始まりの鬼が無惨ではなかったら   作:園崎礼瑠

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何となく思い付いてしまっただけの物なのですが、試しに書いてみました。無惨様は無惨様なので多分改心とかはしないです。


童磨胎動編
始まりの鬼


 

大正時代と呼ばれる現在から千年は前の時代にその男はいた。貴族の身の上で生まれた男は、幼少の頃より体が弱く常に寝たきりでの生活を余儀なくされていた。

 

「がぁっ…!!」

 

また血を吐いた。体が弱いのは元からだが、六尺の頃から輪をかけて酷くなるばかりだ。幾人もの医師に見せているというのに一向に良くならない。憎らしい。

 

「……嫡嗣殿はもう駄目か?旦那様も諦めておられる」

 

私の体調を治すために尽力すべき付き人ですらも、こちらに聞こえぬように陰口を叩く始末だ。使えない。

 

「母御殿も鬼籍に入られたからな、後妻を貰うのだろうよ」

 

そんな無駄な事をしている暇があれば医者を探してこい!この病を治せる医者を国中で、この国に居ないのならば、唐からでも呼び寄せろ無能共めッ!!

 

「ぐぅっ…!!」

 

どんなに心の中で叫んだ所で体は動かない。何故私がこんな目に合わなくてはならない?理不尽だ。このような禍はそこらの下人にでも降されるべきであり、高貴な家柄である私が受けて良い屈辱ではないのだ!

 

─────────────────────

 

「保って一両日でしょうな、今夜が峠です」

 

私をそう診断した医者の事は生涯忘れることはないだろう。ふざけるな私が死ぬ訳がない、使えない薮医者め。父親もだ、私の産みの親となる名誉を授かりながら医者の見識に立ち会った後の笑みは許される事ではない。

 

「…………」

 

最早、血を吐く事すらなくただ浅く呼吸を続けている。全身が腐り堕ちるかのような痛みに絶え間なく晒され続けて、意識を失うことすらできない。いや、そうではない。自身の死を認めない為に、ただ残された意思のみで繋ぎ止めているに過ぎない。自分が死ぬことは絶対にないのだと強固に信じ続けている。

 

「…………」

 

月明かりが開け放たれた縁側から注がれている。死病を患い余命の幾ばくもない物に最後に外を見せてやれという命令らしいが、忌々しい。どうせ見せるのならば、日光が出ている時にするべきだ。いつも閉じ籠っているのだからな。

 

「可哀想になぁ」

 

憎々しい気持ちを込めて月を睨み付けていれば、そんな軽薄で感情も籠っていないような声が聞こえた。

 

「このままでは死ぬだろう。憐れだな、死病で苦しみ果てながら息絶えるのは無念だろう?」

 

その男はまるで唐から伝わった絵巻物に現れる閻魔のごとき烏帽子を冠り、頭髪は登頂部付近のみが、血のごとき赤に染め上げられていた。

上等な召し物を着ており、何よりも目を引くのが、縦に割れた瞳孔と牙は人間ではなく、物ノ怪の類いであると一目で分かるものだった。

 

「……ッ誰が……!」

 

だが、そんな者を目の当たりにして私に浮かんだのは激情だった。

 

「ん?」

 

男が、声を上げた事に驚いたように首を傾げたその瞬間に私は

 

「死ぬものかッ!私は不滅だ!私は絶対だ!」

 

父か、付き人か、医者か苛立ちを晴らすべく誰かに突き立てようと考えていた手斧を、全力を以て男の頭蓋へと叩き付けた。直撃した男の頭からは、脳漿と血が滝のように溢れ出した。

 

「はあッ…はあッ…!」

 

これだけの行為で全身に倦怠感が走り、痛みは輪をかけて広がる。そんな肉体に産んだ親へ憎しみを募らせるが、少しだけ気分が晴れた。そう思った時だった。

 

「いやぁ、素晴らしいな、まさか攻撃されるとは思わなかった。正しく執念の結果だ!俺も嬉しいよ」

 

()()()()()()()()()()。バカな、あり得ない。頭蓋を叩き割ったのだ。間違いなく死んでいなくてはおかしい。だというのに、まるで男は私が殺したことすら無かったかのように、潰れた顔も元に戻っている。しかし、部屋と服に残る血液だけが、私の行為が現実であったという事を告げていた。

 

「お前ッ…!お前は…なんだ…?」

 

血を吐きながら問い掛けた私の質問に男は事もなげに答えた。

 

 

「俺は童磨。始まりの鬼だよ、産屋敷殿。

貴方も鬼にならないか?」

 

 

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