「それでは、席について。世界史の授業をはじめます。秋川さんお願い」
「はい。起立、礼」
「さて、今日は、先日話したとおり、P.35ページの南北アメリカ文明の単元を先にやります。南アジアの古代文明と中国の古代文明は、続きになる単元と一緒にやりたいので、こっちを先にやります。この単元で重要なのは、南北アメリカ文明で利用された作物とそれぞれの文明の性格です。で、この写真の料理、韓国の料理だけど何だと思う?高崎君」
①
「ナムル?」
「ブー」
「鈴谷さん」
「ビビンバ?」
「ブー」
「先生、漬物っぽく見えるけど...。」
「水瀬さん、いいとこついてるね。すごく意外なものだよ。今は真っ赤な料理」
「まさかと思うけど....キムチ?」
「正解。トウガラシのない時代のキムチ。トウガラシは中南米原産なの」
「それから、ほうとうって知ってる?」
「山梨の鍋料理?かぼちゃの入っている?」
「そう。かぼちゃも中南米原産。あとこれ?」
「ポテトチップスにポテトサラダ?」
「そう。じゃがいもも南米原産。ほら、いろんな色のジャガイモがあるの。」
「それから、輪切りにしててんぷらにするとおいしかったり、石やきいもがおいしいものといえば?」
「さつまいも?」
②
「そう。ただし、これは太平洋からインド、中国にわたってから1605年に沖縄、当時は琉球王国で、薩摩藩によって1609年に琉球侵攻が行われて支配されて日本に伝わるの。」
「それからなんといってもお祭りで焼きたてがおいしいこれ。映画館の友といったらこれ。トルティージャの材料にもなる。」
「とうもろこし?」
「正解。」
「とうもろこしは、メキシコの洞窟遺跡から発見されている。テオシンテとか呼ばれているイネ科の植物が品種改良されたといわれているの。」
③
「さて、アメリカ大陸には、氷河期にベーリング海峡が地続きだったことから最初は狩りをしながら黄色人種の人々が渡ってきたの。マンモスを解体した遺跡も見つかっています。
だいたい2万年くらい前からとうもろこしの栽培が始まる紀元前8000年までの時期を、石期またはパレオインディアン期と呼んでいるの。とうもろこし農耕がはじまってからは、古期でこれが土器がつくられるようになるだいたい紀元前2000年までです。そのあとは、中米でメソアメリカ文明、ペルーを中心にアンデス文明が作られていく時代になる。中米では、先古典期、南米では形成期と呼ばれる時期に、中米では、オルメカ文明、南米ではチャビン文化が生まれるの。」
④
<チャビン・デ・ワンタル神殿外壁のほぞ付き頭の神像>
⑤
「オルメカ文明は、ネグロイド風の王様と思われる巨石で作られた人頭像で有名だけど、チャビン文化と共通してジャガーなどのネコ科動物の信仰が強く、こんな牙の生えた神の顔の彫刻を儀式を行う中庭を囲むように置いたり、神殿の外側につけたり、内部に刻んだ彫刻を置いたりしたの。じゃあ要点を板書するね。便宜上どの時期が何と呼ばれているか書くけど覚えなくていいよ。いつ頃何が起こったか、作物やそれぞれの文明の特徴が重要だから。」
おもな原産作物;とうもろこし、じゃがいも、さつまいも、かぼちゃ、トウガラシ
石期orパレオインデイアン期;およそ20000年前~紀元前8000年ごろ
モンゴロイド系の渡来 氷河期に狩猟をしながらベーリング海峡を渡る
古期:およそ紀元前8000年~紀元前2000年ごろ
とうもろこし栽培はじまる。
形成期(主に南米)or先古典期(中米)紀元前2000年~紀元前後
土器の使用
メソアメリカ文明;オルメカ文明 メキシコ湾岸 巨石人頭像
アンデス文明;チャビン文化(紀元前1000年ごろ繁栄)
※双方ともジャガー神の信仰が反映された神殿などの構築物をつくる。
地方発展期(南米)or前期中間期;紀元前後~紀元700年ごろ
北海岸;モチェ文化~日干し煉瓦のピラミッド、壁画、灌漑農業
南海岸;ナスカ文化~地上絵の造成 暦と優れた測量技術
ボリビア;ティワナク文化
古典期(中米);紀元前後~紀元900年ごろ
〇メキシコ中央高原;テオテイワカン文化(世界遺産。紀元600年ごろ滅亡)、
<テオテイワカン、月のピラミッド前の「死者の大通り」>
トルテカ文化
〇ユカタン半島+グアテマラ;マヤ文明(紀元900年ごろグアテマラの都市滅亡)
ティカル、カラクムル、パレンケ、キリグア、コパン、ウシュマル(古典期)
→世界遺産
<ウシュマル尼僧院>
⑥<パレンケ「宮殿」>
チチエン・イッツア(古典期、後古典期)→世界遺産
ワリ[帝国]期(南米);紀元700年〜紀元900年or1000年
高地からティワナク文化の「杖を両手に持ち正面を向いた神」
「鳥人」のモチーフの土器や織物が普及。道路網の整備。
ボリビア;ティワナク全盛期→世界遺産
<ティワナク遺跡、太陽の門。「杖を両手に持ち正面を向いた神」が中央に
「鳥人」が脇に刻まれる。>
地方王国期(南米)or後期中間期;紀元900年ごろ~14世紀ごろ
北海岸;チムー王国(首都チャンチャン→世界遺産)
後古典期(中米);紀元900ごろ~1521
〇メキシコ中央高原;アステカ王国 15世紀~16世紀初頭繁栄、
首都テノチテイトラン
スペインのエルナン・コルテスによって1521年征服。
〇ユカタン半島;マヤ文明
インカ帝国(南米)15世紀ごろ、コロンビア南部~チリに及ぶ広大な版図
スペインのフランシスコ・ピサロによって1532年征服。
メソアメリカ文明
(1)メキシコ・グアテマラ中心に発達
(2)乾燥の強い高原と高温湿潤な低地
(3)ピラミッド状神殿、二十進法の表記法と暦法、象形文字
(4)道路網と複雑な階級社会
アンデス文明
(1)道路網、灌漑農法
特にインカ帝国
(2)キープで数字、人口、家畜の数、税制などを記録。
<キープ>
⑦
(3)石造技術に優れる。
(4)太陽の子として神権政治を行う
南北アメリカ文明の特色~農耕を基礎とした都市文明
(1)石器のほか金、銀使用。鉄器は使用せず
(2)車、ろくろ使用せず 馬など大型家畜いない、騎兵なし
(3)火薬兵器なし
(4)川沿いだけでなく雨水や泉を利用し、丘陵や高地に都市を築く場合がめだつ。
旧大陸文明との共通点
(1)宗教性の強い政治組織
(2)大規模な公共事業
(3)階級的分業
「これは世界遺産のティカルの神殿。
<ティカル大ジャガーの神殿(1号神殿)>
ティカルは、当時はヤシュ・ムタルと呼ばれていた。マヤ文字がユーリ・クロノゾフという人によって音節文字、日本語でいえばかなに当たる文字が発見されたことをきっかけに、マヤ文字が漢字かな交じりのような構造であることが明らかになって解読が進んだの。」
⑧
「テイカルの王朝のそれぞれの王様の名前、パレンケがラカムハという名前だったことやその王朝とそれぞれの王様の名前、カラクムルがカーン(蛇)王朝の首都でオシュテトゥン(三つの石)と呼ばれていて、紋章文字と言って王朝をあらわす文字とそれぞれの王様の名前までわかってきて、それどれの都市の同盟関係や戦争したこともわかってきているの。西暦とマヤ長期暦の照合もすすんで何年何月何日にどこの町とどこの町が戦争してとかわかってきている。」
⑨
「主だったところを年表化したサイトがあったので映すね。」
⑩
⑪
「余談だけどインターネットでは、みんなの誕生日もマヤ長期暦で換算できるページもある。岡山にあるとある博物館では、運営費の寄付をするとマヤ文字で名前をハンコにしてくれるところもある。お父さんやお母さんの家族関係、誕生の文字もわかっているから、その気になればマヤ文字で自分の生まれも表現できるみたい。さて話は変わるけどナスカの地上絵の論文は、読んでくれたよね。なんのために作ったのかな。」
「農耕のための暦、儀式」
「公共事業」
「そうだね。ありがとう。豊作になったときの作物の消化のため、労働を課して作物を報酬として与えたのではという説だね、モチェの日干し煉瓦によるピラミッドもそうだったかもしれないね。インカでは鉱山労働や道路整備で報酬付きで労役を課したといわれている。一方で、馬とかいなかったのでおどろいたという話も伝わってる。それから鉄砲などの火器もなかった。」
「アステカでは、徴税が厳しかったため、トラスカラなどの先住民が数百人しかいないスペイン軍の味方につき、その軍勢は、5万に達したといわれる。一方インカでは、180人くらいと言われたスペイン軍が、会談を要求して、拒否されると鉄砲と剣を使って、護衛兵を殺して、皇帝アタワルパを捕えたの。ということで今日はここまで。次回からは、南アジアの古代文明から古代王朝について学びます。」
※1
※2
「今日板書で赤字(太字)をしたところは、テストに出る可能性が高いから覚えてね。それでは、秋川さんお願い」
「はい。起立、礼」
「お疲れさまでした。」
①トウガラシ伝来以前のキムチ※ayustetyによる
②※利用者:Miyaによる
③トウモロコシとテオシンテ※User:John Doebleyによる
④オルメカ、サンロレンソ巨石人頭像※User:Bibi Saint-Polによる
⑤テオパンテクァニトラン(ゲレロ州)の中庭を囲む神像※User:Madman2001による
⑥パレンケ「宮殿」※User:Havelbaudeによる。
⑦クスコ旧市街の石垣※David Stanleyによる。
⑧マヤ文字※利用者:Siyajkakによる。
⑨ヤシュ・ムタル(ティカル)の紋章文字※User:Authenticmayaによる
⑩マヤ王朝史年表※利用者:くらわによる。
⑪ラカム・ハ(パレンケ)、碑銘の神殿※User:Jan Harenburgによる。
※1;本作オリジナル
※2;本作オリジナル
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Tikal_Giaguaro.jpg ティカル大ジャガーの神殿(1号神殿)
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Cabeza_clava_en_su_ubicacion_original_13122009.JPG?uselang=ja チャビン・デ・ワンタル神殿外壁のほぞ付き頭の神像