柊木ちゃんの世界史実況中継   作:Brahma

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12.5時限目 壁新聞準備と温泉旅行

柊木春香side:

う~ん、次の単元は漢代の文化と大好きな人の多い三国時代だなあ…

発問の回答が一方に偏らないようにしないと…

グループ分けしようかなあ…あまりこまかいところをやると授業が遅れるし…

そんなことを考えていると世界史準備室の扉が開き、もう一人のおばさん先生が来た。次回が中間テスト前最後の授業になるから中間テストの範囲の確認に来たのだ。

「やっぱりこちらにいらしたんですね。柊木先生の単元の進み具合はどうですか?」

「わたしのほうは、魏晋南北朝を次回で終わらせる感じです。」

「そうですか。私の方は次回は、朝鮮・日本の国家形成と隋から唐へになりますけど、魏晋南北朝までにしましょう。」

「ありがとうございます。それから漢文がらみのおまけ問題を考えてみたのですが…。」

「おもしろそうですね。配点はどうしますか?」

「赤点回避で10点で、赤点でない生徒には2点で。もし100点超えたら配点しない、順位決めには反映するということでどうでしょう。」

「そうしますか…きびしくしても…おたがいなるべくなら補習はさけたいですものね。」

「そうですね。これを勉強してない生徒は、世界史もやらないと思いますから、そういう子は補習ですね。苦手分野を把握すれば補習も効率的にできると思います。」

「先生って…教科のことは得意なんですね。」

「教育実習で教案作りをじっくりやらせてもらったので…新人なので至らないことは多いと思いますがよろしくおねがいします。」

「わかりました。」

おばさん先生が苦笑半分の顔で出て行く。職員室へ行くのだろうか。しばらくすると、ガラガラ…と再び世界史準備室の扉が開いた。

誠治君だ。

「先生、どうしたの?」

「うん、次三国時代でしょう。得意な人が特に男子に多いから発問の回答が偏らないようにしないとなあと思って。ちょっと授業が遅れてるんだけど、みんなに楽しく学んでももらいたいし。」

「それでグループ分けですか。」

「そうなの、くじ引きしようかなと」

 

真田誠治side:

「グループ分けなら壁新聞とかどうですかね。」

俺は、昔のなにかの授業を思い出しながら提案する。最近はなつかしながら世界史の教科書を読むことがあるから次の授業が予測できる。転生?じゃなくてタイムスリップ者?のアドバンテージだ。

「グループわけの目的って共同作業ですよね。発問の回答が偏らないでってことなら。」

「そうなの。よくわかったね。」

「教科書の単元をわけて、割り当てればどうですかね。漢代の社会と文化、動乱の時代、魏晋南北朝の社会と文化2グループづつに割り当てれば6班になるし。」

「そうだね。」

「50分授業では、ちょっとたいへんですね。坂井先生に話してLHRも使いましょうか」

「たのんでいい?」

ほからならぬ彼女の頼みである。彼氏としてはがんばらないわけにはいかない。秘密の恋人関係だが。

 

「坂井先生」

「おお真田か。ん、柊木先生も。どうした?」

「実は、つぎのLHRですが、世界史の壁新聞の準備のしらべもので、半分くらい時間もらえないかと…」

こんなかんじで…三国志新聞や春秋戦国新聞の本を開いてみせる。

「50分授業じゃ足りないので…坂井先生いいですか」

美人は、怒った顔も迫力あるが、頼み顔も逆にかわいらしいので、坂井の表情がゆるんだのもわかった。

「そうか、まあいいだろう。」

俺たちは世界史準備室へもどる。生徒たちは掃除を始めていた。

俺は柊木ちゃんに呼ばれていたので、今日は掃除当番は免除を班の生徒に話してある。

いつも部活とかで先に帰るのでしかたないという顔だ。放課後に社会科係の仕事することも話して今日はかんべんしてもらった。後の話だが、今後ずぶずぶと社会科係だけでなく柊木ちゃんの仕事もいつのまにか手伝うようになるとはこの時点では思いもよらない(※原作によると体育祭の資料作りも手伝っている)。柊木ちゃんのことは好きだから苦痛じゃないが…

「じゃあ、教材になる資料選びですね。補足で、三国志好きに図書館に行ってもらいましょうか?」

「う~ん」

「夢中になって帰ってこなくなるかもですね。」

「それそれ」

「時間制限つけましょうか」

「そうだね。」

柊木ちゃんはほほえんだ。

 

さて件のLHRだ。

半分くらい終わると坂井が声をかける。

「ああ、ここからは、次の世界史の授業の壁新聞の準備をすることになった。真田と柊木先生お願いします。」

「皆さん、次回の授業ですが、三国志好きがけっこういるので、グループ分けして発問の回答が得意な人だけに集中しないようとか考えたのですが、みんなが楽しく勉強できるよう壁新聞を作ることにしました。」

「次の単元を班ごとにくじ引きで選びます。」

「漢代の社会と文化、動乱の時代、魏晋南北朝の社会と文化の三単元がそれぞれ二班に割り振ることにしたの。さあ代表の人はくじひきにきて。」

わいわい、くじ引きが行われる。

「あたったーやりい」

「うわあ…はずれた。」

「南北朝もおもしろいぜ」

三国志好きの生徒からは、歓喜と悲鳴があがる。

班ごとの担当が決まったようだ。

「えっと、それでは、今から10分間図書館へ資料を探しに行っていいので許可します。これが参考文献リストと教師用指導書のコピーです。」

「へえ、先生の虎の巻か」

「うん。だって、次の時間は20分準備の後、5分づつの発表だからね。みんなが先生役。要点絞らないと時間なくなるから。」

柊木ちゃんと俺がお昼休みとお掃除時間にさがしたリストと指導書のコピーを1セットづつを班ごとに渡す。

2Bの生徒たちはそそくさと図書館に向かう。

「おもしろそうなことやってるな。」

と坂井はつぶやく。

「社会科は調べ物も楽しみですからね。先生も数学史とかやったらおもしろいんじゃないですか?」

柊木ちゃんが笑顔で答える。

「そうきますか…」

坂井は苦笑する。

 

そんな話をしているうちに、生徒たちはどやどやもどってくる。

壁新聞作りの素案をどうするかあちこちの班で話し合いがはじまってにぎやかだ。

時計を見ながら「もう時間ですね。」と柊木ちゃんがいうと、坂井も

「そうだな。」とつぶやき、生徒たちに

「じゃあLHRの時間は終わりだ。帰る者は下校時間だ。残っていく者は、戸締まりと消灯だけはするように。」

「はあーい。」

「私たち、部活だから。」「俺も。」「ごめんね。」「いいって。」

吹奏楽以外の文化部の生徒は、部活に欠席連絡をしている。帰宅部は居残りだが楽しそうだ。

「文化祭みたいだね。」とのつぶやきが聞こえる。

政治史の班は、地図づくりだ。ネットから引っ張ってプリンターから打ち出して切り抜いている。

魏晋南北朝の社会と文化が割り当てられた班は、

「これってさ、雲崗、敦煌とか仏教関係と絵とか書とかの班にわけたほうがよくない?」

「そうだね。話し合おうか」

「うちのほうは石窟やるからそっちのほうで書画やらない?」

「いいよ。」

二班にわけて書画中心班と石窟寺院班に分かれたようだ。

 

そんな会話を聞きながら、俺と柊木ちゃんは、大丈夫そうだなと目配せで合図して、世界史準備室へ戻る。

「先生?」

「ん?」

「実はテストづくり中でしょ。」

「うん。誠治君、壁新聞作りタイミングよかったかも。次回は中間テスト前最後になるから。みんなも勉強になるしね。」

 

数日後、

「誠治君、明日からテスト期間だね。」

「うん、ある程度勉強しとかないとな。苦手分野とか」

「え~成績いいじゃない。頑張んなくて大丈夫だよ。勉強したいっていうならと止めないけど」

 

「え~、ここはモチベーション上げるために何か条件出すべきじゃないですか。先生なんだから。」

「先生じゃなくて、今は完全に彼女なので。フン!」

「いやフンじゃなくて、肩書きとして先生の仕事してるわけだし。」

「残業中、金曜から日曜のお泊まりプラン考えていました。どーせ残業代つかないんだから」

「いや仕事しないと先生自身が困るんじゃ…」

「あらかじめ両親には言っておいてね。でないとあたし未青年誘拐になっちゃう。」

「だいじょうぶ。うちは厳しくないし、友達と旅行行くとか適当ないいわけしとくから。」

「うんうん、世界史だいじょうぶみたいだし。勉強なくてしなくていいよ。週末楽しみだね♪」

「えっと、これって世界史ダメだったら勉強みてあげるデートで、そうじゃないから遊ぼうってこと?」

「正解!」

電話向こうの柊木ちゃんのドヤ顔が浮かぶようだった。

 

金曜日の放課後、柊木ちゃんから仕事しなくてすみそうという電話かかってきた。

眠気眼のダウンした柊木ちゃんのかわりに途中から運転を代わったのはないしょだ。

そして2泊3日で、海が見える温泉旅行を楽しみ、最終日。

「誠治君、浜辺が近くにあるから行ってみない?」

「俺も行ってみたいけど、顔バレやばくない?」

「と言われると思って、ジャン!用意してます。」

ドヤ顔で、柊木ちゃんは、白くひろいつばの上品な帽子を取り出す。

「かわいい」

「でしょ、でしょ、お忍び旅行だし、必需品だよ。」

目深にかぶると、美人だから芸能人のようだ。

「誠治君は、大リーグとかで好きなチームある?」

「たまにみるけど、まあ日本人のいるチーム応援する程度かな」

「じゃあこれでいいね。」

俺の方はドジャースのキャップをわたされた。

朝ご飯をたべて、荷物まとめてチェックアウトしたら、車で数分の場所に駐車場にとめて、浜辺に降りる。

 

「誠治君、海だよ、海」

きゃっきゃはしゃぐ柊木ちゃんは、俺の手を引っ張っていく。

女子高生か雪をみてはしゃぐ犬のよう。

「あ~失敗したかも」

「どうしたの?」

「うん、仕事頑張ったらプレゼントすると言ったけど、こういのうのって女の人はいっぱいもってるかなと」

「中見ていい?」

うん、とリボンのついた紙袋をわたす。

「あ、シュシュだ。かわいい」

「ありがとう誠治君」

柊木ちゃんは目をうるうるしている。

「かわいいし、派手じゃないから学校でも使えそうだし…。」

ぐすんと鼻をならし、ぽろぽろと涙を流しながらも帽子のつばをひっぱって顔をかくそうとする。

「??おちついて、春香さん。それ春香さんにあげたプレゼントだから」

「うん、仕事で使っても、へ、へんじゃないシュシュだから…こ、こんなにも、あたしのこと考えてくれてるって思うと、う、うれしくなっちゃって…」

「うれしすぎて、泣くところだった…」

「いや十分泣いてたじゃん」

「誠治君てば、そうやってツッコミ入れるし。」

「大好き、誠治君。愛してる。」

「俺もだよ。先生」

「先生じゃなくて、春香さんでしょ~」

ぼかぼか胸を弱くたたいてくる。

「春香さん、愛してる。」

「うん、許すぅ」

もう感極まった春香さんは、人目をはばからずキスしてくる。

「ちょ、まつ…」

うれしいけど、だれもいないわけじゃないから顔をそむける。

「真田君、逃げないでください。」

「え、なんで突然先生モード?」

「先生は、私語が嫌いなので、授業中は静かにしてください。」

がしっと両手でほおをおさえられる。

「ちょ、まっ」

バランスをくずして、砂浜に背中から倒れる。

先生、春香さんが上から被さってくる。俺は、彼女のいいなりだった。何回もキスして、やけくそで舌を入れたら春香さんの舌も入ってきた。

それから我にかえって二人で大笑いした。

 

翌日、教室に入ってくる柊木ちゃんをみて、女子生徒は、なにかを発見したようにうれしそうに声をかける。

「あ~、先生、シュシュ新しいの買ったんだぁ」

「かわいい~」

「買ったというか、もらい物だけどね。」

「いいな~それ彼氏からもらったんでしょう?」

「絶対そう!顔に書いてあるもん!」

「う~ん、どうだろう。」

「あ~先生、顔赤くなってる~。」

とぼける柊木ちゃんは、ちらっと俺の顔をみて笑顔をひらめかすと、すぐそらすが、とびっきりの笑顔のままだ。

キーンコーンカーンコーン…

「えーと、チャイムが鳴ったので授業を始めます。席についてください。秋川さん、お願い。」

と当番の女子生徒に声をかけた。

 

 

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