まあ、相変わらず設定を変えていますが。
そのへんはご了承願います。
1.西住家の従姉妹達・その1
目の前に有るのは立派な作りの家。
綾とっては幼い頃から馴染のある家ながら未だに慣れる事が出来なかった。
まあそれは仕方の無い話しかもしれない何しろここはある武道で名門と言われる家なのだから。
長期休暇で久々に実家へ戻った綾は母から「姉さんや姪達がアンタに会いたがってるから行って来い。」の一言で此処に居た。
「・・・此処でぼっとしていても仕方がありませんね。」
溜息を付くと綾はこれまた立派な門に近寄るとインターフォンを押す。
「はいどちらさまでしょうか?」
インターフォンから丁寧な言葉使いの女性の声が返ってくる。
「えっと神城 綾です。」
「綾お嬢様ですか?暫くお待ち下さいね。」
綾が名乗ると、真面目だった声を喜びを含んだものに変える。
そして門の先にある玄関を開けて和服姿の女性が出て来ると扉を開けてくれる。
「お久しぶりです綾お嬢様。」
そう言って頭を下げて挨拶して来る女性。
「ええ久しぶりですね菊代さん。」
彼女はこの家の使用人である菊代、綾の幼い頃(その時は薫だったが)からの顔見知りの女性だ。
「あと菊代さん、私はここのお嬢様では無いのですからその呼び方は・・・」
お嬢様と呼ばれ困った表情を浮かべ綾は菊代にそう言うのだが。
「いえ、かほ様のご息女なのですよ、私にとっては仕えるべき西住家のお嬢様の1人ですよ。」
菊代はそう言って微笑む。
そう綾は華道や茶道と並ぶ大和撫子の嗜みとして知られる戦車道の名門である西住家の血筋を引く人間だったのだ。
「さあどうぞお入りください、しほ様も綾お嬢様がいらっしゃるのを心待ちにされていますよ。」
菊代に先導され綾は西住家の屋敷に入って行く。
そしてこれまた豪華な玄関でショートブーツを脱ぐとスリッパに履き替え長い廊下を通って屋敷の奥まった所にある部屋の前に来る。
「しほ様、綾お嬢様がいらっしゃいました。」
ふすま越しに菊代が伝えると中から涼しげな声が返って来る。
「ご苦労様菊代、2人とも入室して構いませんよ。」
「はい失礼いたします、綾お嬢様どうぞお入り下さい。」
そう菊代は答えるとふすまを開けて綾に入室する様に促して来る。
「失礼します。」
綾はそう言って部屋に入って行き、その後に菊代が続く。
広い和室に置かれた机の前に座る女性、彼女こそ西住流戦車道の師範である西住 しほ。
綾の母親である神城(旧姓西住) かほの姉である。
「ご無沙汰しておりましたしほさん。」
しほの前に正座して座り深く頭を下げながら綾は挨拶をする、普通ならしほさんではなく叔母さんと呼ぶべきなのかもしれないのだが。
綾の事を微笑ましそうに見つめるしほは叔母さんと呼ぶには恐れ多いと思えてしまう美貌を持っているのだった。
綾の母親同様に高校生になる娘を持っている様にはとても見えないのだ、まあこれはかほにも言える事なのだが。
「ええまったく、中々来てくれないから忘れられたかもと思いましたよ綾さん。」
しほに意地悪っぽい笑みを浮かべながら言われ綾は困った表情を浮かべてしまう。
「クスクス・・・冗談ですよ綾さん、お元気そうで何よりです。」
自分の反応に一転口元に手を当て如何にも楽しそうに笑うしほに、薫の頃はこんなでは無かったのになと思う綾。
まだ薫だった頃のしほは子供相手でもそれは丁寧な言動で接してきたものだったからだ。
それが綾(つまり女性)になった途端、こんな風に茶目っ気たっぷりな対応に変わってしまったのだから最初は、いや今でもだが困惑している。
ちなみに何故そうなったか後に聞いてみたところこんな答えが返って来た。
「何しろ夫以外に身内に殿方が居なかったのでどう接して良いか分からなかったのです、だからつい丁寧な対応をしていたのですが、同性になったと知ったらもうそんな風に気を使う必要は無いと思いまして。」
どうやら女性同士になったので本来のしほらしい接し方になったと言う事らしい。
でもそれは仕方の無い話しかもしれない、何しろ西住家は創設されて時からずっと生まれる子供は皆女性ばかりの女系一族だったからだ。
しかも他家に嫁いだ者の子供もまた女性しか生まれないというから徹底している。
だから薫は西住家創設以来初めての男の子供だったのだ、だが結局は女性になってしまい、最早これは呪いではないかと言われる所以だった。
余談だがこの事が薫の父親の親族と疎遠になってしまう原因となってしまった。
まあかほは煩わしくなくなったのでせいせいしたと喜んで夫を困らしていたが。
綾(薫)にしてみれば幸い父方の親戚に同じ年代の従兄弟がいない代わりに、しほの娘達が同年代だったので寂しくは無かったが。
「はははすいません、何しろ海洋実習で殆ど海の上、いや中に居るので。」
長期の休みでもないと実家でさえめったに帰れないのが海洋学校の宿命だったりするのだ。
「確かに海洋学校はまほ達の通っている黒森峰女学園とは違いますから仕方が無いかも知れませんね。」
しほはそう言って微笑むとふと気付いた様に言う。
「そうそうまほとみほですが、今日帰って来ます、貴女が来ることは既に知らせてあります、2人も喜んでいましたよ。」
そうかまほとみほも帰省してくるんだなと綾、2人と会うのは横須賀女子海洋学校に入学の為此処を出て以来になる事を思い出す。
実は綾は横須賀女子に入学するまで、受験勉強と女性に必要な事を覚える為に西住家に下宿させてもらっていたのだ。
「それまで部屋で待って下さいね、あとは夕食の時にでももっとお話しましょうか。」
「はい、それじゃ後ほど。」
綾はしほの言葉に頷き立ち上がる。
「そうそう女の子として女子高に入学してどんな生活を送っているのか、聞くのが楽しみです綾さん。」
しほの意地の悪い言葉に綾は固まる、控えていた菊代も楽しそうに頷いている。
「勘弁して下さい・・・」
いかにも楽しみだと言う二人に綾は深い溜息を付くのだった。
この話は元々若宮の方で書く積もりだったのですが、あっちを完結させた事や
あまりクロスさせ過ぎかと思い断念したものです。
まあ、綾がもしも黒森峰女学園に進学したら、何て話も妄想しているのですが。
それでは。