合流座標で補給艦と会合したふゆしおは水、食料、毛布、医薬品を受け取ると目的地の村にある港に向かう。
「艦長、予定の座標に到着しました。」
航海長の愛が報告するの聞いた綾は頷くと指示を出す。
「潜望鏡深度まで浮上して下さい。」
綾の指示を受け操舵員の八重と注排水管制員の三坂 由里が復唱して操作に入る。
「艦長、潜望鏡深度です。」
八重の報告に頷くと綾はレバーを操作して潜望鏡を上げると取り付く。
視界に小さな港が見える、綾は潜望鏡を回転させ周り危険な浮遊物が無いか確認する。
「艦長・・・付近に・障害物無し・・です。」
相変わらずテンションの低い真奈美の報告を聞き綾は潜望鏡を下げながら指示する。
「浮上します、メインタンクブロー。」
その時ふゆしおの目的地である港で数人の村人が沖を見ながら救援が到着するのを待っていた。
「まだ来ないのか?もう日が暮れるぞ。」
村人の1人がイライラした調子で問い掛ける、既に日は水平線に沈み掛けていたからだ。
数時間前にブルーマーメイドから物資を載せた艦が向かったと連絡を受けて村人達は港で待機していた。
「日が暮れたら接岸は難しいぞ、こっちは電気も止まっていて照明を点けられないのに。」
皆その事を気にしていたが、一向にそれらしい船が現れず不安に苛まれて行く。
結局来ないのかと諦めかけた時だった、突如海面を割って現れた潜水艦の姿に村人達は驚愕に襲われる。
「「「「・・・えっ??」」」」
まあそれも仕方の無い話かもしれない、他の船舶と違い隠密行動が主である潜水艦は基地以外では滅多に人の前に姿を現す事が無いからだ。
「せ、潜水艦が来てくれたのか?」
村人達がそんな状況に戸惑っている間に、潜水艦から降ろされたボートが港の中に入って来る。
しかし彼らの驚きはそれで終わらなかった、何しろボートに乗って居るのがまだ10代の少女達だったからだ。
「「「「・・・」」」」
驚き言葉を無くしている村人達の前で、到着した少女達は慣れた様子でボートを桟橋に固定すると近づいて来る。
「要請により救援物資をお届けにまいりました。」
「ああ・・・なあ君達はブルーマーメイドの人間か?」
その言葉に声を掛けて来た少女、綾はそう聞かれても仕方ないだろうなと内心苦笑しつつ答える。
「いえ、自分達は横須賀女子海洋学校所属の直接潜水教育艦ふゆしおに乗艦している学生です。」
まあブルーマーメイドの隊員が来ると思っていたのに、自分達の様な学生だったのだから。
「横須賀・・女子・・学生なのか、おっと失礼しました私は村長の飯田と申します。」
待っていた村人の中から初老の男性が出て来て答えてくれる。
「ふゆしお艦長の神城です、早速ですが物資の運搬を始めたいのですが。」
「ああ、お願いします。」
綾は頷くと一緒に来た乗員から無線機を受け取りふゆしおに連絡を取る。
「救援物資を甲板上に上げて下さい・・・ええ手の空いている人達全員を使って構いませんので。」
兎も角到着した綾達はブルーマーメイドから依頼された救援物資の運搬を開始する為動き始めるのだった。
艦内から物資をリレー式で上げると、ボートに積み桟橋まで輸送する事を繰り返すふゆしお乗員達。
最初は学生と言う事で心配そうだった村人達だったが、そのスムーズな動きに今は深く感心していた。
桟橋に到着した物資は若い村人達に手伝ってもらい村に運び込まれて行く。
そして日が完全に暮れる頃に救援物資の引き渡しは終了する事が出来たのだった。
「これで全て終了ですね、ご協力感謝します村長さん。」
引き渡した救援物資のリストを確認した綾が飯田村長に微笑み掛けながらそれを渡す。
「いえこちらこそ助かりましたよ神城艦長。」
受け取りながら飯田村長もそう言って微笑む、ちなみに後ろに居た運搬を手伝った若い連中が綾の笑みに見惚れていた。
まあ何時もの事だったが(笑)、もちろん綾がそれに気付いていないのも含めて。
「それでは我々はこれで・・・」
取り敢えず依頼を終え綾はふゆしおに戻ろうとしたのだが、そこから事態は急変して行く事になる。
「村長大変だ!清吉の奴が海に出たまま戻って来ていないってカミさんが・・・」
綾達にとっては最悪の方向へと。