為には、鈴音ちゃんより前に周りを殺す訳にはいきません。

 かと言って野放しにしておくのも面倒ですから、となれば「魔法や移動を封印し、話せる程度に生かしておく」のが最適でしょう。

 誰だってそーする、走者もそーする。

 

 そして精神攻撃についてですが、今回は自身の状態が万全でない事もあってか、更に回りくどい方法を用いたようですね。

 それが魔女(モドキ)佳奈美ちゃんを用いた、「魔女の口づけ」作戦です。

 『まどか』原作を見ていただければ分かる通り、魔女の口づけには確かに精神へのマイナス作用があります。

 コレを利用・強化すれば、弱った魔法少女相手であれば十分な精神攻撃になるでしょう。

 「佳奈美ちゃんも復讐したいよね?」という華々莉のセリフは、恐らくはこの事を指していたものと思われます。

 

 さて、このセリフを聞いていたお陰で「あっ、これかぁ! (ひらめき)」となった走者。

 ジョースター卿の教えに従い、「あえて精神攻撃させる」事で、活路を切り開く結果となりました。

 まあお話は簡単です。

 コチラには駄々っ子もビックリの精神汚染源である、UMK姉貴の魔法の使い手が居ますよね? 

 

 これ(『隠密』で隠したよばんちゃん)を

 こうし(「口づけ」されてる鈴音ちゃんにぶつけ)て

 こう(同タイミングで記憶改変)じゃ。

 

 もしコレが華々莉直々の精神攻撃だった場合は、記憶干渉の経由地であるよばんちゃんが汚染され魔女ってしまう恐れもあったのですが、今回は安全そのものでした。

 魔女モドキが「魔女の口づけ」なんか使える訳ないんだよなあ……。

 故に安心して本作戦に踏み切れた走者は、華々莉の隙につけ込んで代わりに精神攻撃をしておいたのです。

 その名も、ありもしない記憶を鈴音ちゃんに見せて覚醒を促す……「存在しない記憶」作戦です! (そのまんま)

 

 と言っても、いくら高性能なよばんちゃんでも短時間で複雑な記憶改竄は不可能です。

 よって今回は「ホモと鈴音ちゃんの記憶の一部を同期させる」形で、無理矢理椿さんのイメージを想起させ、鈴音ちゃんの覚醒を促す方式となりました。

 まあ当然ホモが椿さんに会った事なんかある訳ないから、それっぽい想像を浮かべただけなんだがな! 

 ほんへクリア後の過去編ifルートとかでなら会えるし会いまくっとるねんけどな……。

 椿さんに甘えまくる駄々っ子たちは いいぞ。

 

 さてこの偽椿さんですが、想像の産物なので当然話しかけたりする事なども出来ず、正直騙されてくれるかかなり不安な代物でした。

 不安、だったのですが……やっぱり鈴音ちゃんは鈴音ちゃんだったよ……。

 キミちょっと軽率にオモチャにされ過ぎと違う……? (加害者の弁)

 

 まあそういった訳で、つつがなく騙されてくれた鈴音ちゃん。

 主人公が頼りになるのはどのルートでも同じですね。

 『かずみ』ルート同様に、文字通り一瞬にしてケリをつけてくれました。

 それを見届けた後に走者達はサクッと離脱。

 入れ替わりに投入した姉妹の手により、晴れて『すずね』チームは氷漬けにされ全滅です。

 コレもやはり鈴音ちゃん&華々莉のお陰でしょう。

 鈴音ちゃんが魔法を乗り替えてくれたお陰で椿さんの炎で氷が溶ける恐れがなくなりましたし、茉莉ちゃん達が抵抗不能だったお陰で暗躍がバレずに済みましたからね。

 オマケに佳奈美ちゃんの始末もしてくれたので、彼女のSGの回収も無事終えられましたし……。

 ホンマ、主人公は……最高やなって! (満面の笑み)

 

 

 

 とこんな具合に、以上が「全滅までの経緯」でした。

 次はようやく肝心の「全滅させた理由」についてですが……まあ何という事はありません。

 

 その方が楽じゃん!(大声)

 

 鈴音ちゃんの覚醒により一見落着に見える場面ですが、だからといってこのまま放置するなんてとんでもない! 

 『かずみ』の際にも言及致しました通り、事後処理も重要な課題です。

 ぶっちゃけた話、遥香さんがお亡くなりになった(なってない)時点で将来的な破滅は既定路線。

 ラスボスの華々莉もカンナ程安定している訳ではないので、放っておくだけで周囲を巻き込んで死にかねません。

 故に本来のチャートでは、良き所で鈴音と華々莉のSGをスり、そのまま『おりこ』ルートへと行く手筈だったのですが……。

 

 ジェム持っていきたくない……持っていきたくなくない……? (悪魔の囁き)

 

 以前も言及しました通り、他人のSGなんてモンは呪いのアイテムでしかありません。

 NPCとの敵対を誘発するわ、ホモの被弾時に割れでもしたらガメオベラだわで良い点なんてないのです。

 仮によばんちゃんを上手く使えば、記憶イジッて受肉させて某携帯獣(ポケモン)モドキにできる可能性はあるでしょう。

 そんな事してもほぼ間違いなくなつき度不足で言う事を聞かんだろうがな! 

 だったらもうほぼオリチャーなんだし、メンバー全員ナカヨシな記憶に書き換えて、スルーしちゃうのが最適だよネ!!! 

 

 

 

 ……ですのでどうかお願いします、神様仏様よばん様。

 

 

 

 「この惨状がどういうつもりか……説明してもらえる?」

 

 その杖をかよわいホモに向けないでやってもらえませんか……




Q:華々莉の片腕って六回の裏で飛んでたよね?鈴音たちはツッコまないの?

A:鈴音たちを煽ってる時は『暗示』で両腕健在に見せてたよ。ダサいからね。
 鈴音ちゃんにブッた斬られた後は、鈴音ちゃんが両腕斬り飛ばした(つもりでいた)から両腕無いのが自然状態だよ。ダサいね。



Q:走者は佳奈美の記憶見てるよね?コメントとかないの?

A:走者は見てないよ。
 ホモは見たよ。
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