潜水直接教育艦ふゆしお   作:h.hokura

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この作品の主人公である神城 綾の設定は『若宮』と同じになってます。
まあ『若宮』のパラレルワールドな作品と思って下さい。



2.6月5日・その2

それにしても・・・綾は周囲の海上を見渡しながら溜息を付いて思う。

自分が横須賀女子に入学し、女子生徒としてふゆしおに乗り込む事になるとは、1年前は想像していなかったと・・・

亜紀が今後の予定を乗員達に説明する為に発令所に降り、見張りに着く航海管制員と二人きりの司令塔上で綾はそうなった経緯を思い出していた。

 

実は綾は他のふゆしお乗員の娘達違い生粋の女性では無った、横須賀女子海洋学校に入学するまでは、神城 薫という名の男性だったのだ。

通っていた中学校で授業中に薫が貧血に似た症状で倒れて病院に行った事が全ての発端だった。

その病院で医者が薫に告げたのは余りにも驚愕すべき事だった。

「落ち着いて聞いて欲しい、君は本当は男性で無く女性だったのです。」

半陰陽、身体は男性だが、遺伝子的には女性だったのだ薫は・・・

本人は最初は理解できず茫然とし、やがてその意味する事を知りパニックに襲われた。

当然その場には薫の母親がいたのだが、医師の発言を聞いても至極冷静だったのが非常に腹立たしかったが。

そして問題は今後どうするかだったが、医師の助言と母の説得もあり、薫は手術を受け女性になる事を決めるのだった。

手術後薫は一年間をリハビリと女性としての最低限の教育、そして受験勉強に費やし、無事に横須賀女子海洋学校に入学する事が出来た。

本当なら薫は東舞鶴男子海洋学校の潜水艦乗員養成コースへ進学する積もりだったのだが、女性になってしまった為断念するしなかった。

せめてもの救いは横須賀女子にも潜水艦乗員養成コースあった事だが、女の園に放り込まれる事に喜ぶ気にならなかったのは言うまでもない。

ちなみに名前も神城 薫から神城 綾に変えた、薫としてはこのままでも良いと思ったのだが、母親が「晴れて女の子になれたのだから、名前もそれらしくしないと!」と言われ変えられてしまったのだ、まあ当人に言わせれば女の子になりたかった訳では無いのにと言う思いはあったが。

そして現在に至るのだが、正直言って綾に横須賀女子海洋学校での生活は、当然の如く女性しか居ない世界故、未だに男性の感性が残っている身としては辛いものがあったのだ。

まあ艦長として職務中であれば、責任と義務を果たそうと言う意志のお陰で何とかなったが、それ以外では狭いうえに密閉された潜水艦の環境のせいで日々の女生徒達との接触(物理的な意味を含めて)に綾は苦労させられていた。

まあ幸いな事にサブマリーナ目指している少女達はその感性も普通の女子と違い、綾にとっては非常に助かったが。

それでも、いやそれだからかもしれないが、彼女達は男としての感性の残った綾の前でかなり無防備な姿をよく晒してくる。

女子が乗艦すると言う事もあってふゆしおは空調設備が整っており、晴風に比べて快適さでは比べ物にならない、また風呂は無いが、立派なシャワールームが存在し、お湯も豊富に使える(もちろん無制限と言う訳では無いが)、しかも身体から髪まで洗える機能付きだったのだが、中型艦故に更衣室を設けられなかった為、乗員は自分の寝台で服を脱いで行かねばならず、タオル一丁で通路を歩き回るなど日常茶飯事なのだ。

始めてその光景を見た綾は、慌てて発令所に逃げ込んでしまったものだった、まあ今では多少慣れた(それでも心臓に悪いが)。

ちなみにその綾だが、狭いながらも個室(艦長室)が有ったので、そこで横須賀女子の体操服に着替え、替えの下着を袋に入れて持って行きシャワーを使った後着替えると言う事をやっている。

「艦長は恥ずかしがり屋ですね。」と乗員に言われるのだが、元男の自分がこんなに気を使って、生粋の女子が何故無防備なのかと理不尽さを感じていたりする。

あと余談だがふゆしおの乗員、潜水艦乗員養成コースの生徒は横須賀女子の制服(セーラー服とスカート)を通常身に着けていない。

理由は簡単だ、普通の艦船と違い潜水艦は艦内の出入りに梯子を使うからだ、そうその姿で昇り降りすればどうなるか、と言えば説明の必要は無いだろう。

だから綾達は青いつなぎ型の作業着で乗艦しているのだ、セーラー服の方は入学式当日に着た位で、その後は学校のロッカーに入れたままだ。

これは潜水艦乗員養成コースの生徒にとっては宿命的な事で、特別な行事でもなければ卒業式まで着る事が無かったりする。

 

兎も角潜水艦乗員と言うのは色々大変なものなのだが、綾はそれに加えて元男だったと言う事もありその苦労は並大抵では無かった。

司令塔上で綾はそんな事を思い出しながら、再び深い溜息を付くのだった。




潜水艦の生活はかなりハードで、お陰で女性の乗員は居なかったらしいですが、最近読んだ本によると、アメリカ海軍のオハイオ級原子力潜水艦で女性の乗員が誕生したと書かれていました。
既に海自では女性のイージス艦の艦長も生まれていますし、現実が小説やアニメの世界に追いついて来てしまったのかと思われてしかたがありませんね。
まあ男の世界が侵食されて来たと嘆く向きもありますが。
あと潜水艦の生活で匂いについての描写があり、それが女性に向かない理由の一つと言われる様ですが、それって密閉され風呂にも余り入れない為のものと言われてますが、私としては昔読んだ潜水艦漫画(沈黙の艦隊だと思いますが)で、海自潜水艦の艦長が言っていた「こんな重油臭い艦では無く、快適な艦で・・・」と言っていたセリフから、積まれている燃料の匂いが原因なのではと思うのですが、知っている方いらっしゃるでしょうか?
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