「経緯は分かりました神城艦長・・・」
救助した男性を港に連れ帰り、復旧した道路で村に到着していた医療班に引き渡すと綾は横須賀女子に経緯を連絡する。
そして1時間後宗谷校長から直接ふゆしおに通信が入る。
乗員全員に関わる事なので綾は会話を発令所だけでなく艦内に居る皆に聞かせていた。
「校則違反であることは十分認識している積もりです宗谷校長先生。」
麻耶は通信機に向かいながら緊張した表情で会話を聞いている。
もちろん亜紀を始めとした発令所要員や艦内で配置に着いている者達もだが。
『・・・そうですね、私は「物資を届ける事だけ。」と言った筈です。』
宗谷校長の言葉が普段と違って厳しいものになるのを綾達は感じる。
明確な校則違反である事は否定し様が無いと綾は十分認識している積もりだ。
だからそれなりの厳しい処分が下されるだろうと綾は覚悟を決める。
『校則や私の指示に違反した事は重大です・・・よってふゆしお乗員全員の今度の休暇を取り消します。』
その言葉に皆の緊張が高まる、処分が休暇の取り消しで終わる訳が無いと思って。
『代わりに学校自習室での反省文作成を命じます。』
「えっと宗谷校長先生、それは?」
綾は宗谷校長の言葉に思わず疑問の声を上げてしまう。
『作成完了まで学校に留まる事・・・そして終了後は各自自由にして構いません。』
綾は発令所に居る亜紀達と顔を見合わせてしまう、そうこれが校則違反の処分になるのかと思ってしまったからだ。
「宗谷校長先生、それが今回の私達への処分になるのですか?」
皆の疑問を代表する形で綾は宗谷校長に聞き返したのだが。
『その通りです神城艦長・・・以上で処分の言い渡しは終わりです、そのまま実習を続けるように。』
「はい宗谷校長先生。」
これで通信が終わったが、綾を含め皆茫然とした表情で暫く動く者は居なかった。
「艦長、これって本当に校則違反への罰則になるんでしょうか?」
亜紀が首を捻りつつ先程綾が言った疑問を聞いて来る。
「・・・私にもよく分かりませんね澤田記録員。」
同じ様に首を捻りながら綾は答える、大体次の休暇は2ヶ月も先の話だ。
しかも反省文の作成なら1日も掛からないだろうし、その後は自由にして良いと言うのはそのまま休暇に入っても構わないと言っている事になる。
即時実習中止で横須賀女子に帰還させられ停学処分、と言う事態を綾は想像していたからだ。
とは言えそう処分が下った以上それに従うしかない、綾はそう頭を切り替えると指示を出す。
「ふゆしおは実習に戻ります、各自配置について下さい。」
「「「「はい艦長。」」」」
綾の指示に亜紀達は頷くと皆は自分の配置に戻って行く。
「良かったっす、本当に・・・」
そんな中安堵の表情を浮かべ麻耶はそう呟くのだった。
通信を終えた宗谷校長の表情は何故かにこやかだった。
「校長、ふゆしお乗員への処分はあれで良かったのですか?」
傍らに立ちその会話を聞いて居た副校長が聞いて来る。
「ええこれで良いと思いますよ、まあ確かに校則と私の指示に違反した事は確かです。」
表情を引き締めると宗谷校長はそう言ったが、また直ぐに先程の様ににこやかに戻る。
「規則を遵守する事はブルーマーメイドとして大事な事でしょう、でも時には柔軟に対処する必要もあります。」
そんな宗谷校長の言葉を副校長は聞いている、同じようににこやかな表情を浮かべて。
「立場上彼女達を褒める訳にはいきませんが、私はそうした決断をした事を誇りに思います。」
席から立ち上がり校長室の窓から海を見つめながら宗谷校長は続ける。
「神城艦長を始めふゆしお乗員の娘達はきっと良いブルーマーメイドになってくれるでしょうね。」