戦争はいりませんか?今ならお買い得ですよ。セットで人形もおつけしましょう!【完結】   作:畑渚

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金髪赤目の賭け 上

 AUGが仲間に加わってからというもの、僕らの商談はより幅広く展開し始めた。機械の塊にこんな言葉を使うのもなんだが、才能というものがあったらしい。僕は一つ二つ教えただけで、その何倍ものことを理解し、すぐに実践にうつしていた。

 

「どうですかバルソクさん、新しい車は」

 

『最高だ。前の車もだが今のはレスポンスが段違いだ。本当によかったのか?』

 

「ええ。こちらの車もしっかりと強化しなおしましたし」

 

 僕の乗る車は防弾性を上げて、新しく買った車は、どこの映画だと言わんばかりのギミックを搭載している。防御特化と攻撃特化でようやく人数を分担できるようになったといったところだ。

 

「ナオ様、まもなく到着します」

 

 こっち側の車の新しい運転手ことG36が報告してくる。

 

「ありがとうございます。さてと……」

 

 書類を再確認する。今回の依頼先は、小国の軍。いや、軍と言えば聞こえがいいが、その実態はただの……いや、これ以上はやめておこう。これは僕の憶測も入った情報だ。

 

「ねえ、ナオ」

 

「なんでしょうか、九美さん」

 

「やたらと多めに運んでるけど、どういうこと?」

 

 確かに、注文以上のものを持ってきている。しかし、いつも同じことをしているはずだ。

 

「いつも通り、ですよ」

 

「それにしては、やたらとユニークな武器が多いんだね」

 

「仕入れてくれた九美さんには頭が上がりませんね」

 

 じゃんけんに負けてトラックを運転することになった57の苦虫を噛みつぶしたかのような顔を思い出し、少しだけ笑みがもれる。

 

「まああえて言うならば……」

 

 僕はあごをなぞりながら言葉を続ける。

 

「勘ですかね。もし杞憂だったとしても、この移動距離を無駄にする気はありませんよ。あくまでプラス方向に働く計算です」

 

「その計算の詳細を知りたいんだけど、まあナオがそう言うなら大丈夫かな」

 

「ああでもAUGさんは理解しているみたいですよ」

 

「AUGさん、すごいよね」

 

「ええ、まさかあそこまでとは僕も想定していませんでした」

 

 すでに商談の3分の1を任せており、将来的には完全に独立してもらうつもりである。それに、AUGには僕と一緒ではなく別の仕事も任せたかった。そのための布石として、商売のことを教えるという恩を売っているというのが現状である。

 

「私は心配だよ」

 

「心配、ですか?」

 

「私にはAUGさんみたいな会話テクニックがないから」

 

「まあ、表情が固まったままだと会話以前の問題ですからね」

 

「……」

 

 黙り込んでしまった九美の手をとる。

 

「安心してください。九美さんはうちの経理と仕入れ担当です。数への強さがあるんですから、そうそう手放せませんよ」

 

「本当?」

 

「ええ、うそだったら何でも買ってあげますよ」

 

「え~、じゃあうそだといいな~!」

 

「あのですねぇ……」

 

 なんて冗談を交えながら笑い合っていると、車が停まった。

 

「ナオ様。くれぐれも」

 

「わかっています。それに今回はバックアップチームまでいるんですから、安心してください」

 

 僕はG36の返事を聞かないまま、車から出た。同タイミングで九美さんも降りる。ワンテンポ遅れて、G36さんも降りて車の鍵を近くの迷彩服の男に渡した。

 

『では、状況開始します』

 

 インカムの先から、AUGの声が聞こえる。バックアップチームの2人は配置についたようだ。

 

 さて、僕らのほうも戦闘を開始だ。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

「初めまして、将軍。お目にかかれて光栄です」

 

「どうやら礼儀はわきまえているようだな」

 

 自らを将軍と呼ばせるその男は、いかにもなソファで美女を侍らせながらそう言い放つ。とてもわかりやすい人物だ。そして何より、こういう人物は僕らのカモだ。

 

「それで、商品はどうなんだ」

 

「ええ、もうしばらくで到着するかと」

 

 うわさをすればなんとやら。コツコツと場違いなハイヒールが床を鳴らす音が聞こえてくる。音の主は57。荷物を持った男たちに囲まれ、まだ不満顔をしたまま僕らと合流する。

 

「また随分と美人揃いなんだな、貴様のところは」

 

「ええまあ、ガワだけは。中身はただの自律人形ですよ。ご覧になりますか?」

 

 これはあとで九美あたりに殴られそうだなと思いながら、僕はどう笑ってみせる。

 

「人形などに興味はない。それで、商品を見せてもらおうか」

 

 男たちが将軍の目の前に、僕らの運んできた商品を並べる。

 

「先に話したとおり、カスタム済みの一品たちです。動作は保証しましょう」

 

「ほう……」

 

 将軍は商品の中から、マグナムリボルバーを取り出す。

 

「それに目をつけるとは、将軍もなかなかやりますね」

 

「まあ、な」

 

 嫌な予感がした。

 

 

 

 

 そういった予感は、僕の場合はいつも当たる。

 躊躇なく引かれた引き金は撃鉄を落とし、雷管を勢いよくたたく。発射された弾丸は近くに侍らせた美女の頭に赤い華を咲かせた。

 

「動くな」

 

 将軍には聞こえないように、僕は無線機に送る。隣にいる九美はもちろん、他のメンバーにもしっかりと伝達したようだ。誰も動かない。ただ、将軍に付き従う他の美女が倒れた音がしたくらいだ。

 

「将軍、あなたは自分が何をしたかおわかりですか?」

 

「なんだ?文句でもあるのか?」

 

 ポケットから次の弾丸を取り出し、慣れた手付きで装填。容赦する気はないのだろう。だからこそ、ここは僕が強気にいかねばならない。

 

「一度撃った銃は中古品です。あなたは今、僕の商品の価値を下げました。それが商売人にとって何を意味するのかおわかりですか?」

 

 震えそうになる足を抑えて、言葉を絞り出す。

 

「ほう……」

 

 カチャカチャと、僕を一発で殺しかねない玩具をもてあそびながら将軍は身を乗り出す。

 

「若者だと思ったが、どうやら肝は座っているらしい。よし気に入った。こっちへこい」

 

 僕は言われるがままに、商人のすぐ対面のソファに腰掛ける。

 

「将軍、これは?」

 

「友好の印だ。一服どうだい?」

 

 いったいどこから金が出ているのか、そこにあるのは最高級の葉巻だ。専門ではないにしろ、僕でも知っているくらいには有名な銘柄だ。

 

「それではお言葉に甘えて」

 

 一本受け取り、将軍の側近から火をいただく。なるほど、たしかに最高品質を謳っているだけはある。しかし……、最高級の銘柄というだけだ。同じ銘柄でもさらに別の、裏メニューとなっているものがある。それは売人が目をつけた人物にのみにしか売らないという一品だ。つまりは、将軍はその売人の目にはつかなかった程度の器ということである。

 

「そういえば、ナオ。貴様はよく追加注文を請け負ってくれると聞いているのだが」

 

「原則、注文品のみです。ですが今日は別の場所にも行く予定でして、たしかに少しだけ多めに荷物を積んでいますね」

 

「そうか、では」

 

 そういってメモ用紙にサラサラと書いていく。

 

「このくらいほしいのだが、どうかな?」

 

「拝見します」

 

 追加注文品は、商品や品数も含めて僕の想定内だった。

 

「なるほど……手持ちでなんとかなりそうではありますね」

 

「おお、そうか」

 

「しかし……、急な注文です。それ相応の値段は覚悟していただかないと……」

 

「まあ待て」

 

 そういうと、指を鳴らす。側近たちがすぐに反応し、扉が開かれる。

 

「将軍、あれは?」

 

「貴様なら気に入るのではないかな?」

 

 そう確信しているかのような笑みを浮かべる。

 僕は笑いをこらえるのに必死だった。扉の先にいたのは、金色の長い髪の少女だった。緑色のストライプのリボンでポニーテールにしており、バンダナもしている。

 

「注文を受けてくれるのであればこいつを貴様にやるのもやぶさかではない。どうだね」

 

「なるほど。少々お待ちください」

 

 頭の中の電卓を弾く。結果は、黒字。受けない手はない。

 

「わかりました。九美さん、このメモのとおりに荷物を」

 

 指示すると、すぐに九美は商品を取りに行った。その間に、僕は少女を側へと呼ぶ。肌のさわり心地などを確かめているうちに、九美たちが戻ってきた。

 

「そういえばですね、将軍。僕からも一つだけよろしいですか?」

 

「なんだね」

 

「僕も現在、探している商品がありまして」

 

「ほう、言ってみよ」

 

「ロシア製のスナイパーライフル、SV-98というのですが、もしお持ちでしたら買い取らせていただきたいのですが」

 

 僕は一つ、大きな賭けに出ようとしていた。

 

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