始まりの鬼が無惨ではなかったら   作:園崎礼瑠

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新年明けましておめでとうございます。
ゆっくりでは有りますが、今年も投稿して参りますのでよろしくお願いいたします。


天照

 

『十二鬼月』鬼の始祖である童磨から血を分け与えられて生まれる鬼の中でも、更に強力な力を持った十二体の鬼である。その末席に位置する下弦の陸・病葉は歓喜していた。

 

「あの方直々のご命令を賜れるなんて思わなかった!それも鬼狩りでもなんでもない一家を殺すだけなんてなぁ」

 

まあ長男は鬼にしてやったけど。そう言って病葉は手に持っていた赤子の肉を貪る。柔らかい肉は簡単に千切れて旨い。母乳で育てられているので甘味が強い肉だ。大人と違って量が少ないのは残念だが。

 

「ぐッ…ああああああ…!!」

 

あの方の血を与えた長男は変化に苦しんでる。かなりの量だったからな。俺達でさえも最初にあれだけの量を入れられていたら死んでしまったかもしれない。

 

「うるさい母親も喰ったし、ガキ共も不味そうな男から喰ったからなぁ。後は…最後に残しておいた女だけだなぁ」

 

舌なめずりをして、一番肉付きが良い若い娘を喰らおうと病葉は寝床へと歩を進めた。その脳内には既に成功した自分しか映っては居なかった。童磨に誉めていただき、更に血を与えられ、行く行くは自分も上弦の月へと登り詰める。その未来は決して皮算用等ではなく、本来ならばそうなってしかるべき結果だった筈だ。

 

「おやぁ?居ないなぁ…何処へ逃げたんだ?」

 

娘は熱を出していたようだった。家もボロボロになっている。外も雪が積もっており、時間からしてそう遠くへは行っていない。簡単な事でしかない。

 

「子とろ子とろのつもりかぁ?鬼が行くぞぉ…」

 

敢えて娘に聞こえるように声を上げて娘を探す。若い娘の汗と血の匂いを嗅ぐことすら鬼には容易いことだ。どうやら玄関の方へと向かっているらしいが、逃がすはずもない。近くに転がっている亡骸を蹴り上げ、娘へと飛ばす。さぁもうすぐ食えるぞ、そう思って笑みを深める。

すると、娘は振り向き様に拾っていたらしき斧で、亡骸を()()()()()()()()()()

 

 

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全部聞こえていた。お兄ちゃんが叫んで、母さんが、弟や妹が鬼にバラバラにされて、一人一人食べられてる。噎せ返る程の血の臭いが家中に広がっている。自分の家だとは思えないような状態だ。熱のせいか、ふらふらと浮いたような感覚で立ち上がる。生きているのはお兄ちゃんと、私と、皆を殺した鬼だけ。六太を食べる鬼の横をすり抜ける。倒れる兄と、体が欠けた母を乗り越えて玄関だった所に向かう。

 

兄が拾おうとした斧が、近くに落ちている。何となく拾って外へ出る。吹雪いていた雪は止んで、月明かりが雪原と私と、家を照らしてる。その月が綺麗で、外でぼおっと眺めていたら、鬼の声が聞こえた。そうだ、家の中には鬼がいるんだった。冷たい空気を深く、深く肺へと吸い込む。熱は更に体を熱くしているのか、外に出ても全く寒さを感じない。家の方を振り向くと、母さんの体が飛んできた。

 

とてもゆっくりに見えている母さんに、そうっと斧を合わせる。力を入れなくても、体の柔らかい所が分かる。するりと、豆腐のように母さんの体は分かれて、血が雪を真っ赤に染め上げた。その奥から鬼がこちらへと走ってくる。母さん程ではないけど、やっぱりゆっくりだ。

 

「………ふう」

 

と、もう一度深呼吸をする。昔、小さい頃の事を思い出す。お兄ちゃんと一緒にお父さんから神楽を教えてもらったときの事を。お兄ちゃんは、型を教えてもらって、私はそれを見ていた。お父さんとお兄ちゃん。肺が大きくなって、常にしっかりと呼吸をしていたお父さんと、中々呼吸できてなかったお兄ちゃん。二人の真似をしようとして出来なかったけど、今なら出来る。

 

「な、なんだと!?」

 

さっきと同じように斧を合わせると、こちらに伸ばした腕を切られた鬼は凄く動揺している。心臓がさっきまでより強く拍動して、息が荒くなっているのが見える。膨れ上がった足が今にも飛び上がろうとしているように見えたので、少し早足で斧を通す。それだけで、鬼は雪へと倒れ込んでしまった。

 

「ぐあッ!そ、そんな訳がない…!俺は…俺は十二鬼月なんだぞ!?」

 

何か鬼が言ってる。今度は全身を鞠のように跳ね上げようとしてる。少し困るので、見様見真似で斧を振るう。

【ヒノカミ神楽 円舞】

そうだ。こんな風に二人は踊っていて、私もやりたいと思ってたんだ。そう思いながら、私は鬼の体と、斧を使って雪の中で朝まで神楽を続けていた。

 

 

──────────────────────

 

 

悲鳴が聞こえた。雪の中を必死に進んで、たどり着いた炭売りの屋敷では、既に全てが終わっているのを冨岡義勇は目撃した。

白く積もるはずの雪は膨大な血で、真っ赤に染まりきって、その返り血を大量に浴びた少女が中心に立っていた。体からは高い体温で湯気が上がっており、額には火の様な形状の黒い痣を浮かび上がらせて、手に持った斧を振るい、下弦の陸(病葉)を叩き潰した。

 

朝日を浴びて、バラバラにされた体が蒸発していく中で、病葉は心底安堵していた。これで、もうあんな苦しみを味合わなくて済むのだと。転がった顔が雪道を歩いてきた鬼狩りを見付ける。殺される。こいつも同じように、そう病葉は最後に思い、何十回も味わったのと同じく、頭を叩き潰されて、絶命した。

 

 

 




病葉「勝ったッ!始まりの鬼が無惨ではなかったら完!」
冨岡義勇「禰豆子ーッ!」
禰豆子「ほーおそれでだれがこの竈門禰豆子のかわりをつとめるんだ?」
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