「さなだ~、お昼だ、弁当食おうぜ」
「ん、すまん。柊木ちゃんに次の授業の準備があるから申し訳ないけどお昼は世界史準備室で待っててくれと言われている。」
「何言ってんだ。昼休み半分つぶれるんだから断ればいいだろ」
「あのさ、藤本。あこがれのアイドルがいるとして、サインあげるからしばらく待っててね♡と言われて断れるか?」
「.....。」
「だろ、柊木ちゃんに限って言えば社会科係の特権ともいえる。じゃあな」
「さなだ~、カムバックゥ~~~~」
俺は無視して世界史準備室へいく。
知的でエレガントなオフホワイトのボウタイ付きブラウスに黒いタイトミニをはいた柊木ちゃんが脚立にのぼって蛍光灯を取り替えている。
ちらりと中が見えてしまうが、色まではわからずに俺は柊木ちゃんにわからないくらいの角度で顔をそむける。
「あ、真田君、午前の授業お疲れ様」
「今、準備するからまっててね。」
「あ、はい」
「見て!見て!ちゃんと作ってきたよ」
市販ぽくない唐揚げだ。
「先生って」
「ん?何?」
「ちゃんと料理できるんですね」
「むう、そういう人にはあげません。」
むう、として横をむく。ちょっとしかめっつらもかわいい。
「市販じゃないなってわかったから。料理できる女性は魅力的です。」
「もお、すぐそういうこと言う。」
「でも先生、唐揚げばっかり...」
「あ、やっぱりそうだよね、レモンとかいれるよね。」
(いや、そうじゃなくて...)
「どうしたの?あ~もしかして唐揚げのこと竜田揚げだと思った?」
「....」
「唐揚げはね、小麦粉とじゃがいものでんぷんの粉である片栗粉の両方をつけるけど原則下味はつけないの。竜田揚げはね、片栗粉だけを使って、お醤油とか下味をつけて衣の厚いところは白っぽく、薄いところは赤っぽく見えて、一説によると奈良県の生駒付近を流れる竜田川の紅葉のようだということから名付けられたんだって。」
「先生って」
「ん?」
「すごく物知りで、記憶力いいけど、木を見て森を見ないタイプ?」
「ありがとう。木を見て森を見ないって?よくわからないけど、どっちも見るよ?通勤途中に山あるし」
(あ~柊木ちゃんは天然確定だ^^)
「じゃあ、先生もいただきます。」
柊木ちゃんのお弁当は普通だった。
「ん、俺の箸は?」
「ん、入れてないだけだよ」
「ん?どうして?」
「それはね」
柊木ちゃんがむふ~と微笑む。
箸で唐揚げをつかんで、俺の口元までもっていく。
「はい、あ~ん♡」
(う、まじっすか、うれしくて萌え死ぬう)
口に唐揚げがはいる。さめてはいるがじゅわっと肉汁が口に広がる。
「おいしい?」
「うん、さめてるのにおいしい」
「じゃあ、今度はこっち。あ~ん」
(同じでは??え、この弾力性のある歯ざわりは?)
「タコから?」
「そうだよ。なかなかいけるでしょ」
「うん、おいしい」
ガタガタ...準備室の引き戸をゆらす音がする。
「あ、まずいかも、真田君隠れて」
俺は机の下に引っ張りこまれる。
ガラッと引き戸が開く音がして
「開いてると思ったら、柊木先生だったんですか?」
おばさん先生の声だ。
「お疲れ様です。調べ物ついでにお昼ご飯食べていました。」
「そうですか。戸締りはしっかりお願いしますね。」
おばさん先生は出て行った。
(どうにかばれずにすんだみたいだ。)
と気が付くとタイトミニの中がもろ見えになっている。
リボン付きのかわいいパンティが丸見えだ。
「もう大丈夫だよ。ごめんね。狭かったでしょ」
「あの、先生?」
「なあに?」
「今日スカートだから股閉じたほうが...」
「何かと思ったら...いつまでみてるのかなとおもったけど、ずうっとみてたもんね。」
柊木ちゃんは、ほおをいくらか赤らめて俺のほうをみる。
「すっごく真剣にみてたから、閉じちゃうの悪いかなと思って」
「そういう時はすぐ閉じてください」
思わず叫んでしまった。
「ねえねえ、何色だった?」
俺の顔もほてっている
「し、知ってるくせに。聞かないでください」
「ピンクです♡」
「言わないでよ!知ってるから!見てたから!」
なんか俺のほうがなぜか恥ずかしくなってる。
「一生懸命ツッコむ真田君、かわいい」
「って、授業の準備もしなきゃね。」
柊木ちゃんはパソコンを立ち上げてネットにつなぐ
「う~ん」
「なに唸ってるんですか。」
ネット書店のHPをみながらうなっている。
「えっとハムラビ法典碑がスーサからでたから発掘報告書とかあればとおもったけど...」
「こないだウルの報告書高かったみたいだね。」
「そうそう、それだけじゃなくてずっしりだし、スタンダードの破片が出てきた場所の図なかったし。よく考えたら写真に継ぎ目があるからそれでパズルができた?」
「まあ、独身貴族とはいえ、ポケットマネーにもずっしり来たし。ごめんね。リスク多すぎで授業の準備のためにはスーサ関係は買わないことにする。世界遺産関係の本はもってるけど」
「次回はね、東地中海の諸民族とエーゲ文明。まあ地図とか用意する。真田君はシュリーマンって知ってる?」
「あの伝説の町を掘り当てた人ですよね。ウィルスのトロイの木馬で知られてるトロイだっけ?」
「そうそう、よく知ってるね。実際にシュリーマンさんが掘ったのは、もっと古い時代だって今はわかってるからトロイは断面図だけにする。」
「イスラエル王国とユダ王国の画像、ウィキペディアとかから落としておいて。あとで授業のパワポに入れるから。」
「はいはい、?」
「どうしたの?」
お昼休みが終わって掃除の時間になってざわざわする。
柊木ちゃんが俺が見ているパソコンの画面を横から覗き込んでくる。
俺は、たまたま見つけた文字の系統樹をみておもしろいなあと感じる。アルファベット、ギリシャ文字、キリル文字に分かれている。
※
「へえ、フェニキア文字っていろんな文字の先祖にあたるんですね。」
「そうそう、そうだよ。漢字も分かれるのは知ってるよね。まあ今回はやらないけど。」
「じゃあこんなところかな。ごめんね。手伝わしちゃって。」
「いえいえ、たまには掃除やらない日あってもいいかなと」
「なんかいつもほかの人部活や塾とか行っちゃって、いつのまにか一人でやってるよね。」
「いえどうせ帰宅部だし。それにだれもいないなら」
俺は笑みをうかべて先生のほうをみる。
「そっかあ」
柊木ちゃんはにっこり微笑んだ。
※本作オリジナル