始まりの鬼が無惨ではなかったら   作:園崎礼瑠

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童磨殿エミュレート難しい。この人何をどう考えるか分かりにくい。


暗昼

ああ、体が痛い…全身がバラバラに引き裂かれてるようだ。頭が割れるように痛くて、痛みはドンドン増していく。お腹が空いた…晩御飯は食べたのに、凄く良い匂いがする。何がどうなったんだ…?俺の、俺の家族は…俺は長男なんだから皆を守らないと…!

 

だらだらと口から涎を溢しながら、唸り続ける一体の鬼。変異を遂げたばかりだというのに周囲にある家族の亡骸へと手を伸ばそうとしない。長く伸びた爪で、牙で、自身の身体を引き裂き、噛み締めて、必死になって堪えている。それの前へ琵琶の音と共に一人の男が現れた。

 

「やっぱり優秀だ。これだけ意識を残した鬼なら、きっと強くなるぞ。十年…いや、もしかしたら、五年もしたら十二鬼月まで登り詰めるかも知れないな!」

 

始祖の鬼である童磨が、その様子を見て笑い続ける。ここまでの才能の持ち主はそれこそ、百年振りだ、そう言って笑いながら炭治郎へと手を伸ばすが

 

うるさい、うるさい、うるさい!笑い続ける童磨の声が常に頭の中に鳴り響く。その声が不愉快で、お腹が空いていたのも相俟って、思わず炭治郎は童磨の腕を喰い千切った。

 

「があっ!?…っ!っ!」

 

大量の血液が体内へと侵入し、炭治郎の肉体を更に侵していく。どくどくと全身から血が溢れ出しては、再生を繰り返す。痙攣を繰り返し、喉は潰れて声もまともに出せなくなって、それでも死んではいなかった。

 

「一度にこれだけの血を受け入れるなんて、他には居なかったなぁ。炭治郎、君がそうなのかな?」

 

既に再生を終えていた童磨はそれを見て、さらに笑う。そして、炭治郎を小脇に抱えると扇を一振りして、外へと歩いていった。

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

冨岡義勇は警戒していた。目の前の少女に対してだ。間違いなく彼女は人間で、だからこそあり得なかった。

 

普通の人間が鬼を殺す、それ自体は有り得ることだ。現、岩柱の悲鳴嶼行冥や、風柱の不死川実弥等のようにそういう例は確かに存在する。

 

しかし、それはあくまでも通常の鬼に対しての話だ。普通の人間は十二鬼月を倒せるようには出来ていない。例え下弦の鬼でも、人知を越えた実力を持っているのだ。

 

それなのに、この娘は下弦の鬼を圧倒していた。異常だ。紛れもなく普通ではない存在だ。故に冨岡は警戒していたのだが

 

「おはようございます」

 

「ああ、おはよう」

 

ペコリと少女がお辞儀をしてきたので、冨岡も思わずお辞儀を返した。

 

「違う。そうじゃないだろう」

 

我に帰った冨岡は思わず少女、竈門禰豆子に突っ込んだ。そして尋ねた。

 

「どうやってあの鬼を倒した?お前は何者だ?」

 

そんな冨岡の焦った質問に対しても禰豆子は淡々と答えた。

 

「鬼の事なら、何となく動きが見えたので、それに合わせて夢中でした。私は竈門禰豆子です。炭十郎の娘です」

 

見当違いの答えが帰ってきた。それに対して更に深く、聞き返そうとするが、禰豆子は

 

「ごめんなさい。家にお兄ちゃんが残っているので、戻ります」

 

といって踵を返した。それを追い掛けようとする義勇だったが、動き出す前に禰豆子は止まった。

 

「どうした?何が…」

 

唐突に空が曇り、太陽が覆い隠されていく。天候は吹雪に変わり、日光が通らない暗い世界。その中心に存在する竈門家の屋根の上に男が立っていた。

 

「禰豆子ちゃんだっけ?悪いけど、お兄ちゃんは俺が貰うね」

 

諸悪の根源。鬼殺隊が血眼になって追い掛ける悪鬼。童磨が立っていた。冨岡は即座に抜刀しようとするが

 

「君は邪魔だね」

 

一瞬で目の前にまで迫っていた童磨が刀を抑えて、冨岡を蹴り飛ばす。咄嗟に後ろに飛ぶが、それでも肋が折れて、内臓にダメージが入ったのを感じる。

 

「…!?一瞬で…!」

 

息が止まる。吹き飛んで動けなくなった冨岡に止めを刺そうとする童磨だが、禰豆子が一瞬で目の前に移動する。雪が禰豆子の体に当たって蒸気を上げる。その状態で禰豆子は童磨の腕を切り落とし、更に冨岡を遠くへと蹴り飛ばした。

 

「やっぱり、君も縁壱殿と同じみたいだ。でも、斧は折れてしまってるね」

 

禰豆子の持つ斧は刀身がへし折れて、使い物にならなくなってしまっていた。

 

「お兄ちゃんを…返して!」

 

「うーん。よし!なら禰豆子ちゃん、君が鬼になるならお兄ちゃんと一緒に居られるようにしてあげよう!」

 

さも名案を思い付いたように言う童磨に対して残っていた斧の柄を投げ付けるが、簡単に弾かれてしまう。

 

「残念だ。可哀想だけど、離ればなれになるのが嫌なら一足先に死んでいる方が幸せなのかな?」

 

武器もないなら彼ほど強くはないだろうし、片付けておくのも悪いことではないかな?そう言って扇を向けてくる童磨だったが、遠方から抜き身の青い刀が禰豆子に向けて飛んできた。

 

「使え!」

 

【ヒノカミ神楽・円舞】

 

「その技はもう見たよ!」

 

童磨が対応しようと扇を振り、血鬼術を使おうとした時に抱えていた炭治郎が暴れだす。

 

「オレの…家族(ガゾグ)!!」

 

炭治郎の手から出た焔が顔と扇へと当たり、日輪刀によって扇が破壊される。急速に空が晴れていき、陽光が顔を覗かせる。そのまま刀は童磨の首へと向かっていき、半ばまで切り込みを入れるが

 

「鳴女殿」

 

ベベペンと響く琵琶と共に一瞬で姿が消える。次の瞬間には再び屋根の上に、障子の戸から覗くように童磨が立っていた。

 

「悪いけど今回は逃げることにするよ。次に会えたらその時は炭治郎も一緒にお茶でもしよう」

 

火傷がゆっくりと治りながら童磨が言う。その顔は未だに黒く爛れており、首には折れた日輪刀が刺さる。そして、背後から日が後光の如く降り注ぐが、それでも童磨は嗤っていた。

 

 

 




やめて!炭治郎の血鬼術の特殊能力で、全身を焼き払われたら、日光を克服して鬼全員と繋がってる童磨の精神まで燃え尽きちゃう!

お願い、死なないで童磨!

あんたが今ここで倒れたら、珠世さんや無惨との約束はどうなっちゃうの?

扇はまだ残ってる。ここを耐えれば、禰豆子に勝てるんだから!


次回「童磨死す」デュエルスタンバイ!
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