潜水直接教育艦ふゆしお   作:h.hokura

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冒頭のシーンは、有名な潜水艦映画の「Uボート」と円谷プロ制作のマイティジャック第一話「パリに消えた男」からです。



海洋実習編
1.6月5日・その1


悪夢の様なRATtウィルス事件から一か月が立っていた。

晴風や武蔵等まだ復帰出来ないクラスが多い中、横須賀女子海洋学校では、海洋実習が再開していた。

これは少しでも早く横須賀女子を正常な状態に戻したいと言う横須賀女子海洋学校の校長である宗谷 真雪の決断だった。

これにより無事だったクラスは海洋実習に出始めていた、潜水直接教育艦ふゆしおのもその中の1艦だった。

 

そのふゆしおは硫黄島近海を浮上航行していた。

「硫黄島まで20キロです。」

「現在の速力は10ノット、機関に問題なし。」

航海員と機関員の報告の声が発令所内に流れる。

「了解しました、ふゆしおは現在の進路と速力を・・・」

記録員がそう指示を出そうとした瞬間、梯子を滑るように降りて来た艦長が指示を飛ばす。

「急速潜行、総員戦闘配置に付いて下さい。」

「機関停止、メインモーター切り替え。」

「注排水弁開きます。」

機関員と注排水管制員がそれぞれコンソールを操作し始める。

「総員戦闘配置、急いで!」

記録員の指示で艦内にアラームが鳴り響く。

艦長に続いて指令塔のハッチを閉めた航海管制員が降りて来る。

「全ハッチ閉鎖よし。」

発令所の表示を確認した記録員が報告する。

「ベント弁開け、潜航。」

「ベント弁開きます。」

「潜行。」

注排水管制員がベント弁は開く操作をし、操舵員がジョイ・スティック型の操舵装置を操りふゆしおを潜行させて行く。

「深度70まで潜行。」

「了解、深度70まで潜行します。」

深度計の表示を見ながら操舵装置を操る操舵員。

「・50・60・70。」

「艦を水平に、メインモーター出力全開。」

「艦を水平に戻します。」

「メインモーター出力全開。」

ふゆしおは深度70で水平になると速力を上げて行く。

「艦長、総員戦闘配置に着きました。」

「艦首魚雷発射に魚雷装填良し。」

続いて魚雷が艦首魚雷発射に装填、総員が戦闘配置に着いた事が報告されると、艦長の綾は頷き記録員の方を見る。

「記録員、時間は?」

タブレット端末を操作し記録員が答える。

「1分30秒、前回に比べ5秒短縮です艦長。」

その答えに綾は満足そうに微笑むと周りを見渡す。

「演習終了、戦闘配置を解除、浮上します。」

そうこれは演習だったのだ、但しスケジュールされたものでは無く、綾が予告も無く実行する、言わば不意打ちだった。

綾は時々こうゆう演習を行う、必要な時に必要な行動を行える様に皆を鍛える為に。

「了解です、戦闘配置を解除、通常の警戒態勢に戻せ。」

「浮上します。」

その甲斐もあってか、最初は混乱していた乗員達も今はきちんと動けるまでになっていた。

波を割ってふゆしおが再び浮上すると、綾と記録員は航海管制員に続いて指令塔上に出て来る。

「皆さん動きが良くなりましね。」

「艦長が鬼の様に皆を鍛えましたからね。」

悪戯っぽい表情を浮かべ記録員、澤田 亜紀が答える。

「鬼ですか?」

「くすくす冗談ですよ艦長。」

困った様な表情の綾に亜紀は微笑んで答える。

綾と亜紀は潜水艦乗員養成コースの入試で主席と次席と言う関係だった。

まあその差は僅かで、もしかすると亜紀が艦長になっていたかもしれないのだ。

そうなれば互いにライバル心みたいなものが芽生えそうだが、綾は元々人と競うと言う事は考えない性格だったし、亜紀は何が気に入ったのか最初から親しげに接して来たので、今では親友同士の間柄だ。

とは言えまだ実習中なのにそんな感じで良いのかと、某教育艦の副長が言いそうだが(笑)、綾はやるべき事をやるべき時に出来るなら、それ以外で細かくは言わないスタンスだった。

それがふゆしお艦内に独特の空気を生み、個性的な乗員達をまとめている事に繋がっているのだった。

「それで今後の予定ですが、この後硫黄島の訓練施設に向かい、そこで実習を行います。」

やるべき事をやるべき時に、澤田記録員はタブレット端末を操作し今後の予定を神城艦長に伝える。

硫黄島には潜水艦部隊の訓練施設が設けられており、ふゆしおはこれからそこに赴き実習する予定だった。

「分かりました、どんな訓練設備があるか楽しみですね。」

「そうですね・・・ただ男子海洋学校の生徒も居ますから、問題が起きないといいのですが。」

ずっと男の世界だったサブマリーナの世界に女子が入って来たのだ、最初の頃よりはましになったが、女子海洋学校への風当たりは強い。

綾と亜紀はその事を考え溜息を、顔を見合わせると付くのだった。

 

元来潜水艦に分類される艦艇は、全て男性のみで運用されていたのだが、海上だけではなく海底にも都市や資源採掘基地の建設が始まり、それに関連して民間の潜水商船が増加して来た事もあり、ブルーマーメイドもそれらに対応せざるを得ない状況になっていた。

その為まだ小規模ながらブルーマーメイドにも潜水艦部隊が組織されつつあり、それに合わせて女子海洋学校に潜水艦乗員養成コースが設けられた。

ふゆしおはその為に横須賀女子に配属された直接教育艦だった。

そして綾達はブルーマーメイドのサブマリーナを目指し実習に励んでいるのだ。

その前途は中々大変であるが。




はいふりの世界では潜水艦やそれに類するものは男性のみと言う設定でしたが、
それでは寂しいと思い、設定を捏造してしまいました。

恐れ多いですね(笑)、様ははいふりの世界でサブマリン707的な話をやりたかっただけす。

それでは。

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