なつがおわりました。
わたしはしょうがくせい。
なまえはハルといいます。
すうしゅうかんまえ、なかのよかった
しんゆうのユイが
じさつしてしまいました。
とてもつらくてかなしいことでした。
ハルは、ユイが最期に……自殺した枝ぶりの木を見上げる。枝に淡い高みを帯びた白い花が眩しいくらいに咲きこぼれている。
ハルにとっては、いちばん嫌いな場所。しかし、とてもこの光景は美しいのも事実。
ハルは、ユイと手を離してから毎日ここへ足を運んでいる。ユイのお化けがいるのだ。必ず、ユイと会える……そう信じている。
ここへ通えるのも今日が最後。今夜、ハルはこの街から離れなければならない。
ハルはウサギの形をナップザックをおろして、中から日記を取り出し一枚一枚読んでいる。
この日記は、ユイとの花火大会の時から描き始めたもので、とても怖い思い出がたくさんつまっている。
「……ユイ」
どうして、こんなことになってしまっとの?私が、約束を守らなかったから?そんな思いが、あの日……ユイに襲われた時からハルに突き刺さる。
わたしのせいだ!!
そんな思いがハルの心にチクチクとした痛みを与える。
苦しい、生きていくのが。いつか、忘れる日がくるのだろうか。
「……きょう、ひっこすの」
クロとチャコと初めて会った日、ハルはユイに引っ越す事を言えずにいた。しかし、今は前と同じ言葉なのに今回は自然と口の中から出すことができた。
けどユイは、答えない。ただ、風の音が返事をしているだ。
「……わたし、あたらしいともだち、できるかな?」
ハルの頭の中は、ユイとの出会いから始まる思い出が、映画のように再生される。最初、初めてユイから話しかけてくれたあの時から。
ハルは、次第に目の前が熱くなった、涙が滝のように流れる。
「ユイ、会いたいよ……」
ハルは地面に膝をつく。立っているのがつらく、まるで背中に重い物を背負っているかのように。
すると、暫く泣いていると、何故か頭に暖かい何かが触れたような気がする。すぐに、顔を上げますが誰もいなかった。ただ、頭の上に葉っぱが乗っているだけだった。
「……だよね。げんきださないと!」
そう言いながら、ハルは泥を落として立ち上がった。少し前まで重かったのが嘘のように軽くなっている。
「そうだ」
ハルはナップザックから一輪の花を取り出す。その花はユイのリボンのような、鮮やかな赤色の花だった。
「きれいな色を、また見つけてきたよ」
木の根元に花を添える。
「あと、これもおいていくね」
ハルは、日記を地面に置いた。
「さっ、チャコ戻ろう。お父さんたちが待っている」
チャコはそのまま勢いよく走り出す。
私もいかないと。
惜しむ気持ちを抑え、木に背を向ける。
突然、何かの音がした。それに続くように、強い風が吹いた。
風はハルの背後に確かな気配を運んだ。
ーーユイ?
振り返ると、そこには木の下で風に揺れている日記と赤い花だけだった。