4月24日
「さて授業始めるよ。秋川さんお願い」
「はい、起立、礼」
「え~と、早速だけど世界遺産でエジプトを挙げた人いるかな?」
ぱらぱらと手が上がる。
「さて、これは何かな?」
「ギザのピラミッドです。」
「はい、正解。といいうことで、今日からいよいよエジプトの統一国家の単元に入ります。でこの王様の彫刻のあるのは何かな?」
①
俺はおずおずと手を挙げる。
「アスワン神殿だっけ?先生?」
「惜しい!なにかうろ覚えだね?真田君。アスワンってダムの名前だよ。」
「ああそうか、えーっと」
「はい。」
「秋山さん」
「アブシンベル神殿です。」
「正解!真田君は、惜しかったね」
「アスワンハイダムの建設に伴って移転した神殿だというのは覚えてたんだけど...。」
「じゃあ、チャンスをあげる。どっちが古いかな。」
「もちろんギザのほう。ピラミッドは古王国時代だから。第4王朝のクフ、カフラー、メンカフラー王の墓」
「リベンジしたね。古王国時代は紀元前27世紀って呼ばれている。いまから何年位前かな」
「2000を足さなきゃいけないんでしょ」
「そうそう」
「4700年前です!」
「はい、正解。じゃあ日本は何時代かな?年表見ながらでいいから答えてみよう。」
「縄文時代中期?」
「正解。すごく古いのがわかるよね。」
柊木ちゃんはほほえむ。
「エジプトは、ナイル川流域にノモスという村落を営んでいたのを、紀元前3000年、ナイル川中流域の上エジプトの王メネスが下エジプト、ナイル下流域を征服して統一し、ファラオ、旧約聖書名地ではパロという称号を名乗ってと統一国家を建設、これが古代エジプト王朝の始まりと言われています。じゃあ時間もないので板書するね。」
紀元前27世紀 古王国時代 第3~6王朝 ギザのピラミッド
都;メンフィス(ナイル下流域)
紀元前21世紀 中王国時代 第11,第12王朝 都;テーベ(ナイル中流域)
紀元前17世紀 ヒクソスの侵入、第15,第16王朝
「ヒクソスは、シリア方面からセム系民族で、馬や戦車を持っていた強力な民族だったみたいでエジプトは、征服されてしまいました。それを追い払って、紀元前16世紀から新王国時代になります。さて、新王国時代は世界遺産になっている有名な遺跡があるね。ヒントはさっき答えが出てたね。」
「はい、綾野さん」
「ジングルベル神殿?」
「亜子、何言ってるのよ」
「だって、ルシアンが間違ったのに私が合ってたら妻として、夫を立てないと…」
クラス中に含み笑いが充満する。
柊木ちゃんは苦笑している。
「じゃあ、水瀬さん代わりにお願い。」
「はい。アブシンベル神殿です。」
「正解。第19王朝のラムセス2世が築いたものです。その前の第18王朝のトトメス3世は。シリアとヌビアを征服して勢威を示しました。ところで、当時エジプトは、太陽神ラーとテーベの守護神アモンを一体化してまつる神官の力が強くなっていました。そのため、紀元前14世紀のアメンホテップ4世は、王様の力を取り戻すために宗教改革をします。唯一神アトンの信仰を国内に強制し、イクナートン(アトンは満足する)と改名、テル・エル・アマルナをアケト・アトン(アトンの地平線)と名付けて遷都、神官勢力を抑え込みました。」
「イクナートンの時代の美術作品は、それまでの神官勢力に気兼ねしたものではなく、王や家族の日常生活や写実性の優れた作品が生まれたの。その代表的な作品がこのイクナートンの王妃ネフェルティティの像です。さてこの王妃の名前っておもしろい意味があるんだよ。」
「どんな意味なんですか?」
柊木ちゃんは、
「( )が来た」
と書く。
「さて。我と思う思う女子は、この( )の中に自分の名前を書きたくなる、そして男子は心のなかで思い描いている女子やアイドルの名前を書きたくなる、そんな言葉がはいるんだけど...」
柊木ちゃんはにこにこと微笑み、なぜか俺のほうをちらっと見た。
「まさか、先生の下の名前で春とか春の香りみたいな言葉が入る??」
「ちがう、ちがう!じゃあまたヒント」
柊木ちゃんは苦笑して、
「このクラスの女子は( )ぞろいだ。」
と板書する。
女子の目が輝き始める。
「先生わかってるう。」
「でしょ~」
柊木ちゃんは微笑む。
「まじかよ~」
男子はつぶやく。
「俺が答え書くよ」
「藤本、どうすんだ?」
「まあ見てろって。先生いいですか?」
「藤本君?じゃあ前へ出てきて」
「はい」
にやにやしながら藤本が前へ出ていく。
「(セクシー)が来た」
「柊木先生は、(セクシー)」
柊木ちゃんは頬をそめて、
「藤本君、やめて」
「なにそれ!ずるい!」
女子たちはさわぎだす。
「藤本、なんだよそれ!」
男子からもブーイングだ。
パンパンと柊木ちゃんが手をたたいて、
「じゃあ板書するね。」
紀元前16世紀 新王国時代
第18王朝 トトメス3世 シリア・ヌビア征服 都;テーベ
アモン・ラーの神官勢力強大化
イクナートン(アメンホテップ4世)の宗教改革
唯一神アトン信仰の強制、テル・エル・アマルナ遷都
アマルナ美術(自由で写実的)・・・ネフェルティティ像など
「ところで、イクナートンさんが亡くなった次の王様がすごく有名な人。クフ王、カフラー王とか知らなくても、おそらく知っていると思う。ハワード・カーターという人と、カーナヴォン卿というお金持ちの人がお墓を発掘調査した。
「この仮面と金箔の椅子の写真見たことある人」
ぱらぱらと手が上がる。
「この王様は、~王の呪いってことで知られています。」
「え?、もしかして...」
「ツタンカーメン!」
「そう、正解!正確にはトウト・アンク・アメン(アメンの生きる像)だけど、早口で読めばツタンカーメンになる。またテーベに戻ってアモン信仰にもどりました。その次の王朝が第19王朝になります。」
第19王朝 ラムセス2世 アブシンベル神殿
カデシュの戦い~ヒッタイトとの戦い、苦戦
「じゃあまとめるね。」
◎エジプトの社会
〇王(ファラオ)=現身の神~絶大な権力をもち、全国土を支配
〇神官・官僚=貴族~王から土地を与えられる
〇農民~生産物の租税、無償労働を課される=不自由身分
〇ただし、20王朝以降(前12世紀初頭~)傭兵と結託した神官の勢力が台頭→王権弱体化、アッ
シリアに敗れる遠因となる。
◎宗教
〇太陽神ラーを中心とする多神教
〇新王国~アモン・ラー信仰
〇霊魂不滅の信仰→ミイラ、『死者の書』を残す。
◎文化
〇エジプト文字 神聖文字;主に碑文、石棺、墓室に刻まれるか描かれる
民衆文字;パピルスに記録され残る
〇測地術→ギリシャ幾何学のもととなる
〇太陽暦→ローマが採用→ユリウス暦に
「さて、これなんだかわかる?一番上がエジプトの神聖文字、その下が民衆文字、一番下がギリシャ文字なの」
「教科書に、ロゼッタストーンって載っています。」
「はい。この内容が紀元前2世紀のプトレマイオス5世の恩恵を感謝するための決議文だといわれているんだけど、どうやって解読したんだろうね。ヒント。みんなの名前は英語でなんと書くかな?水瀬さん」
「人の名前を探す?」
「そう。まずプトレマイオスの名前を探したの。その文字列から順次当てはめていって読めない部分は、推定していって、その仮説が正しいかほかの史料で検証する。それが正しいと推定されればほかの史料でさらに検証を繰り返し解読していった。それでフランスのシャンポリオンさんが解読に成功した。ん?」
真田誠治side
あれ?懐かしいな。10年前の高校?柊木ちゃんが板書している。あれ?藤本だ?
携帯?スマホじゃない?
柊木春香side
真田君、携帯いじってる。もう授業中なのに...きびしくするのはいやだけど...むう
「それでは、授業を終わります。秋川さん、お願い」
「はい。起立、礼」
と号令をかけた。
「真田君」
「はい」
「真田君は、このあと先生の所へ来てください」
柊木ちゃんはちょっとムスってしているようだった。
①アブシンベル神殿※User:Olaf Tauschによる。
ツタンカーメンの仮面(㏄-BY-継承3.0)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%84%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%83%B3#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Tutanchamun_Maske.jpg
ツタンカーメンの金箔の椅子(㏄-BY-継承4.0)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%84%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%83%B3#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Tutankhamun_chair,_18th_dynasty,_Cairo_museum.jpg