潜水直接教育艦ふゆしお   作:h.hokura

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2.4月11日・その1

「艦長、明石と間宮、護衛艦の計4隻を確認。」

電測員の報告に綾は頷くとレバーを引き、潜望鏡を上げると覗き込む。

潜望鏡の視界に工作支援教育艦である明石と補給支援教育艦の間宮、その護衛役の2隻が見える。

西之島新島沖でさるしまの沈没を確認したふゆしおだったが、通信状態の悪さからその事を横須賀女子に結局連絡出来なかった。

仕方なく綾は艦隊の次の集合場所である鳥島沖へ向かうと言う決断を下した。

その途中で晴風クラスに反乱の嫌疑が有り、抵抗した場合は撃沈を許可するとの海上安全委員会の通達を知る。

そしてふゆしおを含めた横須賀女子海洋学校所属の教育艦が各地への寄港を禁止されている事も。

綾とふゆしお乗員達が深い困惑に襲われる中、ようやく横須賀女子と連絡が取れた。

『どうやら貴女達は問題無かった様ですね。』

ふゆしおからの通信に横須賀女子の校長である宗谷 真雪は安堵の声でそう言った。

そしてこの一連の出来事は晴風を含めた教育艦の異常な行動が原因とされていると綾は宗谷校長に聞かされる。

「晴風クラスに反乱の嫌疑が掛けられいるのはさるしまの沈没が原因なのですか?」

西之島新島沖でのさるしまの沈没を報告し、綾がそう聞くと宗谷校長は苦渋に満ちた声で答える。

『ええ、さるしまの古庄指導教官から『晴風から攻撃を受けた。」と連絡があったらしくてね、公安管理局は反乱の意志ありと判断したの。』

綾は信じられなかった、晴風の艦長である岬 明乃とは海洋実習出発前に会ったが、そんな大それた事をする人間には見えなかったからだ。

古庄指導教官だって『潜水艦での実習は大変だろうけどがんばりなさい。』と激励してもらい、生徒思いの教官だと感動を覚えていたからだ。

そんな二人が何故?綾の困惑が更に深まったのは当然だった。

『残念ながら晴風とは未だに連絡が取れません、古庄指導教官の消息も依然として不明です、その為真偽は現時点で分かりません。』

更に海上安全整備局が教育艦の異常な行動を受けて強硬手段を準備しているらしいと宗谷校長、その様子からかなり苦慮している事が分かった。

事態は綾が想像していた以上に最悪であり、ふゆしおの乗員達も彼女と宗谷校長の会話を聞きながら動揺していた。

「それで宗谷校長先生、私達はこれからどすれば?」

海上安全委員会の通達で教育艦の各地への寄港が禁止されている事もあり、どうすべきか綾は聞く。

『ふゆしおには明石の部隊との合流を命じます、その後については追って通達します。』

宗谷校長によれば明石と間宮、護衛艦の2隻はふゆしお同様無事だったらしい。

「了解しました、ふゆしおは明石の部隊と合流、その後の指示を待ちます。」

通信後、明石との合流ポイントにふゆしおは向かい、合流を果たすのだった。

「電信員、明石に連絡を。」

既に護衛の2隻はふゆしおの接近に気づいているだろうが、余計な混乱を避ける為、綾は浮上前に連絡を入れる事にしたのだ。

「了解っす。」

電信員が通信機を操作して明石に連絡を取り始める。

「これから一体何が起こるんでしょうか?」

タブレット端末を抱えながら記録員が不安そうに聞いて来る。

「・・・私にも分かりませんね、まあこれ以上最悪な展開にならないと良いんですが。」

潜望鏡で周囲を警戒しながら綾は溜息を付きながら答える。

「艦長、連絡が付いたっす、それで明石の杉本艦長が話したいと言ってるっす。」

「杉本艦長が?・・・分かりました。」

レバーを操作し潜望鏡を下げると、綾は電信員の所に行く。

「どうぞっす。」

電信員からヘッドホンとマイクを渡された綾は話し始める。

「杉本艦長、ふゆしお艦長の神城です。」

『明石艦長の杉本です、お疲れ様です神城艦長、実は浮上後に明石に来て頂きたいのですが。』

「明石にですか?」

何か有るのだろうかと綾は困惑する、余ほどの事がなければ艦長の自分を呼びつけるなど無い筈だからだ。

「戸惑っているとは思いますが、必要な事なのでお願いします神城艦長。」

含んだ様な杉本艦長の言い方に綾は眉を顰める、とは言え断る理由も無い。

「分かりました浮上後そちらへ向かいます。」

『助かります、迎えのスキッパーを寄こしますのでそれで。』

通信を終えヘッドホンとマイクを返す綾に電信員が不安そうに言う。

「一体何が有るんっすかね?」

記録員を始め他の乗員達も不安そうに綾を見る。

「それは私にも分かりません・・・大丈夫ですよ皆さん。」

綾はそう言って微笑みながら乗員達を見渡す、ここで自分が不安な顔をする事は出来ないと思って。

「記録員、後の指揮を頼みます。」

ふゆしおに副長は居ない、代わりに綾に次いで次席である記録員がその任に当たる事になっていた。

「了解です艦長・・・そのお気を付けて。」

「心配は要らないでしょう、同じ横須賀女子の生徒ですし、取って食われる訳でもないでしょうから。」

努めて気楽そうに言って綾は浮上を命じる。

「メインタンクブロー。」

綾が身支度を整えて甲板に出てすぐに明石からのスキッパーが到着する。

「神城艦長ですね、どうぞお乗り下さい。」

明石の乗員が綾を見ると言って来る。

「はいお願いします。」

綾はそう言うと後ろの座席に座り、甲板まで見送りに来た記録員に声を掛ける。

「では行ってきますね。」

「はい艦長。」

記録員に見送られ綾は明石に向かった。

明石の傍に付いた綾は連れて来てくれた乗員に礼を言ってタラップを登り甲板に上がる。

その甲板上に小柄な体型にサイズの大きいフード付きのミリタリーコートを着用した生徒が踵を潰した靴で立っていた。

彼女が杉本艦長の様だった、綾は敬礼をする。

「ふゆしお艦長の神城です。」

それに対し相手の生徒も敬礼をしながら答える。

「明石艦長の杉本です、わざわざご足労いただきありがとうございます。」

挨拶を終え、敬礼を解くと綾は質問する。

「それで御用と言うのは?」

だがそれに答えてくれたのは杉本艦長では無かった。

「用が有るのは私達です神城艦長。」

その声に振り向いた綾が見たのは、ブルーマーメイドの制服を身に纏った二人の女性達だった。

「初めまして、安全監督室情報調査隊所属・平賀二等監察官と申します、でこちらが。」

「同じく安全監督室情報調査隊所属の福内です、宜しくお願いしますね。」

思ったより厄介な事になっていると綾は今更ながら思った。

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