潜水直接教育艦ふゆしお   作:h.hokura

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4.西住家の従姉妹達・その4

試練(笑)の入浴を終え綾はまほとみほと共に居間に移動し既に準備されているテーブルに着く。

少し遅れてしほがテーブルに着くと菊代が早速飲み物を各自の前に置いて行く。

まほ達にはウーロン茶、しほには水割りが置かれる。

「それではここに皆が元気で集まれた事を感謝して、乾杯。」

「「「乾杯。」」」

しほの音頭でまほ達は乾杯すると早速に料理に取り掛かる、何しろ菊代が作ってくれたものだ。

幼い頃からその美味しさを知っているまほ、みほ、綾してみれば待ちきれない思いがある。

「やっぱり寮で食べる食事とは比べられないねお姉ちゃん。」

「まああちらも菊代さん相手では分が悪いだろうさ。」

黒森峰女学園の寮の食事だって名門校だけに腕の良いコックを揃えているがまほとみほにしてみれば結果は明らかだ。

「そう言えば綾は何時も潜水艦の乗っているんだろう、食事とかはどうしているんだ?」

艦船での食事が気になったまほが綾に質問する。

「まあ海洋実習中は毎日レトルト食品です、だからちゃんと料理されたものなんて久しぶりですね。」

嬉しそうに食べながら綾が答えるとまほとみほは顔を見合わせ菊代の様子をうかがう、なおしほは気にせず興味深げに聞いている。

「毎日・・・レトルト食品・・・」

俯き小声で呟く菊代だったが綾は気付かなかった。

「綾お嬢様!!」

「ええ!?」

だから突然菊代に顔を至近距離に近づけられ綾は激しく動揺させられてしまった。

何しろ菊代もしほに劣らず年齢不詳の美人だったからだ、まだ男の時の意識が残っている綾としては驚くなと言う方が無理だった。

一方まほとみほはそんな菊代の言動に顔を見合わせて苦笑しつつ納得していた。

「菊代さんだからね。」

「ああ菊代さんだから仕方ないな。」

そんなまほとみほの言葉を聞いて綾は自分が失言した事を理解する、菊代が食について強いこだわりが有るのを思い出して。

・・・あれはまだ薫だった小学生の時、夕食前にポテトチップスを食べたところを菊代に見つかってしまった事があった。

「薫ぼちゃま・・・これは何なのでしょうか?」

普段は温厚で怒った所など見た事の無い菊代の般若の姿に薫は言い訳を言う事さえ出来ず説教を食らう羽目になった。

こう聞けばもう分かるだろう西住家ではインスタントやジャンクフードは絶対厳禁なのだった。

この点ではしほも菊代の方針を容認しており、西住家にはそれら(インスタントやジャンクフード)は一切置かれていない。

まほとみほも幼い頃から徹底的に食さない様教育されており、2人はその所為で家以外でも食べる事はまれである。

まあ綾は西住家に来た時にはそうなるが外では結構食べていた、それが小学生の時見つかり大目玉を食らった訳だ。

前に述べた通り綾となり海洋学校入学まで西住家で過ごしていた期間は菊代の方針でインスタントやジャンクフード無しで過ごしていた。

だが海洋学校入学後は潜水艦内の食事がレトルトだった事もありすっかりその事を忘れてしまっていたのだ。

「育ち盛りのしかも女性がそんな食事なんて絶対いけません綾お嬢様。」

菊代にとってインスタントやジャンクフードは天敵なのだ、ましてや自分の使えるお嬢様であるまほ、みほ、綾にそんなものを出すのは許せないのだ。

「そう言われても・・・潜水艦ではそういったものしか出せないんです菊代さん。」

艦内に余分なスペースが無く食材の長期保存や調理の為の設備が置けず、どうしてもレトルト等に頼らなければならない事を綾に説明する。

これが晴風くらいの艦船になればそういった設備や専任の調理員が置けるので、食事の質で言えばふゆしおより恵まれている。

なお余談だが横須賀女子においてエリート達が乗艦する超大型直接教育艦武蔵となると調理員も料理の素材も質が高らしい。

その為他の艦船の生徒からは武蔵の生徒だけずるいと言う声があったりする。

「そうなんですか・・・でも・・・だからと言っても私としては納得が・・・」

菊代としては出来ないのなら仕方が無いがやはりそれで納得できるものではないらしく俯いてブツブツ言っている。

そんな菊代を見ながらまほ、みほ、綾の3人は顔を見合わせて苦笑する。

「菊代、そう嘆かないで、綾さんが休みの時は我が家に来てもらってちゃんとした食事をさせてあげればいいじゃない。」

しほがいかにもいいアイデアを思いつたと言わんばかりに発言すると菊代のはっと顔を上げる。

「そうですねしほ様、綾お嬢様お休みの時は絶対お越しください、よろしいですね。」

菊代の圧に綾は承諾するしかなかった、そしてそれを聞いたまほとみほも喜びに顔を輝かせる。

そんな状況を満足そうに見ているしほ、娘達同様可愛い綾が頻繁に西住家に来訪してくれる事は彼女にとっても喜ばしかったからだ。

ただそれ以外にもしほには思惑があった、ずばり戦車道に関しての事だ、師範として綾の才能に彼女は目を付けていたのだ。

西住家に幼い頃から出入りしていた綾(その時は薫だったが)は非公式ながら西住流戦車道の弟子扱いだった。

しほその時からその才能に気づき、彼が女性だったらと何度も思ったものだ、一時期は女装させて黒森峰にと本気で考えたくらいだ。

だから薫が綾になった時はぜひ黒森峰に来て欲しいと思ったのだが、本人の希望をないがしろには出来ないので泣く泣く諦めた。

とは言え綾の才能をそのままにしておくのは勿体ない、だから彼女に西住家に来てもらいまほとみほ、その他の弟子と修行してもらえれば。

西住流戦車道の底上げにつながるし、それはやがて戦車道の発展にも寄与できるとしほは考えていたのだった。

もっともその大義名分の裏に綾を愛でたい(いじりたい)との思いがあったのは否定できない。

その点母親であるかほと同じでやはり2人は姉妹なのだと言えるだろう。

後にしほとまほの思惑が一致し、正式ではないものの綾が戦車道の競技会に関わって行く事になるのはそれほど遠い話ではなかった。

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