転生者および転移者のストーリーを期待している方はごめんなさい。これは彼らの物語ではありません。
暗い。暗くて、でも温かく抱きしめてくれるような、そんな闇。
果てがあるのか、無いのか。いくら目を凝らしても天蓋も壁も見えず、何もかもをふわりと包み込む。けれど不安や怖さよりも不思議な安らぎを覚える、穏やかで優しい闇に満たされたこの場所で。私は微かな緊張を感じながら、その時を待っていた。
とくっ……とくんっ……
静寂の中だからこそよけいに感じる、小さく高鳴る胸の鼓動。
新たな転生者を待つこの時間は、いつもこうだ。
もう初めてでもないと言うのに、何度やっても今だにソワソワとしてしまう。
だ、大丈夫だよね。私の格好におかしいところは無いよね?
そういえば高校受験の時、面接官のカツラが悲劇的にズレていたせいでブホッと噴き出しちゃったことがあった。幸い不合格にはならなかったけど、おかげで面接中はそれはもう気まずい雰囲気に耐えなくちゃならなかったんだ。
あんな悲劇は二度とごめんだ。来訪の予定時刻までまだ余裕はあるから、出勤前に姿見で確認したけど念のためにもう一度。
えーっと……髪よーし。癖毛とアホ毛は仕方なーし。服よーしっ。皺も乱れもなーし。コスプレ感とか着られてる感とかは気にしなーい。
癖のある髪を手櫛で整え、仕事着の白くてゆったりとした
うん。今日もばっちり準備完了っ。ちゃんと立派な神様に見えてるよきっと。……たぶん。見えるよね……? ううう……ぅえーいっ!!
ぱんっ!! とこの期に及んでひくつく頬を両手で一叩き。
痛いっ! けど気合いが入ったからよし!
男は根性女は度胸。いつまでもぐじぐじしてたら女が廃るし来た人にだって笑われちゃうもんね。
というわけで緊張顔はこれでおしまいっ。ちょうど時間になったみたいだし、いざ神秘的で大人っぽい神様スマイルを浮かべて……──転生者、出てこいやあ!!
パアァ…………っ
気合いを入れると同時に、目の前の闇に生じる目映い輝き。白く澄んで、新たな始まりを告げる曙光を思わせるそれは、来訪者が訪れる招来の光。
その輝きの中に、確かな人影が現れる。
「……ここ、どこだ?」
そして光が収まった時──そこには、新たな転生者がいた。
それは学生服を着た、どこにでもいるような男の子。
柄の悪いヤンキーでも品行方正な優等生でもない、ごくごく平凡な雰囲気と見た目のその人は──何が起こったのか分かっていないんだろう──呆然と呟き、辺りをキョロキョロと見回している。
うんうん。まずはだいたいいつも通り、よくあるリアクションだね。
いきなり謎の真っ暗空間に来たんだもん、そりゃビックリするよ。そしてそんな人達を落ち着かせるのがお仕事の始まり。
というわけでさっそく声をかけてみよー。
「──ようこそ。■■さん」
「……っ!? だ、誰……?」
名前を呼べば、ハッとした顔でこっちを見る■■さん。
たぶん混乱しすぎて私が目に入ってなかったんだろうね。
そんな驚きと警戒に顔を強張らせる■■さんを安心させるべく、レッツ自己紹介だ。
「はじめまして。私の名は
「神様……」
柔らかく、そして厳かに。
穏やかながら悠然たる神の声音は、耳にする者の心を鎮め、畏敬の念を抱かせる言霊を宿している。
ゆえにそれを聞いた只人──■■さんのパニック寸前だった表情からすぅっと強張りが消え、彼はそんな自身の変化に小さく息を飲んでいた。
「気分は落ち着かれましたか?」
「え……あ、うん。なんでだろう。君の声を聴いたら、気分がすっと落ち着いたよ。ほんとに……神様、なんだね」
よーしよしよし掴みはOK。毎日のボイストレーニングで鍛えたヒーリング効果付き神様ボイスはバッチリ効いてる。ならこっからサクサク状況説明っ。
「突然の事に戸惑っているでしょうね。……ご自分の最期については、おぼえていますか?」
「最期……。っそうだ……たしか僕は、学校が終わって新発売の異世界転生モノのラノベを買った帰りにトラックに……っ。──まさか……僕、死んだの……?」
「……はい。残念ですが、あなたは亡くなりました」
事前に読んだ資料によれば、私と同じ享年16歳。特別不幸なわけでも恵まれてるわけでもない、平凡で、でも穏やかな日常を過ごしていたらしい。
まだまだやりたい事もやり残した事も一杯あったんだろうなあ。なのに突然人生が終わっちゃったんだ。
童貞で。一度も女の人のおっぱいを触ること無く。
触ること無く!!
優しくしてあげなくちゃ(使命感)
「そっ……か。じゃあ、ここは天国? ……それとも、地獄?」
そんな■■さんは、静かに自分の死を受け入れて、全てを諦めきった顔をしている。
でも、そうじゃない。まだ終わりじゃないんだよ。それを伝えるのが、私の役目だ。
「いいえ。そのどちらでもありません。──ここは死せる魂を導き新たな生へと旅立たせるための場所……」
「新たな生へ……それって、まさか──」
君の新しい人生(ストーリー)は、死(エンディング)の先にあるんだと。
「■■さん。あなたには──異世界転生をしてもらいます」
「ええええええええええええ!?」
よっしナイスリアクション!!
「異世界転生って、あの……っ!?」
「はい。最近流行りの異世界転生ですよ。とはいえあちらに生まれ変わるのではなく、生前の肉体を再生させる形となるので正確には『転移』ですね」
「うえええっ!?」
気持ちいいくらいビックリしてる。
うんこういうのを待ってたんだ。
最近はなんかラノベやらアニメで予習してきたのか、妙にこなれた対応してくる可愛いげの無い奴が増えてきたからね。■■さんみたいな素直なリアクションは気持ちいいよ。
「ウソだろっ。……いやっ、たしかに異世界転生モノは好きだけど、そんなラノベみたいなことが僕に……っ」
「起こったんですよ」
「ほんとに?」
「神に誓って」
仕事のできる神様らしく堂々と答えると、■■さんはうつむき、沸き上がる何かを堪えるようにプルプルと体を震わせて
「や……」
「や?」
「やったあああああ!!」
満面の笑顔で大歓声を上げた。
「やった!! ずっと思ってたんだ。ラノベの主人公みたいに異世界転生してみたいって! まさか本当に夢が叶うなんてっ!! ありがとう神様!!」
死の絶望から一転、まるでサンタクロースからプレゼントをもらった子供のようにおおはしゃぎしてる。
まあ文字通り地獄から天国にいったようなものだから仕方ないか。なにより、泣かれるよりはずっといいし。
ここに来る人たちは皆様々な死因で亡くなった魂だけど、そのリアクションはそれこそ十人十色だ。
突然見知らぬ場所で目覚めたことで戸惑う人。死のショックからパニックに陥る人。自分の生が不本意に終わったことに嘆き悲しむ人。
そして──いま私の目の前で表情を輝かせているこの人のように、これから始まるだろう新たな『人生』に心踊らす人。
どれが良いかと聞かれれば、当然どっちも笑顔で送り出せる後者が一番だ。
「では、さっそくですが転生の手続きへと移りたいと思います。よろしいですか」
「──っ! はい。よろしくお願いします!」
うーん初々しいっ。でもって真面目で素直。たまに来るやたらとイキった今どき転生者に爪の垢を飲ませたいくらいだね。
「ではまず、希望の転生先などはありますか?」
「え。選べるの?」
「はい。これは人によりますが、あなたの場合は転生先から特典までかなりの項目を選択可能ですよ」
うんマジで。これはかなり条件がいいね。
そもそも私のような神様が手続きをするのは選択権を与えられてる人だけで、これが無いと死亡から即ゴブリンやらスライムに問答無用で転生させられたりもするからさ。
「ならその、アニメとかラノベの世界なんかは……」
「一部を除いてなら大丈夫です」
「ちなみにその一部っていうのは……?」
「禁即事項です」
「え、教えてくれないの?」
「禁即事項です」
ハ●ヒネタじゃないよこれはマジだ。
いいか。この世には天下の異世界転生ジャンルでも触れちゃいけないものがあるんだよボーイ。もし触れたら最期、世界で一番有名なネズミに消されちゃうんや(((( ;゚Д゚)))
「じゃあ●ateは──っ!!」
「あ、それはセーフです」
「よかったぁ……っ!!」
ニッコリ答えると、あからさまに胸を撫で下ろしホッとする■■さん。
「くすっ……。よっぽど好きなんですね」
「まあ、FG●からハマってずっとファンだったから。──でもこれで、僕も人類最後のマスターにっ」
「では一万年待ちとなります」
「いちまんねんんんんッッッ!?」
そんな彼に笑顔で告げた事実に、夢にまで見たマスターライフへの期待に上擦る声が絶叫に変わる。
衝撃があまりに強すぎたのか、■■さんは口と両目を大きな○にして
「いちまんねんっ? 一万年ってどういうこと?」
「ですから文字通り転生開始までに一万年ほど待っていただく形となりますね」
「なんでさ!?」
「これは決まりでして、あまり多人数を同じ世界に一度に送るのは禁止されているんですよ。なので少数ずつに分けて送るとしても、それは慎重な手続きを踏んでからの先着順なんです」
「じゃ、じゃあその果てしない待ち時間は……(震え声」
「なにぶん●ateほどの人気作となりますと希望者が常に殺到してまして、既に1000万人以上が転生待ちとなっています」
「い、いっせんまんん……っ」
絶望的な数に打ちのめされ、ガクッと膝から崩れ落ちる■■さん。希望を木っ端みじんこに砕かれたorzのポーズは涙を誘うねえ。
けど可愛そうだけどこれが現実なんだよ。これで諦めるくらいなら君の思いはそれまでだったってことさ。
望みの人気作に転生したければ、少なくとも一億万年だろうと耐えてやると豪語できるガチ勢レベルにならないとね。
「な、なら仮面ラ●ダーやガ●ダムは……?」
「聞きたいですか?(ニチャア」
「ごめんなさい聞きたくないです」
勘の良い子は嫌いじゃないよ。
って危ない危ない。あんまりにもリアクションが良いもんだからつい愉悦スマイル浮かべちゃったよ。内心はともかく仕事中は常に神様スマイルでいなくちゃね。
というわけでさあ慈悲深い女神のような表情で教えてあげよう。
「ですが人気作でも待ち時間無しで転生できる世界もありますよ」
「えっ!? どこ!!」
「対●忍シリーズと彼●島です」
「死んでしまいます(レイプ目」
だよね~。
でも異世界で無双したい転生者ばっかりだから、空いてるのは生半可なチートじゃ瞬殺されかねない作品ばっかりになっちゃうんだよ~。仕方ないね~。で、どうするのかにゃあ~?
「それ以外となりますと、やはりアニメやマンガ等のエンターテイメント作品ではない通常の異世界になりますが」
「じゃあもうそれでいいよ」
「かしこまりました」
はい転生先の選択クリアー。
なんか■■さんの目が若干死んで返事が投げやりな気がするけど気にしない。
「では次に、転生先での特典を決めましょう」
「特典……っ」
そんな■■さんの意気消沈していた顔が、特典という言葉にパッと輝く。それこそ待ってましたと言わんばかりの表情で
「えっと、それは何でも良いの?」
「こちらが用意できる範囲となりますが、おおよそは大丈夫ですよ。あ、ただし『お前が欲しい』等の私達神を特典にする事は禁止されていますのでご了承下さい(キッパリ」
先輩の神様から聞いた話だけど、某異世界転移モノのアニメが大ヒットしてた時期なんかは触発された転生者がこぞって女神連中を特典に連れてくもんだから、一時期はそのせいで転生神業界が深刻な人手不足に陥ったんだって。
んで残ったお爺ちゃん神やらおっさん神が居なくなった神様の分まで働かなくちゃいけなくなったから、ついにはほぼ全員が過労死寸前に追い込まれる地獄絵図に。
そんなわけで以来、神様を特典にするのは禁止になったわけ。恐るべきはこ●すば人気か……。仕方ないねア●ア様可愛いしおっぱい大きいもん。
「なら、僕の特典は──」
お、長くかかるかなと思って転生神業界の悲劇に思いを馳せてたけど以外と早かったね。もしくはとっくに決めてたのかな。
「『全ての仮面ラ●ダーに変身する力』だ!」
あーふーん。うんうんよくある好きな作品の力が欲しいってパターンね。ぶっちゃけ今どきの中高生の10人に7人くらいがリクエストするやつだ。
「はい。『全ての仮面ラ●ダーに変身する力』ですね。受け付けました」
「やった!」
OKの返事をすれば、よっしゃーとガッツポーズを決める■■さん。
さっきの転生先を決めるやり取りがアレだったから不安だったんだね。念願叶って大喜びだ。
「子供の頃から夢だったんだっ。これで僕も仮面ラ●ダーに──」
「ちなみにですが」
「今度はなにさ!?」
うおぅ一転目をクワッとさせてらっしゃる。
もう警戒というか疑心暗鬼入ってるね。でも安心しなよむしろ善意のアドバイスだからさあ。
「にわか知識で力を使うとわりと死ぬので注意してくださいね☆」
「ちょっ!? それどういうこと?」
おっと気持ちは分かるけど詰め寄らないでね。懇切丁寧ノーモア容赦で説明したげるから。
「『○○○の力』などの既存作品の能力を特典に選んだものの、把握していなかった設定上のデメリットや弱点でうっかり死亡してしまう転生者がたまにいるんですよ」
「う、うっかり?」
「そうですね……。過去にあなたと同じ特典を選んだ転生者達の事例ですと、カ●ザに変身したけど体が適合しなかったから灰になってうっかり死亡とか、昭和ラ●ダーの必殺技を全部使おうとしてウ●トラサイクロンでうっかり死亡とか、V●に変身してダ●ルタイフーン使ったらエネルギー切れで戦闘中に強制変身解除したあげく生身でタコ殴りされてうっかり死亡など。ほかにも……」
「分かったわかりました気をつけますからああああ!!」
おっとやり過ぎたか涙と冷や汗大洪水で絶叫しちゃったよ。これ以上やったら情緒不安定でヤバくなりそうだからここらで切り上げますか。
「などなど特に平成ラ●ダーから入った世代は昭和ラ●ダーの設定に疎い傾向がありますので、くれぐれもにわか知識を過信せず取り扱いは慎重にしてくださいね」
「は、はいぃ……」
よーし今にもメンタルフルボッコで死にそうだけど良い返事だっ。
というわけで特典もクリアー。
この調子で次もサクサクいこ~。
それからも諸々の選択事項が続き、途中で■■さんが異世界転生のリアルな事情に何度か奇声を上げたり打ちのめされたりもしたけど、それ以外ではほぼ何事もなく手続きは完了したのだった。いえーいみっしょんこんぷりーと。
「……はい。手続きは以上で全て終了です」
「や、やっと……終わったぁ」
お疲れ様の気持ちを込めて言うと、■■さんはいかにも疲労困憊といった様子で、盛大に息を吐いた。
見るからにヘトヘトだけど、その顔には明るいものがある。
それはこれからの期待と、未知の世界へと旅立つ高揚感。
「じゃあ、これで異世界転生できるんだね」
「はい。……お待たせしました。これからあなたはあちらで新しい人生を送ってもらいます」
そうして全ての準備が整うと、それを待っていたように■■さんの体が再び光に包まれる。こちらへと招く光ではなく、あちらへと送り出す柔らかで優しい光に照らされながら、彼は穏やかな笑みを浮かべた。
「色々とありがとう。教えてもらったアドバイスは……まあショックなところもあったけど参考になったよ」
「お礼なんていいですよ。転生者を行くべき世界へと導くのが、転生神である私の務めなのですから」
言葉を交わすこの時にも、光が徐々にその輝きを増していく。より明るく、華やかに、その旅立ちを祝福するように。
そして光が一際強くなり、■■さんの姿がこの中に完全に包まれた時、
「……ところで、なんで転生するのが僕だったの? まさか死んだのは神様のミスでって訳じゃないでしょ」
「ああ、それはですね……」
別れ際にかけられたその問い。
もう顔も見えなくなった彼に、私は答える。
「あなたには、まだやらなければならない事があるからですよ」
なぜ彼が転生するのかを。
死せる魂が巡り、新たな生を生きるその意味の一端を。
全てを伝えることはできない。してはいけない。彼が自ら悟るか、その生涯を終えた時まで、絶対に。
それは神にすらも許されない──世界の掟だから。
けれど、それでも……その道行きがせめて良いものであるようにと、祈ることはできる。
「どうか、……──」
柔らかな声で祈りを紡ぎ、伝え終わるのを見届けたように。■■さんは輝く導きの光と共に──ふわりと姿を消して、新たな世界へと転生した。
◇◇◇
光に包まれ白く染まっていた視界がふっと明けた時、視界に飛び込んできたのは初めて目にする『世界』だった。
「う、わぁ……っ」
青い。そして──広い。
住んでいた都市の排気ガスで僅かに霞んだそれとは違う、どこまでも澄んで限りなく広がる蒼穹。輝く一つの太陽と、そして地球では決して存在しない二つの月が浮かぶ空。
その下には、青々とした木々と色とりどりの草花か咲き誇る草原。そこを見たこともないような獣達が力強く地を駆けている。
童話に出てくるドードーのような鳥が甲高い鳴き声を上げながら走り回り、そばでは牛ほどもある大きさの羊が呑気に草を食む。遠くの空を行く影は鷹か鷲だろうか。いやもっと大きい……何だか分からないけど、もしかしたらドラゴンかも……っ。
想像するだけで胸が高鳴る。知らない風を、浴びる光を、新しい音を、感じる度に心の昂りが止まらない。
「本当に、異世界に来たんだ……っ!」
沸々と沸き上がる実感と感動。
さあ、これから何をしようか。
まずはやっぱり街を見つけてこの世界の情報を知るべきかな。異世界モノでよく出てくる冒険者ギルドみたいな所があるなら絶対に行ってみたい。でもこの大自然をもう少し眺めていたい気持ちもあるし……ああっ、もうっ、楽しみ過ぎて頭がうまく回らない!
とにかくまずは歩き出そう。
せっかく異世界転生できたんだから、この世界を全身全霊で楽しもう。
『どうか、新しい世界があなたに幸せなもので、その生の果てに天命を遂げられますように』
これからの幸せを祈ってくれた神様の言葉を思い出しながら、僕は新しい世界に一歩を踏み出した。
◇◇◇
「……うーんっ。終わったあ~!」
■■さんを異世界へと導いた証である僅かに残った小さな光の粒が、キラキラと舞い闇に溶けるようにふっと消えるのを眺めながら、私は沸き上がる達成感と共にぶはぁっと息を吐いた。
仕事だから仕方ないけど、普段とは正反対のお行儀の良いポーズをとり続けてたせいですっかり肩が凝っちゃったよ。
関節をコキコキと鳴らしながら、凝り固まった体をぐい~っと伸ばす。んあ~気持ちいい~♪
「■■さんは素直ないい人だったし、予定より早く済んだし、トラブルも無かったし、いっつもこんな感じなら良いんだけどなあ」
まあ無理だよね~。私に回されてくるのは基本問題児ばかりだし。今回は特別穏当に済んだけど次に来る転生者はどうなるやら。
──これが私の日常。死んでも転生することなく、むしろ何の因果かさせる側となってからの毎日だ。
「上は無茶振りばっかで転生者は問題児だらけ。いくら人を超えた存在になったっていってもこれじゃ~ね~」
──だからもし、転生者達が主役の物語を見たいのならごめんなさい。これは彼らではなく、彼らを異世界へと転生させる
「ホント、神様転生も楽じゃないよ」
──神様の物語です。
「……まっ、後の事は後になってから。今はとりあえず次の転生者が来るまで、のんびりお茶してよ~っと」
はじめましての方ははじめまして。そうじゃない方はおひさしぶり。
異世界転生物を書きたくなったけど、どう考えても力量的に最後まで描き切れないからいっそ神様視点のオムニバスでお茶を濁そうというヘタレな作者です。
なので基本的には各話ごとに色々な転生者が登場する前後編のオムニバス形式でお送りします。あくまでも基本的にはね。
というわけで始まりましたこの物語。どうぞ一時の暇つぶしにゆるりとお付き合いください。